鳳凰院凶真と沙耶の唄   作:folland

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※もうひとつの終わり

「フゥーハッハッハッハ!!やはり天は俺に味方しているようだな!!!」

 

「いや女に荷物を持たせるとか最低なのだが……病み上がりってのも、もう通用しないんじゃないの?」

 

「トゥットゥルー♪まゆしぃも負けてしまったのです」

 

「牧瀬氏もまゆ氏も運が悪いのだぜ」

 

「少なくとも橋田は持て」

 

俺たちは今秋葉原に来ていた。

何を隠そう俺の『退院から一ヶ月たったのです祝い』(命名:まゆり)のための買い出しだ。

 

そしてジャンケンをして負けたものが荷物を持つというやつだ。

敗者に男も女も関係ないのだ。

 

「しかしようやっと涼しくなったな。これで秋葉のカオス度も和らぐ」

 

今は10月。

あの激動の夏から2カ月がたとうとしている。

 

7月28日に紅莉栖を救い、8月21日に戻ってきてそのまま入院。

退院まで一カ月ほどかかった。

 

退院直後に紅莉栖に会い、そのままラボメンに誘った。

最初の頃はおとなしかった紅莉栖も今ではふてぶてしい態度をとるようになった。

 

うむ。いいことだ。

 

SERNやラウンダー達がどうなっているかはわからない。

未来はどうなるかわからない。

 

これでいい。

未来は不確定だからこそ、希望が持てるのだ。

 

 

 

だが。

 

何かを忘れてしまっている気がする。

ぽっかりと胸のところに穴が開いているような感覚。

 

リーディングシュタイナーを持つ俺が、世界に記憶を書き換えられるなんてことはないはずなのだが……。

いったい何なのだろう。

 

物思いにふけりながらボーっと人の渦をかき分けていると。

 

ふいに。白いワンピースが目の端に映った。

 

「っ……!!」

 

白いワンピース。

見たことがない。

だが。

 

なんだ。

わからない。

でも。

 

思わず走り出す。

 

「岡部!?」

 

白いワンピースはすぐに人ごみの中に消えた。

見失ってしまう。

 

白くひらめくものを追って人ごみをかき分ける。

どこにいった。

 

1人、2人とかき分けるが、あまりに人が多い。

白いワンピースも見失ってしまった。

 

当たりを見回しても、もう見つけられなかった。

 

「……はぁ……」

 

「どうしたの岡部? ていうか荷物持ってる女の子を走らせるな……」

 

息を切らせながら紅莉栖がやってくる。

 

「何か……何か忘れている気がするんだ……」

 

「はぁ? 何かって何?」

 

「……なんだろうな……」

 

胸に渦巻く寂寥感が、いったい何かもわからない。

何かを、忘れてしまった。

大切な何かだった気がする。

忘れたくない何かだった気がする。

何も覚えていないが、ただ、その思いだけが胸に残っている。

 

「……いきましょ、岡部」

 

優しい紅莉栖の声。

 

促されるまま。歩き始めた。

 

 

 

 

 

何か。何かを忘れてしまった。

ただ俺は今、幸せだった。

 

 

 




これにて完結です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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