大魔導師はおしまい!   作:starship

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ワールマン×メテオス流行らせコラ!! 腐女子たちの気持ちが分かるようになってきたかもしれません。


『旧友との再会』

 

──中央暦1623年7月17日 神聖ミリシアル帝国 地方都市『カン・ブリッド』──

 

 

「メテオスさん、おはようございます! 体調の方は大丈夫ですか?」

 

(んん? この人は……)

 

焦茶色のショートヘア、しかも癖毛。エメラルド色の瞳、長身痩躯のハーフエルフ。その特徴は私の脳裏に焼き付いているものだ。過去の記憶と完全に一致していた。

 

(ワールマン・カリウス! 本当に懐かしい、60年ぶりだねぇ。たしか、前世では魔帝対策省の空軍部門に勤めていたね。有能な同僚だったよ。専門外の分野で何度助けられたことか。彼との会話は心底楽しいと思えた)

 

しかし、彼にはひとつだけ欠点があった。あの短気な性格さえなければ、悠々と一生を終えられたはずだ。

 

空中戦艦『パル・キマイラ』の性能を過信しすぎるあまり、グラ・バルカス帝国の大艦隊に真正面から突撃していった。彼は回避機動も取らず、一直線に進んでいった。あの最後は今でも脳裏から離れない。

 

だが、目の前の彼はかつての彼とは別人だった。

 

(態度の違和感が凄まじい。前世では一度も見たことがない、随分と優しい様子だ)

 

日本人風に言うなら、ツンデレからデレデレになった、そんなところだろうか。彼の変化に私は心底困惑していた。

 

「本当に大丈夫ですか? 無理は禁物ですよ」

 

ワールマンは心配そうに私の顔をじっと見つめている。そのエメラルド色の瞳には、偽りのない優しさが満ちていた。

 

「うん、もう大丈夫だよ。今日はホームセンターに行くんだ。夏休みの課題、その工作物を作るために──」

 

「そういうことですか! 荷物持ちは任せてください! 大丈夫、お礼なんてまったく要りませんから!!」

 

(なんだこれ、ちょっと引いてしまうよ)

 

いくらなんでもテンションが高すぎる。

 

思わず引いてしまうほどの勢いだ。だが、その声には一切の悪意がなく、純粋な善意が感じられる。この好意に甘えてもいいだろうか。

 

「ワールマン君」

 

「はい、どうしました?」

 

私はゆっくりと彼に近づき、にこやかに微笑んだ。そして、彼の右肩に手を置き軽く叩く。感謝の気持ちを込めて、耳元でささやく。

 

「本当にありがとう。このあと、私の家に来ない?」

 

『!?』

 

ワールマンは一瞬にして硬直、タコのように顔を真っ赤にした。荒い息遣いに体調でも悪いのかと心配になる。

 

「め、メテオスさん!? 顔、顔が近いです! と、とにかく、ホームセンターに行きましょう!」

 

「うーん? ああそうだね」

 

彼の様子は前世とはまったく違う。この激しいギャップが新鮮で興味深い。

 

(ふふっ、そこが可愛らしいね)

 

なぜか、そう思えてしまう。この感情は前世の私ならばあり得ないものだ。これも、現世の記憶がこの身体に染みついているからであろうか。

 

 

ホームセンター店内は工作用の木材や金属部品が並び、独特の機械油の匂いが満ちていた。私は店内の奥に目的の品物を見つけると、思わず声を上げた。

 

「今のところ、目的の材料類は品切れしていないね。どんどん手に入れていこう。あそこの魔導エンジンも買うよ」

 

「別に良いですよ。ただ、お金の方は大丈夫なんですか? あれは結構高いはずじゃあ」

 

ワールマンは目を丸くして、驚きを隠せないようだった。当然の反応だろう。魔導エンジンの価格はとんでもなく、中学生の金銭事情では簡単に手が出せるものではない。

 

「今月のお小遣いを結構奮発してもらったんだ。その代わり、今後数ヶ月は金欠気味になるけどね」

 

私の両親は医療関係者で日常生活に困ることはない。個人的な消費を我慢すれば、どうにでもなるはず。そう説明すると、ワールマンはさらに心配そうな顔になった。

 

