最初から高性能の武器を出すのもアレだし、何にするか色々と悩んだ結果コレに為りました。
ティファニアの服も買い終わり、次は俺の武器を買うことになったんだが、何故かティファニアの方が俺よりも張り切っている。
俺が使う武器を買うんだから、別にティファニアが張り切る必要なんてないと思うが、武器屋に行くのは初めてだろうからテンションでも上がってるのか?
「あ、見つけた。此処が武器屋さん……だよね?」
「不安そうに俺に聞くな。……ま、窓から見る限りだと武器を並べてあるし、看板も出てるから多分武器屋だろ」
「よっし、それじゃ入ってみよ」
「……だからなんでそんなに張り切ってるんだよ」
ティファニアの妙なテンションに面食らいながら、俺達は武器屋へと入る事にした。
「いらっしゃい」
店には店主と思われるオッサンが奥のに座っているだけで、他に人の姿はなく閑散としている。
大通りから少し外れた場所にあるとは言え、そこまで奥まった場所に建っているわけでもないし、もう少し客がいても良さそうなものだが、コレじゃあまり期待は出来なさそうだな。
それでも見てみるだけ見てみようと、武器が陳列されている棚を見渡してみるが……俺の望む武器は見当たらない。
棚に並べられているのは装飾を凝らしてある
壁際に雑多に並べてある武器にも眼を向けるが、並べてあるのはブロードソードやファルシオン、それにバゼラードと言った物が殆ど。
棚に飾られている奴よりも武器らしい武器が置いてあるが、俺には短すぎる剣ばかりだ。
壁にバスタードソードが掛けられているから手に取ってみるが、この剣も余り状態のいいとは言えない。
沢山の武器を陳列しているから、一本一本に細かな手入れが行き届かないのも分かるが、もう少しちゃんと手入れくらいしといてくれよ。
「それでお二人さんはウチの店に一体何をお探しで?」
「えっと……彼の新しい剣を探しに」
「そりゃウチは武器屋だから剣なんて幾らでも有るが、お二人さんは金は持ってるのかい? 連れの人が持っているのだと、新金貨200枚はするよ」
「し、新金貨200枚ッ?! あの剣、そんなにするんですか!?」
「あぁ。でも、そんな大剣よりも棚に並べてある細剣の方が高いぞ。なんせ高名な錬金鍛冶師が作った物だからな。安くても新金貨500枚はするぜ」
「新金貨500枚……。れ、レイジ、どうしよう。幾らなんでもそんな高額な武器買えないよ」
ティファニアは店主から武器の値段を聞いて慌てふためいているが、俺は逆に呆れていた。
この程度の武器で金貨200枚も取る事もそうだが、棚に並べられている武器に金貨500枚も掛ける価値が有るとは思えない。
よほど切れ味が優秀なのか、それとも装飾を凝らしてあるから値段を釣り上げているのか。どちらにせよ確かめてみれば分かるだろう。
俺は手にしていたバスタードソードを壁に掛けなおし、近くの棚に陳列されてある細剣に手を伸ばす。
「おいおい、兄ちゃん。その剣を手に取るのは勝手だが、くれぐれも落すんじゃねぇぞ。その剣だって安くはねぇんだからな」
店主が俺に注意を呼びかけてくるが、そんな事は如何でもいいので無視する。
施されている装飾に葉目もくれず、鞘を抜いて刀身の状態を確認してみるが……思った通り余り良くはない。
一応切れ味を見るために刀身に指を押し当て、軽く擦ってみるが皮が少し切れる程度で血は出なず、先端の方も軽く触れて確かめてみるが、剣の先端が指に突き刺さると言う事もなく、全く痛みも無かった。
店主は高名な錬金鍛冶師が作ったと言っていたが、これを作った奴は本当に武器の事を知っていたのか疑問だ。まぁ〝錬金〟鍛冶師って言ってたし、本物の職人が作ったわけじゃないんだろう。
見た目の装飾にばかり凝って、武器としての性能を軽視した芸術品。そんな剣に金貨500枚はボッタクリどころか、詐欺に近いものを感じるな。
碌な武器がない事に溜息を吐きながら、細剣を鞘に納めて元あった場所に戻しておく。
「……別の店に行くぞ、ティファニア」
「え、あ、うん」
「なんだ? 見るだけ見て買いはしないのか。棚に並べられてるのは無理でも、樽に挿してある奴ならあんた等でも買えると思うぞ」
「状態の良くない剣に金貨200枚も取ろうとする店で買う物なんかねぇよ。それより店主、他の客も勘違いさせるから武器屋の看板をしまって芸術品屋として開店した方がいいぞ。そっちの方が儲かると思うぜ」
