虚無のエルフと神殺しの竜   作:ベヘモス

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え~ちょっとした変更点のお知らせです。プロローグの時に零児の見た目を説明したとき、黒髪黒目の少年と書いてあったと思いますが、黒目ではなく青い目に変更します。
物語にはなんら影響も出ない部分ではありますが、この場を借りて報告させてもらいます。


第四話 黒い飛竜の強襲

この世界にやって来て半月ほどが経とうとしているが、そろそろ旅立つ頃合かもしれない。

ティファニアの家に泊まらせてもらっている間に情報収集しようと思ったが、ウエストウッドの村がよほど田舎なのか、思っていた以上に情報が手に入らなかった。

村に来た行商人から話を聞くことは出来たが、この国で起こっている内乱以外は特に目立った騒動は起こっていないらしく、表面上は平和なままなんだとか。

ただ、大国ガリアの王に黒い噂が絶えないらしく、水面下では何か企んでいるのではないかと行商人は話してくれた。

他にもハルケギニアの各地で黒い飛竜が目撃されているそうだが、俺が欲しい情報はそんなもんじゃない。八雲紫が言っていた、この世界に居る厄介そうな奴の情報だ。

行商人なら何らかの情報を掴んでいるかと思ったが、当てが外れちまったみたいだな。

 

「……と、言う訳で、俺はそろそろこの家を出て行こうと思う」

「そう、なんだ。随分と急なんだね」

「最初に会った時から何時か出て行くって話しただろ。それに半月も留まっていたんだ。寧ろ長くい過ぎた位だよ」

「………………」

「それでティファニアは如何する。俺と一緒に来るのか?」

「わ、私は……」

 

ティファニアはまだ決めかねているのか、口淀んで返事をはっきりと返そうとはしない。

何を迷っているのか分からないが、これ以上先延ばしにする事も出来ないし、いい加減決めてもらわないとこっちとしても困る。

まぁ、八雲が押し付けてきた依頼だし、危険を伴う旅になるのは明白。ティファニアの身の安全を考えて、彼女とはここで別れるのもアリと言えばアリか。

そんな事を考えつつ、ティファニアが答えを出すのも待っていると、窓の外に黒い何かが降り立つのが見えた。

窓からではその全容を見る事は出来ないが、黒い鱗を持つ飛竜らしき生物だと認識できる。

半月ほどここで暮らしていたが、こんな所に竜が降り立つなんて初めてだな。

俺はなんとなくそちらに目を向けると、黒い竜は突然自らの尾を振り上げ、攻撃してきた。

 

「ティファニア、危ねぇッ!」

「……えっ?」

 

俺は咄嗟にティファニアに抱き付き、そのまま家の床に倒れこむ。

すると次の瞬間、家の壁が黒い竜の一撃で粉砕され、吹き飛んだ木片が俺達に降り注ぐ。

降り注ぐ木片からティファニアを庇いつつ、家の壁を粉砕しやがった飛竜の顔を見る。

家を突然壊したのは、顎に巨大な棘を持つ紅い目をした黒い竜だった。

故郷の幻想郷では見かけないタイプの顔だが、この世界の固有種なんだろうか。

突然ティファニアの家を壊した事に文句の一つでも言おうとしたが、黒い竜は有無も言わさずに俺達目掛けて噛み付こうとしてくる。

 

「チッ!」

 

俺はティファニアを強引に起き上がらせ、そのままティファニアの手を引いて家の外へと脱出する。

家の外に飛び出して漸く黒い竜の全容を拝む事が出来た。

いきなり俺達に襲い掛かってきたのは、全身が漆黒の鱗や甲殻に包まれた腕の無い巨大な飛竜。

翼には紅い棘を生やし、尻尾の先端にも棘を生やしているがまるで剣の様に強靭になっている。

この世界固有の種だとしても、あの竜は明らかに異常だ。

親父が竜神だった影響でガキの頃から竜族に縁があるが、あんなに凶悪そうな竜を見るのは初めてだ。

一体何が目的なのか分からないが、少なくとも俺達を殺そうとしている事だけは確かだ。

 

「……ティファニア、危険だから少し離れてろ」

「え、まさかレイジ、あの竜と戦うつもりなの?! そんなの無茶だよ!」

「無茶でもなんでも戦わねぇとこっちが殺されるだけだ。分かったら早く離れてろ」

「……分かった。でも、危なくなったら直ぐに逃げてね」

「アイツが見逃がしてくれたらな」

 

