雄叫びを挙げた黒い竜は四肢の爪で地面を抉りながら、桃髪の少女へと向かって猛進する。
少女と連れの少年はこう言う事態に慣れていないのか、黒い竜への恐怖心からか、その場から動けずに固まっている。
俺はそんな二人の前に出て、奴が向かって来るのに合わせて踏み込んで、太刀を振り上げて竜の頭を切り払う。
黒い竜の頭は予想より若干軟らかいが、それでも俺の太刀では奴の頭を両断する事は出来ない。
力を刀身に纏わせようともしたが、それよりも先に黒い竜が首を捻って俺を噛み砕こうと口を開く。
俺は咄嗟に後ろに飛びながら噛み付きを回避し、それと同時に太刀を振るい奴の頭に一太刀いれる。
そして即座に反転しながら踏み込んで、もう一太刀いれて竜を斬り付けるが、その程度で怯むほど優しい相手じゃない。
俺の一撃を受けながらも竜は前脚を振り上げ、躊躇う事無くその巨大な腕を振り下ろしてくる。
太刀で受け止める事はできないし、今から回避するには遅すぎる。
これは踏み込みすぎた俺のミス。この一撃は甘んじて受ける覚悟を決めたその時―――
「やらせないよッ!」
―――マチルダの声と共に、巨大な土の塊が飛び出してきて黒い竜を吹き飛ばす。
黒い竜を吹き飛ばした土の塊の正体は、マチルダを肩に乗せた巨大な土人形だった。
即席で作り上げたのか、アリスの洗礼された人形と違って、見た目はかなり無骨で表面は土がむき出しになっているが、竜を殴り飛ばせるだけの力は有るらしい。
しかし、吹き飛ばされた黒い竜は地面の上を数回跳ねるもの、気絶させるまでには至らず、自身の両前脚で地面をしっかりと掴み、数mは地面を抉りながらも難なく着地してみせた。
「■■■■■■ーーッ!!」
「チッ! 仕留められなかったか。……大丈夫かい、レイジ」
「悪い、助かった」
「礼なら後にしてくれ。今はアレを何とかしないと」
「あぁ、そうだな」
俺はすぐさま頭を切り返し、抑え込んでいる力を軽く解放して刀身に纏わせて刃とする。
ヒルダの時は鞘の様に纏わせて刃は付けていなかったが、今度はあの竜を殺すつもりで力を薄く鋭くして刀身に纏わせた。
これで太刀の斬れ味は多少良くなるだろうが、アレを仕留めきるにはまだ足りない。
もっと力を纏わせて刃をより鋭くしようかと考えていたとき、突如として黒い竜に変化が見えた。
突然自身の身体から蒼っぽい煙を噴出させ、姿を隠してしまう。
煙幕でも張って俺達の視界を塞ごうとしているのかと思ったが、煙は黒い竜を覆うだけで俺達の方にまで流れてくる事はなかった。
煙に紛れて桃髪を殺すのかと考えたが、この程度の煙じゃそんな事も出来やしない。
一体何のために煙を噴出したのか分からず、ただ相手の出方を窺っていると次第に煙が晴れていく。
漸く相手の姿を視認出来ると思いきや、煙の中から出て来たのは黒い竜とは別の個体だった。
「……なんなんだい、アレは」
マチルダが目の前にいるモノを理解できず、不思議そうに呟くのも無理はない。
煙の中から出て来たものはあの竜と同じ黒の甲殻を持っているが、体型はスリムでシャープなものになっていて、犬の様な顔つきも変わっていて、ネズミのようなスマートな顔つきになっている。
頭部からは後方へと伸びた二本の角が生えていて、翼に生えていた結晶も碧色へと変化している。
筋肉が縮小して体型が変わったなんて生易しいものじゃない。全く別の個体に為ったと言っても過言じゃないくらいの変化だ。
煙の中に居る間に一体何があったのかは分からないが、あの黒い生物は明らかに異常だ。
「体型変化……にしては変わりすぎだな。全く別の存在に変化したのか」
「あの煙が噴出している間に入れ替わったってのは考えられないかい?」