「んだと……。テメェ、冷やかしの上に店にケチまでつける気か!」
「ケチつけられたくなかったらもっとマシな武器を仕入れろよ。なまくらを置いてるくせに偉そうに」
「言いたい放題言いやがって。出てけ出てけ! 二度とうちの店に来るんじゃねぇ!」
「安心しろ、こんな店に二度も来る気はねぇから」
激怒する店主を他所に、俺はティファニアをつれて店を後にする。
王都の武器屋だからもう少しマシなものを期待していたが、これなら故郷の古道具屋の方がもっとマシな剣を取り扱ってるぞ。
他の武器屋もこんな感じだったら、当分の間は本当に素手で戦う事に為るだろうな。そうなるとティファニアが煩いんだが、なかったんだから仕方がないだろって事で押し通すか。
そんな事を考えながら店を後にし、逸れない様にティファニアの手を握りながら大通りを歩き出す。
大通りに並び立つ店に眼を向けながら武器屋を探すが、やっぱり大通りには見当たらない。
武器の需要があまりないから、大通りに店を構えても客が入らずに潰れてしまうのかもしれないが、さっきの店の様に少し奥まった場所に店を構えている可能性があるか。
そうなると大通りから外れて路地に入る必要が出てくるが、この町の土地勘が無いから下手に路地に入ると迷子に為るかもしれないな。
いっその事サイフィスの奴に武器屋を探してきてもらった方がいいかもしれないな。
「……良かったのレイジ? 武器を買わずに出てきちゃって」
「ん? 別に問題はねぇよ。取り扱ってる武器もレイピアみたいな細剣が大半だったからな。あの手の剣は俺の立ち回りには合わない」
「剣の形とレイジの立ち回りって関係あるの?」
「大有りだ。よっく思い出してみろ、ティファニア。今まで俺はどんな風に剣を扱っていた」
「えっと…………確か長い剣を振り下ろしたり、振り払ったりしてた」
「そうだ。俺が使ってた太刀っての剣の重さで叩き斬るものじゃなくて、押すか引くかして斬り裂くタイプの武器なんだよ。昔からそう言う剣ばかり使っていたから、立ち回りもそう言うのを意識してて、レイピアの様な刺突用の片手剣ってのは扱えないんだ」
「でもアレも一応剣なんだよね? 値段は凄く高かったけど、レイジなら使えるんじゃないの?」
「無理だな。レイピアってのは刀身が細すぎる所為で、普通に斬ったり、下手に突いたりすると簡単に折れたりして使い物にならなくなるんだよ。アレを使うなら今まで以上に刀身に負担が掛からない様に気をつける必要がある。それに剣の長さ自体も違うからな。普段通りに踏み込んでしまうと間合いを見誤って隙を作り、かえって危険だったりするんだよ」
あの店で売られていたレイピアは全長80~90cmと平均的な長さだったが、今まで使っていた大太刀は俺の身の丈と同じか、それ以上の長さの太刀だ。大体あのレイピアの倍の長さを誇っていた。
長さが倍も違うと為ると間合いも大きく変わってくるし、下手に武器の種類を変えない方が良いだろ。
「そっか。……それなら武器を買い換えるなら前と同じ位の長さの剣の方がいいんだね」
「そう言うこった。ま、あんななまくらを金貨500枚で売りつけようとしてる時点で、あの店に見切りをつけてたけどな」
「新金貨500枚は幾らなんでも高すぎだよね……。平民がお金を使わずに何年も貯めて漸く買えるかどうかだもの」
「アレは貴族や金持ちが買う様な芸術品の類の剣だからな。買う奴が元から限られてるんだよ」
「あ、それで店を出るときに店名を変えろって言ったんだね」
「まぁな。……それにしても全然武器屋が見当たらないな。しゃーないから奥の手を使うか。サイフィス」
《なにかしら。まぁ用件は何となく分かってはいるけど》
「分かってるなら早速頼む。普通の武器屋を探してきてくれ」
《仕方がないわね。少し待ってなさい》
サイフィスに武器屋を探してきてと頼むと、直ぐに見つけることが出来たのか、風が俺の腕を引っ張って何処かへと連れて行こうとする。
俺達はその風に逆らう事無く連れられるまま歩いていると、大通りの脇に延びている路地へと入る。
その路地を進んでいき、何度か曲がり角を曲がって奥へ奥へと進んで行くと、平民が暮らす住宅街に辿り着く。
その住宅街を抜けて道なりに進んで行くと一件の店が見えてくる。
