虚無のエルフと神殺しの竜   作:ベヘモス

24 / 35
モンハン4Gのプレイ時間が既に100時間を越えたが、未だにゴクマジオスが倒せない……。
アイツの体力調整間違ったんじゃないかって言いたくなる位にタフすぎだろ……。


第二十三話 魔法衛士隊

黒い海竜を討ち取り、喜びに沸いていた船内も落ち着きを取り戻し、船は村へと向けて航行していた。

俺達が討ち取った竜は如何するのか気に為っていたが、船員たちの話し合いの結果竜はロープに括り付けられ、村へと引き摺って帰ることに。

死体を持って帰るだなんて火車猫みたいだと思ってしまうが、竜の爪や牙は薬の材料になるし、鱗や皮も何らかの素材として高く売れるだろう。

あの海竜の所為で何隻もの船が沈められたらしいし、新しい船を購入するためにも利用出来るモノは利用したいんだろうな。

 

「これで海での騒動も一段落したわけだが、今回は外れだったな」

「外れって、あの竜はレイジが探していた相手じゃないって事?」

「あぁ。確かにアイツはかなりの力を持った竜だが、八雲の奴が危険視するほどの相手じゃない。第一アイツの力じゃ異世界にある俺の故郷に干渉するのは無理だ」

「そっか。それじゃまた情報を集めて探しに行かないとね」

「だな。……でも、その情報集めが一番大変なんだけどな」

「あ、あははは……」

 

降り出しに戻ってしまった事に溜息を零すと、隣にいるティファニアは愛想笑いを浮かべる。

爺さんから貰った情報は、黒い海竜の情報だけだから、他の手掛かりは何もないのが現状だ。

村の住人達が何か知っていれば話は早いんだが、こんな田舎の漁村に俺の欲しい情報が転がっているとは思えない。

大きな街に行って、ティファニアのハープを直すついでに、情報を集めるってのが一番か。

他に出来そうな事も特に思いつかないし、あとはどの町に行って情報を集めるかだな。

人口だけで言えば王都に行くのが良いんだろうが、この国の王都は交易の要所って訳でも無さそうだし、色んな情報が集るとはちょっと思えない。

もっと他の国との交易が盛んで、人の出入りが激しい町に行きたい所だが……この国の交易の要所って何処だ?

俺は異邦人でこの世界の地理に詳しくないし、ティファニアはアルビオン出身で、ヒルダは人間の町に興味はないだろうから、後でサイフィスと相談しながら決めるしかないか。

 

「そういえば、レイジの髪……」

「あ? 俺の髪がどうかしたのか?」

「竜と一緒に海から出て来たときは白かったのに、今は黒に戻ってるなって思って。……アレは私の見間違いだったのかな?」

「あ~……あの時か。それだったら見間違いじゃねぇよ、あの時の俺は間違いなく白髪だ」

「え、でも、今は黒髪だよね? 普通、髪の色は変化したりしないと思うけど」

「普通の奴ならな。でも俺は普通じゃない。……前に話しただろ、俺は人と竜の混血だって」

「うん、それは聞いた」

「だから俺が使っている力ってのは竜の力なんだ。まぁ普段は少ししか解放してないから外見の変化はないんだが、竜の力を解放していくにつれて肉体も人から竜へと変化するんだ」

「人から竜へと変わるって事は、レイジの力を完全に解放したら人じゃなく為っちゃうって事?」

「ま、そう言う事だ。力を完全解放すれば人から竜へと変わり、逆に力を完全に抑え込めば竜から人へと変わる。お前が見た白髪の俺ってのは、人としての姿を保てるギリギリまで力を解放した状態だ。そうじゃないとアイツを蹴り上げられなかった」

 

あの黒い海竜は見た目通りの重さだったからな。普段の状態の俺じゃどう頑張ってもアイツを海中から蹴り上げて空中に持って行くなんてことできっこない。

 

「へぇ~そうなんだ。それじゃあの時以上に力を解放したらどうなってたの?」

「アレ以上力を解放したら竜化を止められなくなるから、完全に竜の姿に為るしかない。中途半端な状態で止めようとすると、肉体への負担も大きいしな」

「そうなんだ。……もしかしてあの時って結構無茶してたの?」

「まぁな。あの状態で留めるよりも完全に竜化したほうが幾分か楽だったりするが、竜の姿じゃ水中にいる相手には分が悪いから、今回はあぁするしかなかったんだよ」

「むぅ……。レイジって本当に無茶な事するのが好きだよね」

「別に好きで無茶してるんじゃねぇっての」

 

