隣の彼女は小さい暗殺者で可愛い捕食者でカッコイイスパイで俺の彼女 作:SGMY
合宿二日目の朝は早く、プライベート空間などこの世界になかった。
「おっはよー!起きてるかーい?」
先生がわざわざ部屋に入ってきてまで起こしに来るのだ。
「って、あれ?なんで寒川くんは起きてるの?今6時だよ?起床時間は7時!これ守らないと!」
「だったら6時に来る先生はなんなんですか…」
「見回りさ!」
「ウィンクしないでください。自分あんまりタイプじゃない人のウィンクは嫌いなので」
「なんだとこの野郎?!」
プンプンと怒りながら先生は次の部屋へと向かっていく。
「全く…徹夜でゲームしてたから良かったけど、普通に寝てたらそこらへんの花瓶投げてたぞ…」
危ない危ないとゲームを片付けて寝ようと部屋を電気を消した時だった。再びドアが開かれ、今度は結月雫が入ってきた。
「助けてぇ!」
あ、これめんどくさいヤツだ。コイツが入ってきたあとにズガズガと足音を鳴らしながら先生が入ってくる。すると口に手を当てて驚いていた。
「まぁ!二人は
「違う。ソイツ連れて部屋に帰ってください」
「あらあらごめんねぇ!お邪魔しちゃったみたいで」
「違う。帰るな。コイツ連れて帰れ。おい聞け!おい待て先生!!」
俺の声は虚しく先生には届かず、結月雫を置いて帰ってしまった。先生が出て行ってから結月雫は俺の顔を見てニヤけた。
「そんな関係だって」
「嫌だよ」
「ねぇねぇ、先生が広めちゃったらどうする?みんなにわたし達がそんな関係ってこと広められたらどうするの?」
うっざいな。後であの先生締め上げるか。
「ねぇねぇ、ねぇねぇねぇねぇ!どうするどうする?嘘でも付き合ったことにしちゃう?」
結月雫は寝ようとしている俺に近付きながらそういう。確かに誤解をしても可笑しくない結月雫の格好。先生じゃなくても誤解はするだろう。
「冷やかされちゃうかもねぇ〜妹ちゃん達が知ったらどうなるかなぇ?」
「別にいいだろ。飛鳥達なんか」
「……そんな事言っちゃうんだ。幼馴染に妹、大切じゃないの?」
大切?大切か、大切ねえ、大切かどうかか…
「大切かどうかなんてもうわかんねぇよ。縁も切れるしな」
「っ!縁が切れるからって大切じゃなくなるの?!あの子達はあなたの事をちゃんと大切に思って…!」
思って何になるんだか。俺にはもうわからないし、わかりたくもない。
「…何処行くの?」
「食料探し」
「え、でも今日の朝飯は先生が用意してくれるんじゃ…」
「朝の部屋に突撃してくるような人だぞ。カップル成立したなんてわかったらなにするかわからん」
「確かにそうだけど…」
そう言い部屋を出る。山の中なんだ。食べれるキノコの一つや二つはあるだろう。それに海や川もある。魚だっているだろう。
部屋の扉を閉める時、結月雫が何か小声で喋っていた。
「そんなのあんまりだよ…」
朝早くということで池や川、海には誰も居らず、俺一人だけだった。
「孤独だな。だがそれがまたいいのかもな」
幼馴染も家族も誰もいない静かな場所に座り、結月雫が言っていたことを口にする。
「あの子達は俺のことを思って…なんだろうな。向こうから離れたのに俺のことを心配するわけ無いだろうに…」
ザァーザァーという波の音を聞きながら考える。大切な物がなんなのか。
大切なのだから大事な物だろうが、今の俺にはあるのだろうか。
「こんなに悩むんだったら考えなくてもいいか」
立ち上がり、波が届くところまで行く。ひんやりした海水が足に掛かる。
「今日の朝飯は別にいいか「とぉ!」は?」
後ろから声がすると振り返ろうとした時だった。結月雫に押され、バランスを崩した俺は顔から海に入る。
「なにしやがるテメェ!?」
振り返ると結月雫が俺の体に跨って拘束し、胸倉を掴まれて顔に寄せられる。結月雫は目尻に涙を浮かべながら叫ぶ。
「うるさい!グチグチ悩んで、なんなの?!」
「はぁ?」
「わたしの告白もちゃんと応えないし!嫌々言っても先生の誤解を解かないし!何がしたいの?付き合いたくないんじゃないの?ねぇ!」
いつもは元気いっぱいの笑顔しか見せない結月雫が怒った。それだけでは収まらないと海水を何度も何度もかけてくる。
「妹や幼馴染ちゃんが大切じゃないならどうして自分から助けに行ったの?大切な物がわからないらな探そうよ!探して、見つけてちゃんと答えを出そうよ!なんでそういうことしないの?!」
「………」
「何か喋るぐらいしてよ!わたしが嫌いなら嫌いって言ってよ!好きじゃないからって付き合わないの?」
結月雫に言われ俺は深く考える。結月雫が好きなのか嫌いなのか。幼馴染が大切なのかそうじゃないのか。
「わからないんでしょ?大切ってなんなのか…ならわたしが一緒に探してあげるから!」
「っ!」
「わたしも探すから、手伝うからさ…だからわたしと……付き合おうよ!」
何故好意を向けられているのだろうか、俺と彼女は今年出会ったばかりのはずなのに。期間も短いのにどうしてなんだろうか。泣き出す彼女を見ると心が痛くなってしまう。
「だからわたしと付き合ってよ…お願いだから…」
結月雫にここまで感情をぶつけられたのは始めてだ。最初の告白を断ったときなんか比じゃないほどだった。
「なら…付き合うか?好意を向けないような相手でもか?」
そう言うと結月雫は涙を拭い、笑っていった。
「好きってのはこれから作ればいいから。だからわたしはあなたと付き合う。これからよろしくね、零斗くん」
「零斗くんはやめろ。もっと別の名前が―――」
そこでようやく気付いたが、俺の顔は半分海に浸かっていた。それに気付いた結月雫はすぐに退いてくれる。
「零斗くんはやめろ。幼馴染を思い出す」
「そっか、なら……う〜ん…レイくんで!」
「ならそうしろ」
〜結月雫〜
目標達成、初恋の人と付き合うことが出来ちゃった。みんなに自慢しないとね
「これでもう先生がどんな料理を出そうが文句は言えないな」
「え?………ああぁ?!忘れてたぁ!ど、どどどどどうしようレイくん!?」
「どうもこうもないだろう。大人しく食べるぞ」
「うぐぐぐ………あ、手繋いでいい?」
「馴れ馴れしいな。お前が大切な物って思えたら考えてやる」
「なら頑張らなきゃ!」
「その前に着替えてからな。お前下着見えてるぞ」
「え?…………ひゃあああああ?!!で、でもでも…いずれ見るかもだし…レイくんなら………」
「そのまま戻るのか?彼氏として他の男に見られたくないわけだが」
「うぅぅ……乾かしてくる!!」
そう言って近くの岩陰まで逃げる。服をどう乾かそうか考えているとケータイが震える。
「お母さん、どうかしたの?」
『
「え?う、うん。どうしてお母さんがそれを『あそうそう!』な、なに?」
『彼とあなたの婚約手続きを進めるわね』
え?