「そっちの方が現実的かもしれないが、そうなるとあの黒いのが複数体この辺りに居るって事に為るぞ」
「……流石にそれは勘弁してもらいたいね」
黒い生物に視線を向けながらも、マチルダと少しだけ愚痴っていたその時、黒い生物の姿が消える。
アイツが居た地面が少し陥没している所から察するに、恐らくはその場で跳躍をして移動したんだろう。
一瞬で姿を見失うほどの跳躍力。あのスマートな体型からは考えられないが、相手は体型を変化させられるんだ。尋常じゃない跳躍力を持っていても不思議じゃない。
あの跳躍力で空に退避させたティファニアを狙ったのかと思い、空を見上げて様子を見てみるが、上空を飛んでいるヒルダを襲っているような影は見えない。
なら別の所に移動したのかと全神経を集中させて、黒い生物の気配を探っていると、遥か後方から奴の視線を感じ取った。
「マチルダ、後ろだ!」
「なにッ!? ……なッ?!」」
マチルダが俺の声に反応して、土人形を後ろに振り向かせようとした時、奴は数mはあったであろう距離を一瞬にして詰め、黒い弾丸となってマチルダの土人形を貫く。
土人形の胴体は奴が貫いたであろう大きな穴ができ、マチルダの人形はそのまま崩れ落ちた。
「大丈夫か、マチルダ」
「あぁ、アタシは平気さ。でも、あの巨体を一撃で貫けるって一体どんな速度だよ」
貫かれたのは人形だけだからマチルダに怪我は無いが、今の速度は驚異的だ。
マチルダが作った人形はデカイ分一撃のパワーは凄いだろうが、相手の攻撃に即座に反応できなかった所を見るに、速度は大してないんだろう。
あんな速度で突進してくる相手に対応できるとは思えないし、ここは俺が何とか対処して奴の隙を作るしかないな。
そう思い太刀を握り締めて相手の動きを窺うが、黒い生物は俺達に追撃を仕掛けてくることはなく、土人形を破壊すると直ぐに次の標的を桃髪に定める。
「■■■■■……」
「ぁ……ぁ……」
「何してんだ、ルイズ! 早く逃げるぞ!」
危険を察したのか、黒髪の少年は呆然としている少女の手を引いて一目散にこの場から逃げようとする。
だが、今の黒い生物から逃れられるほど二人の足が速いわけではなく、あっという間に回り込まれてしまう。
「しま―――」
「■■■■■ーッ!!」
「……何処を向いてやがる。テメェの相手はコッチだろッ!」
俺は黒い生物と少年達の間に飛び込んで、黒い生物の顔を切り払う。
そして即座に追撃を仕掛けようとしたが、俺の剣速より奴の足の方が速いらしく、太刀を振り抜くよりも先に後ろに跳んで避けられてしまう。
俺の剣より相手の方が速い以上、追い掛け回して攻撃を当てに行こうとしても無駄だろう。相手の攻撃を回避した後の隙をついて切り込んでいく他ない。
そう判断した俺は、太刀を握り直して間合いを見計らいながら相手の出方を窺う。
「わ、悪い、助かったよ」
「礼を言ってる暇が有るならさっさと逃げろ。此処に居られても邪魔だ」
「じゃ、邪魔ってアンタ平民の癖にちょっと口が過ぎるんじゃない!?」
「落ち着けってルイズ! どう考えたって俺達じゃ足手纏いだ」
「でも、貴族が敵に背を向けて逃げるなんて真似できる訳ないじゃない!」
「だったら逃げなきゃいいんだろ。アンタ、俺達は援軍を呼んでくるからなんとか耐え凌いでてくれ」
「結構口が上手いんだな。……ま、なんだっていいからさっさと行け」
「悪い。直ぐに戻ってくる!」
「あ、ちょっとサイトッ!?」
黒髪の少年は桃髪の少女の手を引いて、大急ぎでこの場から去っていく。
俺は黒い生物に二人を追い掛けさせまいと、距離と取りながら黒い生物の前に立ちはだかる。
意識を集中させて相手を注視していると、黒い生物は俺との距離を軽く跳んだだけで詰めてしまう。
