滅竜魔導士がオラリオに迷い込むのは間違っているだろうか   作:合体魔人トム・ブラソン

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第二話 希望の光

 あの大脱走劇から長い時間が経った。

 大きな滝が流れる通路を通り抜け、4,5階分の階段を上った。

 

 敵も弱くなっているのか、自分がこの体の本来の力を発揮できるようになったのか分からないが、かなり余裕をもって倒せるようになってきている。

 その空いた余裕で地図を読みながら探索をすることができるようになったし、2つの記憶を更に吟味する事もできた。

 

 そんな時、視界にふと不思議な景色を捉えた。

 

 女体の上半身と蜘蛛の下半身を持つ怪物が複数の怪物に囲まれて攻撃されている。最初は縄張り争いか?と思ったが、蜘蛛女の様子が可笑しい事に気が付いた。

 彼女の表情は普通の怪物のように殺気を帯びておらず、むしろ人のような感情、そう困惑という感情を浮かべている。

 

 その様子を見て、直感が彼女を助けるべきと囁いてきている。

 

 

――第一村…人発見?これは、チャンスか?

 

 

 もしあの蜘蛛女が会話の出来る存在であれば、この世界について色々聞けるかもしれない。仮に話せなくても、恩を売ったということで後々助けになるかもしれない。

 

 そうと決まればと足に炎を込めて噴射し、急速に接近。

 一番近かった怪物に蹴りを叩きこむ。蹴られた怪物は大きく吹き飛び、壁にめり込んで消滅。

 

 突然の出来事に、蜘蛛女もその他取り巻きも、俺を見て一瞬呆けていた。

 

 そんなことお構いなしに、両腕を胸の前で交差させ取り巻き達の間に着地。着地の瞬間、両腕をバっと広げ炎を噴出し数体を巻き込んで消滅。

 

 最後の一体が高速で飛翔しながら接近し、尻尾から針を突き出した。

 

 あわや突き刺さるかというところだったが、難なく反応し片手でその胴体を掴み、そのまま炎を噴出して消滅し脅威は去った。

 

 ふぅっと息を吐き、整えて蜘蛛女の方へ振り返る。

 

 

「無事だったか?」

 

 

 そう明るく笑顔で放った言葉は彼女の胸中にあった緊張と困惑は消え、安堵の表情を浮かべるようになった。もっとも、俺に対する疑惑の感情も浮かんではいるが。

 

 

「あ、あぁ…私は平気だ。それより、お前のその格好は…」

 

 

 彼女が俺の頭の先からつま先まで視線を動かしながらそう問いかけてくる。

 確かに、今の格好は少々まともではない上着は原形を留めておらず、ボロボロで隙間から素肌が見えるし、大小多くの傷跡がありちょっと血の跡がある傷もある。

 

 

「んお?これはちょっと無理しすぎた!だから気にすんな!」

 

 

 彼女はやや引いたようにえぇ…と声を漏らす。

 永い間この洞窟らしき空間にい続けたせいか、常識とかのネジが外れてしまっているのかもしれない。だが、今はそんなことはどうでもいい。

 

 

「なぁ、あんた名前とかあんのか?」

 

「名前、私の名前は…ない。それより、自分から名乗ったらどうなんだ?」

 

 

――確かに!?それもそうだ!

 

 

 そう大袈裟なリアクションで反応をすると、俺の様子が可笑しかったのか少し微笑んだ。そうして名乗ろうと、声を出そうとした瞬間、もう一つの雰囲気を感じ取った。

 

 

「誰だ?」

 

 

 そう声を上げて周囲を見渡す。彼女は突然の変化に驚き、続くように周囲を見渡した。

 

 

「談笑中に済まない。敵対の意志はないからどうか、その気を収めてほしい」

 

 

 その声がする方を見ると、全身を黒衣で包んだ何者かがいた。

 俺も傍にいた彼女も、対面する存在が害をなす存在ではないことを感じたが、その胡散臭い見た目に惑わされ警戒心だけを強めている。

 

 

「何者だ?何の用で我々の前に姿を現した」

 

「私の名はフェルズ。地上の神ウラノスの命によって、君たちの前に姿を現した。私の目的はアラクネの異端児(ゼノス)と桜色の髪をした少年、君の保護だ」

 

 

 今の問答によって得られた情報はあまりにも大きく、活性化した脳が悲鳴を上げるほど記憶から情報を引っ張り出してくる。

 

 

――地上の神。ウラノス。異端児(ゼノス)。そして、フェルズ。

 

 

 今まで出会ってきた怪物たちの容姿、本に書かれた内容、そして今得た情報。

 それら一つ一つが、パズルのようにカチッとはまっていき、遂に一つの解を導き出した。

 

 

「保護?保護だと…まさか、私のような者がいると?」

 

「あぁ、いるとも。彼ら彼女らも君と同じようにこのダンジョンで生まれ、今ある場所で共同で生活をしている」

 

 

 アラクネが驚きの表情を浮かべ、フェルズを睨んでいる。

 そして、今確定的な情報を掴み疑惑が確信へと変わった。

 

 そうか、ここは。この世界は――

 

 

「言葉で信じられないならば、実際に案内してみせよう」

 

「あぁ、俺は信じるよ」

 

「な!?こんな怪しい見た目の奴を信じるのか?」

 

「確かに怪しい見た目してるけど、信じてもいい」

 

 

 フェルズは少しショックを受けているのか、どんよりとした雰囲気を醸し出している。

 

 

「と、取り敢えず付いてきてくれるということで良いか?」

 

 

 フェルズの問いかけに元気よく返事をして、アラクネに目を向ける。

 

 

「お、おい!そんな勝手に」

 

「まぁ良いじゃねぇか!何かあったらそん時は俺が何とか解決してやるよ!ラーニェ!」

 

「そんな無茶苦茶な…それと、"ラーニェ"とはもしや、私の事か?」

 

「ん?そりゃあんたの名前だよ!いい響きだろ?」

 

 

 その名を聞いて、なんとも言えない表情をしているラーニェとちょっと意外そうな雰囲気を出しながらこっちを見ているフェルズ。

 

 

「そういえば少年。君の名を聞いてもいいか?」

 

 

 

 

 

「俺か?俺の名はナツ!火竜(サラマンダー)のナツだ!」

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