立花響が男の子だった世界の393   作:勝機を零した、掴み取れん

1 / 3
3年振りの文章書いたので初投稿です。
久しぶりに書いたので文章拙いかもしれませんがよろしくお願いします。


第1話

「お前ら! 未来をいじめるな!」

 

 私にとって幼馴染の()()()の響はヒーローだった。

 弱くて、よくいじめられていた私を小さい頃から守ってくれていた。

 

「未来? 大丈夫か?」

 

「うん……。でも響、顔を怪我してる」

 

「これくらいの怪我、へいき、へっちゃらさ。未来が怪我をしてなければそれでいいよ」

 

「ありがとう……! 響!」

 

 どんな時も助けてくれていた響に、私はいつの

 間にか幼馴染以上の感情を抱いていた。

 そしてそれは中学生になってからますます強くなっていた。

 

 響は私以外の人達にも優しかった。困っている人がいればすぐに人助けや手伝いをする。

 だから、彼の事が好きな女子も数人いた。

 

 私は響とずっと一緒にいたかった。

 響が他の人と仲良くしてる所なんて正直見たくもなかった。

 私は、常日頃彼と共にいることが多かった。彼の隣に私以外の女の子がいる事なんて嫌だったから……。

 

 だからいつも響と一緒にいた私は周りの女子から嫌われていた。

 

 

 

 嫌がらせを受けた時もあった。

 それでも響は私のことを一番に考えてくれていて、守ってくれていた。

 

 そして彼がその女子達を嫌うようになった時は……心地良かった。

 

 私にとっての一番は響。響にとっての一番は私と気づいた時はとても嬉しかった。

 

 私が響に向ける感情が歪んでいるのは自分でもわかっていた。だから……自分の気持ちを伝えるのが怖かった。

 

 彼が私の傍にいてくれればそれで良かった。

 

 

 

 

「これって……ライブのチケット?」

 

「そう、今人気のツヴァイウィングのチケット! 凄く競争率高いんだけど運良く手に入ったんだ。ペアチケットだったから……もし響が良いなら一緒に行きたいなって……」

 

 ある日私は彼をツヴァイウィングのライブに誘おうとした。こういうのにあまり興味は無さそうだったけど……響は私の誘いならいつも喜んでくれるのを知っていた。

 

「未来が良いなら喜んでって感じだな。こういうライブ行ったことないから行ってみたいし……でもいいのか? 俺で」

 

「響だからだよ! 私にとって一番の友達だからね!」

 

 友達……そういった時、心の奥が痛んだ。この気持ちを伝えれば楽になるのに……それを私は抑え込む。こんな歪な愛を、彼には知って欲しくなかったから……。

 

 狡い女だって……自分でもわかっている。

 

 彼の優しさや癖に漬け込んで私が望むように彼を動かすような事をしていたのだから。

 

「いやぁ〜未来にそう言って貰えるとうれしいな……。じゃあ、ライブ楽しみにしてる!」

 

 そう言って見せた彼の笑顔は素敵だった。他の誰にも見せずに、私だけに見せて欲しいと思うことも何度もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめん。今日のライブ行けなくなっちゃった……」

 

 ライブ当日。親の都合で行けなくなってしまい、自宅にいた私は響に今回の事を電話で話していた。

 

「そうか……。体調悪かったり?」

 

「おばさんが怪我しちゃって、お父さんが今から車出すって……本当にごめんね……」

 

「……まあ、しょうがないよ。じゃあ、未来の分まで楽しんでくるから感想楽しみに待っててよ!」

 

「……うん! 待ってるから! じゃあ……」

 

 電話を切ったあと、私は響に対する申し訳なさと一緒にいけなかった悲しさのショックでその場に座り込んでしまった。

 

(……せっかく、響と一緒にライブ見れると思ったのに……)

 

 そして、その数時間後に起きたあの惨劇。

 私はあの時響の傍にいてあげられなかった事を酷く後悔した。

 

 

 

 

 

 ツヴァイウィングのライブ会場でノイズが現れて、沢山の人達が亡くなる大事故が起きた。

 もちろんその場には響もいた。

 

 響はノイズによって炭化される事はなかったが会場崩壊の被害に巻き込まれ意識不明の重体。状況は絶望的だった。

 

 その事を知った私は、あまりのショックで部屋でずっと泣き、何度も響に謝り、後悔していた。

 

 私がもっと早く、響が会場に着く前に連絡していれば……。

 

 私がツヴァイウィングのライブに誘わなければこんな事にならなかったのに……。

 

 私のせいだ……私のせいだ……! 

 

 

 

 私は数日間、学校に行かなくなって部屋に引きこもりっぱなし、ご飯もまともに食べられない状態が続いた。

 

「……響。もう会えないのかな……」

 

 照明も点いていない、カーテンも閉めっぱなしでほとんど光が入っていない真っ暗な部屋の中、携帯の画面の明かりだけがベッドで横になってる私の顔を照らしていた。

 

 私は自分と響、二人が彼の部屋をバックに、笑顔でピースをしている写真を眺めていた。これはお父さんに買ってもらった初めての携帯を使って撮った最初の写真。

 

「……響に謝ることが出来ないままなんて……嫌だよ……!」

 

 携帯を握りしめる手に力が入る。今の私には何も出来なかった。

 

 ただ……響が目を覚ましてくれる事を信じるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日。今の私は病院を目指して全力で走っていた。

 

『響が目を覚ました』

 

 なんの音もしない部屋にいた私の耳に、電話をしていたお父さんの言葉がはっきりと聞こえた。

 それを聞いた私はいてもたってもいられずに、着替えを済ませて大急ぎで家を出た。

 お父さんが私を呼び止める声が聞こえたけどそんなものは振り切った。

 

 響が生きている。

 

 響と話せる。

 

 響に謝ることができる。

 

 本当なら走れる気力なんてないはずなのに……響に会うための力が湧いてくる。

 

 

 

 病院に着いた私は、看護師さんに響のいる病室を聞き、急いで向かった。

 

「響……!」

 

 響は病室のベッドから窓の外を眺めていた。

 

「未来……。久しぶり……かな?」

 

 私の声に気づいた響は振り向いて、優しく微笑んでくれた。

 

「ひびきぃ……!」

 

 私の大好きな響が生きている。大好きな笑顔を私に見せてくれた。

 

 その姿に涙を浮かべてしまいそのまま彼に抱きついてしまった。

 

「私……響にずっと謝りたかった……! 私がライブに誘ったせいで響だけが辛い目に遭って……!」

 

「……未来のせいじゃないよ。だから、謝らないで」

 

「でも……でも……!」

 

「むしろ、あの場に未来が居なくて良かったって思ってる。もし、未来が死んだなんて事があったらずっと後悔して生きていく事になってたと思うから……」

 

 ああ……響はやっぱり優しいな……。こんな風になっても私の事を考えていてくれてたなんて……。

 

 私の頭を撫ででくれる手から温もりを感じる。

 

「……私も一緒だよ。響が意識を失っていた間、何も手が付かなくなってた……。響を失うなんて考えたくもなかった」

 

「……だから、こんなに元気なさそうだったんだ……」

 

「でも……今、響は生きている。それが凄く嬉しい」

 

 そう……私には響がいないとダメなの。だから……。

 

「だから……生きていてくれてありがとう、響」

 

 もう二度と……離さない。




感想などお待ちしております
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。