ミュウツーの力で数分経たずにタマムシシティに到着。
『では、二時間後にここへ戻ってこい』
ミュウツーはそういうとマサラタウンへ戻る。
一緒にいるからマヒしかけているが、コイツは伝説のポケモンの一柱。
姿を見せたら余計な騒ぎを招くことになりかねない。
それ故、場所を指定したんだろう。
「何か、良い香りがするね?」
「タマムシシティは香水の生産地だからな。花も多い」
「何よりタマムシシティは草ポケモンが沢山いるんだ!」
「……なんでお前らいんの?」
力でテレポートした所、隣で普通にサトシとピカチュウのコンビがいた。
「いいじゃん、これからどうするか悩んでいたから気分転換!」
「そういえば、アローラでチャンピオンになったらしいな。おめでとう」
「ありがとう!!」
サトシに祝辞を贈ると嬉しそうに答える。
「アローラでチャンピオンになったけれど、俺の夢であるポケモンマスターの道のりはまだまだ先だ!ハチマンにリベンジしたいし!」
「リベンジって、お前、相変わらずポケモンバトルバカだな」
「当然!」
そんな他愛のない話をしつつ、俺達は移動をしていた。
移動している間に彼女達はいくつかのお店を回っていく。
「ハチマンは服とかどうするんだ?」
「どうせだし、タマムシデパートで揃えるか、他に必要なものもあるし」
予備のモンスターボールやきずぐすりとかな。
「二人の事は任せて大丈夫か?」
「オッケー!」
「ピカ!」
一人と一匹がサムズアップした事を確認して一人、タマムシデパートに向かう。
歩いていく俺の後をついてくるルカリオ。
「どうして付いてくる?」
『マスターと共にいたいだけです』
「……あ、そう」
『それにあの二人の護衛にリーグチャンピオンとその相棒がいるんだから大丈夫だろう』
ルカリオのいう事は一理ある。
『それに、マスターはデパートに行くことを決めたのは地下を確認する為でしょう?』
俺は表情を変えずに振り返る。
わかっていたか。
流石は俺の相棒だ。
『一応、ジュンサーさんが調べましたが、何か気になる事でも?』
「まぁ、一応……」
ルカリオと共にタマムシデパートへ。
地下へ行く前に服を購入。
『どこか、サトシがホウエン地方で着ていた服と似ていますね』
「いわれたらそうだな。まぁ、これが一番、安い」
同じ服を何着か選んで、必要な道具を購入後。
「行きますか」
前に俺達が侵入する際に使ったルートは既にジュンサーによって封鎖されている。
もしやと思って別のルートを選んだらそこは通れた。
『この通路、生きていたのですね』
「前にいくつか候補を調べていたからな……残ったままという事にジュンサーさん、仕事しろといいたいが」
『怠惰なマスターのセリフとは思えませんね』
ルカリオの言葉に俺は無言を貫いて中に入る。
タマムシデパート。
その地下は嘗て悪事を尽くしていたポケモンマフィア、ロケット団の秘密基地だった。
当時、旅をしていた俺とサトシ達は連中を取り締まっていたカントーポケモンリーグ四天王ワタルと協力して連中を捕縛した。
その際に。
「やっぱりあったな」
秘密の通路を移動して、隠されていた壁から現れる一つのアタッシュケース。
『マスター、それは?』
「ポケモンの化石だよ」
アタッシュケースの中から現れたのは裏ルートで手に入れたポケモンの化石。
