推しの使い魔 作:=f:Remora
そして今日は20時より間取ちゃんの3Dライブが始まります。ぜひ見てみてください
かけるはモット伯から届いたと思われる手紙を見て驚愕した。こんな展開はアニメにも原作にもなかったと。確かに自分がいる事による差異はあってもこんな大きな変化が起こるとは思っていなかったのだ。
「と、とにかくルイズに……」
ルイズに相談しようとしてかけるは動きを止めた。この状況でルイズに知らせた場合危険ではないのか? そもそもアニメでもモット伯からシエスタを解放できたのはキュルケのエロ本のおかげだった。しかし、キュルケが助けたのは才人に恋をしていたからだ。かけるに恋をしているわけではないキュルケが協力してくれるかはわからなかった。
それに、もし伝えた場合は相手の怒りを買うことにもつながりかねない。かける宛の手紙がおかれていたのはルイズの部屋の中なのだ。そこまで簡単に侵入できる実力を相手は持っているという事であり、下手に知らせるのは危険でしかなかった。
「……」
かけるは暫く硬直したように動かなかったがやがて意を決したように手紙を破り捨てると部屋の出口に向かっていく。
「行く気か?」
「……そうだよ」
おいていくつもりだったデルフリンガーが声をかけてくる。かけるはそれに対して振り返ることなく簡潔に答えた。一体どんあ思いをもって言っているのかデルフリンガーからは顔を見る事ができない為にわからないが少なくとも相当な覚悟を持っているのだけは理解ができていた。
「まぁ、ないとは思うが自分を押し殺して取り返しのつかない事態にはなるなよ?」
「もちろんだよ。僕はルイズの使い魔だよ? 使い魔ならご主人様のもとに戻ってこないとね。だからデルフ、僕が戻るまでルイズをお願いね?」
「ああ、任せな。それに嬢ちゃんには適当にごまかしておくから安心しな」
「……ありがとう。デルフ」
かけるは一度振り返るとデルフリンガーに笑顔で礼を言う。その顔はかわいらしさとカッコよさが合わさった強い女性の笑みだった。
「やれやれ。あんな顔をされたんじゃ心配する気も起こさせてくれないぜまったく……」
デルフは改めてとんでもない、それでいて強い使い手に巡り合えたなと思いつつ、しばらくすれば授業を終えて戻ってくるであろうルイズへの言い訳を考えるのだった。
ジュール・ド・モット伯は王宮に仕える優秀な貴族であるが同時に気に入った平民を見かけては妾として傍に置く性におぼれた人物でもあった。そしてそんな彼はこれまでの人生の中で最高と言っていい女性を見つけたのである。それがルイズの使い魔であるかけるだった。
サラサラの金髪、美少女と美女を両立したかのごとき容姿。そして服を厚手に着込んでも丸分かりであるグラマスな肉体。唯一の欠点と言える点も人間ではなく獣人であることだがそれもモット伯にとっては彼女の魅力を引き立たせるものに見えていた。
だが、そんな彼女は自分ではどうしようもできないヴァリエール家に囲われていた。信じがたいことに使い魔であるという事で彼女か主人が死なない限り手放されることはない。モット伯はヴァリエール家という言葉が出た時には諦める事を決めたがそれを一人の女性がそそのかしたのだ。
「……そう固くなることはないぞ、シエスタよ」
そして、その女性の言葉に従いモット伯はシエスタを自分の屋敷のメイドとして雇ったのだ。もし、かけるを見かけていなければ妾にしていたであろう容姿を持っており、たとえかけるが要求に応じずとも代替品としては及第点の物だった。
「……」
「まぁ、いきなり私の屋敷のメイドとして雇われる事となったのだ。不満も不安もあろう。だが、今のところおぬしに手を出すつもりはない。安心したまえ」
「それは、どういう……」
シエスタはモット伯のうわさから自分が妾として連れてこられたと思っていたがよくよく考えれば不自然な事が多かったと感じた。何しろモット伯に雇われる事となり、この屋敷に来てから普通にメイドとしての役目を教わるだけでそちら方面の話は一切されていなかった。何ならモット伯からも一度もそういう話がされていなかったのだ。
「簡潔に言えばおぬしは人質のようなものだ。私が欲する志向の存在を手に入れるための、な」
「それは一体……」
「カケル・マトリ。私が欲しいのは彼女だよ」
「!?」
モット伯の言葉にシエスタは驚くと同時にどこかで納得した。同性のシエスタから見てもかけるの美しさは以上と言えるほどだったと思っている。それどころか男装の麗人が似合いそうな雰囲気や声、セリフ回しもいう事があり、その際にはシエスタも惚れそうになるほどの魅力を感じていたのだ。
そんなかけるをつり出す為に自分が使われたという事がシエスタには驚きと同時に怒りや悲しみが襲ってくる。決闘の時もそうだったが自分はかけるさんに迷惑をかけすぎている、と。
「……」
「そう嘆くことはない。所詮はおぬしも平民。大貴族の使い魔の地位を捨ててまでやってくる可能性はあまりない存在だ。まだお主を見捨てて来ないという可能性もあるぞ」
まぁ、そうなったらお主を抱くだけだがなとモット伯は盛大に笑う。シエスタはかけるが現れないでほしいと願うが、その願いはあっけなく崩れさる事となった。
「伯爵様、カケル・マトリと名乗る女性が訪ねてきています」
「来たか……!」
「そんな!?」
「ふふ、どうやらお主は貴族の使い魔としての地位よりも大切な存在のようだな。あの女の言う通りにした甲斐があったというものだ」
シエスタはかけるが来たという事に驚いてしまっており、モット伯がぼそりとつぶやいた最後の言葉に気づくことはなかったのだった。