今回も無茶な事をしたと知って、ティファニアは頬を膨らませて不機嫌そうな顔をする。

無茶をするのは今回が初めてでもないんだし、アイツはその位しないと倒せ無い様な奴だったって事で納得して欲しいんだが、無理なんだろうな……。

そんな事を思い小さく溜息を吐くと、船の進行方向……つまり村の方から緋色の龍が飛んで来るのが見えた。

 

「兄様」

「ヒルダか、どうかしたのか?」

「うん。村に変な連中が押し寄せてきて、ちょっとした騒動が起こってるから知らせに来たの」

「変な連中が押し寄せてきたって随分と曖昧だな。なにか特徴はないのか?」

「特徴って言われても……人間の軍隊としか分からないよ」

「軍隊って事は国が海竜を討伐するためにもう一度軍を派遣したのか。それでなんで騒動が起こるだ?」

「……もしかして私達が先に船を出しちゃったからじゃないかな? 向こうからしたら自分たちの仕事を取られたようなものだし」

「あ~……その可能性が有るか」

 

ティファニアの意見を聞いて、俺は一人納得をする。

空海軍を倒された王国軍からすれば、国の威信に掛けてアイツを討伐したい所だが、何処の馬の骨かも分からない旅人に先を越されたと為れば、黙っているのは難しいだろうな。

確か爺さんの話だと、王国は魔法衛士隊を派遣するかどうかを検討していたとか言っていた様な気がするし、今回はかなり本腰を入れて海竜討伐に来ていたんだろう。

 

「軍は動かないだろうと思っていたんだが、こりゃちょっと面倒な事に為っていそうだな」

「どうする兄様。わたしの背に乗って今すぐ逃げる?」

「いや、流石にそれは気が引ける。面倒だが、村に戻って様子を見てくるか。荷物を取ってくるからティファニアは此処にいてくれ」

「わ、分かった」

 

そう言ってティファニアを甲板に残し、俺は船室に置いてある荷物を取りにいく。

室内に忘れ物がないかをしっかりと確認してから二人の元へ戻ろうと思ったが、流石に何も言わずに船を去るわけにも行かないし、船長に事情を説明してから船を去る事にした。

事情を聞いた船長は驚きを顕わにするが、村の中で揉め事を起こさないようにと頼むだけで、引きとめるまではしなかった。

船長から下船の許可を貰った俺は、ティファニアたちの元へと戻り、ヒルダの背に乗って一足先に漁村へと戻る。

翼をはためかせて空へと舞い上がったヒルダは、船を追い越しそのまま真っ直ぐ村へと飛んでいく。

船では数時間かかる道のりだが、ヒルダの翼なら数十分くらいで辿り着く。

ヒルダの背中から村の様子を見てみると、確かに軍隊らしき連中が村に押し掛けて来ていて、村長はその対応に苦慮しているようだった。

俺はヒルダに村の桟橋に降りるように指示を出すと、向こうも俺達の存在に気が付いたのか、顔を上げてこちらを見てくる。

 

「おぉ、アンタ達、戻ってきたのか」

「あぁ。ヒルダが迎えにきてくれたからな。……それでそちらさんは?」

「この方々は―――」

「我等はトリステイン王国魔法衛士隊の一つ、グリフォン隊だ。私はその隊長を務めるジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。君達が村人が話していた命知らずの旅人か」

 

羽帽子を被り口髭を生やしたオッサンが、村長の言葉を遮って自分の名を名乗る。

名乗られたら名乗り返すのが礼儀ではあるが、態度からして向こうはこっちの名前を覚える気はなさそうだし、別に名乗らなくても良いだろう。……それにしてもなげぇ名前だな。覚えられそうにねぇし、髭のオッサンでいいか。

 

「命知らずの旅人か……。否定はしたいが、周りからそう見られてもおかしくはないか」

「貴様……なんだその態度は! それが平民のとる態度か!」

 

俺の言葉遣いで激昂する部下を、髭のオッサンは手を出して部下を制止させる。

部下は不満そうにオッサンの事を見るが、髭のオッサンが睨みつけると部下は渋々ながら後ろへと下がった。

 

