虚無のエルフと神殺しの竜   作:ベヘモス

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よし、今回は一ヶ月も待たせるなんてことは無く更新出来たぞ。
でもサブタイはかなりテキトーである。


第三十四話 食事会

日もすっかり沈み、星が空に輝きだした頃。俺達は城で夕食を取る事にした。

城での夕食といっても、豪華な会食に参加する……と言う訳でもなく、城で働く給仕などが食べるまかない飯を頂くつもりだ。

昔から堅苦しい食事って言うのは苦手だし、ティファニアもそれで構わないと言ってくれている。

ティファニアが会食に参加したいと言うなら、サイフィスをつけて行かせるつもりだったが、どうやら杞憂だったみたいだ。

後は厨房に行って頼み込むだけだが、どう言う訳かティファニアと一緒に居た赤髪と青髪の少女達も一緒に食べると言って来た。

ティファニアと違ってこの二人は貴族の娘だ。貴族って生き物は平民の食事ってのは受け付けないと思っていたんだが、実際には違うのか。……それともこの二人が変わっているのか、判断がつかないな。

見知らぬ二人だし、一応警戒だけはしておくが、ティファニアは大丈夫だといっているし、サイフィスも特に問題はないとの認識を示してる。今のところは過度に警戒する必要はないだろう。

 

何を考えているのか良く分からんメイジ二人を連れて、俺達は城の厨房に顔を出すと、メイジが二人も来たと言う事で厨房内ではちょっとした騒動になってしまった。

メイジが来たくらいで騒ぎすぎだろと思ってしまうが、この世界ではメイジ=貴族ってのが常識だ。

中には爵位を剥奪されたメイジもいるだろうが、大半のメイジは貴族だからな。貴族の娘が厨房に顔を出したら、自分たちが何か粗相をしたのではと思ってしまうのも仕方がないか。

俺は内心呆れながらも、五人の代表とし騒がせてしまった事を陳謝した上で、厨房に来た目的を料理長に説明した。

貴族の娘が夕食を自分達と同じまかない飯で良いと言う話に、最初は料理長も怪訝そうな顔をするが、なんとか説得して四人分の食事を用意してもらえる事に。

ついでに持って来た猪の肉を焼いてもらうように頼んでいると、便乗して青髪の少女がはしばみ草とか言う草のサラダを注文していた。

その注文に料理長は大層驚いた顔をしていたが、はしばみ草って一体なんだ?

少女曰く、独特の苦味があるけれど慣れるとやみつきになれるサラダとの事だが、赤髪の少女は呆れた様子で「……まぁ嘘は言っていないわね」と呟いた。

料理長と赤髪の様子から見て、恐らくはしばみ草と言うのは好んで食べられてはいない食材なんだろう。

それを注文するって事は、青髪は意外と悪食なのかもしれないな。

そんな如何でもいい事を考えつつ、城の給仕に案内された部屋で食事が来るのを待つことになった。

部屋は会食で使うような立派なモノではないが、小奇麗にしていて装飾にも拘っているのが見て取れる。

赤髪と青髪がいるから、自分達が普段使っているような部屋に案内するわけにも行かないからな。貴族を招けるような部屋に案内したんだろう。

……なんだか向こうに気を遣わせた感じだが、貴族と一緒に行動する以上はこういうのは仕方が無いのかもしれないな。

 

「……やれやれ、面倒だな」

「ん? どうかしたの、レイジ?」

「いや、貴族の方々と一緒に食事を取るのが面倒だなと感じてな。あと、テーブルマナーがちゃんとできるかどうか不安に為っただけだ」

「大丈夫だよレイジ。テーブルマナーなら私も出来ないから」

「それ、胸張って言える様なことじゃねぇぞ」

「あぅ……」

 

俺のツッコミを受けて、ティファニアは恥かしそうに俯いてしまう。

ティファニアなりに俺を励まそうとしてくれたんだろうが、励まし方の方向性がどうもずれたみたいだ。……まぁ、気持ちだけはありがたく受け取っておこう。

ティファニアの言葉に少しだけ和んでいると、赤髪の少女がジッと俺の事を見詰めているの気づいた。

 

「……何か用か、赤髪」

「別に大した用は……いえ、一つだけ言いたい事が出来たわ」

「何の用だ。口調を直せって言いたいなら受け付けないぞ」

「そんなんじゃないわよ。ただ、ワタシの事を赤髪って呼ぶの止めてもらえないかしら。ワタシにはキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーって立派な名前があるのよ。それとコッチの子はタバサ。ちゃんと覚えてほしいわね」

 

赤髪が自分の名前と一緒に青髪の名前も俺に教える。

今まで名乗られなかったんだから、二人の名前を俺が知っているわけが無いんだが、その辺りの指摘はしなくてもいいだろう。……しかし―――

 

「―――随分と立派な名前だな。立派過ぎて逆に覚えられん」

「あら、それはワタシの家名に驚いているのかしら?」

「そうじゃなくて名前が長すぎる。俺の故郷でもそこまで長い名前の奴はいなかったぞ」

 

