とある下水道の中。
ジメジメとしていて居心地が悪く、その強烈な臭いは鼻を覆いたくなるほどである。
そんな下水道の中に、奇妙な光が差し込んでいた。
それは、モニターの光であった。しかも、1つではない。何十個ものモニターの光が、下水道を照らしていたのだ。
そのモニターは駅のホームやどこかの店、商店街の防犯カメラの映像など、様々なものを映し出していた。………あと、モニターのいくつかは何故かYouTubeのものっぽい動画流れていた。
下水道は本来、誰もいない場所である。定期的に職員が見回りに来るだけで、基本的には無人だ。だから、モニターなんて下水道にはいらないはずだ。では、何故下水道にこんなにたくさんのモニターがあるのだろうか?
……よく見ると、モニターの前にいくつかの影があるのがわかった。
「みんな、ここ見て。悪そうな奴らがが集まってるよ。これからどこか襲う気かも……」
「へっ、上等じゃねーか!目にもの見せてやるぜ!!」
「落ち着けラファ!まだ日が出ている状況で、俺達が表に出るのはまずい!」
「じゃあこのまま指を咥えて見てろってか?ほら見ろよ、あいつら銃を持ってるぞ!下手したら死人が出る!」
「ッ!!………ドナ、作戦あるか?」
「ちょっと待って………う~ん、仮にどこかの店に入ったとして…シャッターを下ろして、電源落としたら視界が暗くて僕たちは見えないはずだよ。でも、銀行とかなら予備電源があるかもしれない。それまでに片付けないと………」
「充分だ。みんな、準備しろ。一発ぶちかますぞ」
「そうこなくっちゃなぁ!ほら、マイキー、行くぞ」
「えー!オイラこの動画見たいんだけど………ほら見てよ!完璧で究極のゲッt「バカ言ってねーで行くぞ!」ちょ!?痛い痛い!わかったてぇ!」
下水道に騒がしい声が響く。
下水道で働く職員か?それにしては声が若い。まるでティーンエイジャーの様だ。
その者達の姿を確かめる前に、彼らは影へと溶けていった。
そこには、モニターが怪しく輝いている光景だけが残っていた。
そのモニターの一つに、ポニーテールの豊満なバストを持った女学生が映っていた………
「う~ん、ここにもいないか……」
辺りを見まわしながら、飛鳥は独り言を呟いた。
ここは、半蔵学園近くの商店街。
商店街と聞くと、地方のシャッター街が頭によぎるが、ここは違う。
食べ物、衣類、土産品等様々な店が立ち並び、地元民や観光客であふれかえっていた。
人々が行き交うその光景は、まさに街という体内を人という血流が流れているようである。
さて、そんな商店街の中で飛鳥は探し物をしていた。
別に財布を落としたわけでも、夕飯の買い出しというわけでもない。飛鳥はとある人物達―――不良達を探していたのである。
事の始まりは、霧夜の言葉であった・
『本日の授業は学園外で忍務をしてもらう。最近、商店街を荒らしている不良を懲らしめてこい』
午後の授業の始めに、霧夜は生徒たちに言った。
忍務。それは忍の仕事であり、忍たちは忍務を遂行するために、時に自らのプライドや命を懸けて、あらゆる困難に立ち向かうのだ。
………不良退治が忍の仕事なのか?と疑問に思う者もいるだろう。しかし、人々の平和を脅かす存在を討伐するという意味では、不良退治も立派な忍務なのである。
葛城は『要人の警護や機密文書の奪還』といった“それっぽい”忍務を期待していたが、彼女たちはまだ学生。本格的な忍務はまだ早いのである。
いわば、よくあるプロへの練習忍務だ。………しかし、今回は少し勝手が違っていた。
『大丈夫だと思うが……最近不良達が妙な動きをしているという話もある。敵チーム同士が手を組んでいたとか、不良達の集会・会合が目立ってきているだとか…裏付けのない、ただの噂だが、用心に越したことはない。気を付けるんだぞ』
霧夜は5人に注意を促すが、先程まで不満を漏らしていた葛城を含めた5人はそこまで気に留めていなかった。
若さゆえの慢心と言ってしまえばそれまでだが、いくら不良が集まっているとはいえ所詮は烏合の衆。忍者の修行で鍛えている自分たちが後れを取るなんてありえないのだ。
そうして不良退治のために街へ乗り出した5人だが、まだ日も出ている時間帯であるからか、町中は一般人であふれかえっており不良学生の姿は影も形もなかった。
5人はしばらくまとまって行動していたが、このままでは埒が明かないと5人は別々で行動し、不良達を見つけたら合図を送るという話でまとまったのだ。
そんなこんなで、不良達を探すため別行動をしていた飛鳥。
皆と別れてからしばらく時間が経つが、まだ不良達は見つけられていない。
一体どこに居るのであろうか?街中はもちろん、裏路地やゲームセンターなど不良のたまり場になっている場所も探したがここまで1人も見つけられていないのだ。
おかしいな……この街はモヒカン頭のヒャッハー!やらどこぞのハート様にそっくりな女番長など世紀末的な不良学生が比較的多い街だというのが飛鳥の認識であった。
しかし、今日は街のどこを探しても見当たらない………というか最近不良を見かける機会も減ってきているような気がする……
しかし、それでは霧夜が言っていたこととは矛盾しているような……
………もしかして、私達が思いもしない場所に拠点を置いているとかだろうか?例えば神社とか………“ドンッ!”
