滅竜魔導士がオラリオに迷い込むのは間違っているだろうか 作:合体魔人トム・ブラソン
――え、えらい目に遭った...。
あの後何故か因縁を付けられたが何とかあの少女と別れ、無事に地上へ出ることが出来た。
地上へ出た時に物珍しさで辺りをきょろきょろとしていたらギルドの職員につかり、あれよあれよとこの街のドンとご対面。
最初はどうなるかと思ったが、俺の事情を汲み取りしばらくはこの街で過ごせるようにしてくれた。また、この街での生活のためフェルズが色々サポートしてくれるようで、その代わりにちょっとしたお願い事を引き受けることになった。
例えば研究の協力であったり、
そうしてフェルズとこの街のドンで色々話し合い、これからのことは追々話すことにし仮拠点へ案内された。案内役はもちろんフェルズ。
案内された所は簡素なところでベッドとちょっとした家具が置かれた部屋だった。フェルズやドンからはこんなところで申し訳ないと言っていたが、長い期間ダンジョンで生活していた身としてはこれ以上の贅沢はないと感謝した。
数日後迎えに来るからそれまで自由にしていいと言われ、久しぶりのふかふかのベッドへ身体を投げ入れ余りの気持ちよさにすぐに眠ってしまった。
相当肉体や精神が疲弊していたのだろう、気が付けば翌日の朝になっていた。昼に寝て次の日の朝…?とビックリしたが、疲れが取れたのかすっきり快調だった。
フェルズの迎えが来るまでしばらく布団の上で過ごすのもアリかと思ったが、空腹に耐えきれず飯を求めて街へ繰り出した。
見慣れない街の景観と様々種族の人にワクワクしつつも、どこかいい飯屋ないかなぁ~と口笛を吹きながらキョロキョロとしていたら後ろから声を掛けられた。
「おい貴様」
それだけであれば無視するか適当にあしらう予定だったが、その声の主はとても聞き覚えのある声で――
「聞こえなかったか、ナツ・ドラグニル。貴様のことを言ってるのだ、ピンク頭」
「う、ウス...」
だれが淫乱ピンクじゃとツッコみたかったが、そうツッコむには恐れ多い相手で気が付けば周りにいた人はさっと距離を置かれた。
「貴様、ここで何をしている?」
「い、いやぁ~その、腹ぁ減ったんで飯屋探してたンすよ...」
「なんだ?その軟な話し方は。今すぐにやめろ、気に障る」
――怖いよぉ...
この子多分年下だよね?年上に強く当たりすぎじゃない...? と内心戦々恐々としながらさっきまでのワクワクを返して欲しいと願っていたら、彼女の口から意外な言葉が出てきた。
「…ふん、まあいい。今日はあの子の言いつけもあるからな。貴様、さっき飯屋を探していると言っていただろう?この街の美味い店を教えてやる。礼だ」
驚いた。彼女がこんな風に気を利かせてくれるなんて、少し意外だ。いや、あの子って言ってるからおそらく妹の事だろう。妹と何らかの話し合いでこうやって借りという形で因縁を忘れようとしてるのか?
最初に出会ったときは因縁をつけられて大変な目に遭ったし、恐ろしい印象しかなかったが妹さんが関わるだけでここまで雰囲気和らぐもんなのか。
妹大好きすぎだろ。
「そ、そうなのか?ありがとう、助かるよ。でも、俺結構食う方さ」
少し遠慮がちに礼を言うと、彼女は目を開け無表情のままその程度気にするなとそう言いながら彼女はスッと背を向け、街の通りへと歩き始めた。
周りの人々が彼女に目を向けるたび、自然と道を譲っている。
大丈夫かなぁとちょっと不安になったが、それからしばらく彼女の後を追うように歩いた。
彼女との間に会話はなく黙々と彼女に引き連れられながら街を進んでいく。
「ここだ」
しばらく歩いた先で彼女が立ち止まったのは、少し古びた雰囲気のある小さな店。外からは分かりにくいが、店の前に立つとふんわりとした美味しそうな匂いが漂ってきた。
「ここは…?」
「ここはこの街でも古くからある食堂だ。味も量も保証しよう」
へぇと感動しつつ、彼女に礼を言うと。
「…さて、連れてきたぞ
「え?」
「ほう、こいつがそうか」
一人の女性が俺の背後からスッと現れて肩を組んできた。間近でわかる肩を組んできた彼女の強さ。
――なるほど、これは...。
ギギギと顔をアルフィアの方へ向けるが、彼女は目を閉じ明後日の方へ顔を向けていた。
「まぁここで立ち話もなんだ。中で飯を食いながらゆっくりと話そうじゃないか。
彼女はそう言って、無理やりを俺を店の中へ連れていかれる。全力で抵抗しているがびくともしない。
アルフィアも俺の状況を知ってか知らずか、静かについてくる。
店の中へ入るととても楽しく飯を食べてるような雰囲気ではなく、冒険者たちはこっちを見ながらテーブルについていた。
ちょっと、いやド派手にヤバイと危機感が警鐘を最大レベルで鳴らし続けている。
何とか逃げようと身をよじるが一向に逃げれる気がしない。
「ん?どうした。…あぁ金に関しては気にするな、私のおごりだ。遠慮せず、好きなだけ食べるといい」
「い、いやあのちょっとォ...」
「それとも何か、のっぴきならない理由でもあるのかい?ん?」
肩に回された腕に力が入り、彼女の言葉で席に座っていた冒険者たちの表情が険しくなり、腰を上げようとしたところで観念した。
「い、いえ…喜んでご一緒させていただきますぅ...」
「うんうん、それでいいんだよそれで。それじゃ、楽しい食事会にしようじゃないか」
――あぁ、俺ここで死ぬのね…
そう心の中でこぼし、生きてここを出られるように祈った。