長すぎて本人も幼少期は自分の名前を覚え切れなかったんじゃないのか。

心の中でそう思いながら、俺は赤髪の少女にそう言い切った。

もし相手が桃髪だったら癇癪を起こしそうな物言いだったが、赤髪は驚いた様子で俺の事を見ていた。

そして少しすると堪え切れないと言った様子で突然笑い出す。

 

「……ぷ、ぷははははははッ。そうね、確かに長いわね。自分でもそう思ってはいたけど、まさか正面からそう言われるとは思ってなかったわ」

「キュルケ、笑いすぎ」

「そう言うタバサだって顔が笑ってるじゃないの」

 

そう言う赤髪の言葉に釣られて青髪の方を見てみると、確かに青髪の表情が微笑んでいるような、少しだけ柔らかな表情に変わっている。

初めに会った時は無表情としか言いようが無かったが、微笑んでいるところを見るに感情がない訳ではないようだ。……しかし、あの程度で笑っていると為ると、普段はどれだけ無表情なのかが分かるな。

 

「ご、ごめんなさいキュルケさん。ウチのレイジが失礼な事を言っちゃって」

「あぁ良いのよ。ワタシは気にして無いから。実際にワタシのフルネームって長いしね」

「貴族の名前と言うのは長い。でも、その事をはっきり指摘する者はいない。私たちにとってそれは当たり前の事だから、態々指摘する者もいない」

「だから可笑しくて、つい笑ってしまったわ。初めて会った時は取っ付き難い印象だったけど、今ので大分印象が変わったわね。でも、誰が相手でも言っちゃ駄目よ。相手によっては侮辱と取られるから」

「分かってる。これでも相手は選んでいるつもりだ」

「そう、それならいいわ。……ところで、貴方のお名前は教えてくれないのかしら」

 

赤髪に促されて、俺はまだ自分の名前を名乗っていない事を思い出した。

別に俺の名など覚える必要は無いと思うが、向こうは聞きたがっている様だし、ここは名乗っておくか。

 

「……零児だ。竜崎零児。俺の故郷だと苗字の方が先に来るから、間違えないでくれ」

「リュウザキレイジ……変わった名前ね。ダーリンの名前に似ているけど」

「恐らくアイツとは同郷だろうからな。似ているのは当然だ」

「成る程。分かったわ、レイジ。ワタシの事はキュルケって呼んでいいわよ」

「……気が向いたらな」

 

そんなやり取りをしていると、誰かがドアを数回ノックしてきた。

そのノックに俺が返事をすると、ドアの向こうから女性の声で「お食事をお持ちしました」と告げてくる。

俺がドアを開けて女性を招きいれると、ノックした女性以外にも数人の給仕の姿があった。

給仕たちは部屋の真ん中にあるテーブルに持って来た料理を並べると、一礼をしてそそくさと部屋から出て行く。

直ぐに部屋から出て行った給仕たちの姿に、俺はそんなに急がなくてもいいだろうと思うが、まだ他にも仕事が残っているのだろうと納得する事に。

折角の食事が冷めてしまう前に食べてしまおうと、誰かが言い出す前に皆が思い思いの席に座る。

運ばれてきた料理は、パンが二つに数種類の野菜とベーコンのスープ。青髪が頼んだはしばみ草のサラダに俺が狩ってきた猪肉のソテー……いや、香草焼きか。肉からは香草の独特の匂いがする。

後はデザートに果物のシロップ漬けと、とてもじゃないが給仕のまかない食には思えない料理だ。

恐らくパンとスープとサラダはまかないで出るのだろうが、料理が二品増えただけで大分印象が変わる。

猪肉は俺が持って来たものだからいいとしても、デザートに関しては完璧に向こうに気を遣わせちまったみたいだな。

 

「わぁ~……思っていたよりも豪華な料理。お城のまかないって何時もこうなのかな?」

「そんな訳無いだろ。向こうが気を遣ってくれたおかげだ」

「あ、やっぱりそうなんだ」

「でも、学院の夕食と比べるとやっぱり貧相ね。学院の方がもっと豪勢よ」

「……それはそれでどうなんだよ。ったく、あの爺さんが金を出し渋るのも納得出来るな」

「あら、お爺さんって一体何処のお爺さんかしら?」

「お前らが通っている学院の学院長だよ。……さて、無駄話はこの位にして食べるとするか」

「うん、そうだね」

「それじゃいただきます」

 

いつもの様に手を合わせてお辞儀をしてから、運ばれてきた料理を食べ始める。

最初に手をつけたパンは何処にでもありそうな普通のパンだが、野菜とペーコンのスープは中々に美味い。

野菜を長時間煮込んでいるのか、具材の野菜は甘く、一緒に煮込まれているベーコンの塩気がそれを引き立てている。

猪肉は香草のお陰で臭みもなく、味付けはシンプルではあるが俺好みの味付けと為っている。

口直しに例のサラダを食べてみるが……思った以上に苦い。青髪から独特の苦味があると聞いていたが、予想以上だった。

これは料理長や赤髪が驚くのも何となく分かるが、この程度なら食べられないほどじゃないな。

そう思いながらふと横を見てみると、隣の席に座っているティファニアがサラダを食べて涙目になっているのが目に入った。

俺がサラダを食べるのを見て、食べても大丈夫だろうと思ったんだろうが、考えが甘かったな。

涙目になっているティファニアに呆れながら、俺はグラスに水を注ぎ、それをティファニアに差し出した。

グラスを受け取ったティファニアは、水を一気に飲み干し、はしばみ草ごと飲み込んで一息つく。

 

