一応原作をゼロ魔としてはいますが、ヒロインをティファニアしていますし、原作の流れを無視しているので、原作とは懸け離れた作品に成ると思います。
なので原作が好きな方はこの作品を読まないことをオススメします。いや、ホントマジで。
それでも構わん、好きにやれと言う方はこの作品にお付き合い下さい。
空に浮ぶ王国アルビオン。その王国に存在するウエストウッド村の外れ、深い森の中で二人の女性が今、使い魔召喚の儀を行っていた。
儀式を行っているのは輝くような金の髪に尖った耳が特徴の少女で、緑の髪に眼鏡をかけた女性は少し離れた所から少女の事を見守っている。
金髪の少女は杖を掲げ、反対の手に持った本に書かれている呪文を唱えるが、周囲には何の変化もなく、少女の前に使い魔が姿を現すことはなかった。
「……マチルダ姉さん、やっぱり私には無理だよ」
「諦めるんじゃないよ、テファ。テファは今まで魔法を勉強してこなかったんだ、簡単に出来ないのは当然さ。一度や二度の失敗でへこたれるんじゃない」
「姉さん、今ので十回目の失敗なんだけど……」
「うぐ……ッ」
テファと呼ばれた少女の的確な突っ込みに、マチルダと呼ばれた女性は何も言い返せなくなる。
現在のアルビオンの情勢を考え、マチルダはテファに使い魔を召喚するように持ちかけたのだが、朝から儀式を行っているにも拘らず、未だに使い魔を召喚する事が出来ないでいる。
「やっぱり私が使い魔を召喚するよりも、誰かに警備してもらった方がいいんじゃないかな?」
「馬鹿いうんじゃないよテファ。傭兵を雇うのだってタダじゃないんだ。契約期間がどのくらい掛かるかも分からない長期契約となるとかなりのお金が必要になる。身の安全の為とは言え、アタシの仕送りじゃ払い切れないし、アンタの事を素性なんかを考えると…ね」
「……そっか、ハーフとは言え私はエルフだもんね」
「そう言う事さ。……とりあえずもう一回やってみて駄目だったら、アタシが使い魔を召喚してテファを守らせるよ」
「うん、分かった」
姉に促されてテファはもう一度杖を掲げて呪文を唱え始める。
先ほどと同じ呪文が森の中で紡がれ、少女が呪文の詠唱を終えると彼女の目の前に鏡の様な物体が出現する。
壁に掛けられいるわけでもなく、空中に独りでに浮んでいる鏡を見て少女は喜ぼうとしたが、次の瞬間その笑みも恐怖で消え去ってしまう。
空中に現れた鏡のような物体だが、人を映し出すための鏡面部分が消えてなくなり、無数の目が張り付いた不気味な絵へと変わってしまう。
「ひッ!?」
「テファ、下がりな!」
突然の鏡の変化にテファは腰を抜かし、マチルダはテファを守る様に鏡の前に立つ。
あまりにも不気味なその絵にマチルダは自身の杖を向け、何が起こってもいいように身構えるが、鏡が二人に襲い掛かってくることは無かった。
それでも何が起こるのか分からないとマチルダが警戒を続けていると、鏡に映し出された絵に変化が訪れる。
無数の目玉が描かれた紫色の不気味な絵だったが、その絵の中を何者かが女性達がいる方へと向かって歩いてきていた。
変化した直後には人物など映し出されていなかったのに、今ではその人物の性別が分かる位にはっきりと映し出されている。
危機感を覚えたマチルダはテファを連れて鏡の様な物体から離れると、鏡の中を通り抜けて身丈ほどの長刀を携えた黒髪に青い目の少年が姿を現す。
不気味な絵から現れた少年に二人は目を丸くするが、少年は気にも留めず辺りを確かめるかのように周囲を見回し始める。
少女たちとも目が合うのだが、少年は特に興味が無いのか直ぐに目線を逸らし、周囲を見渡した所でつまらなさそうに溜息を吐く。
「はぁ~……。あのババァから異世界だと聞いていたが、これじゃ幻想郷と大して変わらないな」
退屈そうに少年はそう吐き捨てるが、少女達は彼の言語に拭いきれない違和感を覚えた。
少年は自分達とは明らかに違う言語で喋ったのに、彼の言葉をちゃんと理解出来ている自分たちがいる。
あんな言語、今まで聞いたことも習った事も無いはずなのに如何してか理解できてしまう。
その疑問に少年が答えてくれるはずも無く、彼は後ろを振り返り自分が出て来た鏡の状態を確認する。
鏡は消える事無くその場に浮んでいるが、男性を通した事でその役目を終えようとしているのか、消えかかっている。
鏡の縁が完全に消え去り、映し出されていた不気味な絵も開いていた隙間を閉じるように消え去った。
