隣の彼女は小さい暗殺者で可愛い捕食者でカッコイイスパイで俺の彼女 作:SGMY
自身の耳を疑った。お母さんは言った。レイくんと婚約しろと。わたしは別にそれでも良かったけど、レイくんがなんて言うのか。
「で、でもどうして…まだ付き合ったばかりで」
『それがどうしたの?別にいいじゃない、遅かれ早かれ結婚するんだから』
「まだだよ…!まだそこまでの関係じゃないよ」
『あらそうなの?でも他の子に取られちゃうのも嫌でしょう?それにあなたと別れた時点で彼は暗殺対象よ』
「っ!……わかったよ」
そうだった。レイくんは暗殺対象なんだ。でもわたしの初恋相手でわたしの恋人。殺せないし殺させない。
『うんうん!流石わたしの娘ね!大丈夫、あの人の借金は彼がなんとかしてくれるわ』
わたしのお母さんは結局はお金目当てなんだ。元々彼を殺せば裕福な暮らしが出来るほどのお金が入る。
お父さんが多額の借金をして、お母さんはお父さんを見捨てた。だけどわたしが彼を殺せれば借金返済に手を貸すとお母さんは約束してくれた。そして彼が
『―――ちょっと雫?聞いてるの?』
「え?!あ、なに?」
『聞いてなかったのね。いい?彼の親にはもう言ってあるわ婚約と同棲のこと。あなたはこれから彼の許嫁ってヤツよ。頑張りなさい』
「う、うん!わか………え同棲?ちょっ、なに言ってるの?!」
『彼の方にはもう連絡言ってると思うから気にしないで良いわよ』
良くはないでしょ?!
突っ込みを入れる隙間も無く、お母さんは仕事があるからと電話を切った。
「これからどうしよう…」
合宿が終わってからすぐに同棲だろう。交際してすぐに同棲なんて心の準備すらさせてくれないらしい。
「あ、早く着替えて乾かさないと…!」
念の為にと持ってきていた水着に着替えてレイくんの下へと戻る。
「お、おまたせ!」
「ん?あぁ、来たか。実はさっき親父から連絡があってな、どういうわけかお前のほうの親と話があったようで、お前を許嫁にしたとかなんだとか…」
やっぱりもうそれはレイくんの耳に入ってるんだ。
「う、うん。それで…」
「同棲しろと。ちゃんと飯を食ってないこともバレてたし。お前は結構料理出来るらしいからな」
「そこまでじゃないよ?そ、それよりもほら!朝ご飯!わ、わたしお腹空いちゃったなぁ〜」
「昨日の昆虫食出てくるかもな」
「え、わたし食べたこと無いよぉ!?」
濡れた服を持って誰にもバレないようにとそれぞれの部屋に戻る。濡れた服を乾かしながらわたしは思う。もしお母さんがお金目的でやったことがバレてしまったら、もしわたしの正体がバレてしまったら。どうなってしまうのだろうか。
新しい服に着替えてベッドに倒れ込む。
「夢見たい…」
あの時のわたしならこんな関係になるなんて思わなかっんじゃないかな…
数年前、レイくんの暗殺依頼が来たのが始まりだった。わたしはいつものように心を無にして近付き、レイくんを殺そうとした。だけど殺せなかった。
ベッドの中で眠る彼を殺すだけの簡単なことだった。
わたしがベッドに近付き、その首に刃を向けた時だった。ベッドから手が伸びて彼はわたしを誰かと誤認してベッドに引き釣り混んだ。
彼との距離が数センチとなった時に初めての感覚に困惑し、暗殺は失敗した。後で調べるとわたしが立っていた場所には普段、枕があったそうだ。あの日は妹さんである飛鳥さんが持って寝ており、わたしを枕だと勘違いしての行動だった。
それから何度も暗殺を試みたが全て失敗に終わった。そこで初めて知ったのだ。これが恋だと。初恋なんだと。一目惚れだったんだ。
「おい、聞こえてるのか?」
昔のことを思い出していると突然そんな声が聞こえた。気付けば目の前にレイくんの顔があった。
「?!?!?!?!」
すぐに近くにあった布団で体を隠す。なにかされたわけでもなく、触られた跡もなかった。
「な、なななななに?!」
「もうすぐ朝食だってのに来ないから呼んでこいとあの先生がな」
「そ、そうだったんだ……何もして「ない」即答?!」
なにかしたのではないかと考えていると布団を引っ剥がされる。突然のことで頭の中が真白になる。するとレイくんがわたしの手を掴む。
「ほらさっさと行くぞ。朝食は昆虫食だ」
「え、嘘待って。ねぇ待って?!嘘だよね?!!」
手を引かれて先生たちがいる広間へと向かった。先生はわたし達の関係は秘密にしておくと言って、席へと案内してくれる。わたし達の朝食は昆虫食ではなく、普通にトーストだった。
「もぉ…嘘つかないでよびっくりしたじゃん…」
「昆虫食が良かったのか?」
「違うよ!って、なんでレイくんそれ食べてるの?」
レイくんの手にブロック菓子?が握られていた。
「アレは大食いの中谷にくれてやった。泣いて喜んでたよ。お礼にこれを貰った」
「そんなの駄目だよ!」
「結構いけるぞ?」
「味の問題とかじゃなくてさぁ!これ帰ったらすぐにでもチェックだよ?!早速嫁としてチェックだよ?!」
「嫁にした覚えはない。あ、おい俺の飯!」
レイくんの菓子を取り上げているとわたし達と結構離れたところに飛鳥さん達がいた。いつものようにあの男に纏わりついている。まるで