更新がなかった間はずっとモンハン4Gをやってました。いや~……やっぱG級モンスターはつえぇわ。
ティファニアSide
「おいおい、あの兄ちゃんマジかよ……。一人であんな化け物に勝てる訳ねぇだろ」
「船から援護した方がいいんじゃねぇのか?」
「援護ったって……アレだけ動き回られたら銛も当たらないし、網にも掛からねぇよ」
大海原に浮ぶ船の上では、漁師さん達が海の中を見ながら慌てふためいている。
ずっと魚を獲って暮らしてきた漁師さんたちが慌てるのも仕方がないよね。だって、今レイジが海の中で大きな竜と戦っているんだもの。
船の上からでも分かる黒くて大きな竜に、レイジは剣一つで挑みかかっている。
深くて碧い海の中、直ぐにレイジの姿を見失ってしまいそうに為るけど、剣を光らせているお陰で彼の居場所をなんとか確認する事が出来る。
「……レイジ」
私は船の上からレイジの無事を祈りながら、何も出来ないでいる自分に歯がゆさを感じていた。
この日の為に魔法の呪文を覚えたのに、結局は何時もの様にレイジが戦っている所を見ている事しか出来ない。
本当なら直ぐにでも海に飛び込んでレイジの手助けがしたい。……でも、相手がいるのは海の中。水中じゃ呪文を唱える事なんてできないし、泳ぎの勉強なんてしていない私が海に飛び込んでも何も出来ない。
だから今はグッと堪えて、レイジの無事を信じるしか……信じることしか出来ない。
レイジは、もし無理そうならどんな手段を使ってもアイツを海から引きずり出すって言っていたけど、そんな事は如何だって良いの。
勝つとか負けるとか、そんな事に拘らなくていいから、ただレイジが無事でいてくれればそれでいい。それ以上の事は何も望まないから……。
ただレイジの無事を信じて祈り続けていたけど、海の中で竜が巻き起こした渦にレイジが飲み込まれてしまった。
「レイジッ!」
レイジが渦に飲み込まれてるのを見て、思わず声を挙げてしまう。
海にいる相手に船から声を掛けても届かないのは分かってる。それでも声を出さずに入られなかった。
渦の中から抜け出したレイジは、海面へと上がってこようとしているのが見えるけど、竜がレイジに尻尾を叩きつけてその邪魔をする。
尻尾に打ち付けられたレイジは水中に浮んだまま動かなくなってしまう。
「お、おい、不味いぞアレ。どうする、今から助けに行くか?」
「馬鹿な事を言うなよ! あんな怪物のいる海に飛び込めるわけないだろ!」
「……だから俺は最初から反対だって言ったんだ。こうなる事は分かっていただろ!」
動かなくなるレイジを見て、船にいる漁師さんたちにも動揺が走る。
今すぐ村へと引き返そうと言う人も居れば、レイジの仇を討とうと銛を手にする人もいて、皆がみんな勝手に動いて船が全然纏まらなくなる。……だけど、私にはそんな事如何だっていい。
海の中で浮ぶレイジの姿が信じられなくて、コレが現実なんだって受け止め切れなくて、頭の中が真っ白になって考えが全然纏まらない。
如何すれば良いのか分からないまま、私はレイジの元へと向かおうと船から身を乗り出した。
「おい、それ以上乗り出したら船から落ちちまうぞ!」
漁師さんが私を止めようとする声が聞こえる。でも、その声は凄く遠い所から聞こえてくるような感じがした。
私は止めようとする漁師さんの声を無視し、そのまま身を乗り出そうとすると、突然吹き抜けた風に押し飛ばされ船に戻されてしまう。
風は私にだけ吹いたのか、人を押し飛ばすだけの風が吹いたのに、船の上の物は吹き飛んでいない。
どう考えたって普通の風じゃないのが分かる。こんな事が出来るのはサイフィスさんしかいないけど、どうして……。
《落ち着きなさい、ティファニア。レイジはまだ死んでいないわ》
風に乗って聞こえてきた声に私は顔を上げ、急いで船の縁からもう一度海の中を見てみると、聞こえてきた声の言うようにレイジは起き上がって、まだ海竜に挑みかかっていた。
「おい、皆見てみろ! あの兄ちゃん、まだ生きてるぞ!」
「嘘だろ……。アレだけの攻撃を受けてまだ息が有るなんて……」
海の中で再び戦いを繰り広げるレイジに、漁師の人たちは信じられないモノを見たような声を挙げる。
信じられないモノを見たのは私も同じだけど、それ以上にレイジが生きていてくれた事が嬉しくて、思わず泣いてしまいそうになる。
《泣いている場合ではないわよ、ティファニア。そろそろ準備をして》
「……うんッ」
風に乗って聞こえる声に頷いて返事をし、姉さんから貰った杖を取り出して、何時でも唱えられるように準備をする。
サイフィスさんから教えてもらった魔法は〝爆発〟の魔法。虚無の魔法の初歩の初歩の初歩だって話だけど、この魔法ならレイジを巻き込む事無く狙った相手だけを攻撃することが出来るって教えてくれた。
どれほどの威力があるのかは教えてもらえなかったけど、この魔法を使って今度こそレイジを助けてみせる。
私は取り出した杖の先を黒い海竜へと向けると、竜が何かに押し上げられるかのように海面近くにまで迫ってきている。
海水は竜の巨体で押し上げられ、海面が盛り上がったかと思うと、沢山の水を押し退けて海竜が空中へと飛び出してきた。
飛び出してきた竜のお腹には白い髪のレイジの姿があって、どうやら蹴りで海竜を海から引きずり出したみたい。
相変わらずやる事は無茶苦茶だけど、海竜を海から引きずり出したってことは、私の事を信じてくれているんだよね?
