滅竜魔導士がオラリオに迷い込むのは間違っているだろうか   作:合体魔人トム・ブラソン

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第六話 燃え盛る闘志

 店に入った時の異様な歓待は何だったのか、入店時とは打って変わって店の中は活気に満ちていた。冒険者たちが笑いながら飲み物を交わし、賑やかな声が響く。

 しかし、主人公は緊張した面持ちで、テーブルに座っていた。自分がここにいていいのかという不安が頭をよぎる。

 

 しばらくして、店主が料理を運んでくる。香ばしい匂いが立ち込め、目の前に並べられた料理は豪華で食欲をそそるものだった。だが一瞬、手を伸ばすことをためらった。

 

 その様子を見た女帝が、隣で腕を組みながら不敵な笑みを浮かべる。

 

「遠慮せず食え。これはお前への礼だ。」

 

 その一言で、少し緊張を解き、ありがたくそれじゃあ、と料理に手を伸ばす。

 口に運んだ料理は絶品で、心に一瞬の安堵が浮かんだ。

 

 緊張が解け、次々と胃袋から聞こえる声に従い続けどんどんと食べ続ける。

 

 その様子に同じテーブルに座る女帝は大きく笑い、女帝の向かい側にいるアルフィアは少し眉間に皺を寄せながら少しずつ食事を食べる。

 

 食事へ伸ばす手が緩やかに落ちていきしばらくして、女帝が再び口を開く。彼女の声には威圧感があったが、どこか優しさも感じられる。

 

「仲間を助けてくれた礼は、これで終わりだ。」

 

 その言葉に、主人公は一瞬、何かが終わったかのような感覚を覚える。しかし、女帝の言葉の裏には何か含みがあるようにも感じられた。まるで、ここから何かが始まるかのような不穏な予感が、彼の胸に広がる。

 

 店の賑やかさとは裏腹に、静かな緊張感が漂い始めた。

 

 女帝がジョッキを軽く揺らしながら、ふと俺に視線を向けた。彼女の目はどこか挑戦的で、同時に好奇心が伺える。

 

「私個人の興味として聞きたいことがある。お前は何故冒険者になった?」

 

 その言葉に一瞬戸惑った。自分は正式な冒険者ではない。ギルドに登録したこともなければ、この世界の住人ですらない。異世界から突然この場所へと転移してしまった存在であり、冒険者という肩書を名乗る資格があるのかどうかも分からない。彼の心の中には、答えに詰まるような迷いが渦巻いていた。

 

「俺は……その、正式には冒険者じゃないんだ。それに、この世界の人間じゃ――」

 

 そう言いかけたところで、女帝は彼の様子を見て、ふっと笑い声を漏らした。彼の悩む姿が少し滑稽に見えたのかもしれない。

 

「それはそれは……とても興味をそそられるが、本題はそれじゃない。そんなに悩むことか?」

 

 女帝の声には、茶化すような軽さがあった。彼女は肩をすくめながら続ける。なおアルフィアは閉じていた目を開き、女帝とナツへ交互に視線を動かしていた。

 

 

「冒険者かどうかなんてこの際どうでもいい。この街にいる理由なんて、大体が金の為、名声の為、力の為だ。大概の奴はこのどれかに当てはまる。だがお前は、そういったものはないのか?」

「いや待て、どうでもよくないだろう」

 

 

 その言葉に主人公は再び思案にふける。金や名声、力――それらが目的でないことは確かだ。しかし、では自分は何のためにここにいるのか?何のために戦うのか?自分が異世界に転移してきた理由すら、俺にはまだ分かっていなかった。

 

 一方で、女帝は目を細め、俺の反応を興味深そうに見つめ続けていた。

 

 しばらく考え込んだ後、ふっと顔を上げ、決意を込めた目で女帝を見つめる。俺がここにいる理由はまだわからないが、戦う理由ははっきりしている。それは、黒竜を討つためだ。

 

「倒したい奴がいるんだ。」

 

 その言葉を聞いた瞬間、店の空気が一変した。女帝の鋭い目がナツを捉え、その顔に浮かんでいた軽い笑みが消え、代わりに何かを探るような鋭い視線が注がれる。だが、それも一瞬のこと。すぐに彼女は楽しそうに唇を歪め、からかうように笑い声を上げた。

 

「そいつは素敵だな。倒したい相手がいるってのは、いい理由だ。」

 