「いや、部下がすまない。しかし、彼の言う通り君の態度は貴族にするモノじゃない」

「それは悪かったな。でも、俺の生まれ故郷には貴族なんて連中はいなかったし、寛容な奴ばかりだったからな。この程度の事で一々怒るような奴はいない」

「成る程。つまり君の育った環境が悪いとそう言いたいのだな。だが、どのような環境で育ったにせよ、目上の者に対する礼儀くらいは身に付くだろう」

「ちゃんと敬える相手なら言葉遣いを直すんでご心配なく」

 

遠まわしにあんた等を敬う気はないと宣言すると、後ろに控えている部下達は一同に俺を睨みつけ、腰に差していた棒切れを抜こうとする。

髭のオッサンは部下達を睨みつけて制止させるが、遠まわしに侮辱されたから顔つきは険しくなる。

 

「中々言ってくれるじゃないか平民君。だが、竜を倒すと村人達に豪語しておきながら逃げ帰ってきたのに、随分と強気な発言をするじゃないか」

「あ? なに言ってんだアンタ?」

「別に隠す事はない。君達の様な旅人に竜を討伐できる筈がないんだ、討伐に失敗しても恥では―――」

「あの海竜ならもう倒したぞ」

「……なに?」

「だから、あの海竜ならもう俺達が倒した。今そう言ったんだよ」

「ハッ! 冗談も休み休み言いたまえ。君達の様な旅人が空海軍を打ち破った竜を倒しただと? そんな話信じられるものか」

「それならコイツを見れば信じられるのか」

 

頑なに俺の言葉を信じようとしないオッサンに、海竜から剥ぎ取った常に帯電している珠を見せ付けた。

海竜の身体から切り離されても電気を生み出し続ける珠に、オッサンは訝しむ様な眼差しを俺に向ける。

 

「……なんだねコレは」

「討伐した黒い海竜の体内から剥ぎ取った物だ。恐らくアイツの無尽蔵の電気を生み出す為の核だろう」

「無尽蔵の電気を生み出す為の核だと? もしそれが本当なら、君達は本当に……」

「まだ信じられないのなら、船まで飛んで確かめて来いよ。船尾の方にでっかい竜の死体があるから」

「……ワイマール」

「ハッ!」

「急ぎグリフォンで飛んでいき、事の真相を確かめて来い」

「ハッ! 了解いたしました!」

 

髭のオッサンは後ろで控えていた部下に指示を出すと、部下は大急ぎで広場から離れていった。

そして黒い影が俺達の頭上を遮ると、グリフォンに乗った魔法使いが船へと向かって大急ぎで飛んでいく。

その速度は大したもので、ヒルダと同じかそれ以上の速度は出していそうだ。

この場合だと、龍と同じ速度で飛べるグリフォンに驚くべきなのか、グリフォンと同じ速度しか出せないヒルダを哀れむべきか分からんな。

 

「レイジ、ワシも一つ聞きたいのだが……お前さんと一緒に出た者達は全員無事なのか?」

「あぁ。全員怪我一つなくピンピンしてるよ。ま、船の方は船底が多少傷付いたかもしれないがな」

 

俺達を一緒に出た者達が生きていると知って、村の中でちょっとした歓声が上がる。

この場に魔法衛士隊が来ていなければもっと上がっていただろうが、軍隊が来ているから村人達の喜び方は控えめなものだった。

そうこうしている内にグリフォンで飛んでいった魔法使いが帰って来て、周りに聞こえないように髭のオッサンに耳打ちで伝える。

部下からの報告を聞いた髭のオッサンは一瞬だけ驚きを顕わにするが、直ぐに冷静さを取り戻した。

 

「馬鹿な、まさか本当に海竜を倒したというのか。只の剣士が役に立つとは思えないし、普通のメイジに倒せるような相手ではないとの報告だった。……まさか、あの少女も彼女と同じ力を?」

「隊長? 如何なされましたか?」

「い、いや、なんでもない。……どうやら君の話は本当だった様だな、平民君。我等の仕事を代わりに片付けてくれるとは大したものだ」

「なぁに別に大したことじゃねぇよ。それよりも悪かったな、無駄足を踏ませちまって」

「全く持ってその通りだ。王の命令でこの地にやってきたが、先に倒されていたでは報告できん。だから如何だろう? 君の手柄を我等に譲る気はないか?」

「あ? いきなり何を言い出すんだアンタ」

「なに、只の取引だよ。君のその態度は目に余るのでな、不敬罪として捕らえる事もできるが今回は目を瞑ろう。その代わり、君達が倒した竜を我等に譲る。ただそれだけの取引だ」