そう信じて、私は杖の先を海竜に向けたまま、サイフィスさんが教えてくれた呪文を唱える。
「……エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ・オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル―――」
虚無の系統の魔法は他の系統魔法と比べて呪文の詠唱が長い。だからなのか、途中で詠唱を止めても魔法を発動させる事ができるって教えてくれた。
でも、この魔法の威力がどのくらいの物なのか分からないから、今回は呪文を全部唱えてみようと思う。
爆発させる対象を海竜にだけにして、レイジと船の人たちが魔法に巻き込まれない様に気を遣う。
「―――スヴュエル・カノ・オシェラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル」
教えてもらった呪文を全部唱えきると、海竜から白い光が弾けた。
弾けた光はどんどん広がっていき、その光の中にレイジも飲み込まれてしまうけど、魔法の対象から外してあるから大丈夫のはず。
若干不安になりながら光が収まるのを待っていると、光が収まった後の空中には無事な姿を見せてくれたレイジと、今にも死んでしまいそうに為っている海竜の姿があった。
今まで戦いに関わった事のない私でも瀕死なんだって分かるくらいに、海竜の身体は酷く傷付いている。
初めて使えた魔法だけど、たった一回に魔法であそこまで追い詰めてしまうほどの威力に、思わず恐怖してしまう。
サイフィスさんから対象を指定できるって聞いてたけど、もし指定せずに魔法を使っていたらレイジや船の人たちを巻き込んで殺してしまっていたかもしれない。そう思うと、怖くて堪らなくなる。
そんな事を考えていると急に目の前が真っ暗になり始めて、意識も遠くなっていく。
まだレイジの無事を確認していないのに、これ以上意識を保っていられそうにない。
立っていることも出来ずに倒れてしまいそうに為る中、最後に私が見たのはレイジが青白い光の剣で海竜を斬る瞬間だった……。
ティファニアSide out
零児Side
黒い海竜から謎の物体を剥ぎ取り、船員が降ろしてくれた縄梯子を上って船に戻ると、何故か人盛りが出来ていて、その中心でティファニアが倒れていた。
余りにも予想外の事に慌てて駆け寄るが、ティファニア自身にこれと言った外傷もなく、呼吸も凄く安定している。
どう言う事なのかは分からないが、どうやらティファニアは気を失っているだけのようだ。
船酔いしていたし、ソレが原因なのかとも思ったが、前にサイフィスが虚無の魔法は精神力を多大に消耗するって話していたのを思い出した。
恐らくだが、ティファニアが気絶してしまったのは魔法を使ったのが原因だろう。魔法を使う度に気絶するとなると、乱用させるのは止めた方がいいだろうな。
「えっと……兄ちゃん、彼女は一体どうしちまったんだ? 魔法を使ったと思ったら急に倒れちまって」
「その魔法を使ったからだ。こいつが使う魔法はかなり特殊らしいからな、使う度に精神力を一気に使っちまうんだよ」
「そうだったのか……。それじゃ兄ちゃんがあんな無茶をして海に飛び込んだのも、穣ちゃんに魔法を使わせない為だったのか」
「ま、そんなところだ。……ティファニアを船室に運ぶから退いてくれ」
「あぁ、わりぃ」
俺はティファニアを抱きかかえて、この船の船室へと向かう。
ずぶ濡れの状態で抱きかかえたから、ティファニアの服が濡れてしまうけど、ベットで寝かせる前に上着を脱がして干しておけば大丈夫だろう。
「あ、ところでよう……アイツはどうなったんだ?」
「きっちりトドメは刺したから大丈夫だ。海に死体が浮んでる筈だから確認してみろ」
心配そうに聞いてくる船員にそれだけ言って甲板を後にして、俺は船内に入っていく。
五月蝿くなりそうだからドアを閉めて船室に向かっていくと、甲板の方から男達の野太い歓声が聞こえてくる。
ティファニアが寝てるんだから、もう少し静かにしろよって思ったが、喜んでいる所に水を差すのも気が引けたから何も言わないで置く事にした。
………
……
…
小汚い船室のベットにティファニアを寝かしつけた俺は、服を脱ぎ捨てて持って来たタオルで身体を拭く。
