機動戦士ガンダム00~鎮魂の反天使~   作:神話語り

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ほとんどトレミーメンバーが活躍しない話は、同時にフリック君の出番も無いので飛ばします。


04「報いはいらない(1)」

 AEUが動いた。

 

 AEU―――正式名称《新ヨーロッパ連合》は、『新』の文字が示す通り、旧EUに所属していたヨーロッパ諸国、新興国、加えてアフリカ諸国を加えた大規模な連合だ。十九世紀の産業革命以降、様々な面で時代の最前線を走ってきた彼らではあったが、しかし軌道エレベーターの建設で後れを取ったため、宇宙開発に関しては他国家群に後れを取っている現状であった。

 

 このまま軌道エレベーターの建設に後れを取りすぎれば、今後のさらなる宇宙進出で完全に後れを取ることとなる。それは、常に時代を導いてきたという確固たるプライドのあるヨーロッパ人たちが許さなかった。

 

 軌道エレベーターの開発に関する差を縮める方法は大きく分けて二つ。一つは、他国の機動エレベーターを攻撃し、建設を遅らせる。だが、軌道エレベーターは一本が倒れればほかの二本も倒れるような仕組みになっている。軌道エレベーター開発を遅らせるための戦争が起きないように、という思想だ。建設案を出した人間の性格の良さと言うか悪さがよく分かる仕組みである。

 

 そのため、他国の軌道エレベーターを攻撃するわけにはいかない。ならばどうするのか。

 

 簡単だ。自国の軌道エレベーター開発を加速させればいいのだ。だが、そのためには資産が足りない。圧倒的にだ。

 

 そこでAEUは一計を案じた。それは、軍事力の増強。軍事力は宇宙開発にあたっての防衛や、他国の妨害にも使える非常に重要な物である。軍事力を背景に他国を威すことも可能である。しかしそのためには、にらみを利かせうるだけの武力が無くてはならない。残念ながら現状のAEUには、そこまでの武力がないのが現状だった。

 

 そこで彼らが目を付けたのは、軍事国家、モラリア共和国であった。

 

 

 ***

 

 

「モラリア共和国……23年前の2284年に建国したヨーロッパ南部の小国……人口は約180000と少ないが、三百万を超える外国人労働者が国内に在住。約4000社ある企業の内、二割が民間軍事会社PMC」

「ふむ……つまり国家ぐるみで傭兵稼業、とでもいった所か……」

 

 正面に座るフェルトの淡々とした解説を聞きながら、フリックはそう呟いた。本当はフェルトの隣に座りたかったのだが、フェルトを妹の様に可愛がっているクリスティナが強硬に反対し、結局フェルトの隣を奪われてしまったのだ。まぁ、正面からはフェルトの顔をガン見出来るので良しとする。

 

 PMCとは、傭兵の派遣や兵士育成、兵器の製造などまでをビジネスとして担当する、民間軍事会社のことだ。傭兵企業、と言った所か。モラリアでは、民間軍事会社のはずなのに国家から支援を受けているところまであるという。

 

「熱心ねぇ、フェルト」

「……任務ですから」

 

 無感情に答えるフェルト。うん、無感情でも超可愛い。

 

「スメラギさん、モラリアって、そのPMCを支援することで発展してきた国ですよね。思いっきり軍事国家じゃないですか。……どうして、今までうちの攻撃対象にならなかったんでしょうか」

「世界の戦争が縮小していけば、彼らが活躍する場は無くなるわ。ビジネスは成り立たなくなって、崩壊する。……このまま、自滅してくれればよかったんだけどね……」

 

 苦笑してクリスティナの問いに答えるスメラギ。とりあえずそんな事よりちょっとうつむいたまま端末の画面を見つめるフェルトがかわいすぎて生きるのがつらいんですが。

 

 

 数日前、モラリアの軍事力に目を付けたAEUが、モラリア共和国との合同軍事演習を行うと発表した。戦争の準備行為にあたるそれに、ソレスタルビーイングも介入を行う。今回、スメラギ、クリスティナ、そしてフェルトの三人が、ガンダムマイスターたちのバックアップのために地上におりることになったのだ。そのため、現在彼女たちは軌道エレベーターを使って地球におりているところなのである。

