滅竜魔導士がオラリオに迷い込むのは間違っているだろうか   作:合体魔人トム・ブラソン

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第一章 『奇跡の炎よ 燃え上がれ』
プロローグ


暗い。

 

 

 ふわふわとした独特で水に浮いているような不思議な感覚を感じる。

 

 

暗い。

 

 

 あれ、俺は何をしていたんだったか?思い出せない。

 

 

暗い。

 

 

 思い出そうと頭を動かしても、靄が掛かったようにうまく回らない。

 体を動かしても、得られるのは空回りする手足の感覚のみ。

 

 

暗い。

 

 

 目が開いているのか、閉じているのか分からない。ただあるのは暗闇だけ。

 

 

暗い。

 

 

 何がどうなっているんだ?俺の心には恐怖と困惑の感情だけが満たされている。

 

 

暗い。

 

 

 誰か・・・誰か助けてくれよ。

 

 

――目覚めよ

 

 

 声がする。何処だ?何処から聞こえてるんだ?頼む助けてくれ!

 

 

――目覚めよ。人の子よ

 

 

 ぼう、と後ろから明るくそして温かな光が突然生まれた。

 その暖かな光に懐かしさを覚え、バッと振り向くとそこには見上げるほどの大きさを誇る赤い竜が佇んでいた。

 

 

――目覚めよ。そして、生きるのだ

 

 

 その言葉を受け取ると、自分の体が炎に包まれていく。

 思わず、炎を払おうとするが意味はなく益々勢いは増すばかり。

 勢いに比例するように意識は遠くなり、そして手放してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めた。

 

 そう認識するにはそう時間はかからなかった。

 

 ぽたりぽたりという音が耳に入り、薄暗い場所で横たわっているという感覚も、体から伝わる地面の冷たさも、すべてが情報として未だ半覚醒な脳に取り込まれていく。

 

 "生きている"という実感が恐怖心よりも安心感が勝り、鉛のように重たい体を起こした。

 

 そうして、今自分がいる場所についての情報を得ることができた。

 

 背を伸ばすとぶつかりそうなほど低い天井と、わずかばかりの水溜りがある狭い出口のない洞窟のような場所。

 

 足元にはそれなりに分厚い一冊の本と動物の皮でできた背嚢がある。

 

 2つを拾い上げ、本に目を通す。

 

 一ページ目には『壁を壊し、上を目指せ』『背嚢は無限大。願えばその手に。我からの贈り物』という赤い文字で記されており、二ページ目には赤い点が描かれた地図、三ページ以降は様々な生き物の情報が描かれている。

 

 パラパラと流し読みし、改めて一から読み直そうとし立ち止まる。

 

 手にした背嚢の口に手を入れてみた。

 

 どれだけ腕を入れても底には当たらず、背嚢の中で手が宙を舞うという不思議な体験をしつつ、先ほど本に書かれていた一文を思い出し、願おうとしてみたらぽっと脳裏にリストと絵が浮かんできた。

 

 

――あぁ、なるほど。

 

 

 感覚的に理解"させられた"おかげで、この背嚢の使い方を覚え一旦放置。

 

 もう一度本を手に取り、いまだ掘り起こされ続ける2つの記憶を整理しながらじっくりと読み進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれほど時間が経っただろうか。

 

 ついに最終ページまでたどり着いた男は、ぐっと体を軽快に起こし凝り固まった体をほぐし始める。

 

 記憶の整理も落ち着き、すっきりした頭でこれからのことを考える。

 

 本に書かれた通り上を目指してはいくのだが、この"上"というのが難解だ。

 

 メンタルや実力的なものかもしれないし、普通に進むべき道を示しているのかもしれない。

 

 後者だったら普通に上への道を探して歩んでいけばいいが、前者だったら何かしらの問題があり、それを乗り越えるために力をつける必要があるかもしれない。

 

 それに、夢で見た赤い竜の言葉も気になる。

 

 

「"生きろ"か…」 

 

 

 色濃く受け継いだ記憶の方とは違う、少し高めの声に違和感を覚えながらも頭を悩ませる。

 

 この世界がもし、ベル〇ルクのようなダークファンタジーの世界だったら心が折れる。必ず折れる。俺は耐えきれない。絶望と悪夢が蔓延る世界で生きたくない。

 

 出来るなら希望が見える世界がいい。どれだけ傷ついても、どれだけ失っても、最後にはみんなが笑ってるたった一つの希望がある世界がいい。

 

 

「あぁもう。なるようになれ…」

 

 

 この体の、本来の主が言わないような台詞を吐き捨てながら、明らかに薄そうな壁に手を当て、祈りながら強く押した。

 

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