八幡の手持ちについては作者の趣味でいっています。
短編として数話ほど掲載します。
「へ?」
目を覚ましたらパラシュートなしの落下中という事態に流石の比企谷八幡も戸惑いを隠せない。
「え、どゆこと、え、え!?」
慌てて手足を動かすも風圧で碌に動かせない。
いや、なんでこんなことになっているんだ!?
少し前の記憶を探る。
いつも通りの奉仕部の日常。
修学旅行のドタバタで本音をぶちまけた後で、
その後で……。
記憶がない!?
涙目になりながらも周りを見ていると同じように落下している二人の存在に気付いた。
「ゆ、由比ヶ浜!?雪ノ下!」
俺が叫ぶも二人は反応しない。
二人とも気絶しているみたいだ。
必死に手を動かしてなんとか二人へ近づこうと足掻く。
どれだけの高度があるのかわからないが、このまま放置もできない。
平泳ぎの要領でなんとか動きながら由比ヶ浜と雪ノ下の腕を掴んだ。
どうすればいい、このままだと俺達もつぶれてしまう。
どうすれば!?
『見つけた』
「へ?」
聞こえた声と共に体中に感じていた風圧がなくなる。
久しぶりに感じた、何かに包まれているようなもの。
この感覚は――。
『随分と成長しているな。一瞬、わからなかったぞ』
目の前に浮かんでいる存在に俺は一瞬、理解が追い付かなかった。
もしかして、ここは――。
『そうだ、かつてお前が過ごし、いきなり去った場所だ』
「戻ってこれたのか……」
そういって俺に向かって頷くのはミュウツー。
ポケモンの中で最強と呼ばれる一体。
そして、数年前に俺がこの世界で旅をした仲間の一体だ。
中学生の時、俺は神隠しにあった。
勿論、これは公表されていない話だ。
まさかの異世界。
ポケットモンスター、縮めてポケモンと人間が暮らしている世界。
ポケモンを悪用しようとしていた組織の実験で俺はこの世界へやってきた。
逃げる際にドタバタありながらも、オーキド博士という人と知り合い、ポケモントレーナーになった。
ポケモントレーナーになって色んな地方を旅して、この世界で過ごすのも悪くないなぁと思った直後に元の世界に戻ってしまう。
仲間達とも別れて一人。
元の世界に戻った時は愕然とした。
色々な事があって目の前が真っ暗になりながらもなんとか今まで生きてきた。
それなのに。
「突然の再会って、なんなんだ?」
俺が今いる場所はカントー地方のマサラタウンという小さな街。
そこに住んでいるオーキド博士の研究施設。
「彼女達は無事だよ。意識を失っているだけみたい」
「そうか、悪かったな。ケンジ」
長身でガタイの良い、赤いバンダナを巻いた少年。
ポケモンウォッチャーでオーキド博士の助手を今は努めている。
「少し見ない間に成長したね」
「あっちの世界じゃ、三年か四年は過ぎているからな」
久しぶりに再会したケンジと同じくらいの身長になっていてびっくりしたけど。
「ハチマンが戻ってきたって知ったらサトシも大喜びするよ」
「サトシか、まぁ、それよりもバトル申し込まれる可能性が高いが」
「そうだね」
苦笑するケンジ。
変わっていないなと懐かしく思ってしまう。
「俺も、いきなりのことだったので……驚きましたよ。この世界じゃそんなに経過していないなんて」
聞いた時は自分の耳を疑ってしまった。
この世界と俺の世界は時差というべきものがあるんだろうと推測する。
『そろそろ良いか?』
様子を伺っていたミュウツーが俺に声をかけてくる。
「あぁ、久しぶりだな。ミュウツー」
『先程、記憶を覗かせてもらったが大変だったようだな』
助けた時に俺の頭の中を覗き見たらしい。
戻った後の黒歴史とか色々と知られた訳だ。
まぁいいけど。
『事情はわかった。だが、お前の仲間は納得してないぞ』
自分も、とミュウツーが言う。
「わかっている。みんなと話をしないといけない……俺のモンスターボールは?」
