推しの使い魔 作:=f:Remora
そしてエロ本騒動に行くと言ったな? あれは嘘だ(そこまでいきませんでした)。次回こそ行くと思います
「それにしても微妙な剣ねぇ」
王都に買い物に日の夜。かけるが持つ錆びた長剣を見ながらルイズは改めて言った。現在はルイズの部屋にいるがこの場には部屋の主たるルイズとその使い魔であるかけるのほかにキュルケとタバサもいた。二人も昼間に買い物をしていた為にそのまま打ち上げ的なノリで集まっていたのだ。
「でも店主の言っていた通り頑丈みたいだし丁度良かったんじゃない? 鞘に入れておけば錆びついているなんてわからないんだし」
「それはそうだけど……」
ルイズとしてはもっと見た目も素晴らしい武具を渡したかったのだがかける本人が何故か気に入っている事と店主が言っていた通りかなり頑丈そうだったので渋々受け入れていたのだ。
「それにしてもまさかあの剣が偽物だったなんてねぇ。ルイズが買えないって言うのなら買ってあげようかとも思ったのだけど」
「どうせその無駄にデカい胸で色仕掛けをするだけでしょ?」
「あら? これだって私を引き立たせる魅力の一つよ? まぁ、ルイズのそれじゃぁ引き立て役にもならないわね」
「なんですって!?」
胸を張って自慢するように言うキュルケに対してルイズは犬のようにガルルルルとうなり声をあげながらかみつく。二人の身長差もあってかけるとタバサの目には歳の離れた姉妹喧嘩のように見えた。
「……」
「? えっと、何か用?」
ふと、かけるは隣から注がれる視線に気づく。視線の方向を見ればタバサがじっと見つめてきており、かけるは原作と違うタバサの様子にうろたえながら聞く。
「……あなたの能力について聞きたい」
「僕の能力?」
「あなたの能力は点と点を繋げる力。それはどのくらいの距離まで有効?」
「……」
タバサの問いは何も知らない人から見れば純粋に能力を知りたがっているようにみえるだろう。しかし、原作を知り、アニメを見続けてきたかけるにはわかる。何故自分の能力を知りたがるのか。
「(心を失ったお母さんを助けたいけどジョゼフから遠く離れた場所に避難させたいのかな?)」
タバサの出自。それは魔法学院内において知っている者がほぼいない。それはキュルケとて例外ではなくタバサがどこの国の生まれなのかさえ知っていないだろう。
タバサは意外な事にトリステイン王国でも、ましてや帝政ゲルマニアの出身でもない。両国と国境を接すル大国ガリアの生まれだ。しかも現国王の姪にあたる人物だ。現国王ジョゼフにはかつて一人の弟がいたが王位継承の話となり、殺されていた。その際にタバサの母親は心を失い、タバサを娘として認識できないようになってしまった。
そしてそんな母親を人質にタバサは様々な過酷な任務を押し付けられていた。任務中に死亡する事を期待されて。
「……悪いけど僕の能力はそこまで万能じゃないよ。せいぜいがトリステイン王国の端から端までくらいだよ」
「……そう」
タバサは少し落胆の感情をこぼしたが即座にいつもの無表情に戻り、本を読み始めた。かけるに対する興味が消えたか薄れたかを意味しており、とりあえずタバサに目を付けられることは回避できたとかけるは安堵する。
かけるは嘘をついたが実際のところトリステイン王国の端から端程度なら簡単に繋げられるしそれ以上の距離も可能だ。なので彼女の手にかかれば今すぐ聖地に空間を繋げることも可能なのだ。ただし、それをやれば原作から大きくそれる事になる。そうなった場合、不測の事態が発生する可能性もあり、かける自身では対処できないような問題が出てくる可能性もあった。
「(ジョゼフとか教皇とか原初の兄弟とか原作を知らないと行動すら読みづらい相手はいっぱいいるからね。タバサには悪いけど今は我慢してもらわないと……)」
幸いにもこの世界はアニメを基準とした世界となっている事が分かっている。登場していなかっただけかもしれないが原作に出てきた厄介な相手も減っている。更に遅くとも一年以内にタバサの母親を助ける事ができるのだ。焦って原作を壊して予測ができなくなるよりはもう少しだけタバサに耐えてもらうことを優先した。
「……で? いつまで言い争ってるの?」
「っ! こいつがわからずやなのがいけないのよ!」
「何よ、ルイズだって人の言葉に耳を傾けないじゃない!」
気づけばキュルケも声を張り上げて本格的な口喧嘩に発展している二人を止めようと声をかけたがかけるの言葉では焼け石に水にもならなかった。
「……そうよ、そういえばかけるも胸はデカかったわね! かける! こっちに来なさい! あんたもお仕置きよ!」
「なんでぇ!?」
それどころかまさかの飛び火にかけるは仰天して後ずさる。今のルイズは嫉妬の感情を出し、かけるの胸ばかりを見ながら乗馬用の鞭をしならせている。原作でルイズが才人に使っていた物で、実物を見るのはかけるも初めてのアイテムだったがこの場面で見たくはないものでもあった。
「覚悟しなさい! その無駄肉を剥いでやるんだから!」
「……ったく、うるせぇ小娘だな」
「こっ!?」
ふと、聞こえた言葉にルイズは固まる。しかし、すぐに怒りで顔を更に真っ赤にさせるとキッ、とかけるを睨む。かけるはここで喋るの!? と驚いたがアニメでもこんな時間だったと思いなおした。
「そんなにピーチクパーチク騒がれたんじゃぁおちおち眠ってもいられやしねぇ」
「……この声、もしかしてその剣が?」
「……喋ってる」
二回目の言葉でルイズもこれがかけるの仕業ではないと思いなおし、周囲を確認し、かけるが持つ長剣がカタカタと喋っているのに気付いた。そして同じようにタバサも声の発生源を指摘し、誰もの視線がその剣に注がれる。
「しかもおでれーたな。今度が使い手か! 通りで起きやすかったわけだ!」
「これってインテリジェンスソード? なんでこんな変なのを引き当てちゃうのよ」
ルイズが先ほど以上に嫌そうな顔をして返品を考え始める。しかし、かけるとしてはこれが分かっていて選んだ為に問題はない。
「いいよ。喋れる方が面白いじゃん」
「お! そこの獣人はよくわかってるじゃねぇか。俺はデルフリンガー。これからよろしく」
「僕は間取かける! かけるが名前で間取が性だよ。よろしく、なっ!」
挨拶を交わす二人にルイズは眉をひそめながら剣を見ており、キュルケは怒りが収まったようで面白そうにその様子を見ていた。そして、タバサはいつの間にか視線が本に戻っており、かける達に興味は沸いていないようだった。
こうして、かけるは色々と変わりつつあるが結果的にデルフリンガーを手に入れいる事に成功し、アニメ通りの展開をなぞっていくことに成功した。しかし、かけるの知らないところで原作・アニメ両方から展開はずれ始めていた。かけるは近いうちにそのことを身をもって知ることになるのだった。