黒い生物の尋常ならざる脚力には驚かされるが、マチルダの人形を貫いた時点でアイツの脚力が異常なのは分かってた。
そのお陰で突然目の前にやって来ても動揺は小さく、奴が腕を振り回そうとしているのもしっかりと見える。
即座に後ろに跳んで下がるとほぼ同時に、さっきまで俺がいた位置に奴の腕に生えた翼が通り過ぎる。
相手の初撃を回避する事は出来たが、黒い生物の攻撃はそれだけでは終わらず、一歩踏み込んで反対の腕を振り回してきた。
その一撃も後ろに跳んで躱し、更に続けてきた三撃目もなんとか同じ様に回避する事が出来た。
三撃目を回避したところで反撃に出ようとしたが、黒い生物は反転して自身の尾をコッチに向けて振り下ろしてくる。
咄嗟の判断で振り下ろしてきた尾を回避し、即座に踏み込んで黒い生物に斬りかかる。
刀身に力を纏わせて斬れ味を上げてはいるが、これでもまだ足りないのか、相手に出来た傷は浅い。
この太刀が限界に近付いてきているのか、相手が硬すぎるのかは分からないが、このまま太刀で攻撃していてもジリ貧になるだけ。
もっと高い威力の攻撃を繰り出さないと、奴を倒すことなんかできそうにない。
一瞬、力を完全解放しようかとも思ったが、そんな事が出来るほどの隙もないか。
仕方がなく、刀身に纏わせた力を増やし太刀その物の威力を上げて再度斬りかかる。
太刀の威力が増したお陰でより深い傷を相手に与える事ができたが、それでも倒すにはまだまだ威力が足りない。
もう一度太刀に力を纏わせようかとしたが、相手が再び殴りかかってきたため、力を纏わせるのを中断して回避に専念する。
腕を振り回す三連撃を回避した後に、また尻尾を叩きつけてくるのかと思いきや、今度は叩きつけるのではなく尻尾を振り回してきた。
読みが外れ、相手の攻撃を回避し損ねた俺は、相手の攻撃をモロに受けてしまい、尻尾に薙ぎ飛ばされて学院を取り囲む塀に激突してしまった。
「ガッ!?」
背中を固い石に叩きつけられて内臓を傷付けられたのか、口から赤い血を吐き出してしまう。
尻尾で薙ぎ払われたときに脳が揺れたのか、視界が揺さぶられて酷く頭が痛む。
揺れる視界の中で黒い生物がゆっくりと俺に近付いてきているのが分かる。
なんとか起き上がろうとするが、視界が揺れているせいで上手く起き上がることが出来ない。
「レイジッ! ヒルダちゃん、お願い!」
「言われなくても!!」
上空から二人の声が聞こえてきたかと思ったら、空から炎の弾が黒い生物に降り注ぐ。
間近で炎の熱を感じながらも、なんとか目眩と頭痛から立ち直り、急いでその場から離れた。
「レイジ、大丈夫!?」
「背中がかなり痛むが、別に戦えないほどじゃない」
「無理して戦うくらいなら逃げようよ。そんな戦い方をしてたらレイジの身体が持たない」
「多少の無茶をしてでも戦わないと守れない者もあるんだよ。とにかく危ないからお前らは上空に退避してろ」
「………………」
「兄様、絶対に無茶な事だけはしないでね」
「無茶せずに勝てるならとっくに勝ってるだろうよ。早く行け」
俺の言葉にヒルダは渋々ながらも従い、ティファニアを背に乗せたまま空へと飛び上がる。
日もだいぶ傾き、夜の闇が広がろうとしている中、ヒルダの炎が煌々と燃え上がり周囲を照らす。
普通の生き物ならあの炎に焼かれて無事じゃ済まない筈だが、黒い生物は炎の中でまだ立っている。
肉が焼け焦げるような臭いがしないところから、どうやらアイツは炎に対する耐性が高いのだろう。
ヒルダからの援護はありがたいが、炎が余り聞かないとなるとヒルダの援護はあまり当てに出来ない。
マチルダの土人形の一撃なら効きそうではあるが、相手が素早い以上回避されるのがオチか。
彼女もそれを分かっているからか、二体目の土人形を出そうとはしていない。
