蒼海の鉢巻と鋼鉄の艤装を風に乗せて   作:擬態人形P

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第12話 ~自給自足の生活~

まず、大型貨物船であるらいちょうを案内するにあたって、曙が最初に向かったのは、船内に備わっている積み荷置き場であった。

そこは、高い天井の中に幾つものコンテナが積み上げられており、妖精さん達の力によって動く巨大なクレーンもある。

コンテナはその隣にあるレールの上に固定されている大発動艇へと乗せられていく仕組みだ。

そして、外への扉が開けられると、その大発の扱いに長けた艦娘達によって海上へと運ばれて行くシステムになっていた。

中には艤装の力も含めた怪力を駆使し、手で積み荷を運ぶ艦娘達もいる為、装着置き場を含めた工廠は、その隣に設置されている。

 

「この工廠の担当者である明石さんは、あたしの師匠なんだよ!あの艦娘デッキの発艦システムを伝授してくれたのも、師匠かも!」

 

そう話すのは、飛行型ロボットである二式大艇ちゃんから通信を送る秋津洲。

どうやらアニメの見過ぎというのは、その師匠の方も当てはまるらしい。

そうこうしている内に、アイオワ達はタブレットを持った岸波の所に行く。

彼女は、2人の艦娘と話しをしていた。

1人は、芦黄色の長いツーサイドアップの髪と赤と紅檜皮のオッドアイが特徴で、右腕に巻かれた鎖等、アシンメトリーの外見が特徴となっている。

もう1人は、背丈が低めで、腰まである銀髪にブルーグレイの瞳を持ち、全体的に白のカラーリングが目立っている。

 

「貴女達は………?」

「あ、アイオワさん、こんにちはー。白露型の村雨でーす!宜しくお願いしまーす!」

「ヴェールヌイだ。本当の名前は、暁型の響。呼ぶ時はどちらでもいい。」

「宜しく………この大発動艇を操ってるのって、貴女達?」

「そうですよ?本当は、あきつ丸さんもいるんですけれど、今は工廠に………あ、来ました!」

 

村雨が振り向いた方向………工廠の入り口を見てみると、白粉を全身に塗り、黒の衣装を身に纏った陸軍出身の艦娘が出てくる。

更に後ろからは、ピンク髪で横髪をおさげ風にまとめ、水色のシャツの上にセーラー服を着た艦娘がレンチを持ちながら出て来た。

 

「アイオワ殿ですね!自分は揚陸艦のあきつ丸であります!」

「工作艦の明石よ。このらいちょうの工廠関係を担当してるの。………後、秋津洲も元気そうね。」

「はい、師匠!!」

 

二式大艇ちゃんが秋津洲の嬉しそうな声と共に、明石の周りを回る。

どうやら2人の師弟関係は、良好と言えた。

 

「大発動艇を駆使できる3人が、ここでの主力級になっているのね。」

「はい!………と言っても、自分は海戦に関してはサッパリでありますが。その分、運搬の仕事で活躍の場を貰っているであります。」

 

特徴的な語尾と共に、あきつ丸が少々照れ臭そうに語る。

揚陸艦という立場である以上、艦娘の主力として褒めて貰えるのが嬉しいのかもしれない。

その様子を微笑ましく見ながら、ヴェールヌイが呟いた。

 

「曙、村雨、岸波、よつ、あきつ丸、私………そして大潮は、元々海釣り仲間だったんだ。その縁があって、このらいちょうの運搬任務に携わる事になっている。」

「そう言えば沖波が言っていたわね。………何か色々と事情があったみたいだけれど。」

 

深くはツッコまない方がいいと思ったアイオワであったが、ヴェールヌイが少しだけ笑みを見せると、安心させるように言う。

 

「仲が悪くなったとかでは無いから、安心してくれ。………大潮の方は、最近どうだ?」

「こちらは、いつも通りの毎日を過ごしていますよ。卯月や「彼女」の方こそ、どうですか?」

「相変わらずだ。だが、彼女に関しては、釣りの技術が上手くなってきている。日本文化に対する呑み込みが速いな。」

 

どうやら、大潮とヴェールヌイの話を聞いている限りだと、釣り仲間には、日本以外の艦娘も加わっているらしい。

ひとしきり会話を楽しんでいた面々を見た後、曙が岸波に問いかける。

 

