推しの使い魔 作:=f:Remora
「ルイズた……。ルイズちゃーん! お待たせー!」
「遅い!」
かけるが食事を済ませて戻ってきたときにはすでに就寝時間を過ぎていた。次元を割いてルイズの部屋に戻ったかけるだがルイズは既に寝巻に着替えており、寝る準備が整っている状態だった。
「まったく、なんで食事をとるだけでこんだけ時間がかかるのよ!」
「え、えっと。ちょっといろいろあって、ねぇ……」
かけるは目を泳がしながら言い訳がましくごにょごにょとつぶやく。実は食事は割と早い段階で取り終えていたのだが急遽休みを取ることになったことで心配した仲間たちから連絡を受け、気づいたら話し込んでしまい時間が経過していたのだ。とはいえまさか「ルイズたんの事を忘れて同期と話に夢中になっていました」と馬鹿正直に言うわけにもいかず、なんと言えばいいのかわからずにこうなってしまっていたのだ。
「……まさか使い魔になったことを忘れていたとかじゃないでしょうね?」
「え!? そ、そんな事、ないよ?」
「……」
明らかにその通りと言わんばかりに動揺するかけるにルイズは怒りを覚えるが無理やりその気持ちを押し込めるとベッドに横になる。
「かける。バツとしてあんたはそこの藁で寝なさい」
とはいえご主人様を忘れるような駄犬への罰は忘れていないと言わんばかりにかけるの寝る場所を指示した。ルイズの指示した場所は部屋の端であり、そこには使い魔の為に用意したであろう藁の山がおいてあった。多少大型のモンスターでも寝れる程度には積まれているが身長が162㎝と153㎝のルイズよりも高いかけるでは物足りない量だった。
「こ、これが伝説の藁の寝床……! でもこれじゃ僕にはちょっと足りないけど……」
「体を丸めて寝れば? 言っておくけど自分の空間? だったに戻って寝るのは禁止ね。それじゃ意味ないから」
「そんな~」
「うだうだ言ってないでさっさと寝なさい。本当は使い魔とはどうあるべきかを教えるはずだったけどそれは明日にするから……」
それだけ言うとルイズはすぐに寝息をたてはじめた。その様子を見たかけるは軽くため息をつくと自分の為に用意された藁の上で丸まって横になる。藁のガサガサ感と地面の硬さが気になるものの幸いにもパーカーを着ているおかげで冷えることはないだろう。
「本当に、使い魔になったんだ……」
そして、横になって最初に感じたのが自分が本当に推しであり、初恋の相手でもあるルイズの使い魔になったという事だった。本来の物語ではかけるではなく平賀才人が使い魔となるはずだったがその主人公の姿はどこにもない。
「僕が代わりに召喚されたんだ……」
そう考えればかけるの脳内に生まれるのは今後起きる様々なイベントをどうするかだ。かけるがいまいる世界の作品、“ゼロの使い魔”は小説を原作とする人気作品で、漫画化、アニメ化もされていたがよくある話ではあるが漫画とアニメでは話の流れが変わっている。お互い最後以外は大筋は変わらないものの、そこに至るまでの出来事が大きく違っている。直近で言えば主人公平賀才人が伝説のガンダールヴと呼ばれる使い魔であると判明するギーシュとの決闘があるがその場所も小説では食堂、アニメでは広場で行われた使い魔との交流会で発生した。
そのためにかけるは自分がいる世界がどちらなのか? それともその二つが合わさった世界なのかを知る為の判断材料の一つとしてその決闘を選ぶことを決めた。少なくともどちらが起こるかで自分の世界が判明するだろうからと。
「僕としてはアニメでもラノベでもいいけどね。ルイズたんの声が聞けただけで満足だよ……」
かけるはそうつぶやくと、重くなってきた瞼を閉じ、ゆっくりとやってきた眠気に身を任せるのだった。
「ん、んん~~!!」
翌朝、かけるは体の節々から感じるコリをほぐしながら目を覚ます。時計がないために正確な時間が分からないものの、昼夜逆転がデフォルトで生活していたかけるにしては規則正しい早起きの時間帯だった。
「……あ、僕本当に使い魔になったんだ。夢じゃ、なかった……」
部屋の景色、ベッドで眠るルイズ、そして左手の甲に記されたガンダールヴの証。それらが自分に何が起きたのか、自分がどうなったのかを如実に示していた。自分は推しにして初恋の相手、ルイズの使い魔になったのだと。
「さて、それじゃ……」
トリステイン魔法学院の時間がどのようになっているのかをかけるは知らない。それでもこのまま寝かせておくわけにもいかないとかけるはルイズを起こすべくベッドに近づいていく。そして、
