ズルシン!アスカはシンジを養いたい   作:サルオ

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ズルシン!アスカはシンジを養いたい②

 

 頭が痛い。それこそ割れるように。

 

 マジで何があったのかしら・・・?随分と幸せな夢を見てたような気がするんだけど。

 

 そう思いながら布団を押しのけて起き上がるアタシ。その下から出てくる、トップモデル顔負けの抜群のプロポーション。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・ハダカ、よね?

 

 

 

 まさか・・・ウソでしょ・・・?アタシ、酔いに任せて一夜のアヤマチやっちゃった・・・?

 

 シンジに捧げると誓っていた、アタシのヴァージンを!!?

 

 アタシは絶望と共に、横で寝ているであろう行きずりの男を恐る恐る見遣る。

 

 はだけた布団から覗く、男にしては妙に小さい背中──。

 

「ッ!!?」

 

 裸のショタシンジが、アタシの横で眠っていた。

 

「・・・あ、おはようアシュカぁ。よくねむれた?」

 

 天使ッッッッ!!?

 

 起き上がり、眠たそうに目をこすりながら笑顔を向けてきたシンジを見たアタシの心臓はッッ!!

 

 耐えられるわけないっしょ。

 

 窓から差し込む朝の光とスズメのチュンチュン鳴く声を聴きながら、アタシはめでたく天へと召されていったのだった。

 

 

 ◇

 

 

 朝から何の茶番をやってたのかしらね。

 

「アシュカから酔っぱらって抱きついてきたんだよー。ねむれないから一緒にねよーって」

 

 ショタのシンジが笑顔でキッチンに立つ。もちろん、服は着てるわよ。

 

 でもね。

 

 ちっちゃいシンジがブカブカのエプロンをつけて台所に立ってアタシのためにお味噌汁を作ってくれているッッ!!

 

 これなんてプロポーズ?

 

「アシュカっ!?」

 

 デッカい花火(鼻血)が部屋を彩った。

 

「大丈夫。なんてことないわ、シンジ」

 

「めっちゃ血が出てるよッ!?」

 

 失礼ね。アタシ渾身の笑顔を向けてんのよ?ちったぁ感激して赤面したらどーなの?

 

 そう思ってたアタシだけど、逆の立場でコレを見たら多分ホラーだ。その証拠に、シンジが怯えた目をアタシに向けている。まぁ、アタシはそれだけでご飯三杯はイケるけど。

 

「心配しなくても平気よバカシンジ。これはアタシの持病なの」

 

「持病!?」

 

 まぁ、持病っちゃあ持病よね。ショタというこの世に顕現した天使を崇めてしまう持病。

 

 ・・・・・・まて。いくらなんでも暴走しすぎだろうアタシ。

 

 

 

 

 

 ショタのシンジがアタシの家に居着いてからまるまる五日。月曜日の夜にシンジが来てから初めて迎える週末の土曜日。それまでの五日間のアタシの仕事ぶりと言ったら、そりゃあもう凄まじかったの一言に尽きる。

 

 家に帰ればお腹を空かせたシンジがいる。

 

 仕事に行けばシンジとの時間が減る。

 

 アタシはそれこそ般若のような顔で仕事をして、同僚の一切を近付けず気を使わず、仕事を定時の1秒前には完璧に終わらせて、終業のチャイムと共に会社を出るといったルーティンをこなしていた。アタシの仕事ぶりと言ったら、同じ部署の人間全員で1カ月かかるような仕事を1人で片付けたようなもんだ。

 ちなみに火曜に残業の「ざ」の字を言った上司を殺意(ぶっころすぞ?)を込めて睨みつけたら、次の日から来なくなった。ストレスかしらね?お気の毒。

 

 シンジのために汗水を流す。シンジのお腹を満たすために、死に物狂いで働く。

 

 わかる!?この充足感が!!

 

 つまりシンジは、アタシが働かないと死ぬ。つまり、シンジを生かしているのはアタシッ!!

 

 アタシがいなければシンジは死んでしまう!それを救っているのは、死に物狂いで働いているこのアタシッッ!

