――ポケモンバトル。
それは文字通り、ポケモンを使ってのバトル。
ポケモンバトルは世界的人気を誇っており、幼い子供はトレーナーや大会を優勝したチャンピオンへ羨望と憧れを抱く。
そんなポケモンバトルを俺は久しぶりに行うことになったのだが。
「よし、覚えた」
ブランクがあるのですぐにバトルは待ってとサトシに伝えて、荷物の中にあったスマホロトムで手持ちの技を確認する。
久しぶりに手持ちの情報を更新したものの、果たしてうまくバトルできるかどうか。
頭と実際のバトルは違うところがある。
『マスター』
呼ばれて顔を上げる。
こちらをみているルカリオと目が合う。
迷うことなく俺を見ている目。
さっきまで色々と悩んでいた頭がクリアになる。
――オレを信じて、オレもマスターを信じているから。
喝を入れるように両手で膝を叩く。
「悪い、少し迷った」
『大丈夫だ。マスターが迷ったらオレが背中を押す。オレが迷ったら、マスターが背中を押してくれる。そういう約束だ』
「あぁ、あったな」
互いに頷いて相手をみる。
こちらを待っていてくれた二人に感謝しながら距離をとった。
『準備は良いな?』
「あぁ」
「勿論!」
ミュウツーが審判役を申し出てくれた。
「ヒッキー、頑張って!」
「……」
由比ヶ浜と雪ノ下の視線を感じながら俺は試合の合図を待つ。
「ハチマン!今度は俺が勝つぜ!」
「ピッカァ!」
やる気満々のサトシとピカチュウ。
久しぶりの再会だというのに昔と変わらない態度。
いや、向こうからしたらほんの一年程度のもの。
その間にアイツはどれだけ研鑽を積んできたのか。
俺のキャラではないが、ポケモンバトルの事となると。
「ギラギラする」
「ガウ!」
呟きに呼応するルカリオ。
『はじめ!』
ミュウツーの叫びと共にバトル開始の合図。
「ルカリオ、しんくうは!」
「ピカチュウ!でんこうせっか!」
「ガウ!」
「ピッカァ!」
先制攻撃でぶつかりあうルカリオとピカチュウ。
「10万ボルト!」
電気エネルギーをチャージ、そして十八番か!
「ルカリオ!かげぶんしん!」
だったら翻弄してやる!
「うわぁ、増えた!たくさん、増えたよ!?」
「これがポケモンバトル、凄いわ」
由比ヶ浜と雪ノ下はミュウツーが守ってくれているから全力でやって大丈夫だ。
「(つるぎのまい!)」
向こうが十八番を使うのならこちらも十八番のアイコンタクトだ。
「アイアンテールでまとめて薙ぎ払え!」
サトシの指示でピカチュウの尾が銀色に輝く。
アイアンテールが一体、また一体とルカリオのぶんしんを切り裂く。
やはり、前に戦った時よりも成長している。
ハナコさんからも聞いた話だと俺が元の世界に戻った後も旅を続けて、アローラ地方のポケモンバトルでチャンピオンになった。
成長して強くなった仲間で好敵手と全力バトル。
何だろうな、懐かしい気持ちと。
――ワクワクする!
今の俺からしたら信じられないかもしれないが忘れていた気持ちがむくむくと沸き起こってくる。
「あぁ、楽しいな。忘れていた。ポケモンバトルって」
「そうだよ!ハチマン!ポケモンバトルは」
「「最高だ」」
俺達は同時に叫ぶ。
「行くぞ、サトシ」
「あぁ、ハチマン!」
「ガウ!」
「ピカァ!」
俺達の気持ちに呼応するように相棒も気を引き締める。
「ピカチュウ!」
「ルカリオ!」
ここで一気に終わらせるというのもありだが、俺のブランクの埋め合わせに付き合ってもらっているんだ。
奥の手を使うというのもありだが、それは次回だな
「10万ボルト!」
「メタルクロー!」
互いの技がぶつかりあい。
そして。
「引き分け」
「だな」
土煙の中、ダウンしているルカリオとピカチュウ。
久しぶりのポケモンバトルは引き分けという形になったけど、とても満足した。
「ヒッキー!すごい、よくわかんないけれど、すごい!」
「私も由比ヶ浜さんと同意見よ。うまく言葉にできないけれど、あんなイキイキした表情ができたのね」
「お、おう」
バトルが終わり、ルカリオとピカチュウを休ませていると興奮した様子の由比ヶ浜と見た目は変わっていないように見えるけれど、目がキラキラした雪ノ下がいる。
そういえば、こいつらがいる前でポケモンバトルを楽しんでいたわけで。
「(少し恥ずかしい)」
「俺とピカチュウももっと強くなるから、またバトルしょうぜ!」
二人から目線を逸らしていると回復したピカチュウと一緒にやってくるサトシ。
「サトシ君と言ったかしら?貴方、比企谷君とどんな関係なの?」
「関係?一緒に旅をした仲間でライバルだよ」
「旅?」
「この世界の子どもは10歳になるとトレーナーとして旅をでることができるんだよ。その旅に俺も同行していたんだ。元の世界に帰るための情報を探す理由で」
「いやぁ、ハチマンって、ポケモンバトル、とても強くって、一回も勝てなかったんだよなぁ」
「あれはお前がなんでもかんでも直線的過ぎてわかりやすいからだ」
「そうかなぁ?」
「今回だって、俺のブランクがあった部分を詰めていたら勝てた癖に付き合ったりして……まぁ、そのおかげで昔の感覚を取り戻せたけれど」
「えへへ」
ニコリと笑うサトシに何とも言えず視線を逸らす。
「ヒッキーが照れてる?」
「珍しいこともあるわね」
「コホン!」
場の空気を変える為に空咳をする。
「とにかく、ポケモンバトルがどんなものかわかっただろ?」
「早くて凄かった!」
「短い時間だけど、とても奥が深そうという事は」
雪ノ下の言葉は流石だが。由比ヶ浜ぁ……。
『おい、話しているのは良いが、時間は大丈夫なのか?』
「時間?」
ヤバイ。
『タマムシシティに買い物へ行く話だ』
「そうだった!あたし達の服!」
「時間的にまだ、大丈夫そうね」
「でも、どうやっていこっか?」
由比ヶ浜と雪ノ下の二人。
「二人はどっか行く予定だったの?」
「タマムシシティよ。私達の服を買いに」
「タマムシシティ!あそこは香水とか人気なんだよなぁ、俺はわからないけれど」
サトシの奴、前に香水の事を馬鹿にしてジムを出入り禁止にされたことがあったな。
「ハチマン、プテラ持っているし、そらをとぶで連れて行けばいいんじゃ」
「あ、おい」
「そらをとぶ?」
「それはポケモンの技かしら?プテラなら確かに、人を乗せて飛ぶことも」
そこで二人が俺を見てくる。
確かにプテラに乗ればタマムシシティまですぐに行けるだろう。
だが、
「時間が惜しいから今回はミュウツーの力を借りるか」
「その方が早いかも」
こうして、俺達はタマムシシティへ行くことが決定した。