服は海水を大量に含んでいて重く、雑巾の様に絞れば水が沢山搾り出せてしまう。
我ながら良くこんな服を着てアイツに戦いを挑んだものだ。海パンで戦った方がまだ動き易かっただろうが、そんな事をしたら本当に命を落としかねないか。
今回の相手は黒い飛竜並みの強敵だったし、ティファニアや謎の声の助けがなければ死んでいた。
助けてくれた事には感謝しているんだが、誰かの助けがなくても勝てるくらいの実力を身に付けたいもんだな。
《お疲れ様、レイジ。無事で何よりだわ》
「サイフィスか。正直なところ無事とは言い難いが、なんとか生きているよ」
《貴方が生きているなら、私とってそれは無事と言う事になるのよ》
「なんだそりゃ」
サイフィスの訳の分からない言い分に苦笑いが零れるが、今回の戦いは相当心配をしたんだとなんとなく察した。
水の精霊の助けを得られなかった事を気にしていたし、今回は嫌な予感がしていたんだろう。……ま、実際に死に掛けたから、その予感は当たっていたんだけどな。
《正直、今回はどうなる事かと思ったけど、あの子が力を貸してくれたみたいね》
「あの子? もしかして海の中で聞こえてきた謎の声の事か? やっぱりアイツが水の精霊なんだな」
《えぇ。多少取っ付き難い性格をしているけど、悪い子じゃないわ》
「……アイツ、古き同胞に恨まれたくないとか言っていたが、何を言ったんだ?」
《別に大した事は言っていないわよ》
「それ、本当か?」
《本当よ》
「……ま、それなら別にいいんだけどな」
イマイチ信用出来ないが、本人がそう言っている以上これ以上追究するのはやめておこう。
そう思い、話を打ち切って持って来ていた着替えをしていると―――
「う、う~ん……」
―――気を失っていたティファニアが目を覚まし始めた。
俺の声が大きすぎたのか、元々それほど長く気絶する様なものでもなかったのかは分からないが、ティファニアが完全に起きる前に着替えを済ませてしまおう。
そう考えた俺は傷の手当も碌にせず、持って来た着替えを手早く着込んで、ずぶ濡れの服の水を絞って干し始める。
「……あれ、ここは」
「よう、目が覚めたみたいだな」
「れいじ……。ここは?」
「船の中の一室だ。お前は虚無の魔法とやらを使った後、甲板で倒れてたんだ。……覚えてないのか」
「……そうだ、わたしまほうを使ってそれで…………そうだレイジ!」
「うおッ!? な、なんだよ急に大声出して」
急に大声を出して起き上がったかと思ったら、今度は何かを確かめるように俺の身体を触ってくる。
「レイジは怪我とかしてないよね? ちゃんと足はついてるよね? 化けて出て来たわけじゃないよね!?」
「……お前は俺を何だと思っているんだ。ちゃんと足も付いてるし、死んで化けて出て来たわけじゃねぇよ。まったく、どんな心配をしてるんだよ」
「本当に生きてるんだよね? 無事、なんだよね?」
「あぁ。サイフィスは訳の分からん心配の仕方だったが、お前はお前で心配しすぎだ」
「その口の悪さ、本当にレイジだ。無事でいてくれてほんとうによかった……」
俺が生きている事に安堵したのか、ティファニアは俺に抱きついて泣き始める。
こいつに言ってやりたい事はいろいろと出来たが、泣いているティファニアを見てそんな気も失せてしまった。
女の武器は涙だってどっかで聞いた様な気もするが、その言葉の意味が分かった様な、分からない様な不思議な感じだな。
泣かれたままじゃ碌に話も出来ないし、泣き止むまで頭を撫でて慰めてやるとするか。
「レイジが生きてる、ちゃんと生きててくれてる……」
「だから心配し過ぎだっての。……まぁ確かに今回はかなり危なかったが」
「そうだよ! 私、船の上から見てたんだからね! レイジが海竜の攻撃を受けて海に浮んでるところ!」
「あ~……そこを見られたのか。アレは酸素がなくなって息が持たなかったのが原因で―――」
「……それに私の魔法で巻き込んでしまったんじゃないかって、凄く不安だったんだから」
「―――……ティファニア?」
「サイフィスさんから爆発の魔法を教えてもらったけど、どれ位の威力なのかは教えてくれなかった。だから、あんなに強力な魔法だなんて知らなくて、もしレイジや他の人を巻き込んでしまったらと思うと怖くて……」
「確かに凄い威力の魔法だったな。でも、俺も船も船員達も無事だったんだから良いだろ」
