推しの使い魔 作:=f:Remora
今日の分のノルマは無事達成されたよ
そして明日はいよいよ最初で最後の間取ちゃんの3DLIVE『everLASTing』が行われます。配信だから19:50までチケットを販売しているからぜひとも見てくれ! 俺は絶対に見る!
土くれのフーケという盗賊がいる。そのものはトリステイン王国でいくつもの窃盗を行い、現在指名手配がされていた。基本的に狙われるのは貴族であり、屋敷や城に保管されていた財宝や貴重なアイテムを奪い取っていた。土くれと呼ばれる理由としては防御魔法がかかった壁を魔法の錬金によって土くれにされて侵入される事から来ていた。
このフーケによる犯行は王宮でも問題視されており、ここトリステイン魔法学院も貴重なマジックアイテムを多数保管している事から警戒を怠らないようにというお触れが来ていた。
「そういうわけですので何卒よろしく頼みますぞ」
「言われんでもわかっておるわい」
王宮からの使者として訪れたジュール・ド・モット伯の言葉にオールド・オスマンは投げやりに答えた。彼にとって今回の一件は確かに警戒をしないといけないことであるが態々使者を送られてまで言われないといけないほど怠っているつもりはなかった。
そもそも、貴重なアイテムが保管されている場所には錬金の魔法がかけられており、いくら土くれのフーケといえど突破は出来ないと感じていた。
「それでは私はこれで」
モット伯は用件は済んだと学院長室を後にし、ロングビルの付き添いのもと塔の外へと階段を歩いているとふと、その足を止めた。
「? モット伯、いかがなされましたか?」
モット伯の視線は塔の窓から見える外の景色に固定されている。ロングビルもモット伯の視線をたどっていくと、広場で洗濯をしているかけるの姿があった。洗濯の都合上パーカーを外しており、彼女が下に来ているレオタードのごときぴっちりとした服が目立っていた。そして、その服を引っ張るように主張する彼女の胸が遠く離れたここからでもわかるほど巨大だった。
ロングビルはああ、と理由を察し、次にモット伯より放たれる言葉を予測した。
「彼女、名は?」
「確かカケル・マトリという獣人です」
「ふむ……。トリステイン魔法学院はいつの間に亜人を使用する様になったのかね? この歴史ある学院にはふさわしくないだろう」
モット伯はそう言っているが本心としては彼女を気に入ったというのが見え見えだった。いろいろと言っているのもこの魔法学院から追い出させて自分のもとに囲い入れようという意思が見え隠r……露出していた。
「彼女はミス・ヴァリエール嬢の使い魔です」
「ヴァリエール? ヴァリエール公爵家の娘の使い魔か……」
モット伯は獣人が使い魔であることよりもヴァリエール家の使い魔であることに驚いているようだった。モット伯は王宮の使者を務められる程度には影響力も権力も高い。同程度の貴族位の家ならば圧力をかけて手に入れる事も出来るが相手がヴァリエール家なら話は別であった。
「残念だ。あれだけの容姿をしているのだ。ぜひとも雇い入れたかったのだがな……」
「モット伯でもヴァリエール家はどうしようもありませんか?」
「当然だろう? あの家に対峙できるのは王家以外にこの国には存在しないだろう。全く、当主は領地に引きこもるしか能のない奴だというのに……」
モット伯は諦めきれないという思いと相手が相手ゆえにどうしようもないという絶望に似た感情を抱きながら再び階段を下りていく。しかし、そんなモット伯の後ろをついていくロングビルは彼に気づかれないようににやりと笑みを浮かべるのだった。
その日、いつも通りの日々を過ごしていたかけるは最近手に入れたインテリジェンスソードのデルフリンガーとお喋りをしていた。
「ほう? つまりおめぇさんはこの世界の人間、いや獣人じゃないと?」
「そうだよ。まぁ、僕が生まれた場所と最近住んでいる場所は違うんだけどね」
壁に背を預けて座り込み、デルフリンガーを隣に立てかけたかけるは自分の生まれた・育った世界について話す。この時点でのデルフリンガーはほぼ全ての記憶を忘れているがそれでも思考の柔軟性はぴか一であり、かけるの話を信じていた。
「僕の生まれた場所は地球っていう世界の地下にある都市アガルタなんだ。そこはほとんどの人が知らない場所でみんな理想郷って呼んでたなぁ」
「へぇ、そんな都市があったのか」
「うん。でも、僕が僕としての意識を持ってた時にはこの空間を操作する能力を持っていたからあまり住んではいなかったけどね。僕、基本的に一人で引きこもっているのが好きだったからさ」
「そりゃ立派なボッチだな! でもそれにしては普通に話ができているんじゃないか?」
「まぁ、僕はこれでも1万年は生きているからね。それだけの年月があればコミュニケーションの取り方だって覚えるよ。それに召喚されるまではVtuberっていう活動もしててさ」
「ぶいちゅーばー? なんだそりゃ」
「うーん、ちょっと説明が難しいけど遠く離れた人たちに自分の姿とは別の姿を操作して歌を歌ったり話をしたりする活動かな」
「なんか難しそうな活動だな。だけど遠く離れた人と話ができるなんてかける、おめぇさんの世界はすごいんだな」
「まぁ、魔法がない代わりに科学を発展させているからね。この世界だって魔法でも化学でも今よりも発展させればいずれ地球と同じ事ができると思うよ」
もしかしたらハルケギニアでVtuberとして活動できる日が来るかもね、とかけるはつぶやく。彼女の寿命をもってすればたとえ千年二千年かかろうとも実際に達成できてしまえるだろう。彼女自身自分の寿命を把握しているわけではないが肉体に衰えは感じず、それどころか成長が続いていると感じるためにまだまだ寿命は存在するだろうと考えていた。
「へぇ、んじゃその時は俺様も参加させてくれよ。こう見えても俺様は6000年は生きているからな」
「いいね。それじゃその時は一緒に配信しようね!」
ぶっちゃけた話をすれば空間を通り、地球に行けば今すぐ配信は可能だがデルフリンガーが言いたいことはそういう事ではないとかけるも理解している為にそんなことは言わない。
「(だけどアニメの展開が終わったらいずれルイズやデルフを連れて地球の観光をするのもいいかもしれない。そしてあみゅやGuild CQのみんなに紹介するのも面白いかも。そしたらみんなどんな反応をするのかな? 多分最初は信じてもらえないだろうしみんな夢でも見てるんじゃないかって思うかも)」
かけるは地球での友達の反応を想像しながらデルフリンガーとの会話を楽しんだ。次に来る騒動までの安らぎの時間として。
そして、次の騒動が始まった。シエスタがメイドをやめてモット伯のもとに向かったのだ。そして、それを知ったかけるはここからアニメのようにシエスタをどうしようかと考えていると彼女のもとに手紙が届く。読み手が文字を読めなくとも相手が自然と読み解ける不思議な魔法が使われた手紙には驚きの内容が書かれていた。
『カケル・マトリよ。一人でわが屋敷に来い。誰にも伝えずにな。そうすればシエスタという少女には手を出さず、二度と接近しないことを誓ってやろう。ただし、誰かに知らせたり、この話を断るのならシエスタと会うことは二度とできないと理解せよ』
ルートは分岐し、変化する。かけるの想像もしない方向へと。