 

髭のオッサンは自分達に手柄を渡すよう要求してくるが、俺からしたら竜殺しの称号なんてどうだっていい。

最初から今回の話を各地で言いふらす気なんて無かったし、その程度の事なら別に呑んでやっても良いんだが……空しい栄誉だな。

 

「別にその程度の事なら構わないが、一つ条件がある」

「条件だと?」

「あぁ。この村の住人の生活支援だ。あの海竜に船を何隻か沈められたそうだからな。新しい船の手配を頼みたい」

「レイジ、お主……」

「ふむ……そう言う事ならば良いだろう。これで取引成立だ」

「はいはいっと」

 

他人が立てた手柄で王都に凱旋するなんて空しいな。思わずそう言ってしまいそうに為ったが、口には出さずに飲み込んだ。

口に出して喧嘩を売るのは簡単だが、あの船の船長に村で揉め事を起こさないでくれと頼まれているからな。今回は大人しくしておこう。

髭のオッサンが偉そうにしているのが少々癪だが、魔法衛士隊とかの隊長らしいし、このくらいの事は目を瞑ってやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

髭のオッサンとの話が纏まり、船も戻ってきて祝勝ムードになるかと思いきや、魔法衛士隊の面々が船員達に海竜の死体の引渡しを要求して来た事で、そんな事には為らなかった。

船員達は最初の方は引渡しに難色を示していたが、新しい船の手配などを説明すると渋々ながら折れてくれた。

死体の引渡しが終わり次第帰ってくれればよかったんだが、そのまま村に滞在するとか言い出して、衛士対の連中が去ることはなかった。

竜の死体を受け取って直ぐに去ると思ってたんだが、余り早く戻りすぎても変に怪しまれるとかで、二日三日はこの村に滞在するつもりのようだ。

村の住人からすればいい迷惑でしかないが、貴族に逆らえば何をするか分からないと言う事で、大人しく言う事を聞くらしい。

まぁ村の住人ではない俺達は早々にこの村を去る事を決めたが、去り際に村長が「何もお返し出来ずに申し訳ない」と謝ってきた。

別に村人からのお礼が欲しくてやった訳じゃないし、今回は巡り合わせが悪かった。ただそれだけの事だから村長が気にする様な事じゃない。

そう言って俺達は村を後にし、情報を集めるために大きな街にでも向かおう……と思ったが、先に済ませて起きたい事があるの思い出し、寄り道として村から離れた海岸に降り立った。

 

「ねぇレイジ、此処で一体何をするの? 特に何も無さそうな海岸だけど……」

「ちょっとお礼を言いたい奴がいるんだ。村の中でも言えない訳じゃないが、衛士隊の連中に目撃されたくないから、ちょっと場所を移した」

「こんな所でお礼?」

 

ティファニアが不思議そうに首を傾げていると、海の中から蒼い光の珠が出現した。

蒼い光の珠にどんどん海水が集っていき、やがて妖艶な美女の姿と為って俺達の前に立つ。

突然海から美女が現れた事にティファニアは目を丸くして驚くが、当の本人は特に気にしたような様子はなかった。

 

《……私を呼び出すとは、一体何の様だ混血》

 

俺達の前に現われたのは水の精霊。昨日、俺が溺れていた所を助けてくれた奴だ。

 

「昨日助けてくれた礼がまだだったから、それを言いに来た。……ありがとう、アンタのお陰で助かった」

《なんだそんな事か。あの時も言ったが古き同胞に恨まれたく無いから助けただけだ》

「ま、それでも助けられたのは事実だからな。海を離れる前に礼だけは言っておきたかった」

《……変な奴だ。我ら精霊に物怖じするどころか、他の者達と同じ様に接してくる。お前たちからすれば我ら精霊は得体の知れない者のはずだろ》

「確かにそうかもしれないが、俺の故郷には得体の知れない輩が沢山いるんだ。あんた等に出会ったくらいで驚いたりしねぇよ」

《成る程、育った環境がお前をそうさせるのか。特殊な環境で育ったからこそ、お前は我等の言葉に耳を貸すのだな》

「あんた等の言葉が聞こえてくるんだ。それなら耳を貸すのは当然だろ」

《……この世界には我等の言葉が聞こえていても、耳を貸さぬ者たちがいるのだ》

 