「博士が保管してくれているよ」
ケンジが先導してくれる。
俺はミュウツーと共に保管庫へ向かう事にした。
久しぶりの手持ちの再会だ。
「ところで、一緒にいた女の子達は八幡の友達?」
「友達……になりたい関係だな」
少し前に本音をぶつけたからだろう。
色々ありながらも俺はそう思えるくらいに成長した……筈。
オーキド博士は気絶している雪ノ下と由比ヶ浜の容態を見てもらっている。
保管庫はケンジに案内してもらった。
研究所の保管庫はマサラタウンから旅立ったトレーナー達の手持ち6匹を超えたら自動的に転送されたものが置かれている。
俺はマサラタウン出身じゃないが、保護してもらったオーキド博士の好意で手持ちを超えた仲間達は保管している。
ケンジの話によると俺の手持ちをミュウツーが連れてきて保管してくれていた。
ミュウツーに感謝だな。
『これからが大変だぞ』
「え?」
『お前の存在を感じ取って今すぐにでもボールから出ようとしている。だが、放置された事で感情が暴走している者達がいる。不用意にまとめて出せば』
「……出せば?」
『聞きたいか?』
「ごめん、やめておく……」
確認をしてくるということは命にかかわるかもしれない。
いや、それをしそうな仲間に心当たりがありすぎて。
「ミュウツー、ボールを外へ運んでくれるか?」
「わかった」
「ここでいいだろう、おろしてくれ」
ミュウツーの念力で運ばれた六個のモンスターボール。
ボールから出ようとからからと暴れているがミュウツーが抑え込んでくれている。
とりあえず揺れが酷い奴を一つ手に取った。
「解除してくれ」
ミュウツーが頷くと同時に光り輝いてモンスターボールが開く。
瞬間、視界全部を氷が覆いつくしてくる。
このまま氷漬けにされる前に俺は目の前のポケモンを抱きしめる。
「ごめんな、ユキメノコ」
抱きしめたところで冷たい感覚になるも、同時に温かいものを感じた。
大きな声で泣きながら俺を抱きしめ返すポケモンの名前はユキメノコ。
進化前から仲良くしていたポケモン。
ポケモンハンターに狙われていた事を助けてから懐かれてしまった。
ひたらすら泣いた事で落ち着いたのか、そのまま俺の腕にしがみついて離れない。
「え、この調子で次いくの?確実に喧嘩起こる子いるんだけど」
『諦めろ。拒否すればお前を氷漬けにすると言っているぞ』
「え」
ミュウツーの言葉で腕にしがみついているユキメノコをみる。
ニコリと微笑んでいるがその目は「本気ですよ」と語っていた。
「わかった。じゃあ、このままで」
嬉しそうに顔をぐりぐりしてくるユキメノコ。
これは勝手に居なくなった俺の罰という事で我慢する。
次のモンスターボールを開ける。
雄叫びを上げて巨大な翼を広げて現れるのは絶滅したと言われている古代ポケモンのプテラ。
プテラは口を開けると俺の頭をガジガジとあまがみしてくる。
古代ポケモンの発掘現場の地下で眠っていたポケモン。
ポケモンの化石発掘ブームで悪さをしようとした連中と共に地下で遭遇。
どさくさに紛れてゲットしたポケモンだ。
当初は古代ポケモン達のボスを気取っていた事から俺の言う事を聞かなかったが色々あった末に仲間になったポケモン。
空による飛行の移動等によって助かっている。
心配していたようでしばらく甘噛みが続いた。
解放された時、俺の顔は唾液塗れ。
ミュウツーが用意したタオルでユキメノコが拭いてくれた。
プテラはしばらくモンスターボールに戻りたくないらしく少し離れた所で待機している。
「次」
ため息を零しながら先ほどから揺れが激しいモンスターボールの開放を頼む。
直後。
ユキメノコが吹き飛んだ。
文字通り吹き飛んだのだ。
俺は飛んで行ったユキメノコをみてから襲撃ポケモンをみる。
目を鋭く細めてユキメノコを襲撃したポケモン。
「あの、サーナイトさん?」