「起きてー! 朝だよー! 遅刻するよー!」
かつて自分のボイスを販売した際にあった目覚ましボイスと同じセリフを言ってルイズに呼びかける。当然ながら一回言った程度で起きるのなら苦労はしないがルイズは身じろぎ一つせずに夢の中の住人のままであった。
「起きてー! 遅刻するよー!」
「ん……。ぅるさいわね……」
数度にわたって言い続けることでようやく目を覚ましたルイズ。寝ぼけ目をこすりながらぼやぁっとした瞳でたたき起こした張本人であるかけるを見て目を見開いた。
「って! あんた誰よ!?」
「え? 忘れちゃったの? しょうがないなぁ」
この流れは小説にあったなぁと感じつつかけるはセリフを聞けて満足しつつ挨拶を行う。
「おはかけるー! フェンリルVシンガーの間取かけるだよー! よろしく、な!」
「間取、かける……? ああ、そういえば使い魔になったのよね……」
その挨拶を聞いてようやく昨日の事を思い出したルイズは改めて目の前の女性を見る。間取かけるという聞きなれない名前を持つ獣人。自らをフェンリルと名乗り、使い魔として召喚されるまでは歌い手として活躍していたという。
「……それじゃ昨日言えなかった使い魔とはどういう存在かだけど……」
「ふふん! そのくらい僕だって知ってるよ!」
幾度となく視聴したゼロの使い魔。その中で使い魔という存在がどういったものかはかけるは暗記できるほどに記憶していた。そんな使い魔にルイズは少し懐疑的な視線を向けつつも難しいことではないし必要な時に訂正すればいいかと説明を省く決定をするとベッドから起き上がった。
「それじゃ、着替えさせて」
「あ、う、うん……」
何やら歯切れの悪いかけるの様子を気にも留めないルイズは若干の寝ぼけ目のまま着替えが済むのを待っていた。
「る、ルイズたんの下着……! ルイズたんのにおい……!」
「ちょっとー。早くしてよね」
「ひゃい!?」
まるで如何わしい事をしている場面を見られたかのようにビクンと体を震わせるかける。実際、やっていたことはルイズの下着を手に持ち、顔を赤くし、呼吸を荒げ、スンスンと匂いを嗅ぎながら興奮していたのだから如何わしい事をしていたことに違いはないだろう。
そんな些細な事がありながらも無事に着替えを終えるとルイズの案内のもとかけるはともに食堂に向かう。
「いい? 今日は授業はお休みで使い魔とのコミュニケーションをとる時間になっているわ。食事は自分で済ますみたいだけどそれ以外の時は私のそばにいるのよ?」
「はーい! わかってるよ!」
元気よく答えるかけるに不安を抱きつつもルイズは食堂に、かけるは自分の空間に戻りそれぞれ食事をとり始めた。
「確かこの後はギーシュとの決闘騒ぎが起こるはずだから急いで食べないと……!」
かけるは若干アニメ寄りの世界かな? と推測しながらご飯を食べているとスマホに通知が来たことを知らせるバイブレーションが起こる。画面を見てみれば親友にしてアイドルとしてデビューする準備をしている兎彷魂あみゅからの
「えーと……。“いきなり休止するってどういうこと!? 具合でも悪くなったの!?”。あー、そういえば言ってなかったかー」
友人だがエピソードを忘れたりぞんざいな対応を行ってしまう相手からの通知を見てようやく自分が友人に何も言っていなかったことを思い出した。
「“ごめんねー。ちょっと用事ができちゃったから時間をとれなくなりそうなんだよ。だからお休みをもらっただけだよ”……。送信っと、わわ!?」
通知を送れば怒涛の質問ラッシュが始まってしまう。かけるはそれに驚きつつも一つ一つ丁寧に返事をしていく。……ルイズとの約束、そしてこの後に起きるイベントを完全に頭の中から忘れた状態で。
結果、かけるが気づいたときにはイベント発生の真っただ中であり、原作とは違う流れになり始めていたのだった。
兎彷魂あみゅ
間取かけるの友人で6月デビュー予定のVアイドル。この話投稿日に引退直前&デビュー直前コラボ歌枠を開催。お互いが友人同士であると公言した。
兎の死神らしいが本人談によると兎の遺伝子の方が濃いらしい。間取かけるとは
お泊り会やハグ、濃厚な絡みを見せ=fからは夫婦と言われる程の仲の好さを見せた。
話によると一緒に頑張っていく約束だったらしいが間取かけるが4月いっぱいで引退するという事で急遽コラボを行う事となったらしい。そのためか、まだ準備万端ではない為にあみゅ本人はスマートフォンの中から顔だけの参加となった。
アイドルと言っているだけあり歌はうまい。