「……帰り道が無くなったか。今回の件が片付くまで帰ってくるなって意味か、単なる厄介払いか。ま、どちらにせよ俺は俺で勝手にやらせてもらうか」
そう言って少年は持って来た荷物を手に、そのまま森の中へと行こうとする。
その一方でマチルダはこの状況を如何すれば良いのか分からず混乱していた。
彼がテファの呼びかけに応えて現れた使い魔なら引き止めるべきだが、今回の召喚の儀は明らかにおかしかった。
使い魔がゲートを通ってくることは知られているが、その時にあの様な不気味が絵が映し出されるなど聞いた事がない上に、人間が使い魔として召喚されるなんて話も彼女は聞いた事が無かった。
過去に例を見ない事態に悩みぬいた末―――
「……ちょっと待ちな」
―――マチルダは彼を呼び止める事にした。
彼がテファが呼び出した使い魔だという確証は無い上に、まだ二人は主従の契約を交わしてすらいない。
ここは彼を見送り、テファにもう一度召喚の儀を行わせるという選択肢もあったが、彼女にもう一度使い魔を召喚させられる保証が無いのも事実。
大切な妹を見ず知らずの男と契約させるわけにはいかないが、なんとか交渉して格安で彼女を守ってもらおうと考えたのだ。多少は賭けになってしまうが、背に腹は変えられないのもまた事実。
そんな事など露も知らない少年は、マチルダに呼び止められて歩みを止め、少女達の方を振り向く。
「あ? 俺になんか用か」
「アンタ、今ゲートを通って来ただろ。てことは、アンタがテファの使い魔なのかい?」
「ゲート? 使い魔? いや、知らねぇな。俺はババァが作ったスキマを通ってきただけだ」
「そうかい。なら、アンタは一体何しにウエストウッドに来たんだ? 何処かへ行こうとしていたようだが」
「別にこの土地に用があって来た訳じゃない。スキマを通り抜けた先が此処だったってだけの話だ」
「それじゃアンタは一体何処へ行こうと―――」
「回りくどい奴だな。アンタが言いたいのはそんな事じゃないだろ。用件をさっさと言え」
「―――……そうだね、確かに回りくどいね。でも、最後にひとつだけ聞かせて欲しい」
「……一体なんだよ」
「アンタ、テファの事をみてもなんとも思わないのかい」
「ね、姉さんッ!?」
「テファって誰の事だ?」
「アタシの後ろに隠れている子の事さ。それで如何なんだい」
マチルダに問い質された男は、彼女の後ろに隠れているテファに目を向ける。
そして上から下までの全身を見回すが、少年はテファの事を見ても嫌悪の表情を浮かべる事は無かった。
「……うん、綺麗な金髪だな。金髪の知り合いは何人かいるが、その子ほど綺麗な金髪は初めて見た」
「あ、ありがとうございます」
「確かにテファの髪は自慢の髪だが、そうじゃなくて。他に気になったところは無いのか」
「他にねぇ……。とりあえず、もう少し厚着した方がいいと思うぞ。そんな薄着じゃ虫に刺されるだろ」
「ど、どうして分かったんですか!? 毎年虫に刺されて大変なんですよ」
「肌を露出してる部分が多いんだから刺されても仕方がねぇだろ。嫌なら厚着しろ、厚着」
「でも私に合うサイズの服が中々なくて……」
「だったら布を買って自分で作ればいいだけの話だろ」
「あ、なるほど」
「なるほど……じゃないッ!! 全く、ボケにボケを重ねるんじゃないよ! 話が進まないだろ!!」
「別にボケてねぇよ。俺のは本心だ」
「余計に性質が悪いわ! ……ったく、そうじゃなくてだね。アンタはテファの耳を見てもなんとも思わないのかって聞いてんだよ」
「別になんとも。ただ耳が尖がっているだけだろ? その程度の事に何を思えってんだ」
なんの臆面も無く言った少年の言葉に二人は思わず言葉を失ってしまう。
テファの尖った耳はこの世界においては人間ではない者の証。もし耳の事を他の者に知られれば大騒ぎになりかねないのだが、黒髪の少年は〝その程度の事〟と言い捨てた。
彼女たちの両親以外にそう言い切れる者に出会ったことがない二人にとって、彼の言葉は途轍もなく衝撃的な言葉だった。
「え、エルフの耳を見てなんとも思わないなんて、アンタ一体何処の出身なんだい?」
「……此処とは違う世界、幻想の郷かな」
「…? イマイチ要領を得ないがまぁいいか。それよりもアンタ、テファの耳が気になら無いなら一つ仕事を頼まれちゃくれないかい?」