 女帝はジョッキを置き、椅子の背もたれに身体を預けながら、さらに嘲笑を含んだ声で続けた。

 

「だが……今のお前じゃ、その『奴』の前に立つことすらできんだろうな。」

 

 彼女の笑いは冷たく、挑発的だった。まるで、俺の目標がどれほど無謀なものかを知っているかのように。その笑いには、圧倒的な実力者としての自信と、(ナツ)を、いや俺自身()への嘲りが込められていた。

 

 その言葉が主人公の胸に突き刺さる。自分の力がまだ及ばないことはわかっている。しかし、だからこそ俺は(ナツ)を馬鹿にする事だけは許せず女帝を睨みつける。

 

女帝の冷たい嘲笑が響く中、俺の心には怒りが宿っていた。その嘲りを一切受け入れず、女帝を鋭く睨み返した。腹の中で煮えたぎる感情が、表情に現れている。

 

 それを見た女帝は、ますます楽しげに笑う。

 

「ほう、睨みつける胆力は持ち合わせてるか。」

 

 その声には、少しの興奮と期待が滲んでいた。彼女はゆっくりと立ち上がり、周囲の仲間たちも静かにその動きを見守る。

 

「どれ、腹ごしらえは済ませただろう?泣いて喜べ。この私が直々に、食後の運動をサービスしてやろう。」

 

 次の瞬間、ナツの顔面に衝撃が走り、重力に逆らうようにして店の外へと吹き飛ばされる。

 

 店の扉を破り、ナツは外の地面に激しく叩きつけられる。周囲の通行人たちが驚いて足を止め、何事かと見つめる中、女帝はゆっくりと酒場から出てきた。

 

「その程度の力で、目的のお相手を倒すつもりか?笑わせる。お前にはまだ足りないものが山ほどあるな。」

 

 女帝は冷たくそう言い放つ。地面に伏していたナツが、ゆっくりと立ち上がり、拳を握り締める。

 彼女の言葉に負けじと、主人公は歯を食いしばりながら応じる。

 

「んなもん、俺が一番知ってるよ。だがそれが何だ?」

 

その言葉に女帝はさらに笑みを深めた。

 

「さっきよりだいぶましな顔になったな。だがいくら吠えたところで無駄だ。貴様みたいに負け犬が吠えたところで、何も変わらん。誰もお前を頼りにしないし、期待もしない。何もできずに終わるだろう。」

 

 女帝は高笑いしながら、まるで俺のすべてを見透かしたかのように言葉を投げつける。

 主人公はその言葉に拳を強く握りしめ、彼女を睨みつける。

 

「ンだと?」

 

女帝は軽く鼻で笑うと、さらに挑発を続けた。

 

「吠えるだけで何かが変わると思ってるのか?大したこともできないくせに、ただ悔しさにしがみついているだけの負け犬だ。」

 

 その瞬間、胸の中で怒りが爆発した。頭に血が昇り、理性が吹き飛んだかのように一歩踏み出す。体中が熱くなり、火が燃え上がるような感覚が広がった。だが、いつもなら感情と共に魔法が発動するはずのところで、()は無意識のうちに拳を固め、身体が自然に反応した。

 

「ウオオオオオ!!」

 

 叫びながら、ナツはそのまま女帝に向かって突進した。魔法は使わない。怒りに身を任せ、今はその身体(ナツ)の戦闘本能が優先して動いていた。

 

 女帝は満足げな笑みを浮かべ、あざ笑うように構えを取る。

 

「ほう、やっとその気か。だが、お前のような半端者がどこまでできるか、見せてもらおうか。」

 

 ナツの拳が彼女に向かって放たれる。だが、女帝はそれを避けることなく受け止め、返す刀で彼の腹に拳を突き込んだ。衝撃で息が詰まりそうになるが、ナツはすぐに体勢を立て直し、再び彼女に向かって拳を繰り出す。

 

「いい重さだ。だがそんなもんか?もっと本気で来い!」

 

 女帝は笑いながらさらに挑発する。

 

 だが、ナツは諦めなかった。拳は次第に速さと力を増していき、女帝に迫る。自分の身体が驚くほどの反応を見せることに戸惑いつつも、()はその動きに身を任せた。ナツの肉体が、彼に驚異的な力と反射を与えていた。

 

 二人は殴り合いを繰り広げ、店の前の通りは激しい戦いの舞台となった。衝撃音が響き渡り、観衆がその光景を見守る中、二人の間の空気はますます熱を帯びていく。

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