伸ばしていた手をおろしてゆっくりとサーナイトがこちらに近付いてくる。
細まっていた目が段々と戻っていき、うるうると瞳に涙が集まっていく。
俺を抱きしめてギャン泣きする。
優しくサーナイトを抱きしめ返しながら優しく頭を撫でた。
サーナイトはラルトスの時に心無いトレーナーに捨てられて森の中で他の野生ポケモンに傷つけられていた所を助けてゲットしたポケモンだ。
ユキメノコと同じくらい?俺に好意を寄せてくれている。
抱きしめられた事に喜びを感じるサーナイトが手を伸ばしてきた時。
「~~~~!」
背後からユキメノコが雄叫びと共にサーナイトに攻撃を仕掛ける。
サーナイトは俺を掴んだと思うとその場から離れた。
少し離れた所で、え、凄い殺意のオーラを滾らせているユキメノコがいる。
「やっぱりこうなるよなぁ」
ユキメノコとサーナイトは仲が悪い。
ヒロインみたいな立場にいる俺を巡ってこの二匹は独占欲全快なのだ。
旅の途中、何度、バトっていただろう。
偶に俺が理不尽なお仕置きを受けることもあった。
目の前で氷やら超能力の爆発が起こっている。
「止めてくれない?」
『ストレスが溜まっていたようだ。発散させてやれ』
「そうか」
ミュウツーの言葉に俺は放置することにした。
残り三つ。
「ヒッキー!」
大きな声で俺を呼ぶ奴は。
「由比ヶ浜、雪ノ下!」
「ヒッキー!」
嬉しそうに俺へ抱き着いてきた由比ヶ浜。
体に感じる柔らかさはぁあああああ。
「発情谷君」
絶対零度の目で俺を見てくるのは雪ノ下雪乃。
「二人とも、目を覚ましたんだな」
「えぇ、先ほど、オーキドさんから簡単に事情を説明してもらえたけれど、その、ここは異世界なのよね?」
「あぁ、その証拠に」
俺は傍に控えているプテラを呼ぶ。
のしのしと呼ばれて興味深そうに由比ヶ浜達をみている。
「大きいね」
「え、えぇ、少し怖いけれど」
「コイツはプテラ、俺の手持ちポケモンだ。プテラ、こっちは由比ヶ浜と雪ノ下、俺の、友達に近いものだ」
俺の言葉に安心したのか、プテラが近くにいた由比ヶ浜の顔へクンクンとにおいを嗅ぐ。
「くすぐったい!」
「さ、触っても大丈夫かしら?」
「あぁ」
おずおずしていた雪ノ下達だが、プテラを触って慣れてきたらしい、
「ヒッキー、この子、可愛い!」
しばらく撫でられ続けていたプテラ。
満足した二人は近くの切り株へ腰かける。
「オーキド博士から事情を聴いているとは思うが、ここは俺達がいた世界とは別の世界だ。人とポケットモンスターこと、ポケモンが一緒に暮らしている世界」
「ポケモンって、プテちゃんみたいな?」
「あぁ、プテラ以外にもいろんなポケモンがいる。あそこでバトっている二匹もそうだし、俺の後ろで佇んでいるミュウツーのような」
『ミュウツーだ』
「喋った!?」
「本当に色々といるみたいね。そして、貴方は昔、この世界にいたのね?」
「あぁ、この世界で旅をして、色んなポケモンと知り合ってきた。そしたら突然、元の世界に戻されて、また、この世界に戻ってきた」
「……私の記憶が確かなら部活中だった筈、何が切欠だったのかしら」
「それはわからない……気付いたら空の上だった。ミュウツーがいなかったら俺達は空の藻屑だった」
「ミュウツー?」
「ミュウツーとは貴方の事ね?」
八幡の後ろに佇んでいるミュウツー。
ちなみにポケモンと人が会話を成立するのは初対面で中々厳しい、しかし、ミュウツーはエスパータイプであることからテレパシーで会話をする事が出来る。
『そうだ。ハチマンの気配を急に感じ取れた私が駆け付けた……話の腰を折って悪いがそろそろ他の三匹とも顔合わせをしてやった方がいい』
「そうだな。ミュウツー、二人を守っていてくれるか?」
『わかった』
「え?」
「比企谷君、それは」
二人が何かを言う前にミュウツーがねんりきを発動させる。
