シナリオ100点道徳0点の世界に料理人をぶち込んだお話   作:エヴォルヴ

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駄文ですまぬ……キャラクターの魅力を引き出せないのは私の落ち度です。

あ、次回のことはアンケートにすることにしました。よろしくどうぞ。


二品目、マリアンヌとシフォンケーキ

 いつものように教会を訪れ、祈りを捧げる。天上の女神様に感謝と加護を願う、ただそれだけの祈りを。

 

「あれ、マリアンヌさんだ。こんにちは」

 

「っ! あ……フロム先生……」

 

「はい、フロム先生です」

 

 屈託のない笑みを浮かべて声をかけてきたのは、先週から私達に授業をしているフロム・アリアドネ先生だった。……先生も、お祈りに来たのでしょうか? 

 

「先生もお祈りに?」

 

「え? ああ、言ってなかった? 俺は神には祈らないって決めてるんだ」

 

 初耳……ですね。セイロス教はこの大陸で最も信仰されている宗教であり、女神様に祈りを捧げない人はいないと言われているくらいなのに。

 

「傭兵の頃の経験でさ……祈るだけじゃ、何も救えなかったから」

 

「それは……」

 

 フロム先生は、両親が戦場医師兼傭兵だったため、物心ついた時から戦場にいたらしい。あまり戦場のことに疎い私であっても、彼の【白磁の要塞】という異名を知っているくらいには。

 

 白い髪と白い肌、大理石のように白い盾。そして医者のような白い装備に身を包み、あらゆる障害から仲間を守ることから付けられた異名だと聞きます。

 

 だから、その分色んなことを経験してきたのだと思う。別れも、何度も乗り越えてきたのでしょう。……弱い私と違って。

 

「……ま、信仰が悪いって言ってるわけじゃないよ、俺は! 何かを信じる、信じないは人の自由だからね」

 

「強いんですね、先生は」

 

「おっと、俺の心は硝子よ?」

 

 身内が死んだら泣けないくらい落ち込む、とニコニコ笑いながら答える先生。人間は本当に悲しい時、泣けなくなるそうだけど、本当なのでしょうか。

 

「……あ、ちょうどいいや。マリアンヌさん、この後暇?」

 

「へ? え、と……それなりに、は……」

 

「お、それは良かった。ちょっと味見役が欲しくてさ」

 

「あ、味見……?」

 

 確かにベレス先生がフロム先生は料理上手だと言っていたけど……私でなくとも……

 

「ベレスも来るんだけどねー、ベレスは何でも美味しいって食べちゃうから……味見役は二人以上いた方がいい!」

 

 早速行こうと私の手を引いて歩き出したフロム先生の勢いに流されて、あれよあれよと連れてこられたのは、士官学校の敷地内にある中庭。そこにはティーセットの用意をしたベレス先生が待ち構えていた。

 

「ベレス、一人追加~」

 

「分かった」

 

『対応が早いのう、おぬし』

 

 席に招かれ、座った私の前に置かれたのは、とてもいい香りのする紅茶。どこか甘い香りのするその紅茶は、私が知らない銘柄のような……

 

「あの、この紅茶は……?」

 

「ルフナだよ。年がら年中安定した品質で楽しめる」

 

 さすがと言うべきなのか、ベレス先生は紅茶についてスラスラと答えてくれる。傭兵は教養なども要求されるのかもしれない。

 

「……あ、美味しい」

 

「良かった。淹れた甲斐がある」

 

 そう言って微笑んだベレス先生からは邪気を感じない。……思えばこの二人は、なんだかとても落ち着く人な気がする。ベレス先生がどこまでも広がる海だとするなら、フロム先生は木漏れ日が差し込む森。どれだけ荒んでいたとしても、この二人を前にすれば絆されてしまう……そんな風に思う。

 

「それで、フロム。例のものは?」

 

「抜かりなく。今出そうとしてたところだよ」

 

 中央に穴の空いた器の中に、焼き菓子のようなものが入っている。優しくて甘い匂い……とても魅力的な香り。

 

「生クリーム」

 

「ここに。氷魔法で冷やしながら、しっかりと泡立てたよ」

 

 さらに魅力的なものが追加された。リシテアさんが見たらきっと大興奮間違いなしでしょうね。……余ったら差し入れとして持っていきましょう。

 