 

 ヤッベェくらいの充実感。職場で鼻血を噴いてもアタシはまったく気にしなかった。周りはすんごく引いてたけどね。

 ちなみにコレのお陰で、アタシに言い寄ってくる有象無象のボケの数が減った。良い事だ。

 

 とまぁ、そんなこんなで過ごした五日間ではあったのだけれど、アタシとシンジの愛の巣で一つの問題が起こったのだ。

 

「アシュカ。ぼくの部屋は?」

 

「え?アタシと寝ればいいじゃない」

 

 決定的な見解の相違。アタシは危うく自分でこの薔薇色の人生に終止符を打つところだった。こんなにがっついたら折角のショタシンジが逃げ出してしまう。

 

「そんなのダメだよ。ぼくはアシュカの為に『男』にならなきゃいけないんだ」

 

 ・・・なんなら今から『男』にしてやろーか?

 

「そんなアシュカに甘えるようなぼくじゃ、アシュカのいう『男』になんてなれない!

 

 ・・・一人で寝るのは、ちょっと怖いけど」

 

 なんなら今から『男』にしてやろーかッ!?

 

 ゴホン。とにかく。健全な小学生(見た目低学年)であるところの碇シンジ君には、大人の女性と同じベッドで寝る、という発想自体が思いつかなかったようで。

 

 ならばしゃーない。シンジのために部屋を用意してやらなきゃね、ってことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 んでもって今日は、シンジのベッドやら机やらなんやらを買いに行く日。

 

 アタシのマンションはミサトの部屋とは違って、残念ながら横スライド式の薄いドアなんてモノはない。全部の部屋が普通の洋式のドアだ。なんか無性に昔のやり取りが懐かしくなって、今から引っ越してやろーかなぁ、なんてちょっと考えたりした。

 

 ・・・薄いドアの向こうで、アタシの淫靡な声を聴かせる、というシチュエーションがいきなり出来なくなったわね。マジで引越し、検討しようかな。

 

 そんな他愛もない事を考えながら、アタシの目の前にはアタシの体調を心配してくれるシンジがいるわけで。

 

「アシュカ、だいじょうぶ?鼻血とまった?」

 

 なんならもっかい鼻血が出そうなくらいよ!

 

「ヘーキヘーキ。ごめんね、心配かけちゃって。本当に大したことないからさ」

 

 アタシは鼻に突っ込んでたティッシュを引っ張り出すと、笑顔で「血は止まったよ」とアピール。

 

「今日はシンジの家具を買いに行く日だもん。このくらいで休んでなんていられないわ。そうじゃないと、いつまで経ってもシンジの部屋がないもんね」

 

「そんなの、どーだっていいよ」

 

「へ?」

 

 え・・・アタシ、一人で舞い上がりすぎ?

 

 アタシ、シンジと買い物行くのめちゃくちゃ楽しみにしてたんだけど・・・。

 

「ぼくのせいでアシュカがカラダ壊したら、ぼく悲しいもん・・・・・・」

 

 バッキャローッ!!てめぇ、そんなにアタシを喜ばせてどーしたいんだ!?むしろカラダ壊しても行くわッッ!!

 

 思わず怒鳴りそうになってしまったアタシは、理性をフル回転させて暴走しかけた本能を必死でなだめた。

 

 あくまでも、シンジの前では知的で頼れるお姉さんであること。それがアタシが自分に課した最重要課題だ。シンジが安心してアタシに身も心も委ねてくれるようになるまで、アタシは羊の皮を被り続けなくてはならない。

 

「気にしなくていいのよ、シンジ。アタシだってあんたと買い物行くの楽しみにしてたんだから。全然、無理とかしてないんだから・・・」

 

「でもぉ・・・・・・」

 

 そんな泣きそうな子犬みたいな顔やめてよ。羊の皮がマッハでぶっ飛んでくじゃない。

 

 荒くなりかけた息を必死で殺して、アタシはあくまでも冷静に、シンジの頭に手を乗せた。

 

「あんたはまだ子供なんだから。そんなこと、心配しなくてもいーの」

 

 そして、わしゃわしゃと少し乱暴に頭を撫でてやる。撫でられたシンジは気持ちいいのか、まるで猫みたいに目を細めた。

 

 ・・・・・・ちくしょー。マジでかわいいな、コイツ。

 

「わかった。ありがと、アシュカ」

 

「どーいたしまして、バカシンジ」

 