見覚えのあるものもあれば、俺も知らない化石も存在していた。
『どうして、これを?』
「いや、前に突入していた時にちらりと下っ端が隠しているところを見ていて、それが気のせいかどうか、いやぁ、すっきりしたわ」
『マスターの変なところを覚えているのは変わらず』
「うっせぇ、それよりそろそろ戻るぞ」
『その化石はどうするつもりですか?』
「そうだな。ニビシティへ寄贈するか、どこかで復元してもらうかだな」
他愛のない話をしながらタマムシデパートの隠し通路その2から出て、サトシ達と合流しようとした時。
『そういえば、彼女に会わないのですか?』
「おい、やめろ」
ふと思い出したように呟いたルカリオの疑問へ俺は待ったをかける。
そういうのは世間一般ではフラグと。
「見つけましたわ」
後ろから聞こえた声に俺は動きを止める。
ギギギとさび付いたようにゆっくりと振り返った。
そこに立っていたのは一人の女性。
いつも纏っている着物姿は走ってきたのか少しばかり乱れているものの気品さというのだろうか?そういうものは失われていない。
男なら見惚れてしまうほどの美貌を持つ少女。
俺はこの人を知っている。
「お久しぶりです。ハチマンさん」
「……エリカ」
タマムシシティのジムリーダー、くさタイプの使い手。
お嬢様で、性格はおっとりしている彼女はニコリと微笑むと距離を詰めて俺の手を両手で包み込むように握りしめる。
「お、おい!?」
「サトシ君から話を聞いた時はとても驚きましたが、本当に再会できてうれしく思います」
「そ、そうか」
誰もが見ほれるほどの美しさを持つ彼女から距離をとろうとしても腕をしっかりと掴まれて離れられない。
「もう、会えないかと、本当に、本当に」
手に落ちる水滴。
それは涙。
戸惑っている俺の前で彼女は泣いていた。
『マスター』
後ろから咎めるように俺を呼ぶルカリオ。
わかっている、って、はぁ。
こうなった原因がいるというのなら殴りたい。
心の中で思いながら前に踏み出す。
「悪かった。なんの連絡もなくいなくなって……」
「はい……」
しばらく彼女が落ち着くまで俺はその場から動けなかった。
◆
「淑女としてはしたないところをお見せしました」
落ち着いたエリカは顔を赤くして俺は少し距離をとる。
「まぁ、いきなりで驚いたが……原因が俺だから、まぁ、その気にするな」
妹の小町にしているように優しくエリカの頭を撫でようとして手を止めた。
危ない、危ない。
相手は妹じゃないんだ。
不用意に。
「おい!?」
ガシリと俺の手を掴んだと思うとそのままエリカは頭へ置く。
「久しぶりの再会なのです。こうして甘えてもバチは当たりませんわ」
普通の女性は嫌がるという事を学習装置で理解していたんだが?
あれ、間違い?
彼女の要望に従ってしばらく頭を撫でる。
「あぁ、久しぶりですが、良いものですわ」
時間にして数分。
彼女は本当に満足したのか手を解放する。
「それにしても、どうして俺がここにいるって?」
「実は大学の講師としての業務が終わった帰り道にサトシ君達と出会いまして」
納得、人見知りとかしないサトシは普通にエリカへ声をかけたのだろう。
その際に雪ノ下達と出会い、色々と話をしているときに俺の事も聞いたという訳か。
それにしても、俺を探してあっちこっち走り回ったのだろうか?