憂いているとも、嘆いているともとれる表情で水の精霊はそう呟いた。

その言葉の意味は俺には分からないが、精霊を嘆かせるほどの何かが有ると言う事だけは分かった。

 

《……水の精霊、私は彼等にあの事を話そうと思う》

《正気か風の。そんな得体の知れない輩を本気で信じようというのか》

《えぇ。……でも、私の独断だけで話せば火と土の精霊が怒るわ》

《当然だな》

《だから貴女にも力を貸して欲しいの。この子達は信頼にたる存在だと彼等に伝えるために》

《何度も言っているが、私はそいつ等を信用していないのだがな……。……おい、確かレイジと言ったな》

「ん? あぁそうだが……」

《貴様が真に我等の味方かどうか試させてもらう》

 

水の精霊が俺に言って来たことは余りにも唐突なものだった。

サイフィスと何かに付いて話しているのは分かるんだが、何について話しているのかさっぱりだし、どうして俺が精霊の味方かどうかを試されなくちゃ為らないのかが分からん。

 

「随分と唐突だな。こっちはお前らが何の話をしているのかさっぱりだってのに」

《お前が私の試練を乗り越えたのなら話してやる。……恐らくお前が知りたがっている情報だ》

「俺が知りたがっている情報だと……」

《あぁ。お前が私の試練を乗り越えることが出来たら風の精霊から聞けばいい》

「……分かった。それで試練の内容ってのは?」

《人間達がラグドリアン湖と呼ぶ湖に私の同胞が住んでいる。その者を助けろ、ただそれだけの事だ》

「随分とアバウトな内容だな。何が起こってるのか位話してくれても良いだろ」

《詳しい事は湖にいる精霊に聞け。……私の話はそれだけだ、ではサラバだ》

 

言いたい事だけいうと、水の精霊は姿を消し、肉体を形作っていた水は海へと戻った。

残された俺達は如何したものかと首を捻るしかないが、今は情報が何もない状態だし、水の精霊の試練とやらを受けてみるのも悪くはないか。

そう思い直し、凝り固まった体を解そうと背筋を伸ばしていると、サイフィスが申し訳無さそうな顔をしながら俺達の前に姿を現した。

 

《……ごめんなさい、レイジ。私、貴方の捜している相手に心当たりがあったけど言えなかった。ずっと言おうとは思ったのだけど、アレについて軽々しく口にする訳にはいかなかったから》

「あ? 別に気にしてねぇよ。言えなかったのはそれなりの訳があるんだろ? 元々何らかの目的があって同行してるのは分かってたし、隠し事の一つや二つあっても驚きはしねぇよ」

《何も話さなかった私を貴方は責めないの?》

「責めたって仕方がねぇだろ。人に言いたくない事や言えない事ってのは誰にでもあるもんだ。ただそれが精霊にも有った。ただそれだけの事じゃねぇか」

 

そう言ってやるとサイフィスはホッとしたような表情をする。

 

《レイジ……。ありがとう》

「こんな事で一々礼なんか言うんじゃねぇよ。……さってお前ら、次の目的地が決まったぞ」

「水の精霊さんが言っていたラグドリアン湖って所に行くんだね」

「あぁ。何が遭ったのかは知らないが、俺の仕事を果す為にも水の精霊の試練を受けるのが一番みたいだからな。湖に行って精霊を助けに行くぞ」

《ヒルダの翼だと此処から湖までは数日は掛かるわ》

「なぁに、歩いて行くよりはずっと早いさ。……てな訳でヒルダ、道中は頼むぞ」

「任せて兄様!」

「よっし、そんじゃ出発するか!」

「「おーッ!」」

 

ティファニアとヒルダの掛け声を合図に、俺達はヒルダの背に乗って海岸を後にする。

海に現れた怪物は外れだったが、思わぬところから情報を得ることが出来そうだ。

だが、その情報を得るためにはラグドリアン湖にいる精霊を助けなければ為らない。なんとも面倒臭い話ではあるが、それが一番の近道だって言うんなら助けてやるしかないか。

簡単に終わる仕事だったら良いんだが、精霊を助けろって事だからきっと面倒事だろう。

正直面倒臭いって気持ちはあるが、ウダウダ言っていても仕方がないし、まずは話を聞いてみるか。




そんなこんなで次回はラグドリアン湖へと向かいます。付く前に何か小ネタでも挟もうかと思ったけど、別になくても良いか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。