「適量は?」

 

「たっぷりと、満足するまで」

 

「パーフェクトだ、フロム」

 

「感謝の極み」

 

 皿に盛り付けられたそれは、私が見たことがあるどのケーキよりもふわふわしていて、間違いなく美味しいことを伝えてくる。さらにそこから生クリームがたっぷりと投下されれば……甘いものが好きな人なら堪らないでしょう。

 

「【レストラン・アリアドネ】人気商品、シフォンケーキ! いつも売り切れだからね……甘党って凄いや。さぁ、召し上がれ」

 

『おお! いつも売り切れておるからな、楽しみにしておったぞ!』

 

 シフォン、ケーキ……絹織物のケーキ、でしょうか? 確かに絹のように滑らかで柔らかいようですが……

 

 フロム先生のお店である【レストラン・アリアドネ】は、学生の懐にも優しい価格で、美味しい料理を味わえると聞きます。そんな先生のお店でも、売り切れるケーキ。期待してフォークをシフォンケーキに差し込むと────

 

「柔らかい……」

 

「おお……ふわふわだ」

 

 確かにこれは絹のような……いいえ、羽毛のような感触……感触は分かりましたが、味は────? 

 

「……美味しい」

 

『ふわっふわじゃのう! 甘味も、生クリームに合っておる!』

 

 口一杯に広がる優しい甘さと、後からやってくるいちごのような風味……それなのに柔らかくて、優しい口溶け。生クリームの濃厚な甘味も相まって、口角が上がる。

 

「どう?」

 

「美味しいです……あの、これの材料って……?」

 

「卵、小麦粉、砂糖、油だけだよ」

 

 こんなに柔らかいものがたったそれだけで……!? あ、もしかして……

 

「メレンゲ……ですか?」

 

「正解。前回の授業でやったね」

 

 あの時作ったのはメレンゲパン。卵白を泡立てて、小麦粉と混ぜ合わせて焼くだけの簡単なもの。あれはシュワシュワとした食感が楽しいものでした。

 

「材料、焼き方、分量、そういうのを変えるだけで、お菓子になったり、ご飯になったりするんだ。不思議だよねぇ」

 

「フロム、今度角煮が食べたい」

 

「なんて手間のかかるものを……いいよ!」

 

『おぬし、ベレスには甘いのう……身内には、か?』

 

 角煮……? 名前や響きからして、煮込み料理なのでしょうけど……一体どのような料理なのでしょうか。

 

「おや、興味があるかい?」

 

「えっ……? あ、いえ……その……」

 

「いいよ、二人分作っておくから、嫌でなければ今度ベレスと一緒においで」

 

 穏やかな笑みを浮かべるフロム先生からは全く悪意や邪な感情を感じない。この二人の先生は、本当に不思議な人です。私の紋章についても知っているはずなのに。

 

 このシフォンケーキのようにふわふわしていて、何者であっても包み込んでしまうような……

 

「あ、ところでマリアンヌさん、ケーキはどう?」

 

 ケーキに舌鼓を打ちながら毒にも薬にもならない会話をしていると、フロム先生が思い出したようにケーキの感想を聞いてきました。

 

「美味しい、です」

 

「それは良かった。授業じゃこういうのは作れ……いや行けるな。リクエストをしてくれたらワンチャン!」

 

 ワン、チャン……? 犬のこと……ではないですよね。

 

「あの、ワンチャンとは……?」

 

「チャンスあるってこと。ギリギリ可能……かな? ってのをワンチャンって言ってるんだ」

 

「フロムの崩し言葉は分かりやすい」

 

「分からない人は分からないけどね。二人はちゃんとした言葉を使うように!」

 

「ふふ……分かりました」

 

 本当に、不思議な人です。

 

「……うん、さっきよりもいい顔になった」

 

 微笑んだフロム先生の言葉に、口に運ぼうとしていたティーカップが止まる。

 

「何の話、ですか……?」

 

「教会で祈ってた時よりいい顔してるよ」

 

 祈っていた時よりも…………確かに、教会で祈っていた時よりも穏やかな気持ちではあるけれど、どうしてそれが分かったのでしょうか……? 私は、そこまで顔に出やすい人間ではないはず……

 

