百合の間に挟まりたかった男、ゲットマシンに挟まれる 作:青川トーン
その日、俺達が物凄い怖気を感じると同時に警報が鳴り響いた。
外文明艦隊が戦闘を行いながら月面基地へ向かって移動してきているという、だが様子が明らかにおかしい。
そもそもが……奴らが敵と戦っている事自体が、妙だ。
「博士!奴らどうにもおかしいぜ!こっちのことなんて眼中にないぞ!」
ユユカもどうやら同じ気持ちだった様で俺よりも先にそう叫ぶ、俺達の感じる嫌な予感……それは最悪の形で的中する。
そいつの姿を俺は知っている、未来人類が作り出した「ルミナスナイト」の量産タイプだ。
中には培養された人造人間が制御装置として組み込まれており……あらゆるものを捕食して同化する生体素材によって構成されている。
おそらくは未来人類を撃退した際にあぶれた残党、本来なら根絶されていなければならない奴が地球圏までやってきてしまった。しかもだ……奴らの背後には異形としかいえないグチョグチョの巨大な怪物が追ってきていた。
アレは改造された宇宙生物でありながら、未来人類の運用する母艦だ。
機械の脆弱性を生命の力強さにより補った、極めて合理的な兵器と彼らは呼んでいたが俺はそうは思わない、こんなのはインベーダー共と何ら変わりない、宇宙を蝕む邪悪な怪物だ。
「ユユカ、リリア……俺達は外宇宙の連中と戦ってきて、命の取り合いをしてきた。こっちだって多くの犠牲を出してるのは分かっている……だが今だけは連中を助けるべきだと思う」
軟弱な戯言かもしれない、だがより良い未来を得る為のチャンスでもある。
ここで外文明の連中を助けて、これまでの被害も未来人類どものせいだと押し付ければ禍根も何とかなるかもしれない。
「……タケシ、お前がそういうならアタシはいいと思うぜ」
「わたくしもです、なによりもあの醜悪なものが人類の味方などととても思えませんもの」
二人は賛成してくれた、後は……早乙女博士だ。
「確かに戦いを終わらせられる可能性もある、それに連中がまだやる気ならこちらも叩き潰せばよい」
さすがダイナミック代表だ、意見は纏まった。
「ゲッターチーム!出撃!」
未来の世界で生まれた奴らの戦闘力はそれこそ桁違いだった、今のゲッターの力を持ってしても食いつくのがやっと、一体倒す間にも外文明軍の艦は数を減らし、機動兵器は次々と撃墜されていく。
「なんて奴らだ!こんな連中が地球に降りてしまえばたちまち大惨事だ!」
「ええ!ですので一体も残してはなりませんわよ!」
恐ろしいのはダメージを与えても倒し切れなければ周囲のデブリや残骸を吸収して再生するその戦闘継続能力、そして死を恐れない躊躇ない特攻。
そして俺はふと気づく、奴らの母艦はもう俺達のことなんて眼中にない。
奴らは月を、月のルミナザイト鉱脈を目指している。
そうだ奴らにとって最大の補給物資がここにはあるのだ!
「ユユカ!リリア!ザコどもを相手してる場合じゃねえ!連中はルミナザイトを食いに来てる!」
「なんだって!?そうか!やけに連中の母艦からの攻撃が減ったと思いきやそういうことか!」
「わたくしにお任せを!チェンジユニコーン!」
ゲッターユニコーンの猛烈なスピードで敵を振り切り、母艦めがけてドリルランスを突き立てる。
だが、それは少しの肉片を削るだけに留まり弾かれた!体表を覆うバリアだ!
そして追いかけて来た量産機どもが俺達に襲い掛かる、絶体絶命のその時。
『地球人よ!聞け!それが未来から来たお前達の末裔だ!我らの故郷を滅ぼした邪悪な姿だ!故に我らはお前達をこの宇宙から消し去りたいと思った!思っていた!だが!!』
見るも無残、かろうじてエンジンだけが生きている様な生き残りの艦から宇宙を震わすような声が聞こえた。
『お前達を見て変わった!未来は変えられる!お前達ならば!ゲッターならば!この見るも忌まわしき邪悪な破壊者になどならず!宇宙の未来を救えると正義となりえると!!ならば!!』
平和を望む戦士としての心を持つ彼らが何をしようとしているのか、俺達にはよくわかった。
『お前達を信じよう!』
残された全ての力と希望を託して、外文明軍の艦隊が輝きを放ちながら敵の母艦へと体当たりをかまし、諸共にこの宇宙から消滅した。
「勝手に攻めて来たくせに!す……好き勝手いってくれましてよ……!」
「あれが……未来の人類だと……バカな!」
俺は知っていた、だがリリアとユユカにとっては衝撃的な事実だった。外宇宙軍の指揮官の最後の思念がテレパシーを通して俺達に流れ込んできた。それは彼が経験してきた戦いの歴史。
平和を、故郷を、家族を全てを奪われてきた戦士の記憶、そして宇宙を喰らう破壊者たる人類の姿。
何を求め、何処へ向かおうとしているのかは知らない、飢えと渇きのままに進化を続ける姿はゲッター艦隊も同じようなものだ。
だから奴の最期に報いてやれるか、俺は正直わからない。
だが、一つの戦いは終わった……人類が初めて経験する外宇宙の脅威との戦いは。
「まだ終わってないぞ、見ろ随分とデカい奴が隠れてたな」
漂う艦隊の残骸の中にゲッターの3倍ほどもある巨大な人型が浮かんでいた。
そいつもまた未来のルミナスナイト、それも量産型ではない「マジ」の奴だろう。
あの小型の太陽の様な爆発の中で無傷、果たしてこの傷ついたゲッターで太刀打ちできるか。
いややるしかない、俺達が奴を見逃せば大きな被害が出るのは間違いない。
「タケシ!リリア!まだやれるな!」
「当然ですわ!」
「おう!」
そこからはさらに激しい戦いが続く、奴の装甲は知っての通り頑丈、攻撃の通る場所を見つけるべくあらゆる技で、あらゆる武器で全身をくまなく攻撃する。一方で奴は俺達の攻撃など避ける必要もないと動かず、腕を揮うだけで宇宙空間をも揺るがす衝撃波を放ち、俺達を粉々にしようとしてくる。
死力を尽くし、全てを燃やして、ゲッターも俺達も満身創痍だが一つだけ分かった事がある。
奴にはほんの少しだけ装甲を歪ませる程度であったが、ゲッタービームが効いていた。
ならば!
「リリア、タケシ!」
「ペダルを踏むタイミングを」
「合わせるぞ!」
実戦でやるのは初めてだ、それに本当に効くかもわからねえ、だがこれが最後の武器だ。
ゲッター・フェニックスが、三つのゲッター炉心が光を放ち、命を燃やす輝きを生み出す!
これがゲッターの最終兵器!
そのエネルギーの輝きに今まで余裕を見せていた巨大ルミナスナイトが身じろぎをした。
奴は今まで動かなかったんじゃない、動けなかったんだ。図体ばかりデカい重鈍なウドの大木。
なまじパワーと防御力が取り柄だからどんな攻撃も避けずに済んだだけだったのだ。
「シャインスパーク!」
光り輝くゲッターの突撃、そして放たれるゲッター線の塊が奴を呑み込み、ドワオと消し飛ばした。
そして、俺にある一つの予感……あるいは予知が浮かぶ。
きっとユユカとリリアにも同じものを感じているかもしれない、それは……これはまだ序章でしかない。
本当の戦いはまだこれからなのだと。
ゲッターロボ・ルミナス 第一部 完