「それは大変ですね。お小遣いの半分でも良ければ──」

 

「ワールマン君、遠慮させてもらうよ。君のお金は自分のために使うんだ。さあ、買い物を続けよう」

 

彼の提案を遮り、私はにこやかに笑いかけた。

 

(現世の彼はあまりにも紳士すぎるね。前世の短気な彼とは大違いだ。このギャップは本当に凄まじい)

 

 

 

 

──カン・ブリッド 市街地郊外──

 

 

私たちは賑やかな市街地を抜け、1軒の古風な工場の前で止まった。建物は歴史を感じさせるレンガ造りで、窓からは機械の陰影が見える。

 

「よし、目的地には無事に到着……ワールマン君、ありがとう。本当に感謝しているよ」

 

メテオスさんはサッと私との距離を詰めてきた。彼女から漂う、ラベンダーのような穏やかな香りが鼻をくすぐる。

 

その姿はあまりにも美しかった。透き通るような白い肌、光を宿した青い瞳。この世の人間とは思えない、まるで等身大の人形を見ているかのようだ。

 

「何度でも言わせてもらうよ。今まで手伝ってくれて、ありがとうね」

 

メテオスさんは私の右肩をポンと叩いた。その小さな仕草が心臓を直接叩かれたかのように響く。

 

「実はこの工場を使わせてもらうんだ。設備が色々と充実しているから、作業を順調に進められるというわけ」

 

彼女は得意げに顔を上げ、まるで未来の英雄のように語り続けた。その自信満々な表情はとても可愛らしい。

 

(結婚したい……いや、落ち着け、私!?)

 

「メテオスさんはいったい何を作るつもりなんですか?」

 

「魔導電磁レーダーだよ。それのとても初歩的なもの、Aスコープを作るんだ。設計図は既にできているから、明日の朝には作業を始めるかな」

 

魔導電磁レーダー。耳慣れない言葉だ。レーダーというからには、何かを探知する機械なのだろうが、それ以上はまったくわからない。

 

「やっぱりメテオスさんはすごいですね。自分の知識が劣っていると実感させられますよ」

 

「それはないかな」

 

「えっ?」

 

メテオスさんは私の言葉を強く否定した。不思議に思っていると、彼女は急に表情を曇らせ、うつむいてしまう。

 

「ワールマン君、あなたの頭脳は本当に素晴らしいよ。それに比べたら、私は……」

 

いつもの明るく自信に満ちた彼女とは全然違う。その儚げな横顔は私が今まで見たことがないほど寂しそうだった。

 

 

ワールマンは自室のベッドに倒れ込み、枕に顔をうずめた。

 

「はぁ、メテオスさんの誘いに乗るべきだった! 私は何をやってるんだ!!」

 

意中の人の部屋に入れる。

 

しかも、温かい紅茶と甘いお菓子を楽しみながら、2人きりでゆっくりと話せる。そんな夢のような機会をなぜ断ってしまったのか。後悔が波のように押し寄せてくる。

 

「男として100%失格だ……私の馬鹿野郎!!」

 

机の上には開かれたままの教科書が置かれていた。そう、私『ワールマン・カリウス』は今まで勉強一筋で生きてきた。

 

そのせいで同年代の友人の話題にもついていけず、いつの間にか1人取り残されていた。

 

初めて恋心を知ったときには、すでに周囲との差は開いていたのだ。

 

(ただひたすらに悲しかった。生きることが辛くて、自ら命を絶つことを考えたこともあった……それでも、メテオスさんに出会って、すべてが変わったんだ)

 

彼女は初対面の時から違っていた。

 

温かく接してくれ、会話の話題を合わせてくれた。何より、その距離感が近くて、何度心臓をドキドキさせられたかわからない。

 

おそらく、メテオスさんは自分の美しさに気づいていない。それが彼女の魅力でもあり、心配なところでもある。

 

(彼女を守ってあげたい。いつか立派な花婿になって、彼女に幸福な日々を過ごさせてあげたい。そのためにも、私はもっと頑張らないと!)

 

ワールマンの胸に新たな決意が宿った。

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