推しの使い魔 作:=f:Remora
「それじゃ皆、おつかけさまでした~!」
定番とも言える別れの挨拶を行い、カメラを止める。まるで電脳空間のごとき世界に彼女はたった一人で漂っていた。地面という概念がないこの空間において彼女、間取かけるは無重力のように浮いており、彼女の周りには様々な配信用の機材が同じように浮かんでいた。
「ふふ、=fのみんな、大寿司だよ!」
すでにカメラは止まっているが動作確認の為に流している自分のライブ動画にはたくさんの“大寿司”や“乙かけさま”の絵文字であふれていた。少し早く終わってしまったとはいえファンである=fはいつもと変わらない様子で見送っていたのだ。
「ん~! 今日も楽しかったなぁ~」
定期的に行われる歌枠で好きな歌を歌ったかけるは喉の調子が良かったこともありこれまでの配信で再興とも言える歌を披露していた。早ければ一時間後にはかけるの歌は=f達によって切り抜かれて拡散されていくことだろう。
「さて、この後はどうしようかなぁ~」
いつもなら明日の配信の準備や夜食やお風呂に入るなどして時間を潰していくがお風呂は配信前に入り、夜食を取るほどおなかもすいていない。そして明日は配信がお休みの日という事もあって久しぶりにすることがない夜の時間ができていた。
「……よし! 今日は久しぶりにゼロの使い魔を見返そう!」
かけるは早速アニメ専門のアニメ視聴サイトを開く。マイページからその作品を手早く見つけると早速視聴を開始する。
「はあぁぁぁぁっ!!! ルイズたん! ルイズたん!」
推しにして初恋の相手、ゼロの使い魔のヒロインであるルイズ・フランソワーズの姿を見てかけるの表情はとろけた。顔を上気させハァハァと息を荒げるその姿は誰がどう見ても変質者か発情している痴女に見えるだろう。しかし、ここには彼女以外の存在はいない。つまりいくら顔を蕩けさせようと他人に見られる心配はないのだ。
「ルイズたんルイズたんルイズたんルイズたんルイズたん!!!」
1コマごとに名前を連呼しそうな勢いの彼女はそれゆえに気づくことはなかった。
「ルイズたんルイズたんルイズたん……ん?」
そして、彼女の
「え!? ナニコレ!? ていうかまさか……!!!」
かけるは今アニメで見ていたものと同じ鏡からある予測を立てたが最後まで思考できずに彼女の体は完全に飲み込まれていった。かけるを完全に飲み込んだ鏡は何事もなかったかのように消え、後には主を失い、かけるの私物があふれる空間だけだった。
トリステイン王国という国がある。これは地球とは違う世界に存在する大陸ハルケギニアに存在している。そんな王国にあるトリステイン魔法学院では2年生の春に使い魔との契約及び召喚の儀式が行われる。ハルケギニアでは一般的な魔法を扱える者達、メイジは必ずと言っていいほど使い魔と呼ばれるモンスターを使役している。メイジを見るなら使い魔を見ろとまで言われるほど使い魔はその主を示す重要な役割を持っていた。
それゆえに、まだ若いメイジたちに生涯のパートナーとなる使い魔を召喚させることは必須だったのだ。そして、生徒である若いメイジたちも自分がどんな使い魔を使役するのか楽しみにしていた。
……本来、この儀式は人数の関係で総合的な時間はかかれど個人個人で見ればそれほど時間がかかるものではない。なぜならメイジである以上出来るはずの魔法を行使して呼び出すからだ。どれだけ才能がない物でも数度の失敗はあれど呼び出せないという事はあり得ないはずだった。
「おいおい! いつまで待たせるんだよ!