「キャッ!………すいません」
考え事をしながら歩いていた飛鳥は、前をよく見ていなかったため通行人にぶつかってしまった。
咄嗟に謝る飛鳥。ぶつかった相手の男は「チッ」と短い舌打ちをして、そのまま歩き去ってしまった。
なにあれ、感じ悪い。でも、私の不注意でぶつかってしまったのが原因だからなぁ……これから気をつけるしかないっか…
モヤモヤした気持ちになりながらも、今度は気を付けなければと気持ちを切り替え、不良探しを再開しようとする飛鳥。しかし―――
「……あれ?」
ふと、先程の男に違和感を感じて足が止まる飛鳥。
あの男とぶつかった時、何か重要な物を見た気がするのだ。
一体自分は何に引っ掛かっているのか飛鳥は考える。
男の顔………覚えがない。今まで見たことないはずだ
男の声………これも今まで聞いたことのない声だ
男の服装……黒っぽい服装で、どこにでも売ってそうな服だ。胸ポケットに縫い付けてある紫の龍のワッペンがおしゃれだった気が――――
『ここは我々
「ッ!!」
飛鳥は、自分が何に引っ掛かっていたか理解した。
そうだ、あの男の胸のワッペンは、あの時土産屋を占拠した集団と同じものだ!
飛鳥は、土産屋の一件の後、あの集団が共通して身に着けていた紫の龍がとぐろを巻いているマークが気になって、自分なりに調べていた。その結果、あのマークは市販されたブランドのものではなく、独自で作られたマークである事が判明したのだ。
奴らの仲間か…?しかし、あの時襲撃された場所は東京からだいぶ遠い地方だったはずだ……地元の強盗団だと思っていたが、まさか全国規模の集団なのか?
…何か嫌な予感がする。飛鳥は、あの集団を逃してはならない。ここで逃したら取り返しのつかないことになると直感で感じた。
「追いかけなきゃ……!」
飛鳥は、先程の男の追跡を始めた。
その時、仲間が不良を見つけた合図を送っていたのだが、飛鳥は気が付かなかったのであった………
「ここ……かな?」
男の追跡をしていた飛鳥は、入り組んだ道を抜け、とある建物のにたどり着いた。
ここは……銀行?
目の前の建物は、確かどこかの銀行の支店であった気がする。
まだ夕方4時半くらいで、まだ日も沈み切っていないというのに、シャッターが完全にしまった銀行に飛鳥は違和感を覚える。
「……!」
物陰に隠れていた飛鳥は、銀行の裏口から例の男が入っていくのが見えた。
あの男は、見るからに銀行職員ではない。やはり…!
飛鳥は周りに誰もいないことを確認し、裏口の前まで行く。
鍵は……開いている。飛鳥は音をたてぬよう、慎重にドアを開け中に入った。
銀行の裏口から入り、職員用控室を通り抜け、そこから窓口に続くと思われる扉を少し開き、内部を確認する。
「ッ!?」
内部を確認した飛鳥は、驚きで声が出そうになるが何とか耐える。
銀行内部には、鉄パイプや金属バッドを持った集団が大勢いた。
集団は銀行内で札束を袋に詰めたり、機械を壊したりしている。
壁際には、銀行員や警備員と思われる数名が縄で縛られて動けなくされていた。何人かは頭や口から血を流しており、集団に襲われたのがわかった。
―――た、助けなきゃ!