「物資の運搬は完了した?」

「はい、ぼの先輩。仕事は完了したので、今はヨナ先輩が海中から船の状態を確認している最中です。朧先輩や漣先輩、潮先輩達は、元の持ち場に戻っていますよ。」

「そう………じゃ、後は任せるわ。ちょっとあたしは、アイオワ達を案内するから。」

「皆様、ぼの先輩が失礼をするかもしれませんが、許容して貰えると有り難いです。」

「だ~か~ら~、アンタってヤツは!………とにかく宜しく。」

 

岸波のマイペースっぷりに、もう怒る気力も無くなったのか、曙は肩を落として歩いていく。

アイオワ達は苦笑しながら、喜多見提督一家と共にその後を付いて行った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

船内を一通り歩いていくと、アイオワ達はとある大部屋へと導かれる。

そして、曙が徐に扉を開けると………何故か土の匂いがした。

 

「え………?」

 

アイオワは驚愕する。

そこには、天井からの光を浴びる形で、「畑」が広がっていたからだ。

人参やきゅうり、トマト等、様々な野菜が、船内にも関わらず栽培されている。

 

「ど………どういう事!?」

「見ての通りよ。あたし達は、ある程度は自給自足の生活を送ってるの。いざという時に長時間の間、陸に戻れなくなったら大変でしょ?」

 

曙の言葉は理に適っているが、ここまでの畑を作るのは相当なエネルギーがいる。

ビニールハウス並の温度調整や日光代わりの光源の調整、野菜を育てる為の肥料等、細かい管理が必要だ。

この畑は、一朝一夕で作られた物では無い。

何度も試行錯誤を繰り返されて完成された物であるのは、目を見るより明らかである。

 

「何ていうか………ここの主は苦労してるのね………。」

「あたしは勿論、クソ提督も生前褒めていたわ。………さてと、朧ーーー!天霧ーーー!ちょっと来なさーーーい!」

「んー!?ぼのぼの、どうしたのー!?」

 

曙の叫びに反応してやって来たのは、2人の駆逐艦娘。

まず、先頭に立ってタオルで汗を拭っているのは、枯草色のショートボブに琥珀色の瞳を持った艦娘。

右頬の絆創膏と、何故か肩に乗っている小型の蟹やヒトデが特徴となっている。

その後ろから鍬を持って歩いてきたのは、ダークグレーの髪を一つ結びにしている艦娘。

銀縁の、フルリム眼鏡を掛けているのが特徴だ。

2人はアイオワの存在に気付くと、状況を悟り自己紹介を始める。

 

「あ、アイオワさんですね。アタシは朧!綾波型の朧です!ぼのぼの………曙提督の親友の1人って言えばいいかな?」

「あたしは天霧だ。綾波型の天霧!アイオワさん、宜しく頼むぜ!」

「宜しくね。この畑は2人で作ったの?」

 

アイオワの質問に、天霧が首を横に振る。

彼女は照れ臭そうに頭をかくと説明をする。

 

「うーん、あたしは朧の弟子で最近、らいちょうに入って来たからなぁ………。畑の基盤はほとんど朧が作った感じかな?」

「最近は、知識をどんどん吸収してきているけれどね。」

「へぇ………ん?そう言えば貴女達、2人でコンテナを素手で運んでなかった?」

 

今更ながらに、運搬の時の状況を思いだしたアイオワが気付く。

大発動艇を駆使していた村雨やヴェールヌイと違い、この2人は文字通り艤装のパワーだけで積み荷のコンテナを運んでいたはずだ。

勿論、適性の問題もあるとは思うが、そこまで出来るという事は………。

 

「まあ2人共、力持ちだものね。ここにいる男は、慣れ親しんだ肇と、既婚者の喜多見提督だけだし………折角だから見せてやったら?」

「いいよ、はい。」

「ほい。」

「!?」

 

制服をまくって腹を見せた2人の姿を見て、アイオワは驚かされる。

2人共、その腹筋は綺麗な物であった。

朧はしっかりと引き締まっているし、天霧に至ってはムキムキに割れている。

アイオワも制服の都合で腹は出していたが、その鍛え方に関しては、天と地の差があると思ってしまった。

 

「ど、どうすればそんなに………!?」

「あ、ゴメン………驚かせましたか?実は、アタシ達トレーニングも趣味なんです。」

「船内のトレーニングルームで鍛えてるんだ。結構楽しいぜ?」

 

元々の体質もあるだろうが、相当みっちりと鍛えているのだろう………そう気付かされたアイオワは、駆逐艦への認識を少し変えないといけないと考えさせられた。

 

「さて………それじゃあ、次は漣に会いに行きましょうか。」

 

曙は、そう言うと朧達と別れ、アイオワ達を別の場所に案内し始めた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「今度は………何?」

 