「っ! うるさいわね! ちょっと失敗しちゃっただけよ!」
「そのちょっとが随分と長いけどな!」
トリステイン魔法学院の広間、そこでは2年生になったばかりの生徒たちが使い魔を召喚していた。しかし、
その人物、ルイズ・フランソワーズは同級生たちからの野次に怒鳴り返しながら何度目とも知れない使い魔召喚の魔法、サモン・サーヴァントを行った。しかし、結果は爆発が起こり、何もいないというここまで繰り返した事と同じものだった。
「(何でよ! なんで出てこないのよ!)もう一度……!」
「ミス・ヴァリエール。残念ですが次失敗した場合は明日に持ち越しという事で……」
「っ!? ……わかり、ました」
教師であるコルベールの言葉にルイズは内心で悔しさと怒り、そしてかなりの焦りを感じていた。次に失敗すれば明日一人だけ行うことになる。それがどれほどみじめで屈辱的なものかは想像にたやすいし、それでもできなければ最悪の場合進級そのものが危ぶまれることになるだろう。いくら筆記の成績が良いからと言って魔法をまともに使えないルイズをいつまでも魔法学院側がかばってくれるとは思えない。
自分のメイジとしての未来、そして馬鹿にしてくる同級生を見返すために最後のサモン・サーヴァントを開始する。
「(お願いよ! もうこの際だから誰でもいいわ! 弱くても小さくても
心の中でそう願ったルイズが発動したサモン・サーヴァントは、見慣れた爆発を起こした。
「結局失敗じゃんか」
「どうせ無理だろ。“ゼロ”のルイズには」
「時間の無駄だしさっさと戻ろうぜ」
爆発が起こったことからサモン・サーヴァントには失敗したと判断した同級生たちからそのような言葉が飛んでくる。ルイズも失敗してしまったと体を震わせながらうつむくが、次の瞬間には大きく目を見開いていた。
「ケホケホ、何これ……」
声である。爆発でまった砂埃の中から声が聞こえてくるのだ。何を言っているのかはわからないがルイズはようやく成功したと喜び、自分の使い魔となる者の登場を待った。
そして出てきた人物に再び驚愕する事となる。
「え!? ルイズたん!?」
本来、使い魔には亜人と呼ばれるような人型の生物はなれない。というよりも召喚されない。そのために煙から出てきた人の姿に誰もが驚きをあらわにしたのだ。
更にその人物は白いコートと下半身はラバースーツのように肌に密着するタイツのごときものをまとっていた。そして一目見れば誰もが愛らしいや可愛い、綺麗と思える整った容姿をしていた。それだけなら美女を召喚したで済んだが彼女、間取かけるの場合はそうはいかなかった。
「獣人……?」
そう、間取かけるは頭頂部に大きな獣耳と腰から大きな尻尾をはやした人ならざるものなのだ。ルイズも初めて見る獣人に驚きをもちつつも召喚に成功した事やその相手がたとえ人型であろうとかわいらしい容姿をしていることに安堵していた。これなら自慢できるレベルだし、
「ふむ、珍しい獣人ですね。ではミス・ヴァリエール。時間も押しているのですぐに契約を」
「は、はい!」
「あれ? まさか……!」
ルイズはコルベールにせかされつつ、知らない言語であわてるかけるに近づくと若干顔を赤らめつつその唇にキスをした。ルイズもまた美少女と言える容姿を持つ女性である。二人のキスに男性も女性も顔を赤らめた。
「っ!?」
「我慢して。すぐに痛みが引くから」
契約をしたことでかけるの左手には使い魔を示す印が刻まれた。その独特な印にコルベールはメモを取りつつも儀式の終了を宣言して学院に戻るように指示を出していく。全員が準備を進める中、ルイズは改めてかけると向き合った。
「で? あんた何者?」
「! 言葉が分かる……? やっぱりアニメの通り……!」
「? 何言ってるの?」
突如として興奮し始めたかけるにルイズは訝しむ。いくら容姿が優れていても意思疎通がまともに取れないのでは苦労することは目に見えている。ルイズは犬のようだししつけをきちんとしないとダメかしら、と思いつつかけるに視線を向ける。
「っ! 自己紹介をすればいいんだね?」
「そうよ。わからないと思うから言うけどあんたは私の使い魔になったの。いい? つまり私に仕えることになったのよ」
「え、何それご褒美?」
「……」
やっぱり頭がおかしいんじゃないか? ルイズはその疑念を確信に変えていくが混乱しているとはいえ推しを目の前にして限界化して抱き着かないだけかけるは理性を保っていたがルイズにそんな事が分かるはずもなかった。
しかし、かけるはそれでも自身がゼロの使い魔の世界に来たことだけはしっかりと理解できていた。それは彼女が
「それじゃ改めて……。こんかける! 僕の支配する、じゃなかった。フェンリルVシンガーの間取かけるだよ。よろしく、な!」
そう言って笑うかける。後に伝説の虚無の担い手とその使い魔としてハルケギニアの偉人となる二人の最初の出会いだった。
間取かけるとは
個人勢VtuberグループGuildCQからデビューした
種族はフェンリルであり犬でも猫でもない。普段はパーカーを着ているせいでわからないが脱ぐとすごい。そして配信で一回は必ずパーカーを脱ぐ。
シンガーとだけあって毎週金曜日は定期的に歌枠をとって歌っている。声はロリからお姉さん、イケメンボイスまで何でも出せる。
2023年1月にファンミーティング、2月末に3Dライブを行っている。そして4月末で卒業する事を発表している。
挨拶はおはかける/こんかける
好物は辛ラーメンと寿司。
ファンの愛称は
ゼロの使い魔のルイズが初恋の相手と言っており、よく結婚したいといっている。
因みに間取ちゃんの情報を知りたくて某百科事典を見たら怪文書が乗っていて困惑した。だけど面白いから一部使っている(え