正義の忍者を目指す飛鳥は、この光景を見て黙ってられなかった。
どうする?視界で確認できる集団は5~6人。自分なら難なく倒せる自信がある。しかし、土産屋の時に居た男は銃を持っていた。ここに居る何人かも銃を持っているかもしれない。
もし自分が戦っている時に、人質に向けて発砲されたら……最悪のパターンは避けたい
……一か八か、手裏剣で1人仕留め、他の奴らが気を取られている間に反対側から飛び込むしかないか…
飛鳥はそう考え、手裏剣を手に取り――
“プツンッ……”
手裏剣を構えようとした飛鳥であったが、突如として銀行の明かりが全て消えた。
「えっ?」と思わず飛鳥は息を漏らす。銀行内の集団も「なにが起こってるんだ!?」「明かり付けろ明かりぃ!」「見えねぇ……痛ッ!?誰だ俺の足踏んだの!?」とパニックになっている。
一体何が…あれ?こんなこと、前にもあったような………
「本日の営業は終了でーす!!店内の掃除を始めまーす!!」
飛鳥がデジャブを感じていると、銀行内に男性の声が響き、上から何人かの影が銀行内に突入してきた。
影たちは「なんだなんだ!」と慌てる集団を暗闇の中で投げ飛ばしたり、武器を折ったりしているのが音などで分かった。
“パアァン!”と集団の誰かが銃を発砲したようで、少しの間銀行内に明かりが灯った。
その明かりで、突入してきた人物の身体の一部が見えた。そう、亀の甲羅の様なものを背負った背中が――
――――また、あの人たちだ!!
こんな状況だというのに、飛鳥は興奮した。
もう一度会えるかもわからない人物達が東京に来ており、こうしてまた会えたのだから。
しかも、彼らはまた人助けをしている。間違いない、彼らは自分の目指す正義の忍達だ!!
争っているような音が止まり、辺りが静かになる。
少しすると、銀行内にまた電気が付いた。するとそこには、先程まで銀行内を占拠していた集団が縄で縛られ、ひとまとめにされていた。
銀行の職員たちの縄も、ナイフで切られたように足元に散らばっている。あの暗闇の中、日つずつ立ちの縄も切ったのだろう。
戸惑う銀行員たちの何人が「なにが起こったんだ!?」「何かが俺の横を通ったぞ!」「上のダクトへ入っていった!化け物みたいなスピードだった!」「私達を、助けてくれた!」と口々に言っている。
そうか、彼らはダクトから入ってきたのか。つまり、ダクトの出口……屋上に行けば彼らに会えるのでは……!
そう思った飛鳥は、手裏剣を手に持っていることも忘れて外へ出た。
外へ出ると日は沈みかけており、夕暮れの道が広がっていた。
飛鳥が周りを見渡すし、この銀行は避難用の非常階段が屋上まで続いているのを発見した。
よし!これで屋上まで向かおう!
飛鳥はドキドキしながら階段を登っていった。
「僕のおかげで銀行の警報機が鳴らなかったんだよ。だから今日のMVPは僕だと思うけど…」
「えー!オイラだって華麗なヌンチャク捌きで大活躍だったよぉ!?だから、今日のピザのトッピングを決める権利はオイラにあるでしょ!」
「いーや!一番多くぶっ倒した俺様が決める!チョリソーとパプリカだ!」
「お前ら、そういうのは家に帰ってからやれよ…あとラファのあと、俺は今日シーフードピザがいい…」
階段を登っていくと、段々楽し気な声が聞こえてきた。
あれ?声が想像よりも若いようなきがするなぁ…もしかして、同年代だろうか?
もし本当に同年代だったら、なおさらあの動きはすごい。一体どこに所属して、どんな修行をしているのだろうか…聞きたいことがどんどん出てくる。
そう考えていると、飛鳥はいつの間にか屋上一歩手前まで進んでいた。
……どうしよう、なんて声を掛ければいいだろうか?あの時のお礼?自己紹介から入る?………いざとなると悩むなぁ…
緊張で汗が少し出てくる飛鳥。その結果、汗で手が滑り、手に持っていた手裏剣を落としてしまった。
「まぁ、とにかく今日も俺達の活躍で街の平和が守られたんだ!俺達は最高のチームだ!兄弟たち!ハイタッt“カランカランッ!”………」
屋上からの声は静かになり、辺りに響いた甲高い金属音もやがて止まった。
「やっちゃったぁ…!」と飛鳥は後悔する。そういえば、手裏剣手に持ったままだったぁ………しまっておかない私のバカ!