「……マチルダ。アイツの足は俺が何とか止めるから、もう一撃叩き込めるか」
「レイジが本当にあの化け物を止めてくれるんなら、出来なくはないと思う」
「その返事で十分だ。……俺の身体がどうなっても必ず決めてくれよ」
「……レイジ?」
不思議そうな顔をするマチルダを無視し、再度刀身に力を纏わせて太刀の威力を更に強化する。
これ以上の強化は太刀自体が持ちそうにないため、コレが最後の強化に為る。
これで決めれなかったら最終手段を使うしかないが、最悪のケースばかり想定していても仕方がない。
やるべき事は既に決まっている。なら、後はソレを実行するだけだ。
俺は力を纏って青白く光る太刀を握り締め、燃え盛る炎へと向かって躊躇わずに駆け出した。
「何してんだい、レイジ!?」
マチルダの必至の叫び声が俺の耳にも届くが、それでも俺は止まらずに炎へと走る。
黒い生物が炎の中で動かずにいるのは、煙を噴出した時と同じように変身しているからだろう。
変身を終えたときにどんな体型になっているかは分からないが、さっき以上の速度で動かれたら俺じゃ対処しきれない。……だったら、離される前にこっちから間合いを詰めて先手を取るしかない。
相手がどんな姿であろうとも絶対に引かず、相手の足を止める事に全力を尽くす。
そう決めて炎へと近付いていったが、炎を振り払って出て来た奴の姿は予想通りまた変わっていた。
今度はさっきと違い前脚や胴体の隆々とさせていて、さっきまでのスマートな体型とは正反対ながっしりとした巨躯となっている。
顔立ちも顎の髭を伸ばした鬼の様な顔立ちをしていて、もはや何の生き物なのか分かりやしない。
だが、そのがっしりとした見た目通りにさっきに比べて動きは速くないらしく、俺に向かって振り下ろそうとしている腕は明らかに遅い。
俺は黒い鬼の通り過ぎるようにして避けるが、鬼が振り下ろした前脚は地面を容易く砕き割った。
地面を容易く割ったその豪腕を見て、故郷に居る本物の鬼たちを思い出してしまったが、今はそんな事を思い出している場合じゃない。
黒い鬼の背後に回った俺は、即座に太刀を振るって鬼の身体を斬り裂く。
体型ががっしりしている分、さっきよりも硬くなったような感じもするが、太刀の威力を上げたお陰で斬る分には何の問題もない。
一太刀いれたところで直ぐにその場から離れると、黒い鬼は前脚を振り回して俺の事を殴り飛ばそうとする。
直ぐに離れたお陰で拳の直撃は受けなかったが、巻き起こった強風に足を取られてしまいそうになる。
しかしサイフィスが気を利かせてくれたのか、巻き起こった風を他へと逸らしてくれたお陰で、風に飛ばされることはなかった。
風で足が止まったところに黒い鬼が前脚を振り下ろそうとするが、サイフィスのお陰で寸前のところでなんとか回避することが出来た。
そして直ぐに体勢を直して、太刀を振り上げて黒い鬼を斬り付けた。
相手の攻撃を一撃でも受ければ俺も只じゃ済まないのは分かっている。だから一撃も受けずに相手の攻撃を躱し続けるしかない。
相手の動きが鈍重なんだからとにかく回避を優先し、隙を見つけて斬り付けていくしかない。
一撃で受ければ死ぬかもしれないギリギリの状況の中、相手の一挙手一投足に全神経を集中させて攻撃を続けていく。
そんな攻防を続けていたら、気がつけば黒い鬼の背面は傷だらけになり血を流している。
大分上手く立ち回れている様だが、こっちの武器もそろそろ限界が近い。
何度も敵を斬り付けたから刃もボロボロで、何時壊れてもおかしくない位にガタがきている。
幾ら力を纏わせて威力と切れ味を上げようとも、武器その物の劣化までは防ぐことは出来ない。