そんな軽口をたたきつつ、俺は愛刀を抜いて臨戦態勢を整える。

ティファニアは黒い飛竜が家に頭を突っ込んでいる間に近くの茂みに隠れ、影からこの戦いを見守るつもりのようだ。

俺達が準備を整え終えると、黒い飛竜は家から顔を出し、振り返ると同時に尻尾でティファニアの家を薙ぎ倒してしまう。

 

「……他人の家だからって壊し過ぎだろ。もう少し周りに気を遣えよ」

「■■■■■……」

「言葉が話せないのか、敵と語らう口を持っていないのか分からないが、このお礼はしっかりと支払ってもうぞ」

「■■■■■ーーッ!!」

 

黒い飛竜の咆哮を皮切りに、俺は愛刀を握り締めて飛竜へと切り込んでいく。

飛竜は尻尾を振り回し、俺の接近を阻もうとするが振り回された尻尾の下を掻い潜り、なんとか奴の懐へと潜り込む。

そのまま太刀を振り上げ攻撃するが、飛竜の身体は俺が思っていた以上に硬く、刃の通りが悪い。

元々竜と戦うために作られた太刀じゃないからな、刃の通りが悪いのは仕方が無いと割り切ろう。

俺は気を取り直して太刀を振り下ろし、飛竜に対し攻撃を続けていると奴の右足が一歩後ろに下がったのが見えた。

それを見て俺は直ぐにその場から逃げると、飛竜は飛び上がって自身の尻尾を振り上げる。

もう少しあの場に留まっていたら尻尾に直撃して、そのまま吹き飛ばされていただろう。

飛竜の巨体から考えて、俺の太刀じゃアイツの攻撃を受け止めきる事は出来ないだろうし、相手の攻撃を回避するしかなさそうだ。

 

「……全く、相手の攻撃を避けるしかないなんて、まるで親父と戦っている様な気分になるな」

 

見た目は全く違うのになと、自分自身に呆れながらも飛竜が着地したのを見計らって再び切り込む。

斬りかかった飛竜の足も見た目よりも硬く、腹部よりも刃が通っていない様に感じられる。

それでも太刀を振るい、黒い飛竜に攻撃を続けるが刃の通りが悪い所為でダメージを与えれている気がしない。

攻撃する場所を変えようと後ろに下がった瞬間、黒い飛竜がタックルを繰り出してきた。

それをまともに受けてしまい、大きく距離を引き離されてしまう。

地面を転がりながらも直ぐに立ち上がり、もう一度切り込もうと黒い飛竜に駆け寄ろうとするが、黒い飛竜は口から漆黒の火球を俺目掛けて放ってきた。

咄嗟の判断で横に跳んで火球を回避するが、火球が地面に当たった瞬間に破裂し、着弾点に蒼と紅の竜巻が突如として発生する。

巻き起こった竜巻に煽られ、体勢を立て直すことができずに再び倒れてしまう。

竜巻は直ぐに収まってくれたが、立ち上がろうとしたところを黒い飛竜が突っ込んできて、俺は飛竜を避ける事ができずに押し飛ばされ、近くに生えていた木に激突した。

 

「グッ!」

「レイジッ!?」

 

近くに茂みに隠れていたティファニアが、悲鳴にも似た声を挙げて茂みから顔を出してしまう。

その声に黒い飛竜も気が付いたのか、飛竜は俺の事を無視し、ティファニアへと歩み寄っていく。

黒い巨体を揺らしながら近付いてくる飛竜を前に、ティファニアはその場で腰を抜かしたのか、逃げようともせず恐怖に震えている。

 

「くっそ、逃げろティファニアッ!」

 

俺の声は届いているはずだが、ティファニアは恐怖に駆られているのか、その場から動けずにいる。

黒い飛竜はその口を開き、血の様に紅い牙をギラつかせながらティファニアに噛み付こうとする。

その光景が眼に入った瞬間、俺は普段抑え込んでいる力を解放し、地面を抉りながら一足飛びでティファニアの元へと駆け寄る。

目に映る風景が一瞬の内に過ぎ去り、動けずに居るティファニアを抱きかかえて、飛竜から距離を取る。

その少し後に、黒い飛竜から硬い何かをぶつけた様な音が森中に響き渡った。

あと少し遅ければティファニアが噛み殺されていただろうが、なんとか間に合ってくれてよかった。

この力を解放しないといけない様な敵がこの世界にいるとは思わなかったが、今はそんな事は如何でもいい。

 