申し訳ない気持ちと躊躇せずにジムへ足を運べばよかったかもな。
エリカと俺が出会ったのはジムへ挑戦した時の事。
ジム挑戦時に色々とハプニングが発生しながらも俺は手持ちのリオルや仲間達と勝負に勝利した。
その後、ジムの外でいくつかのやり取りをしたら懐かれた感じだ。
しかし、なんで懐かれたのか今になってもわからないな。
今はサトシ達と合流する為に街中を歩いている。
「そういえば」
思い出したように手を叩くエリカ。
「ナツメさんに連絡はされたのですか?」
「…………あぁ、いや」
ナツメという名前に俺は過剰に反応しないようにした自分を褒めたい。
エリカが話したナツメという名前はここと別の街にあるジムのリーダーだ。
エスパーポケモンの使い手で出会った際は感情の起伏が少ない女性だったのだが。
「私もそうですが、ナツメさんも貴方と再会することを望んでおりますわ。時間を見つけて会いに行ってあげていただけませんか」
「まぁ、気が向いたらな」
『マスター』
背後から咎めるルカリオ。
うるさい、アイツに会うのはエリカ以上に気を付けないといけないんだよ。
ジロリとルカリオを睨む。
「これからハチマンさんはどうされるつもりで?」
「サトシから話は聞いているかもしれないが、これといった予定はない。只、前と違って俺以外に巻き込まれた奴がいつからそいつらの為に旅を再開するかもしれない」
元々、考えていた事だ。
俺はともかく雪ノ下達はこの世界ははじめて、家族に会えない不安や色々とあるだろう。
そんな彼女達の為に帰還の方法を探してあげたい。
「優しいですね」
隣で小さく笑うエリカ。
「それならば、あのお二人にもポケモンが必要かと思います」
旅をするならパートナーポケモンは必要。
野生のポケモンや有事の際に頼りになる。
俺も旅をしていた時は傍にリオル、いや、ルカリオがいてくれた。
それを考えたら雪ノ下や由比ヶ浜もポケモンは必要かもしれない。
「オーキド博士に相談するか」
「その方が良いかもしれませんね。まぁ、ハチマンさんがいれば大丈夫かもしれませんけれど」
「やめてくれ、俺はそこまで強くない」
「あらあら、それは過小評価ですよ?貴方程の猛者はそうそういませんよ」
口元に手を当てながら小さく笑うエリカ。
「ジョウトリーグチャンピンのハチマンさん」
「まぐれみたいなもんだ。実際、四天王に全勝はできてないからな」
あの人たち、本当に強すぎるんだよ。
天狗の鼻を折るというわけじゃないけれど、リーグを優勝した時の気持ちが萎える程の強さだし。
「ヒッキー!」
そんな事を話し合っていると由比ヶ浜が手を振っている姿が見えてきた。
雪ノ下と同じようにたくさんの荷物を抱えている。
女子だから色々と必要なんだろうなと心の中で思う。
「また、ジムの方に遊びに来てくださいね?お待ちしております」
そういうエリカと別れて指定した場所へ向かった俺達はミュウツーのテレポートでマサラタウンに戻った。
◆
「ねぇ、ヒッキー」
「なんだ?」
マサラタウンに戻り、サトシのママさんのおいしいご飯を頂いた俺達はコテージに戻ってきていた。
「あの、エリカって人、ヒッキーとどういう関係?」
「知り合いだな」
「貴方に知り合いがいたのね」
「まぁな、といっても彼女はジムリーダーなんだよ」
「何それ?」
ぽかんとする由比ヶ浜。
「この世界で旅を始めた時、色々あって俺はポケモンリーグに出ることにした。ポケモンバトルの大規模大会だ。それに挑むためには八つあるポケモンジムのリーダーにバトルを挑み、勝利した証のジムバッジをそろえる必要がある。アイツはタマムシジムのジムリーダーなんだよ」
「じゃあ、貴方と同じくらいポケモンバトルが強いという事かしら?」
「そうかもな。といってもチャレンジャーのレベルに合わせてアイツもバトルするから、今の俺とバトルしたらどうなるかわからないな」
ジムリーダーの本気バトルって、よくよく考えたら一、二回しかないんだよな。
一応の勝利とギリギリの勝利だからなんともいえない。
「少し、気になるわね」
ぽつりと雪ノ下が呟く。
「比企谷君とサトシ君のバトルを見た時から、少しポケモンバトルに興味が出来たわ」
「あ、アタシも!」
「そっか」
男女問わず魅了させるポケモンバトルという言葉があるけれど、まさにそれだな。
俺は今日、考えていた事を二人に伝えることにした。
「明日なんだが、オーキド博士の所へ行こうと思う」
「え、博士のところへ?」
「あぁ、二人のパートナーポケモンについて」
「私達の?」
「人によるけれど、この世界はポケモンを持っていることが当たり前だ。元の世界へ帰る為の方法や旅をするってなれば、ポケモンは必要になってくる」
「そうね。比企谷君の言う通りだわ」
「ポケモンかぁ、どんな子と出会えるのか楽しみかも!」
「決まりだな」
明日はオーキド研究所だ。