魔法世界の仮面舞踏会   作:マルク

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ちょっと今回は独自解釈混ざってます。閲覧にご注意ください。
あと今回の話を作るのにレンタル借りにTU◯AYA行ったら劇場版しかなかった(泣) よって台詞も劇場版を参考にしてます。


母として

 

(私は後悔してばっかりだ…)

 

目の前にいる管理局の執務官を相手にしながらプレシアは内心毒づいていた。

いつから間違えていたのかと問われれば、それは彼女自身にも分からない。

夫と離婚した時からなのか、女手一つで娘を育てようと仕事熱心になった時からなのか、ヒュドラ計画(無茶な計画)の責任者になった時からなのか、考えればキリがない。

ただプレシアは努力してきた。

離婚は辛かったが互いに納得した上での判断だった。

仕事も楽しかった。好きな分野の研究だったし、チームメイトも気の良い人達ばかりだった。

ヒュドラ計画のせいでその仲間達とも離ればなれになったけれども、それは自分の力不足のせいだと思っている。嫌なら仲間と同じく計画から離れるなり、退職すれば良かったのだ。しかしそれをしなかったのはプレシア自身だ。

 

理由は愛娘(アリシア)の存在が大きい。

すぐに次の職場が見つかるわけじゃないし、新しい職場でも似たような無茶ぶりを要求されたらと思うと、どうしても踏み切れなかった。

結局は自分に〝勇気″が無かったのが一番の原因なのだろう。

 

(そう、何もかも悪いのは私……だけど!)

 

ではアリシアが最初からいなければ(・・・・・)良かったのか。

 

そんな事はない。

 

絶対ない。

 

愛娘(アリシア)がいたから生きてこれた。帰れば笑顔で迎えてくれるから、あの笑顔の為ならどんな苦難もへっちゃらだった。

なのに、ここであの子の蘇生を諦めてしまえば自分は本当に『我が身が可愛いだけの人でなし』になってしまう。これ以上罪を重ねない為に諦めろ? ふざけるな。それだけはダメだ。許されない。認められない。

 

プレシア・テスタロッサがアリシア・テスタロッサの母親である資格を失う。そんな事ーー

 

「あってたまるもんですかぁああああ!!」

 

魔女の執念が込められた紫電が辺り一帯の空間を駆け巡る。まるで獣のように襲いくるそれを躱せるはずもなく、攻撃を受けた執務官クロノは彼方へと吹き飛ばされてしまう。

 

「まだ…これほどの力を……」

 

火傷と麻痺で全身が悲鳴をあげるものの、クロノは世界を救うという使命感で無理矢理捩じ伏せてS2U (デバイス)を構える。その姿に苛立ちを感じながら、プレシアが追撃を与えようと力を込めると同時に乱入者が現れた。

 

「母さん!!」

 

現れたのはアリシアと瓜二つの少女。プレシアのエゴによって生み出された存在ーーフェイトだった。

 

「ゴフッ!? 何を…しに来たの? 消えなさい。もうあなたに用はないわ…」

 

大技を撃った反動で吐血し、床に赤い斑点ができる。もうプレシアにも余裕がない。不快な感情を最大限に込めて拒絶の言葉を返すが、フェイトは諦めず食い下がる。

 

「あなたに言いたい事があって来ました」

 

語られるのは少女の心。

生まれてから長年抱いていた想いだった。

 

「私はただの失敗作で、 偽物なのかもしれません。アリシアになれなくて、期待に応えられなくて……。いなくなれっていうなら遠くにいきます。だけど…」

 

「生み出してもらってから今までずっと、今もきっと、母さんには笑ってほしい。幸せになってほしいという気持ちだけは本物です。私のフェイト・テスタロッサの本当の気持ちです」

 

いつも不機嫌そうな顔で過ごしていたプレシア。違う顔が見たいと、幸せを感じてほしいと願ったからフェイトは頑張ってきた。自分の努力が実ればきっと笑ってくれる。よく出来ましたと褒めてくれる。親として誇らしく感じてくれる。そう信じていた。

現実は残酷だったけれど、この想いだけは誰にも否定させない、彼女の確かな真実。

 

言いたい事を出し切って満足したのかフェイトは強い視線でプレシアを見つめながら手を伸ばす。

 

「フン、くだらないわ…」

 

プレシアは煩わしそうにフェイトから視線を逸らし、手に持つ長杖(デバイス)で床板を叩く。するとそれを合図に『時の庭園』の崩壊が一気に加速した。振動がより激しくなって天井、壁面、地面に亀裂が走り、各ブロックが崩れて次元の狭間『虚数空間』へと飲み込まれていく。この場所も時間の問題だろう。