「断る。なんか面倒臭そうだ」
「は、話も聞かずに断るんじゃないよ! てか、断るにしてももっとマシな理由で断れ!」
「面倒なものは面倒なんだから仕方がねぇだろ。そんじゃ俺はもう行くぜ」
「あ、ちょっとッ!?」
マチルダが止めるのも聞かず、黒髪の少年はそのまま何処かへと去ろうとする。
少年が言った言葉が何処まで本心なのか分からないが、少なくともエルフに対してなんとも思っていない事だけは分かる。
妹の事を安心して任せられる訳ではないものの、チンピラみたいな傭兵を雇うよりも幾分かマシなのも確かだ。
此処で逃すには惜しい人材と思い、マチルダがなんとか止めようとした矢先―――
「あ、あの、待ってください!」
―――テファは少年に駆け寄り、服の裾を掴んで引き止めていた。
普段は大人しいテファの行動にマチルダは驚くが、テファは驚きを隠せずに要る姉を他所に言葉を続ける。
「あの……その、えっと……」
「今度はアンタか。二人して一体なんなんだ?」
「えっと……わ、私と友達になってくれませんか?!」
「……は?」
思いがけず発せられたテファの言葉に二人はあきれ返ってしまう。
「て、テファ。いきなり何を言い出すんだい。幾らなんでも突拍子が無いにも程があるよ」
「だってマチルダ姉さん、私ずっと此処に隠れ住んでいたから同年代の友達っていないじゃない。私の耳が気にならないなら友達になって欲しいなって思って……その……」
「あ~分かった分かった。別に怒ってる訳じゃないんだから、そんな泣きそうな顔をするんじゃないよ」
涙ぐむテファをマチルダは慰めるが、彼女の言葉に呆れてしまっているのも事実だ。
幾ら自分の素性を気にしないからと言って、いきなりあんな事を言い出せば呆れてしまうのも無理はない。
テファが以前から同年代の友人を欲しがっている事をマチルダは知っているが、ついさっき彼女たちを対面した少年がそんな事を知るはずも無く、余りにも突拍子も無い言葉にあきれ返っている。
「……俺を引き止めてまで何を言い出すかと思えば、友達になってくださいなんて正気か?」
「うぅ……そこは本気かって聞いて欲しかったです」
「いや、だって、何処から来たのかも、素性も知れない男と友達になりたいとは思わないだろ、普通」
「確かにそうかもしれないけど、知らないことはこれから知っていけば良いと思いますから。だから、私と友達になってくれませんか?」
「………………」
笑い掛けながら差し出された手に少年は少し困った様な顔を浮かべる。
何かしらの目的があってこの世界に来たのだろうが、着いて間もなく友達になって欲しいと言われるとは思っても居なかったのだろう。
なんて返事をすれば良いのかも分からず、困った様な顔を浮かべたまま少しの間悩んでいた少年だが、考えが纏まったのか少年は重い口を開いた。
「……レミリアの奴に〝貴方の人生は転機を迎える〟とか言われたが、こう言う事なのか?」
「…? えっと、何の話ですか?」
「いや、こっちの話だから気にするな。それと友達の件だけどな」
「あ、はい」
「悪いが名前も知らない奴と友達になる気はねぇな」
「そう……ですか」
「だから、まずは自己紹介からだ。俺の名は零児。竜崎零児だ。アンタの名前は?」
「ぁ……わ、私はティファニアって言います! それであの人はマチルダ姉さん」
「……宜しく」
「ティファニアとマチルダか、悪くない名前だが……ティファニアに一つ言わせてもらっても良いか」
「えっと……なんですか?」
「そのですます口調は止めてくれ。そんな風に話し掛けられるのは落ち着かなくてな」
「はい…じゃなくて、うん、宜しくねレイジ」
「あぁ、こっちこそ宜しくなティファニア。……ついでにマチルダも」
「アタシはついでかい!!」
マチルダのツッコミが森に木霊する中、零児と名乗った少年は可笑しそうに笑う。
得体の知れない少年ではあるが、少年の笑った顔を見てマチルダは悪人ではないだろうと感じた。
名前以外の事は分からないままではあるが、それはコレから問い質せばいい。
そう考えながらマチルダは、妹分に念願の友達が出来た事を心の中で静かに祝福していた。
主人公の設定に付いては次回の後書きに載せますので、少し待っていてください。
あと、タグにある《モンハン要素あり》と言うのは、モンハンに出てくるモンスターや武器を出すってだけですので深く考えなくていいですよ。