背後から奇襲を仕掛けようとしたユキメノコとサーナイトの攻撃が阻まれた。
「え!?」
「ヒッ」
ハイライトを失った瞳で見つめてくる二匹に戸惑う由比ヶ浜と怯える雪ノ下。
攻撃が阻められた事に二匹は目を細めながら叫んでいる。
「ミュウツー、通訳を」
『お前に抱き着いた、お前と会話をしたことが我慢できないらしい』
「オーケー、二人とも落ち着いてくれ、頼むから」
続けて攻撃しそうな二人を落ち着かせようとした時、ボールの一個が開いて雄叫びと共に二匹の攻撃を受け止めるポケモン。
「わ、大きな手!」
「あれも、ポケモンなのね」
『そうだ、ハリテヤマ』
「ハリテヤマ!」
俺の叫びと共にユキメノコとサーナイトの攻撃を防いだハリテヤマはそのまま力任せに地面へ叩きつける。
力技によって無理やり地面に押さえつけてしまう。
俺はハリテヤマへ声をかける。
「ハリテヤマ」
「!!」
呼ばれて振り返るハリテヤマはポロポロと涙を零す。
涙を零しながら両手に力を込めていた。
ハリテヤマの掌の下で二匹が悲鳴を上げているが、いつも通りの光景になつかしさを覚える。
「凄い光景……」
「ポケモンというのはどれも個性的のようね」
呆然としている由比ヶ浜。
雪ノ下は冷静にポケモンを観察している。
「ハリテヤマ、二匹が落ち着くまで頼む」
「!」
コクン!と頷くハリテヤマ。
しばらく落ち着かせないといけないから俺はその間に、残り二つのモンスターボールを開ける事にした。
「ヒッキー、さっきから一個ずつ開けているけれど、まとめてはダメなの?」
「開けてもいいんだが、急な別れだったせいで怒ったりしている奴もいるから一匹ずつ対話する形で開けようと思って」
『面倒だ、早く済ませろ』
暴走しそうなレギュラーメンバー達の他にもポケモンはいる。
一番、ヤバイメンツが手持ちの状態で別れてしまったから一匹ずつやっていこうと思っていたんだが、ミュウツーがまとめてボールを解除した。
雄叫びを上げるバンギラス。
そして、
『マスター!』
俺の姿を見て、膝をつく一体のポケモン。
「え、ルカリオ?」
片方に現れたのはロケット団の幹部に悪用されていたバンギラス。
そして、最初のパートナーとして別れる直前まで旅を続けていた筈のリオル。
どういうわけかルカリオに進化していた。
『マスター、マスターに会えず、オレは!』
涙をポロポロ零しながら。
『はどうだん!』
「うぉおおい!?」
慌ててルカリオが放つはどうだんをギリギリのところで回避する。
『勝手にいなくなるなんてひどすぎる!』
「それは悪いけどさ!なんで出会い一番ではどうだんなんて撃ってくるんだ!?」
『何も言わずにいなくなったマスターが悪い!』
続けてはどうだんを撃つルカリオ。
ぎりぎりの所で回避する。
通常のバンギラスより一回りも大きなバンギラスはやり取りを眺めながら近くの木に腰掛けた。
「ば、バンギラス!助けて」
『手出し無用!そこで見ているのだ!』
動こうとしたバンギラスだったがルカリオの言葉を聞いて再び腰かける。
どうやら中立を貫くらしい。
「ねぇ、あのルカリオっていうの?さっきから喋っていない?」
「そういえば、貴方はテレパシーを使って喋っていたようだけど、あのルカリオ、普通に喋っているわね」
『アイツはハチマンと会話をしたいという強い思いから私が人間の言葉を教えたのだ。アイツが元の世界へ戻った事がショックだったのか、リオルからルカリオに進化した……一番、付き合いが長い故に複雑な気持ちなのだろう』
「ヒッキーと一番、仲良しだったんだ」
「いきなりの別れ、辛かったでしょうね」
この三十分後、気持ちの整理がついたルカリオによって謝罪と同時に再びパートナーになるのだが、それまで昔の感覚を取り戻すように全力疾走する羽目になった。
久しぶりの異世界で翌日は筋肉痛確定。