大通りに並んでいた店に比べると外見は小汚いが、店の窓から見える武器はさっきの店よりもマシなものを取り扱っていそうだ。
でも、精霊が見つけた武器屋だからどの程度の物が有るのか若干不安ではあるが、ここまできて引き返すわけにも行かない。
余り過度な期待はしないようにしながら、店のドアを開けて店内へと足を踏み入れた。
「……らっしゃい」
この店の店主はさっきの店よりも愛想は悪いが、取り扱っている武器の種類はさっきの店よりも多い。
盾とセットで売られている片手剣や、それとは別に対となる剣と一緒に売られている物もある。
鉄の塊の様な印象を受ける大剣に、大きなハンマーに長槍……いや、アレはランスか。
さっきの店よりも色んな武器が置いてあって、見ている分には楽しめるんだが……流石に太刀の様な武器は取り扱っていないか。
「アンタ、彼女連れで武器屋に着たのか。こんな鉄臭いところに来ないで、もっと華やかな場所につれていきな」
「べ、別に私達付き合っているわけじゃ有りません! ただ一緒に旅をしているだけです!」
「この情勢が不安定な世の中で女と二人旅ねぇ。随分といいご身分じゃねぇか」
「店主が羨むほどの物でもねぇよ。それより売っている武器ってのは此処にある物で全部か」
「ああ。ウチは見ての通りちいせぇ店だからな。余分に仕入れて保管しておくことが出来ねぇのさ」
「そうか……」
太刀の様な武器がない事に落胆するが、さっきの店に比べればマシな武器たちを取り扱ってる。
生涯使い続けるような一品を買うのではなく、次の町までの繋ぎとしてなら何か買ってもよさそうだ。
幸いにもこの店で取り扱っている大剣はかなりのリーチがあるし、間合いの調整をしなくても扱う事が出来るだろう。
後は何を買うか決めるだけと為ったとき、出入り口付近に置いてある樽の中に物珍しい一品を見つけた。
青塗りの鞘に柄と鍔が少し濁ったような白の長剣。
その武器たちとは明らかに違う剣に興味を引かれた俺は、樽の中から長剣を引き抜き鞘から抜いてみた。
青塗りの鞘から出て来たのは太刀の様に反りのある片刃の長剣。長さで言えば以前使っていた剣と大差ないだろう。
刃はまさに鉄の色と言った感じに鈍く輝いていて、峰は柄や鍔と同じ材質の素材が使われている……と言うよりも、ある素材を鍛え上げて剣にした様な印象だな。
「……お前さん、本当に変わった奴だな。態々そんなもんを手に取るなんて」
「え、あの剣に何かあるんですか?」
「いや、剣自体に特殊な仕掛けはない。ただ、使われている素材が問題でな」
「使われている素材ですか」
「ああ。そいつは―――」
「骨、だろ。何の骨を使っているのかまでは分からないが、この剣を構成している大部分は骨だ」
この長剣に使われている素材、それは何かの生物の骨だった。
骨を一体どう加工すればこんな風に剣に出来るのかは謎だが、この剣に骨が使われている事は間違いない。
「よく分かったな、その通りだよ。そいつは飛竜の骨から作られたって言う眉唾物の一品だ」
「り、竜の骨……。な、なんでそんな物を売ってるんですか」
「前に他の武器と一緒に仕入れた。あまりに安い値段だったんで気にせず仕入れたが、ソイツを手にする客はみんな素材の事を知ると薄気味悪いってんで樽に戻すのさ。今じゃこの店の厄介ものだ」
店主もこの剣の事を気味が悪いと思っているのか、若干後悔しているような口ぶりだ。
まぁ普通なら骨を素材にした武器なんて気味が悪いもんだが、刃を見る限りだとそこまで悪い品には見えない。
切れ味を確認する為、刃に指を軽く押し当てて擦ってみると、指に小さな切り傷ができ赤い血が流れる。
切れ味自体は悪くはない……が、驚くほど優れているって訳でも無さそうだ。
さっきの店で売られていたレイピアみたいなナマクラじゃないし、次の武器を買うまでの繋ぎとしてならこの武器でも特に問題は無さそうだな。
黒い竜みたいにやたらと硬い相手だと辛いが、竜の力を纏わせて切れ味を上げれば戦えるだろ。
問題が有るとすれば耐久面か……。どの程度まで力を纏わせると壊れるか、その辺りの見極めが大切だな。まぁその辺りの見極めは旅をしながらすれば良いか。
「……店主。この剣、一体幾らだ」
「え、買うのレイジ!?」
「あぁ。切れ味も悪くはないし、長さも以前使っていた奴と同じくらいだからな」
「ホントに変な客だな。ま、オレとしてはその厄介物を手放せるのは嬉しいんだが」