 さて。身も心も癒されたと自分を錯覚させたところで、そろそろ出かけるとしますか。

 

 ・・・いや、マジで身も心も持たんわ。幸せすぎてずっと家から出なくなりそーだもん、アタシ。

 

 監禁して警察沙汰にだけはならないようにしないとね。割と本気で。

 

 

 

 ◇

 

 

 閑話休題。

 

 アタシとシンジのデートシーンはカットさせてもらうわね。なぜって、そこまで大した事は起きなかったし。家の外ではやはり人の目もあるので、アタシの本能も理性に従って大人しくしてたし。

 

 まあ、ちょっとした言い争いがあったことだけは面白かったわね。妙に大人ぶった黒を基調とした家具で揃えようとするシンジと、身の丈にあったお子ちゃまサイズの家具で統一しようとするアタシっていう図。

 無理して背伸びしよーとするシンジはそりゃあ可愛かったのだけれど、買った後に「やっぱり使い辛い」と言われるのはお金の無駄だ。アタシは守銭奴ではないけれど、無駄だとわかっているものにお金を注ぐほど馬鹿じゃない。

 

 そんないざこざはあったけど、結局は理論武装した大人のアタシがシンジを完封して終わり。

 

 会計を終わらせて、明日の日曜に荷物が届くように手配したところで、シンジが男泣きをし始めた。それを宥めるために、アタシはシンジに甘ぁーいスイーツのお店につれていって、生クリームをべったりと口につけたままケーキを頬張るショタシンジを眺めるという報酬を得たのはご愛嬌。

 

 なんだかんだ、小さい子供の相手って疲れるのね。アタシとシンジは二人ともクタクタになって、帰宅途中にお惣菜を買って夕飯にする事にした。

 

 日が傾く頃に家に着けば、二人とも既にヘロヘロになっていた。

 

「さきにシャワー浴びちゃいなさいね」

 

「はぁーい」

 

 うん。素直でよろしい。

 

 シンジの姿が浴室に消えて、シャワーの流れる音が聞こえたのを確認したところで、アタシはリビングのソファーの上に倒れ込んだ。

 

 がんばった。超がんばったんだから、アタシ!今日のお出かけ中に何度キュン死しそうになったことか!

 シンジのほっぺについた生クリームを指ですくってペロッと大人の余裕を醸し出しつつ舐めるアタシ。本当は1時間くらい指を舐め続けたかった衝動を必死で抑えてたんだからねッッ!?

 

「やべぇ、本当に身が持たん・・・」

 

 仰向けに寝転がったアタシを睡魔が襲う。浴室の向こうにはツルツルなお肌のハダカのシンジがいるなんて素敵シチュエーションだったけど、シャワーの流れる音が耳に心地よくて、アタシはそのまま眠ってしまった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 なんか、寝苦しい、わよね?

 

「ん・・・、んん・・・・・・」

 

 アタシはゆっくりと瞼を開く。

 

 するとそこには信じられない光景が。

 

「ふぴゅー・・・・・・ふぴゅー・・・・・・」

 

 アタシの胸の上で、シンジが可愛い寝息を立てながら眠っていた。

 

 ・・・・・・なにこれ。どーいう状況?

 

 アタシは必死に歯を食いしばって耐える。

 

(天使じゃんッ!!マジでッッ!!?)

 

 叫んだらシンジが起きてしまう。ベランダの外を見れば日はすっかりと落ちていて、シンジはいつでも寝れるようにパジャマ姿だ。ダイニングのテーブルの上には二人分のお惣菜が並べられていたけれど、それらは全部手付かずのようだ。

 

 もしかして、アタシが起きるのを待っててくれた?