次に案内された大部屋で、アイオワはまた固まってしまう。

今度目に入って来たのは、牛、鶏、豚等の動物達。

 

「見ての通りよ。肉や卵、牛乳等の生産をしているのがこの場所。」

「さっきの畑もそうだったけど、何処からエネルギーを確保してるの!?」

「貨物船の動力が大規模だから、色々と余剰エネルギーを回せるのよ。後は、妖精さんの力ね。」

「妖精さんの力って言葉で、何でも片づけていいの!?」

 

つくづく妖精さんの力は未知数だと思い知らされるアイオワ。

勿論、それを度外視しても、この動物達の育成も一朝一夕では確立出来ないであろう。

朧達と同じく、ここの主達も、試行錯誤を繰り返したに違いない。

 

「とにかく、紹介するわね。漣!多摩!来て頂戴!」

「お、もしかしなくても、漣の出番ですかな?ご主人様!」

 

妙な言葉遣いと共に餌入れを持って歩いてくるのは、ピンクのツインテールが特徴的な、フリルのエプロンを付けた駆逐艦娘。

何故か、小型のウサギが肩に引っかかっているのがポイントである。

そして、その後ろから魚を銜えて歩いてくるのは、明るい紫の髪を持った、ショートパンツの軽巡洋艦娘。

癖なのか、招き猫のポーズを取っているのがポイント。

 

「どうも、綾波型の漣です!ご主人様がお世話になっています!」

「ご、ご主人様?」

「漣のご主人様は、「提督」って意味にゃ。ちなみに多摩は、球磨型の多摩です。ネコじゃないにゃ。」

「えっと………宜しく?」

 

やたら特徴的な2人の艦娘の登場に、アイオワの頭にクエスチョンマークが沢山浮かぶ。

もしかして、この部屋の主達はこんな感じなのか?と感じさせる。

しかし、すぐに漣という名前に、まさかと思い問う。

 

「もしかして貴女は………!?」

「おっと!残念ながら、漣は「初期艦の漣」とは別人です。………でも、練度は負けないぞ!てへぺろ!」

「言葉遣いが微妙に間違っている感じがするにゃ………。ちなみに多摩は艦娘になったら、何故かこうなったんですにゃ。」

「そ、そうなのね………。」

 

前者はともかくとして、後者に関しては、艦娘の適性を受けた時に出る後遺症として、有名な事例だ。

何故か艦娘になった途端、語尾がおかしくなる者が存在する。

いや、語尾だけならばまだいい。

人によっては、髪型が変わったり、火傷の跡が刻まれたりと、身体的に変わる者もいる。

かくいうアイオワも、艦娘になった途端、目の中に星のマークが浮かぶ現象が起こっている。

それを悟ったのか、多摩は言った。

 

「ま、気にしないでいるのも優しさにゃ。気にし出したら、下手に相手を傷つけるだけだからにゃ。」

「そうね………ありがとう。」

「折角だから、卵とか食べますぅ?餌は朧の所から貰ってるから、栄養満点ですぞ!」

 

空気を変えようとしてくれているのか、漣が卵をささっと取りに行く。

どうやら、伊達にメイド風味の衣装を着ているわけではないらしい。

それにアイオワの見立てでも、心無しか練度は下手したら、多摩よりも高いように感じた。

 

(この漣は初期艦じゃない。でも………練度は初期艦に匹敵するのかも………。)

 

そうこうしている内に、漣が卵を持って来てくれた。

アイオワが手に取って少し食べてみると、口の中に味が染み渡った。

 

「美味しい………。」

「でしょでしょ!これが、漣特製の卵なのです!只今、多摩さんに伝授中!」

「漣はこんな性格だけど、動物の育成に関してはかなりのプロにゃ。」

「そうね、本当に凄いわ。」

 

アイオワは、素直に彼女達を褒めた。

そして、彼女達は漣達に手を振って別れると、次の所へと向かった。




貨物船らいちょうの日本艦娘の本名①

曙…「泉(いずみ)」(子供の名前「絵里(えり)」「祭(さい)」「涼(りょう)」)
岸波…「聖來(せいら)」
伊47…「美世(みよ)」
村雨…「亜里沙(ありさ)」
ヴェールヌイ…「乃蒼(のあ)」
あきつ丸…「志乃(しの)」
明石…「頼子(よりこ)」
朧…「都(みやこ)」
天霧…「沙紀(さき)」
漣…「小豆(あずき)」
多摩…「千鶴(ちづる)」

朧や漣の自給自足の設定は、艦これアニメからヒントを貰いました。
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