"星熊勇儀"が地上への入り口に着くと、入り口には血と肉塊が飛び散っていて、数人の鬼がぐったりとしていた。そして何人かの鬼が何かを囲んでいる。
「おい!お前ら大丈夫か!?」
「姐さん!俺らは大丈夫だが橋姫が···」
何かを囲んでいた鬼の一人が返事をし、勇儀が見れるように退いた。
「っパルシィ!しっかりしろ!大丈夫か?」
橋姫、"水橋パルスィ"が顔色を悪くして倒れていた。
「何があった!?」
「赤い生き物が落ちてきて、近づいた奴が倒れたんだ」
「でも、ワシは近づいてもなんともなかったぞ。恐らく何か有害な気体が充満していたのじゃろう」
勇儀が聞くと鬼の若者と老人が答えた。
「分かった。ヤマメ!いるか?」
「いるよ」
突然上からヤマメと呼ばれた少女が降りてきた。
「おそらく地上の奴がこいつらについて知ってるだろう。聞いてきてくれるか?」
「あいよ。行ってくるね」
ヤマメは二つ返事で出発した。と思ったら何かを抱えて帰ってきた。
「ヤマメ?どうした?」
「なんか人間が張り付いてたよ。目があった瞬間に気絶したから驚いたよ。服がボロボロだしこいつらから逃げてきたんじゃないの?」
ヤマメは赤い生物の死体を見ながら言った。
「服装も見ない服装してるし多分外の世界の人間だろうね」
「分かった。何か知ってるかもしれないから私がパルシィと一緒に看病しとくよ」
「了解」
ヤマメは勇儀に人間を渡すとまた地上に登りだした。
(追いつかれる・・・)
グラス博士は森の中でSCP-939"数多の声"に追われていた。しばらくするとグラスは崖に追い詰められてしまった。
(やばい。死ぬ・・・)
939の牙がグラスを捉える寸前でグラスは飛び降りた。やっとの思いでグラスが下を向くとすぐ目の前は地面だった。
「うわぁぁぁぁぁ!! あ?」
目が覚めると日本風の部屋で寝ていた。自身の服を見ると下着の上に浴衣?を着ている状態だった。
「お?起きたか」
グラスが声がした方を向くと。二人の金髪の女性が立っていた。一人は大柄で一本の赤い角が生えていた。もう一人は緑眼で具合が悪そうだった。
(っ······)
グラスは無言で身構えた。助けてくれたとはいえ、異常存在ということは明らかだ。
「あなた達は何者ですか?」
「そう身構えるなよ。私は鬼の勇儀、星熊勇儀だ。こっちは水橋パルスィ」
「どうも···」
「別にあんたを食ったりはしないよ。安心しな!」
グラスは鬼の方は信用できると確信し、ひとまず安堵した。グラスは心理学者だ。人の心を読めるまでは出来ないが、大体の人柄は分かる。緑眼の方からはいい雰囲気をかんじないが···
「そうでしたか。助けてくれてありがとうございます」
「おっ?鬼と聞いて怖がらないなんてあんたもなかなか肝が据わってるね」
「ま、まぁ。ところでここはどこですか?」
「ここは幻想郷の旧地獄だ。まあただの地底と思ってもらっていいよ」
「幻想郷?」
「そうか。お前は外から来たのか。なら幻想郷から教えなきゃな。幻想郷は結界で隠されている楽園だ。外からは忘れ去られたものや、霊的な場所に接近してしまったものが入ってくる」
「なるほど」(ブライトのいたずらじゃあないのか。逆に面倒になってきたぞ)
「ところでお前は外で何をしていたんだ?」
勇儀がいきなり聞いてきた。
「心の研究をしていました」
嘘はついていない。嘘は。
これを聞くと勇儀は少し顔をしかめた。
「そうか。パルシィ」
「何?」
パルシィがうざったそうに答えた。
「こいつを地霊殿に案内してやれ」
「「!?」」
パルシィとグラスは同時に驚いた。
「ちょっ、なんでよ!」「地霊殿ってなんですか·····」
グラスは枯れそうな声で言った。
「あぁでっかい館だよ。あんたとは話したいことがあるし、人の心を研究してると聞いて、会わせたいやつがいるんだ。じゃあ先行ってるぞ」
そう言うと勇義は窓から飛び降り、とんでもない速度で奥の方へと進んでいった。
「ちょっと待ってよ!」
部屋には二人だけが残された。
(パルパルパルパルパルパルパルパルパルパル)
(何なのこいつ!妬ましいわね)
〜〜数分前〜〜
「貴方も妖怪なんですね」
地霊殿に向かいながら、目の前の男が頷く。
「何よ貴方。妖怪に怯えないなんて。妬ましいわ」
「えっ?」
「あぁ。私の糧は嫉妬心なの。ごめんなさいね」
「別にいいですよ。人も人外もそれぞれ個性があるのは当たり前ですから」
「貴方は優しい人間なのね。それも妬ましいわ」
「優しい···ですか····」
男の顔が急に暗くなった。
「私は優しい人間なんかじゃないですよ。ただの普通の人間です」
(謙虚なのも妬ましいわ!パルパルパル······)
グラスの顔色の変化にパルシィは気づいていなかった。
〜〜現在〜〜
グラスに興味を持ったパルシィは、能力を使ってグラスの嫉妬心を煽ることにした。
「ところで貴方には何か嫉妬するものはあるのかしら?良ければ聞かせて頂戴」
「嫉妬するものですか·····」
グラスの顔がまた曇る。パルシィは思ったよりもグラスの嫉妬心が大きかったことに驚き、興奮している。
「強いて言えば仕事をする際に感情を捨てられる人ですね。もしくはもとから心が壊れていて、これ以上傷つかない人。そういう人に嫉妬します」
思ったより重くてパルシィはちょっと引いてしまった。
「すいません。聞かなかったことにしてください」
それから数分間沈黙が流れた。
(ちょっと気まずいわね)
「到着。ここが地霊殿よ」
パルシィがそう言うと、目の前に地底なのに木々に囲まれている大きな館があった。様々な動物の声がする。猛獣のような鳴き声も聞こえたが気のせいだろう。うん、気のせいだ。
「ここ真っすぐ行けば扉があるから。じゃあね」
そう言うとパルスィは足早に立ち去って行こうとした。
「ありがとうございました!」
「こちらこそごちそうさま」
(えっ、飛んだ?)
パルシィが飛んでいったことに呆然としつつ、グラスは地霊殿に向かって進みだした。
勇儀「·····ということだ。分かったな?」
???「ええ。任せて」
CC BY-SA 3.0の基づき作成
グラス博士の人事ファイル
著者:Pair Of Ducks
URL:https://scp-wiki.wikidot.com/dr-glass-personnel-file
作成年:2009
SCP-939 “数多の声”
著者:Adam Smascher
URL:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-939
作成年:2011