 

 そして――――フリックは、ガンダムマイスターたちと共に、武力介入を行うために。アスタロトが四人のガンダムマイスターたちと、彼らのガンダムたちと共に同じプランで行動するのはこれが初めてとなる。ちなみに現在、アスタロトは以前ヴァーチェがそうした様に、軌道エレベーターの荷物に紛れ込んでおり、地上に到着し次第エージェントによって回収されることになっている。

 

 だがフリックにとってそれはどうでもいい。もともとトレミーの守護のためにあるアスタロトは、危うくお留守番になる所だったのだ。そうしたらフェルトを守るどころの騒ぎではなくなってしまう。アスタロトを参戦させるプランを提唱したのは誰だか知らないが、なんとも「ぐっじょぶ」である。その者のおかげで、こうしてフェルトについて行っても誰も怒らないのだから。

 

 

 今回の合同軍事演習は、AEUとモラリアの両国にとって、非常に利益のある行動であった。AEUは軌道エレベーター開発及び宇宙開発に必要不可欠である軍事力を、モラリアの協力によって手に入れることができるし、モラリアはAEUが後ろ盾につくことによって、縮小した経済力を再生させる試みなのだろう。

 

 だが恐らく、AEUはソレスタルビーイングの介入を予見している。そしてそれによって、膨大な被害が出ることも。結果として、モラリアをAEUに吸収する運びなのだろう。そしてモラリアもそれに乗るはずだ。多大な戦死者を出しても、AEUの援助を受けることで、すぐに立て直せるからだ。

 

 スメラギの表情が先ほどから暗いのは、ヴェーダとスメラギが練った作戦は、どのプランを通っても、最低でも500人余りが死亡する見立てだというからだろう。

 

「……できるだけ死者は出さないようにしますよ」

「……ありがと」

「あなた達の為じゃない。フェルトが悲しむからです」

 

 そう、と、スメラギは苦笑した。

 

 不安要素は、実はもう一つあった。

 

 AEUとモラリアは、さらなる軍事力を手に入れるべく準備をしている。

 

 あわよくば、鹵獲するつもりなのだ。ガンダムを。

 

 ―――――――ガンダムは貴様ら下郎どもには渡さない。これは、フェルトを守るための武器だ。

 

 フリックは、胸中でひとり、呟いた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 夕方ごろ、宿泊するホテルに到着した。女性陣は三人部屋、フリックだけは隣の一人部屋である。フリックとしてはフェルトと同じ部屋がよかったのだが、さすがに理性が勝った。年齢なんて気にしないフリックだが、フェルトはまだ14歳である。ちなみにフリックは16歳だ。

 

 現在は三人部屋の方に全員が集まっている状態だ(因みに隣の部屋とはドアで繋がっているタイプの宿だ。移動がしやすくて実に便利である)。ベッドの上に座って、ミッションプランの整理をしているフェルトを、リビングルームの椅子に座ってじーっと眺めつづけるフリック。フェルトはこういう視線にあまり敏感ではないので、いつまでも眺めることができる。それにしても可愛いなぁ。こういう真面目な娘は主観的にフリックの好みだったりする。というかフェルトのありとあらゆる面がフリックの好みに偶然一致してしまっているのだから余計たちが悪い(?)。

 

「スメラギさん、モラリアへの直行便は明日ですから、それまでは自由時間でいいですよね!」

「あら、そうしたい?」

「はい!」

 

 クリスティナの要望に、スメラギは数瞬迷った様子を見せて、すぐに頷いた。

 

「ならOK」

「やった!フェルト、買い物行こ!」

 

 キュピィィン!「買い物」。そのワードに反応したのはフェルトではなくフリックだった。フリックの脳内が急速に加速し始め、次にフェルトが何を言うだろうかの予測が立てられる。恐らくミッションプランの整理が終わっていないことを理由に断ろうとするはずだ。だが恐らくクリスティナの強引な誘いを断りきれずにつれていかれてしまうはずである。

 

「……ミッションプランの検証が、まだ終わってないから……」

 

 的中。

 

「良いから行こ!私らが活躍すればするほど明日の戦果は上がるんだから、今のうちにやりたいことはやっておかなきゃ!」

 

 なんだかよくわからない理論をもちだしてフェルトの腕を引っ張るクリスティナ。的中だ。ならばこの後俺がやるべきことはただひとつ――――!