「そんなに厄介物扱いするならさっさと手放せば良かっただろ」
「オレだってそうしたいのは山々だが、買い取ってくれる客が中々現れなくてな。仕入れた品をタダで捨てる気にもなれねぇしよ」
「あ、そう。……で、この剣の値段は?」
「そうだな…………仕入れ値に少し色をつけて、10エキューでどうだ」
「その値段、今決めただろ。この剣、今までまともな値段すら付いてなかったのかよ」
「今まで買い取ってくれる奴が現われなかったんだ。値段を付けられる訳ねぇだろ」
「色々とヒデェ話だな、おい。……ま、いいけどよ」
店主の話に若干呆れながら、俺は長剣を鞘に納め、店の奥のカウンターで支払いを済ませる。
マチルダから貰った袋から金貨を十枚取り出し、店主の前に差し出す。
「エキュー金貨か……確かに丁度頂いた。毎度あり」
「あぁ。それじゃ行くぞ、ティファニア」
「あ、うん」
新しく買った長剣を背中に背負い、荷物を持って俺達はこの武器屋を後にする。
マチルダから金を貰って買い物をしていたが、こうして終わってみると結構余った。
代用の剣思ったよりも安く買えたのが大きいな所だが、この余った金は一体何に使おう。
こうお金が余るとパーッと使ってしまいたくなるが、これからの旅を考えると無駄遣い出来ないよな。
でも、一人で待たせているヒルダの奴にお土産を買っていく位の余裕は有るはずだし、他に買うものがなければ肉屋にでも寄って行くか。
あとティファニアのハープも直したい所だが、ハープの修理ってどのくらい掛かるんだ? 流石に一日じゃ直らないよな。
何日もこの町に滞在する気はないし、ハープの修理は別に機会に持ち越すか?
「ねぇレイジ、本当にその剣で良かったの? 骨で出来てる剣なんてなんだか不気味じゃない?」
「いや、全然。その程度の事で不気味だなんだって言ってたら、幻想郷じゃ暮していけねぇよ」
「……レイジの故郷ってそんなに不気味な所なの?」
「そんな事はねぇよ。寧ろ自然が溢れかえっているような場所だな。ただ幻想郷の性質上、色々な怪現象が起こりやすいんだ。そう言うのを当たり前の様に受け入れてたから、骨を素材にしてる程度じゃ何とも思わないな」
あの世界には妖怪が鍛えた刀が実在している位だからな。竜の骨で出来ている剣なんかじゃ驚かないっての。
「レイジからしたら骨を素材にしている程度なんだ……」
「ま、確かに骨から作った剣なんて聞いたらあまり良い印象は懐かないか」
「うん。なんだかその剣の元となった竜にレイジが呪われそうで……」
「呪いって流石にそれはねぇよ。この剣に怨念の類は無いから安心しろって」
「へっ? レイジってそう言うのも分かっちゃうの?」
「ああ。実家が妖怪退治や異変解決なんかもやってるからな、自然と身に付いた。それに俺の体質上、そう言うのは効かないんだよ」
「それって怪我みたいに直ぐに治っちゃうってこと?」
「いや、元から受け付けないらしい。よほど強力な物じゃない限りは大丈夫だとか言ってたな」
「へ~やっぱり竜の血って凄いんだね」
「……ま、そうだな」
話を聞いたティファニアが竜の血に感心しているが、俺は適当な相槌を討つ事しか出来なかった。
確かに龍族は他の生物に比べて優れている部分が多いが、俺の場合は龍族の血を引いているからと言うよりも、あの親父の血を引いているからって気がして為らない。
とんでもない奴が暮す幻想郷の中でも一際とんでもないのが親父だからな。怪我が直ぐに治るのも、呪いとか受け付けないのもあの人の血を引いているからだろう。
ティファニアになら親父の事を話しても良さそうだが、言葉だけで説明できる気がしねぇな。
……ま、別に今話すような事でもないし、別の機会にでも話してやりゃ良いか。
そんな訳で、零児の新しい武器は骨刀【竜牙】にしました。
個人的に好きなガーディアンソードでも良いかなぁ~って思いましたが、どうせこの剣も長くは持たないだろうし、別の機会で良いかなって。
ちなみに、ハルケギニアの通貨単位と言うのは
以前ゲルマニアの商人が零児に提示した報酬500エキューと言うのは、下級貴族の年間の生活費とほぼ同額です……が、ロサイスの港からアルビオンの王都の往復と、確実に暴れるであろうヒルダを命がけで止めなきゃ為らない事を考えると、釣り合いが取れるかは微妙な線です。