 

「私は行くわ。アリシアと共に…」

 

そう言いつつアリシアの遺体を入れた保存カプセルに寄り添う。

 

「言ったはずよ。私はあなたの事が…大嫌いって…」

 

そしてプレシアとフェイトの間に亀裂が入った。2人の心が決して通じ合う事がないかのように。

 

「母さん、アリシア!?」

 

プレシア達の足場が崩れ、2人は虚数空間へと落ちていく。その光景をフェイトは絶望に満ちた心で見ていた。虚数空間内では魔法が発動しない。飛行魔法も使えなくなるから落ちたら2度と助からない。無駄だと分かっていながらも身を乗り出して手を伸ばす。

 

そんなフェイトの横を黒い何かが通り過ぎていった。

 

「え?」

 

何かの正体はデルタに変身したアーベントだった。体には命綱としてロープが巻き付けられており、迷いなく虚数空間へと飛び込んでプレシア達に接近していく。そして2人を掴み救出したかに見えた。

しかしーー

 

経年劣化のせいか、アリシアのカプセルは掴まれた衝撃によって破損してしまう。バキッという渇いた音が鳴り響き、掴んだ箇所から先ーーアリシアの入ったカプセルだけが虚数空間の深部へと落ちていった。

 

「アリシア!? アリシアぁああああああ!! イヤぁああアアアア!!!」

 

プレシアが半狂乱となりアーベントの腕の中でもがく。なんとかアリシアの下に行こうとするものの、アーベントの拘束は外れない。

 

「ああくそ、暴れるなよ! お〜い、早く引き揚げてくれ!!」

 

魔法が使えない虚数空間だが、それはあくまで飛行魔法や儀式魔法の話。BJ (バリアジャケット)のような常時構築し続ける魔法ならいけるのではと考えたアーベントは事前に変身しておいていたのだ。彼はその判断が正解だったと感じるが、それもいつまで保つかは分からない。こうしている間にも魔力がガリガリ削られている。なんとかプレシアを落ち着かせるべきだが、アーベントの口から漏れ出た言葉は真逆の激昂させるようなものだった。

 

「母親のフリはそろそろやめたらどうだ? あんたには向いてないよ」

 

プレシアの動きがぴたりと止まる。そんな彼女の異変にお構い無しに尚も煽りは続く。

 

「娘っていう重石が消えたんだ。むしろ喜ぶところだろ。これで科学者としての自分に戻れるじゃないか。アースラであんたのカミングアウトを聞いた時からずっと違和感を感じていたよ。

あんたの行動原理は2つ。『独りは寂しい』、『私が失敗するはずがない』、この2つだけだ。子どもの都合なんてどうでも良いんだろ? 自分の言い分さえ通れば良いんだから。

そんな身勝手な奴は『親』じゃない。『大人』ですらない。体が大きいだけのーーただの子どもだ」

 

お気に入りの人形(アリシア)がいないと夜も眠れない。そんな駄々をこねる子どもこそがお前の本質だと語るアーベントに鬼気迫る形相でプレシアは睨みつける。

 

「あなたに何が分かるのよ! 私はあの子の為に全てを捧げてきたわ! 私にはあの子の母親としての資格がある! 助ける義務が! 責任がある! それの何が悪いっていうの!!」

 

「動かなくなったアリシアを見て何を思った? これは死んだわけじゃない。生命力(バッテリー)さえ与えればまた動き出すとは考えなかったか? それこそがあんたがアリシアを愛玩人形として扱っていた証拠だ。

フェイト(仮初めの娘)を人形呼ばわりしておきながら、アリシア(実の娘)を人形扱いしているんだよ。実に滑稽な話じゃないか。なぁ、プレシア・テスタロッサ」

 

絶叫を上げながら魔女の爪がアーベントの体を襲う。

爪が割れ、剥がれ落ちて血が流れてもデルタの装甲は傷つけられない。これが生身だったら今頃、アーベントは眼球を潰されていただろう。

仮面を鮮血に彩られながらもアーベントはプレシアを決して離さなかった。

 

そしてフェイト達に引き上げられて数分後、遂に『時の庭園』は完全崩壊した。

 

こんなはずではなかった全てを取り戻すと誓って20年以上奔走したプレシア。彼女はこの戦いで愛娘の体も、母の矜持も、全てを失ったのだった。

 

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