「……ふぅ、苦かった。ここまで苦いとは思いもしなかったよ」

「確かに苦いが、そこまで騒ぐものでもないだろ」

「いやいや騒ぐって。ここまで苦い野菜なんて食べた事無いもん」

「ワタシもこのサラダだけは無理ね。タバサ、悪いんだけどこのサラダ食べてくれない?」

「あ、私もお願いします」

「分かった。そこに置いておいて」

「やった。ありがとう、タバサさん」

「お前らなぁ……。サラダくらい食えよ」

「ワタシだって他のサラダなら食べられるのよ? でも、このサラダだけは本当に無理。苦すぎて食べ切れないのよ」

「むしろ、レイジとタバサさんが普通に食べれてるのが不思議だよ」

「……こんなに美味しいのに」

「美味いかどうかは兎も角、食べられないほどじゃないだろ」

「貴方はわたしの同士になれると思ったのに……」

「同士って何の同士だよ……」

 

青髪の思い掛けない言葉に思わずツッコミを入れると、他の二人が笑い出す。

別に笑わせるために言った訳じゃないんだが、口に出して言うほどの事じゃないし、気にしないでおこう。

そう思いながら食事を続けていると、また誰かがドアをノックしてきた。

俺は食事の手を止め、ドアに近付きそのまま開けると、ドアの向こうにはウェールズ皇子が立っていた。

 

「この様な時間にすまないレイジ。今、大丈夫かい?」

「ウェールズ皇子? どうかされましたか?」

「いや、君が帰ってきたと聞いてね。色々と話がしたかったのだが……どうやらタイミングが悪かったみたいだね。すまない」

 

ウェールズは俺の後ろで食事をしている三人を見て、申し訳無さそうに頭を下げてくる。

 

「いえ、お気に為さらないで下さい皇子。それでお話の件ですが―――」

「君たちの食事が終わってからで構わない。後で私の部屋に来てくれないか?」

「……別に人に聞かれて困る話をするわけではないのですし、ここでも構いませぬが」

「君が良くても彼女等が気にするだろう」

 

ウェールズにそう言われて後ろを振り返ると、食事をしていた三人が食事の手を止め、席から立っているのが目に入った。

別に気にせず続けてても良さそうなものだが、そう言うわけにも行かないのだろう。……俺は気にせず食事を続けるけどな。

 

「アイツ等……」

「ま、そう言うわけだレイジ。すまないが後で私の部屋に来てくれ」

「分かりました。お越し頂いたのに申し訳御座いません」

「いや良いんだ。それではまた後で」

「はい」

 

後で会う約束を取り付けて、ウェールズはそのまま部屋を後にする。

ウェーズルが部屋から遠ざかるのを確認した俺は、ドアを閉めて席に戻り食事を再開した。

俺が残った料理を食べ始めたのを見て、他の三人も席に座り、料理を食べ始める。

 

「それにしても驚いたわね。まさかウェールズ皇子自ら尋ねてくるなんて」

「え、そんなの驚く事なんですか?」

「普通はないわよ。普通は兵士かメイドを使いにするもの。王族の方が自ら尋ねてくるなんて、本来なら国賓だけでしょうね。……貴方達、一体皇子とどういう関係なのよ」

「どういう関係って言われても……その―――」

「俺が皇子に頼まれ事をされただけだ。結果がどうなったのか早く聞きたくて仕方が無いんだろう」

「頼まれ事って、それはそれで凄い事よ。一体何を頼まれたのかしら」

「深入りしない方がいいぞ、キュルケ。好奇心で首を突っ込んで死にたくは無いだろ」

「さ、流石にそれはちょっと遠慮したいわね。……って、貴方、今私のこと名前で呼ばなかった?」

「さぁ~て何の事だか。それよりも後の予定が出来たんだ。さっさと食べきらないとな」

 

そう言って会話を無理やり打ち切り、食事を続けるが、自分の名前を呼ばれたことが嬉しいのか、キュルケはもう一度呼ぶようにと頼んでくる。

どうやら彼女の興味がコッチに向いてくれたみたいだが、これはこれで煩わしいな。

もう一度呼べば解決しそうな気もするが、話し込んで折角の料理が冷めてしまうのはいただけない。

折角の美味い料理なんだし、温かいうちに食べてしまわないと勿体無いだろうに。まったく。




……う~ん、ちょっと物語の進みが遅くなってるか? でも、今回の位の文字数の方が書くには楽なんだよな~。
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