「ベレスの面倒は俺が見てたからね。小さい頃は無表情だったんだよ、この子」

 

「照れる」

 

「褒めてないよ?」

 

 つまり、ベレス先生よりも分かりやすいから、私の雰囲気などが変わっていたことが分かったということ、ですか。

 

「マリアンヌさん」

 

「はい……なんでしょうか……?」

 

「何もかも嫌になって、死にたくなる時って、あったりするじゃない? 昔の俺がそうだった」

 

 瞬間、背筋が凍るような感覚を味わった。私のことが、気付かれているような、心の中を覗かれているような気がして、血の気が引く。

 

「そういう時、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけでいいから、誰かのことを考えてみて」

 

「誰かの、こと……」

 

「そう。自分の隣にいてくれる人、笑ってくれた人……誰でもいい。楽しかったことでもいいんだ」

 

 言われてすぐに思い付いたのはヒルダさんや、金鹿の学級の皆さん、そして目の前で笑っている二人の先生。それが……なんになるというのでしょう……私の周囲にいる人達は全員不幸になるというのに。

 

「んー、まだあんまり分からないか」

 

「はい……ごめんなさい、先生」

 

「いいのいいの! こういう時どうしたらいいかなぁって思った時に、相談できる人がいると、本当に楽になるよって話」

 

 楽しかった思い出は必要なのでしょうか? 相談できる人と楽しかった思い出の有無の関係性が分かりません。

 

「少なくとも、俺とベレスはマリアンヌさんとこの一週間過ごして、楽しかった」

 

「……」

 

「……ま、何かあったら相談しなさいよってこと! さぁ、ケーキのおかわりはいるかな?」

 

「いえ……これ以上はその……夕食が食べれなくなるので……」

 

 リシテアさんではありませんが、これは一度食べると止まらなくなりそうですね……

 

「そう? ならベレス、食べちゃっていいよ」

 

「分かった」

 

 そう言って残りのケーキを食べ進めていくベレス先生も、それを見ているフロム先生もなんだか幸せそうに見える。……この二人はもしかして、恋人……だったりするのでしょうか……いつも一緒にいるイメージがありますし。

 

「ベレスはどんな人と一緒になるんだろうねぇ……」

 

「? フロムと一緒だよ?」

 

「ああ……先は長いねぇ……」

 

 ……これは……フロム先生、早く気付いてあげてください……もしかしたら気付いていて、その反応なのかもしれませんが……ベレス先生が不憫です…………いえ、そもそもベレス先生の気持ちはフロム先生が言っている意味と合っているのでしょうか……? 

 

「いつかベレスが理解することを信じて、俺は仕込みに行くとするよ」

 

「えっ……?」

 

 休日のみの開店にすると聞いていたのですが……

 ベレス先生も疑問に思ったらしく、口を開く。

 

「休日のみじゃないの?」

 

「ふっ……料理人に休みという休みはないのさ!」

 

「「……」」

 

 ベレス先生と同じように、呆れた表情を浮かべてしまう。……フロム先生、もしかして……ワーカーホリックというものを患った方なのでは……? 

 

「おっと、視線が痛いぞ? 心は硝子なんだよ? 俺」

 

『……おぬし、分かっておるな?』

 

「……休ませる。決定事項」

 

「あら……? ベレスちゃん、どうして俺は君に引きずられてるのかなぁ?」

 

 自業自得……ですね、フロム先生……

 

「マリアンヌ、その残ったケーキ、友達と食べていいよ」

 

「あ、はい。ありがとうございます、先生」

 

「マリアンヌさーん、ベレスのこと止めてくれなーい?」

 

 ワーカーホリックというものを患った方は、強制的に休ませないといけない。やり手の義父が呟いていたのを思い出した私は、フロム先生の声を聞かなかったことにする。

 

「あれぇ……?」

 

「今日から添い寝コース、確定だから」

 

 二人の先生は同室だったんですね。……あれ? 男女で部屋を分けるはずなのですが…………気にしたらいけない気がしてきました。

 

 

 

 

次のご飯は?(とりあえずこのくらい)

  • エーデルガルドとエッグベネディクト
  • ディミトリとステーキセット
  • クロードと刺身盛り合わせ
  • ジェラルトと焼き肉
  • フロムとホットケーキ
  • ベレス先生とチーズケーキ
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