「何今の…」
「音的に小さい鉄を落とした音……僕の計算ではあそこに人が隠れてる。多分女子だ…どうする?」
「どうするって……殺すしかないだろ」
「やめろラファ!俺達は悪党じゃないんだ!」
「だったらどーすんだよ!?この後都合よくドナテロが記憶改ざんする薬を作るのを待てってかぁ!?」
「あるよ。2割の確率で廃人になるけど…」
「あんのかよ!?てかこえーよ!?」
「みんな落ち着けよ~相手が女子なら、オイラのナンパテクで………」
「「「黙れマイキー!!」」」
屋上から、小声で相談するような声が聞こえる。どうやら、警戒されている様だ。というか物騒な言葉が出たような気がするんだけどぉ!?
なんとか誤解を解かなければ!飛鳥は階段から飛d―――――
「あー!もうめんどくせぇ!!マイキー!鎖貸せ!」
「ッ!?やめろラファ!」
そんな声が聞こえたかと思うと、飛鳥の身体に鎖が巻き付いた。
「えっ!?キャァ!?」
突然のことに動揺してすぐに動けなかった飛鳥は、そのまま引っ張られるように屋上に投げ出される。
「いてて…」と呟きながら、立ち上がろうとする飛鳥。
そんな彼女の目の前に
“ドスンッ!!”
突如として上から何かが降り立った。
降り立った衝撃で、周りに土煙が舞っている。それだけ衝撃が強かったのだろう。
飛鳥は、それの正体を確認するため顔を上げようとする。
「勝手に動くな」
しかし、その行動は降り立ったの何者かの声に中断されてしまう。
その者から放たれるただならぬ殺気とドスの利いた声に、飛鳥は蛇に睨まれた蛙の様に動けなくなってしまう。
動けない…一体何が、私の目の前にいるんだろうか………!
「そのまま、ゆっくりと顔を上げろ」
目の前の者がそう言ったと同時に、場を支配していた殺気が少し和らいだ気がした。
しかし、その場に流れる緊張感は変わらず、飛鳥は声の主の指示に従うしかなかった。
ゆっくりと顔を上げていく飛鳥――――――そんな彼女の視界に最初に入ってきたのは、人間のものではない緑の足であった。
――――えっ
飛鳥の思考が停止する。
私は、何を見ているんだ?私は、何を追いかけてきてしまったんだ?
飛鳥は最初、自分を助けてくれた恩人を見つけたと思っていた。鎖で叩きつけられたのも、相手は凄腕の忍者であるから警戒心が強く、不用意に近づいた自分にも非がある。でも、話せばわかってもらえると思っていた。
しかし、これはなんだ?目の前に見えた足は、緑色で筋肉が異常に発達しているようだ。まるでそう…以前見たアメリカのスーパーヒーローチームの映画に出てきたパワー系ヒーローの様だ。
飛鳥は目の前の者の正体を確かめるべく、顔を上げていく。
「―――ッ!?」
目の前の者の全貌を見た飛鳥は、言葉を失った。
足と同じように力強く発達した腕。しかし、その腕も緑色で、指も三本しかない。その手には3本の刃が枝分かれした武器を持っていた。確か名前は………
身体は服ではない硬そうなもので覆われていた。自分は彼らの事を「亀の甲羅の様な物を背負った人」と呼んでいたが、それは間違いであった。亀の甲羅の様な物ではなく、「亀の甲羅
そして、その顔もまた緑一色で毛は生えておらず、顔の造りも人間のものではない。まるで亀の顔を無理やり人間の顔にしたようだ。その顔は、何故か赤いハチマキを巻いて目元を隠していた
そう、目の前にいた者は人間ではない―――亀に似た異形の物であった。
「お前は誰だ?敵か?………敵なら――――」
そう言って、亀の異形は手に持っていた釵を――
「俺様に見つかったのを、後悔するんだなぁ!」
飛鳥に向かって振り上げた
夕暮れ空の美しい景色に、赤いハチマキが風に舞っていた
キャラ多すぎて動かすの難しい…でも書くの楽しい……
次回は……ミュータントパニック見てテンション上がったらかなぁ…
ここまでご拝読ありがとうございました