 

「アシュカー・・・・・・ごはん、だよぉ・・・」

 

 可愛すぎるシンジの寝言。アタシの心臓がキュン爆死するかと身構えたけど、なんだか不思議と、そんな気分にはならなかった。

 

(お腹空いてただろーに。シンジのやつ・・・)

 

 アタシは優しくシンジの頭を撫でた。

 

(疲れてたでしょーに。一人で食べてもよかったのに。アタシを起こしたってよかったのに・・・)

 

 それをしなかったのは、全て、シンジの優しさ。疲れたアタシを思いやる、生身のシンジの心遣いだった。

 

(あんた、結構男らしいじゃない・・・見直したわ)

 

 アタシはシンジを起こさないようにゆっくりとソファから抜け出すと、そのままシンジを抱きかかえる。不思議と欲情は湧き上がってこない。純粋に、アタシを気遣ってくれたシンジの優しさが嬉しかったからかな。

 

 抱きかかえたシンジを、アタシの部屋のベッドに寝かせる。今日一日がんばったアタシからのご褒美。広々とベッド使って、ぐっすり眠ってね。

 

 シンジが起きないよう静かにリビングまで戻ってきたアタシは、滅多に飲まないエビチュビールを冷蔵庫から出してプルタブを開けた。カシュッという小気味良い音がした後、アタシはちびっと口をつける。

 

「こんな苦いのの何が美味しいのよ、なぁんて思ってたんだけど、ね。結構美味しいわね、ミサト」

 

 アタシは一人で乾杯する。今はもう会えない葛城ミサト艦長。それより以前の、一緒に暮らしてきたミサトがテーブルの向こう側でだらしないカッコでビールを飲んでる気がして。

 

「アタシ、じゃないな。アタシ達、幸せになるからね」

 

 随分と優しく、ミサトが笑ったんだど思う。アタシの頬を涙がツゥっと流れた。泣き上戸じゃないんだけどな、アタシ。

 

 さて、ビールを飲み終えたら次はシャワー浴びて、汗流しちゃおう。ショタシンジに萌えすぎたせいで、アタシも結構クタクタだ。

 

 そう思ってビールの空き缶を台所のシンクに置いて浴室に向かおうとした時だった。

 

「アシュカぁ・・・」

 

 完全に寝ぼけ眼のシンジがアタシに声をかけてきた。

 

「あれ。起こしちゃった?寝てていいよシンジ。ご飯は明日の朝食べればいいんだし、アタシやっとくよ?ベッドも、今日はシンジが使っていいから・・・」

 

 んーん、と首を振るシンジ。

 

「ねれないの・・・」

 

「ん?」

 

「寂しくてねれないの。だからぎゅーってして、一緒に寝て?アスカ・・・」

 

 

 

 

 

 まて。

 

 いや、まて。落ち着け。これはコーミョーの罠だ。あ、いや、コーメイな罠だ。

 

 今ここで、哀れな子羊を喰らうのは簡単だ。だがそれでいいのか!?惣流・アスカ・ラングレー!いやさ式波・アスカ・ラングレー!

 

 あくまでも知的な頼れるお姉さん!その皮を脱ぎ捨てるのはまだ早い!シンジは純粋に頼れるお姉さんとしてアタシを頼ってるんだ!・・・・・・アレ?じゃあパクっていっても問題なくない?

 

 いやいやいや、待て待て待て。アタシはアプリゲームで何度もこのシチュで失敗したやないか・・・。我慢できずに襲いかかってバッドエンドに真っしぐらやったやないか・・・。

 

 これはフラグだ。バッドエンドへの一直線フラグ。ちくしょー、こんな時だけ名前をしっかり「アスカ」って呼びやがってぇ!ちょっとイケメンじゃねーかよチキショーッ!

 

 そんな頭の中の葛藤などつゆ知らず、シンジはトコトコと歩いてくるとアタシの手を取り、弱々しくアタシを寝室に連れて行く。

 

(ダメよアスカ!あんたはまだシャワーも浴びてないのよ!?そんな状態でシンジを襲ったら、それこそトラウマを植え付けるようなもんよ!?)

 

 頭と心と体が全く別の思惑で動こうとしていて、アタシの中身は絶賛大混乱中だ。だが最重要課題のことだけは忘れない。忘れてはならない。

 

(長い夜になりそうね・・・・・・)

 

 据え膳食わねばなんとやら、とは言うけれど、アタシはまだこの幸せを自分から壊したくはない。

 

 きっと今日は寝れないだろーなぁ。理性と本能が大戦争するわよね、コレ。

 

 

 

 

 

 そうして、アタシの予感は的中し、この日の夜、アタシは腕の中にショタシンジをギュウっと抱きしめながら、ひたすらに煩悩と戦い続けたのだった。

 

 

 

 

 

 つづく!!・・・かも!?

 

 

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