 

「でも……」

「良いんじゃないか。あとは俺がやっておく」

「フリック……」

 

 「じゃぁ……」と言って、電子端末を渡すフェルト。今回ばかりはクリスティナもフリックに肯定的な目を向ける。「いってきまーす!」と、フェルトと連れ立って部屋を出て行ってしまった。

 

「……珍しいわね、フリックがフェルトについて行かないなんて……」

「――――こんなもの、五分もあれば終わる……ッ!!」

 

 ――――フリック・イブリース、目標を断罪する!

 

 言うが否や、フリックは高速で指を動かし始めた。ミッションプランのデータを解析し、分かりやすいようにまとめていく。それも、後から見るフェルトがすぐに理解できるようにだ。膨大な量のプランの整理が完了するまでにかかった時間は、わずか3分足らずであった。

 

「……」

 

 絶句するスメラギ。

 

「断罪完了……それではストーキングをしに行ってきます」

 

 グッ、と、無表情のまま親指を突き出してサムズアップのポーズ。

 

「ストーキングって……。……犯罪よ?」

「何を言っているんですか。俺達はすでに稀代の犯罪者ですよ」

 

 サムズアップを継続したまま、フリックは荷物の中からペンライト型のビデオ端末を取り出して、部屋を出て行った。

 

「……はぁ……ま、いっか。飲も飲も」

 

 とりあえず今見たことは忘れることにして、スメラギはビールをとるため、冷蔵庫に向かった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ねぇフェルト、これなんかどうかな。あ、こっちはどう?」

 

 クリスティナがフェルトに様々な服を当てていく。その様子を、フードをかぶったパーカーでフリックが遠くから眺める。通行人がフリックを振り返ったり指さしたりしながらひそひそ話をするが、勤めて無視する。ちなみにフリックの銀髪は非常に目立つので、フードをかぶっていないと余裕で正体がばれる。さらに怪しくなるとしても、フリックはこの格好を貫き通さなくてはならない。それに、重要なのは見てくれではなく、フェルトの買い物を録画したビデオの方だ。

 

 すでに周辺の監視カメラから、フェルトの映像をダウンロードする経路は作ってある。完璧だ。全世界のストーカーども。これがストーカーマイスターだ。

 

「クリス……もう……」

「あ、これもいいと思うなぁ、フェルトってば何着ても似合うもんね」

 

 全くもって同意見であった。ちなみに盗聴もきちんと行っている。どうだ、全宇宙のストーカーども。これがストーカーマイスターだ。

 

「君、ちょっと」

「なんです?」

 

 視線は動かさないまま、恐らく後ろから近付いてきているであろう警官に向かって言う。

 

「何してるのかな?」

「見ての通りストーキングですがなにか?」

 

 言葉に詰まる警察官。ここまで堂々としていれば、返答に困るのは確かだろう。むしろ、冗談だと思う可能性も高い。案の定、警察官はどう対処した物か困って、しどろもどろしていた。

 

 その間に、クリスティナと、ちょっとぐったりし始めたフェルトが店から出てくる。先ほどより下げている袋の数が二個多い。これで十個目か……袋の中にはそれぞれ同サイズの洋服などが入ると考えて一つに付き二枚、ならば今回で四枚追加の、さらにうちいくつかはアクセサリのはずなので……。

 

「と、とにかく、一度署の方まで……」

「お断りしようか」

 

 警察官を無視して、フリックはフェルトの尾行を再開するのであった。

 

 

 括目せよ、全時空のストーカーども。これが、模範的なストーカーマイスターの姿だ。




 今回の話を書いているところで、やっと00第一期のアニメを見始めました。そんなわけで今回はちょっとアニメのセリフに近い展開となりましたね。

 さてさてそんなことでさらに加速するフリック君の変態ぶり。ちなみに題名は00アニメ版の題名をもじっているモノなので、話の内容と一ミリも関係ありません。

*ちょっとしばらく更新ができません。ご了承ください。
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