「……余り調子に乗るなよ黒いの。テメェの目的が何かは知らねぇが、コイツは何があろうと俺が守る。それでも殺したいって言うなら、まずは俺を殺してからにしてもらおうか」

「■■■■■ーーーッ!!」

 

俺が放った殺意に反応したのか、黒い飛竜は耳を劈くような雄叫びを挙げる。

飛竜の咆哮が周囲の木々の葉を揺らし、咆哮に驚いた鳥達が一斉にこの森を去っていく。

そんな中俺は解放した力を太刀の刀身に薄く鋭く纏わせ、刃の切れ味を研ぎ澄ませる。

黒い飛竜は呼吸をするように息を吸い込むと、まるで息を吐き出すように口から青白い熱線を俺達に向けて放ってきた。

俺はティファニアを抱きかかえたまま放たれた熱線を避けるが、動く事の出来ない木々は直撃し、熱線を浴びた箇所が焼失している。

灰も残さず焼き尽くしたところを見るに、アレをまともに浴びたら幾ら俺でも只じゃすまないだろう。

ティファニアを守りながら戦うことを考えると長期戦は避けたいところ。もう一度熱線を撃ってきた時に勝負を仕掛けるか。

 

「れ、レイジ……」

「心配するなティファニア、お前は必ず俺が守る」

「……うん、信じてる」

 

怯えるティファニアを落ち着かせていると、黒い飛竜は翼を大きく広げて空へと飛び上がる。

一見すれば空へ飛んでいったようにも見えるが、俺達の頭上に突如として影が出来た事を考えればそうでない事が直ぐに分かった。

俺はすぐさまティファニアを抱きかかえたままその場から逃げると、黒い飛竜がさっきまで俺達が居た地点目掛けて全身を一気に地面へと叩きつけてきた。

飛竜が自身の身体を地面に叩き付けた影響で地震が起こり、その振動に足を取られて身動きが取れなくなる。

その間に飛竜は漆黒の火球を三発も連続で放ち、俺達を炎で焼き尽くそうとしてくる。

なんとか放たれた火球をすべて回避するが、地面に着弾した途端に火球が破裂し、蒼と紅の竜巻が三つも巻き起こる。

今回は距離を取って回避したため、風に煽られる事はなかったが、周りを竜巻に囲まれてしまい逃げ場がなくなってしまう。

そのタイミングを見計らっていたかのように、黒い飛竜は熱線を放つために再び息を吸い込む。

既に左右と後ろに逃げ場は無く、このまま留まっていれば間違いなく焼き尽くされる。だから俺は敢えて黒い飛竜へと向かって飛び込んでいく事にした。

 

「れ、レイジッ!?」

「俺を信じろッ!」

 

黒い飛竜が顔を下げ、熱線を吐き出そうとするタイミングで跳び上がり、飛竜の頭を跳び越す。

そしてすぐさま飛竜の上顎に太刀で斬り付け、地面に転ばせて熱線を吐き出そうとしている口を無理やり閉じさせる。

吐き出そうとしていた熱線は出る場所を失い、飛竜の身体の中で暴発でもしたのか、地面に倒れる飛竜の身体が大きく跳ねた。

黒い飛竜は口から赤黒い液体を吐き出しながらも起き上がり、俺達に向かって吼えるが……その隙を見逃すほど甘くは無い。

 

「これ以上森を荒らすんじゃねぇよ。……いい加減に失せろ」

 

赤黒い液体を吐き出しながら吼える飛竜に向かって、俺は太刀を振り上げ、刀身に纏わせた力の全てを放出し奴を斬り飛ばした。

斬り飛ばされた飛竜は数mほど吹き飛ぶが、殺しきるには至らなかった。

吹き飛ばされ地面に激突した飛竜だが、絶命する様子もなく身体を起こすことが出来ずにもがいている。

絶好のタイミングで放ったと思ったが、奴がタフ過ぎるのか、俺の腕が未熟なのか、どちらにせよ黒い飛竜に止めを刺す事はできなかった。

このまま戦い続けてもジリ貧になるだけだし、今の内に退散させてもらおうかと考えていると、黒い飛竜が起き上がり逃げるタイミングを失ってしまう。

もう少し地面でもがいてくれれば逃げ切れたかもしれないのに、起き上がるのが早すぎるんだよ。

タイミングを見誤った事に舌打ちをしながら、太刀にもう一度力を纏わせつつ何が飛んできてもいい様に身構えていると、黒い飛竜は何を思ったのか自身の翼をはためかせて、大空へと飛んで行ってしまう。