「それは私が対象を海竜に絞っていたから。爆発の魔法は対象を選ぶことが出来るって」
「俺が無事だって分かっていたのに怖がってるのか?」
「分かっていても怖いものは怖いんだよ……」
自分が使った魔法の事を思い返しているのか、俺に抱きつくティファニアの身体は小さく震えている。
あの海竜を一撃で瀕死にまで追い込んでしまう程の魔法。俺はその威力に若干嫉妬してしまったが、ティファニアは逆に恐怖を覚えたんだろう。
ティファニアが言っている事は全部もしもの話だ。もしかしたらそうなっていたかも知れないっていう仮定の話。……でも、現実としてありえたかも知れない話だ。
もしサイフィスが対象を指定できる事を教えてなかったら、俺も巻き込まれて死んでいたかもしれない。
実際に俺も光の中に入ったわけだからな。絶対に無い……なんて事は言えそうにない。
その事をティファニアも感じ取ったから、自分の魔法を怖がっているんだろうが……これはこれで良い傾向かもしれないな。
「……ティファニアは自分の力が怖くなったのか?」
「うん。レイジを助ける為に力が欲しいって思ったけど、あんなに強力なのは望んでなかった」
「そうか。……なら、今回の事は良い経験になったんじゃないのか」
「そう……かな。ただ自分の魔法が怖くなっただけなのに」
「まぁ簡単に言えばその通りだが、自分の力がどれほど強大な物なのかを知る事は決して悪い事じゃない。俺は自分の力を理解出来ないまま闇雲に振り回す奴の方が怖い」
ティファニアにそう言いながら俺は昔起こった事件の事を思い出す。
姉貴が博麗の後継者に選ばれて浮かれていたあの日、俺達が親父から受け継いだ力がどんなモノなのか知ってしまったあの日の事を……。
「……レイジでも怖いって思うものがあるんだね」
「お前なぁ……今はそう言う話をしてるんじゃねぇ」
「ごめんなさい」
「ったく。……とにかくだ、今回の件でお前は自分の力を知る事が出来た。なら今度はその力をどう向き合っていけばいいのか考えればいい」
「そんな事で良いの?」
「そうするしかないだろ。その力を捨てられるなら話は別だが、捨てられないならその力を一生付き合っていくしかないんだ。見て見ぬフリができないなら、その力を如何するのか考えるしかないだろ」
「……うん、そうだね」
「ただ、一つ覚えていて欲しいのは〝力〟その物に善悪はない。善悪を決めるのはその〝力〟を振るう者の〝心〟だって事だ」
親父の受け売りではあるが、俺もその通りだと思ってる。
それがどんな力であろうとも、そこに存在するだけの物に善も悪もない。使い方と見方によって如何とでも変わるんだ。
「善悪を決めるのは力を振るう者の心……。私はこの力を善い事に使えるのかな」
「さぁな、そればっかりは俺にも分からん。それに自分は正しい行為だと思っていても、周りの者から見ても正しいと思ってくれるかは別問題だ」
「……難しいんだね」
「あぁ、難しい問題だ。でも、一生付き合って行く事に為るんだから、考えるしかないだろ」
「うん、そうだね。……ねぇレイジ、もし私が間違った事に力を使おうとしたら、レイジは如何する?」
「そん時は戦ってでもお前を止めるだけだ。言葉だけで止められるほど俺は口達者じゃないからな。……だから、俺が間違った道に進みそうになったらお前が俺を止めてくれ」
「……うん、分かった。でも、私はレイジとは戦いたくない」
「別に戦って止めてくれとは言わねぇよ。やり方はお前に任せるから隙にしてくれ」
「うん。……ねぇレイジ、一つだけお願いがあるんだけど」
「あ? 今度はなんだよ?」
「……もう少しだけこのままでいさせて。お願い」
気恥ずかしそうにしながらも、ティファニアは他愛のない事を頼んでくる。
こんな事の何が良いのか俺には良く分からんが、別に断る理由もないか。
「好きにしろよ。それでお前の心が落ち着くならな」
「ありがとう、レイジ」
そう言ってティファニアは安心した様子で更に密着するように抱きついてくる。
もうすっかり泣き止んでいるみたいだが、好きにしろって言っちまったし、もう少しこのままでいさせてやるか。
零児Side out
この後やって来た船員に二人が抱き合っている所を見られて、ティファニアが顔を赤くしながら慌てて離れる場面が想像出来た。