ヒルダを静めるときも結構無茶をさせたから、太刀の耐久がもう限界にまで来てしまっているようだ。
良くて後数回しか持たないのは明白だが、武器を壊したくないからと後ろに下がる訳にもいかない。
出来れば最後まで持って欲しいと、意識が武器の方へと逸れてしまった瞬間―――
「■■■■■■ーッ!!!!!」
―――黒い鬼は俺に向かって耳を劈くような咆哮をあげた。
声のデカさも然ることながら、黒い鬼が挙げた咆哮はそのまま衝撃波となって俺に襲い掛かる。
鼓膜が破れるんじゃないかと言う声に耳を塞ぎたくなるが、襲い掛かってきた衝撃波に為す術もなく吹き飛ばされてしまう。
途轍もない鬼の咆哮に太刀も耐え切ることが出来ず、衝撃波を受けて太刀も折れてしまった。
吹き飛ばされながらも何とか体勢を立て直すが、黒い鬼は俺の直ぐ目の前にまで迫っていた。
地面を砕くほどの力を持った前脚が俺へと振り下ろされようとしている。
今から回避しても砕かれた地面に当たるのは目に見えている。だから俺は、避ける事はせずに折れた太刀の上半分を握り締め、力を纏わせて鬼の目に突き刺した。
「■■■■■ーッ!!!!!」
幾ら鬼の様な顔つきになっていても、目玉を貫かれるのは流石に痛い様だ。
黒い鬼は目から赤黒い血を噴出しながら、よろける様に後ろへと後退していく。
タイミング的にはここしかない。出来るかどうかは分からないが、ここで決めなきゃ終わる!
「ヒルダ、火炎弾!」
「え、でも……」
「良いから早くしろ!!」
「は、はい!」
黒い鬼へと向かって放たれた火炎弾を手が焼け焦げるのも厭わず鷲掴みにする。
《レイジ、一体何を……》
「サイフィス、風だ。左手に風の塊を作ってくれ」
《……それはどうなるか分かった上での発言よね》
「覚悟の上だ」
《……分かったわ》
左手に出来た風の塊を掴み、火炎弾と共に鬼へと向かって駆け出していく。
風の塊と炎の塊を押し付けるようにして無理やり組み合わせ、風の中で炎が渦巻く球体を作り上げた。
出来上がったばかりの球体を黒い鬼に押し当てた瞬間、球体が弾けて中で渦巻いていた炎が爆炎となって俺達に襲いかかった。
直接球体を押し当てた黒い鬼は爆炎に飲まれ、俺は腕を焼かれながらも衝撃で吹き飛ばされる程度で済んだ。
炎が奴に効いていないのは分かっているが、それでも炎に飲まれれば黒い鬼も動きを止める。
苦しくて身動きが取れないのか、それともまた変身するために動きを止めているのかは分からないが、なんにしても奴の動きは止めたぞ。だから―――
「―――後は任せたぞ、マチルダ」
「言われなくても分かってるよ!!」
俺と入れ替わりで前に出たマチルダの土人形は、燃え盛る炎に包まれた鬼の巨体を上空へと殴り飛ばし、空から落下してきた黒い鬼の巨躯に拳を押し当て、地面に叩き付けた。
土人形の拳が地面にめり込み、轟音と共に地面に大きなクレーターを作り上げる。
暫くの間、土人形は拳を地面にめり込ませていたが、ゆっくりと拳を地面から離した。
クレーターの真ん中では、変身が解けたのか黒い鬼が最初の黒い竜の姿へと戻っていた。
黒い竜はクレーターの真ん中で身動き一つせずに地面に倒れ伏せている。
本当に絶命したのかは分からないが、あの様子だと暫くの間は動き出したりはしないだろう。
今の内に鎖で拘束するなりして動きを封じておくべきだが、流石に疲れたからそう言うのはマチルダに任せて、少しだけ休ませて貰うか。
そう思いながら俺は腕の熱さと痛みを堪えながら、地面に寝転がって大きく息を吐き出した。
う~む……仕方のない事だけど、やっぱり戦闘回だとティファニアが空気に為るな。
ハルケギニアを舞台にしているんだし、使えるなら魔法をもっと使わせないと。……となると、やっぱりティファニアの魔法習得を早めるか。