さっきみたいに身体を叩きつけてくるのかと警戒するが、どれだけ待っても奴からの攻撃はなく、森は静けさを取り戻そうとしている。

空を見上げて完全に奴が居なくなった事を確認してから、俺は警戒を解き、解放し続けていた力を静かに抑え込んだ。

 

「……ふぅ。なんとか撃退できたか。いや、この場合は奴に見逃してもらったのか」

「あ、あのレイジ……」

「あん? なんだティファニア、飛竜ならもう居なくなったぞ」

「それは分かってるんだけどね、そろそろ離してほしいかなって」

「ん? ……あぁ悪い、ずっと抱きかかえたままだったな」

「……別に抱き締めてくれるのが嫌なわけじゃ―――」

「無茶に付き合わせちまって悪かったな。次はあんなヘマはしないさ」

「―――あ、うん」

 

何故か少し残念そうにするティファニアを離し、改めて当たりの様子を見てみると派手に暴れたなと感心してしまう。

飛竜の攻撃の所為で地面が割れ、木々が焼け落ち、ティファニアの家は半壊。……いや、壊れ具合を見るに全壊と言っても差し支えないか。

あの飛竜の目的が何なのか知らないが、突然やって来て暴れるだけ暴れて帰るなんて、迷惑極まりない奴だったな。

……しかし、なんで奴はティファニアを狙ったんだ? 戦っている最中にティファニアが悲鳴を挙げたからか? いや、そんな理由で襲い掛かるとは思えない。だとしたら、アイツの目的は最初からティファニアだったって事か。でも、何のために……。

 

「れ…じ」

 

ティファニアがあの竜を怒らせる様な事をしたとは思えないし、怒っているにしては最初の攻撃は手緩かった。本気でティファニアを殺したいなら、尻尾を振り上げたり、噛み付いたりしないで熱線で焼き尽くしてしまえばいい。その方が確実だ。

でも奴はそんな事はせず、最初の内は手緩い攻撃ばかり繰り出していたし、激怒して殺しに来たとは考え難い。だとすると……他に何がある? 人間なら兎も角、野生の獣が無意味な殺戮をするとは思えないんだが……。

 

「れいじ」

「……………」

「レイジッ!」

「うおッ?! びっくりした。なんだよティファニア、急に大声を出すなよ」

「幾ら呼んでもレイジが反応しないからだよ。一体何を考えていたの?」

「あ~……いや、あの飛竜がティファニアを狙う理由についてな」

 

俺が考えに没頭していた理由を告げると、ティファニアは心底驚いたような顔をする。

どうやら自分があの竜に狙われていたなんて思ってもいなかった様だ。

 

「え、私あの竜に狙われていたの?」

「恐らくだけどな。俺と戦っている途中でティファニアの狙いを変えたのを見て、そうじゃないかと」

「それって只の偶然なんじゃ……」

「その可能性も否定出来ないが、ティファニアが狙いじゃないと断言できるモノもないからな」

「……それじゃ、私コレから如何しよう。あの竜は逃げちゃったし、もう襲ってこないとも言い切れないんだよね」

「まぁな。本当にティファニア狙いなら次に何時襲ってくるか分かったもんじゃない」

「そうだよね。……だったら、何処かに身を隠さないと―――」

「とりあえず俺と一緒に旅に出るか。此処に留まっているよりも多少はマシだろ」

「―――……えっ?」

 

俺の言葉をちゃんと聞いていなかったのか、信じられない様なものを見るように呆然としている。

 

「おい、ティファニア。ちゃんと俺の話を聞いてたか?」

「あ、うん、聞いてた……けど、一緒に旅ってそれ本気で言ってるの?」

「あぁ、本気だ。どの道俺は旅に出るし、一人で此処に留まっているよりは安全だと思うぞ」

「そうじゃなくて、私と一緒にいたらさっきの竜にまた襲われるかもしれないんだよ。それでも良いの!?」

「元々俺の旅も危険を孕んでいるからな。厄介事の一つや二つ増えた所で大して変わらねぇよ」

「そう……だとしても、あの竜以外のトラブルにも巻き込んじゃう。レイジは何も知らないみたいだけど、実は私はハーフエルフで、エルフって言うのはハルケギニアの人達からは恐れられていて、周りの人達に知られると大変な騒動になっちゃって、私のお父さんも私とお母さんがエルフだから捕まっちゃって、そのまま帰ってこなくて……。マチルダ姉さんも私たちを庇ったから家が取り潰されちゃって……。わたしと一緒にたびをしたら、きっとレイジにも迷惑がかかっちゃうから……。だからわたしは―――」

「だから私は此処に居たほうがいいってか」

「……うん、その方がレイジの為になるとおもうから」

「そうか。……で、言いたい事は今ので全部か?」

「……うん」

「そうか。ここまでくると呆れてモノも言えねぇな」

「……へっ?」

 

今にも泣きそうになりながら、必至に言い訳をするティファニアに俺は呆れて溜息を零す。

旅立つのに何を気にしているのかと思ったが、聞いてみればなんとも如何でもいい理由だったな。その程度の理由で俺が拒むと本気で思っていたのかねぇ。

 

「あのなティファニア、俺はそんな建前を聞きたいんじゃねぇ。俺はお前の本心が聞きたいんだ」

「わたしのほんしん?」

「あぁ。エルフが如何だとか、竜が襲ってくるかもとか、そういった理由は一先ず置いとけ。俺が聞きたいのはお前自身は如何したいのかってことだ」

「私自身がどうしたいのか……」

「あぁそうだ。一先ず頭の中空っぽにしてよ、ティファニアの本音を聞かせてくれないか?」

「わ、私は…………レイジと一緒に行きたい。もう一人で過ごすのは嫌なの」

「だったらそれで良いじゃねぇか。あの程度の理由で俺はお前を拒んだりしない。だから、俺と一緒に来いよ、ティファニア」

 

振り絞るように出たティファニアの本音。漸く聞くことの出来た彼女の本音に俺は笑って手を差し出す。

 

「……迷惑掛けちゃうかもしれないけど、それでも一緒に行って良いの?」

「さっきからそう言ってるだろ。ウダウダ言ってないで、俺と一緒に来い」

「……うん! 迷惑掛けちゃうかもしれないけど、これからも宜しくね、レイジ」

「迷惑掛けるかもしれないのはお互い様だから気にするな。それよりも荷造りをしちまわないとな。長い旅になるだろうから、準備はしっかりとしておかないと」

 

俺の手を握り返すティファニアを見て、俺も笑ってその手を握り返す。

ティファニアも旅に同行する事が決まったのはいいが、今まで決めかねていた事を考えると彼女が旅支度なんてしていないのは明白だ。

あの飛竜の所為で家も滅茶苦茶になっちまってるし、まずは瓦礫の撤去から始めないといけないな。

瓦礫で滅茶苦茶になってしまっている家を見て、ティファニアに気付かれない様に小さな溜息を零す。

あの家の中から使えそうな物を探すのは少々手間だが、まぁ頑張るしかないか。




……今日は嬉しい事が一度に沢山おこったと思う。
黒い飛竜に家を壊されちゃったり、命を狙われたりして大変だったけど、それ以上にレイジが一緒に来いって言ってくれた事が嬉しかった。
きっとレイジは、このハルケギニアでエルフがどう思われているのかまだ分かってないんだと思うけど、それでも私の事を拒んだりしないって言ってくれた。
お父さんとお母さんの事を恨んだ事は無いけど、森の中で隠れ住んでいたから森の外がどうなっているのか凄く興味があった。
レイジが私の前に現われて、彼の故郷の話を聞いて、私の中で外の世界を知りたいって気持ちがますます強くなった様な気がする。
私は一人じゃ何処にも行けないと思っていたし、ハーフエルフだから彼とは一緒に居られないと思っていたけど、レイジは一緒に来いって手を差し出してくれた。
私一人じゃ何も出来ないし、何処へも行くことは出来ないのかもしれないけど、レイジが居てくれるなら何でも出来るし、何処へでも行ける様な気がする。
コレからの旅、きっと大変な事が次々と起こるのかもしれないけど、レイジと一緒ならきっと乗り越えていけると思う。……だから私達の事を見守っていてね、お母さん。
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