殺生院キアラとアンデルセンを倒し、BBの自己犠牲により助けられ、サクラ迷宮を脱出する。光に包まれ、そして目を覚ました時、そこは月の表側、あの学園だった。だが、全てが終わったわけではなかった。それは新たな始まり。もう一度繰り返される予選、またも校舎を侵食する黒い影、またも追い詰められ屋上に登る。その時、岸波白野の胸にあったのは、困惑でも恐怖でもなく、歓喜であった。なぜならば、もう一度、彼女に会えるのだから。

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 BBちゃん大好き岸波(男)が記憶を保持したまま2週目に。
 そこから始まるイチャラブルートのプロローグ。

 書いてる途中で放置してたのを形にしたので、とりあえず投稿しました。



2週目ザビ男が開幕告白したら犬空間で延々イチャラブ漬けになったBBちゃんルート

 

 記憶にある光景だった。

 

 どこかで見た? 否、これしか見ていない。

 

 空虚な学校。静謐な運動場(グラウンド)。個性が削ぎ落とされた生徒。

 

 覚えている。覚えているとも。

 

 慎二が女子を侍らせて。花村先生が教室に入るなりすっ転んで。

 

 日に日に生徒が減っていって。ロッカーから物音が聞こえて。

 

 そして、全てが闇に呑まれてしまう。

 

 今度は迷うことなく、屋上から飛び降りた。

 

 迷いなんて無い。それどころか、とても嬉しかった。

 

 だって、また彼女に逢えるのだから。

 

 素直に叫んだ。喜び叫んだ。素直な気持ちをそのまま伝えたかったから。

 

 

『また会えて嬉しいよ、BB!! 愛してるよーー!!!』

 

 

 驚く彼女の声が聞こえた。困惑と喜色が見え見えの「えっ!?」だった。

 

 

——————————

 

 

 岸波白野が次に目を覚ました時、そこは無限に続く闇しかなかった。唯一、床と呼べる所だけは明るく、レッドカーペットがどこまでも続いているらしかった。

 

 岸波白野はこの場所に覚えがある。かつて、強引な手段に訴え出たBBが、岸波を閉じ込めた無間地獄、『犬空間』だ。前回来た時には、「四つん這いでしか行動できない」というルールを強いられたが。今回はその縛りは無いらしい。発声も行動も自由だ。

 

 なぜ旧校舎でなく、犬空間で目覚めたのか。屋上から飛び降りて、狭間の世界で再会を果たした愛妻系英霊はどこにも居ない。しかし犬空間である以上、BBちゃんの関与は確実。そこまで考えて、呼びかけることにしてみた。BBちゃんはきっと、今までずっと、自分を見守ってくれていたはずだから。

 

「BB、そこにいるの?」

 

 起き上がり、前を向いて、確かな意志を持って声を掛けた。

 すると、スポットライトが点灯すると同時に、目の前の空間にBBが現れた。

 

「あのですねえ先輩、ちょっと馴れ馴れしくありません? 私の記憶領域が確かなら、先輩から見た私は初対面のハズなんですけど?」

 

 それはやはりBBだった。岸波白野の記憶に残る、あのBBちゃんであった。純白のレオタードの上にロングコートとマイクロスカート。照れ隠しの露悪趣味がちょっと生意気な素直になれない小悪魔系後輩のBBちゃんだ。

 

 自然と、涙が溢れた。彼女の自己犠牲のおかげで、自分たちはムーンセルの消去から逃れられた。もう二度と、会えないはずだった。岸波白野の事が大好きで、でも素直になれない女の子。岸波白野の生命を救うためだけに、ムーンセルを乗っ取ろうとした愛の暴走AI。まさかこうして、時間を逆行して、もう一度会えるなんて。

 

「ちょちょっ、なっ、なんで泣くんですか!? まだなにもしてませんよ!?」

 

 感極まって暴走するのは、なにもBBちゃんだけの特権ではない。この溢れる喜びと感謝を伝えようと、飛びかかるように抱き着いた。

 

 しっかりと抱き締めたはずの腕は空振りし、受け止めてくれたのは深紅の床。

 

「いったいどうしちゃったんですか先輩!? いきなり飛び掛かってくるとか、随分アグレッシブな痴漢ですよぉ!? 流石のBBちゃんも驚愕です! もしかして壊れちゃいましたか? 親の愛情が足らなかったんですか? 飢えに飢えて女体と見れば襲いかかるケダモノになっちゃったり?」

 

 BBちゃんならばコンマ1秒で、何らかの診断プログラムを走らせて、健康で正常なのを確認できる。その上で、こんな煽り文句を言うのである。全ては愛情の裏返し。どこまでも素直になれない、可愛い後輩である。

 

 もう一度起き上がり、向き合って、礼を言う。BBちゃんは困惑げだ。説明が必要だろう。どうして岸波白野に過去の記憶があるのか、なぜ過去を追体験しているのか、それとも過去の時間軸に精神や記憶だけが飛ばされたのか、それは分からないが。持っている記憶について話すことは出来る。そして、それにより、あの性根の腐った悪女から、彼女たちを救う事が出来るかもしれない。いや、正常になったBBちゃんの能力ならば、確実に可能だ。

 

「ふんふん。なるほど。つまり、先輩は過去に戻ってしまったのですね」

 

 実感としてはそんなところである。しかし、なぜこうなってしまったのかは、BBちゃんの全能力を以ってしても分からないそうだ。だけど、分からなくても問題は無い。殺生院キアラとサーヴァント・アンデルセンは指パッチンひとつで即座に抹消され、1バイトも残さずムーンセル上から消されてしまう。もう裏側にも残っていない、完全なる抹消だ。BBちゃんに仕込まれた殺生院の罠も、存在すると判った上で調べれば、簡単に見つけ出して取り除けた。流石はBBちゃんである、このムーンセルの裏側において、彼女はほとんど全能であった。

 

「さて、これでもう何も心配無しってコトですね。まぁ・・・、私の想いが先輩に筒抜けなのは困ったものですが。そこはまあ、先輩が言いふらしたりしなければいいだけなので。先輩の紳士さに期待してあげましょうかね」

 

 先輩好き好き大好き(はぁと)な自分の本心がバレてしまっていると判明して、顔を真っ赤にしながらでも、小悪魔系後輩であるBBちゃんは煽るような上から目線をやめなかった。なんて可愛いやつだ。照れ隠しまで可愛いなんて。そんな素直になれない後輩ちゃんには、先輩として心を開けるように教育してあげないと。

 

 さっそく、BBちゃんの手を両手で包むようにして握り、目を見て、「愛してるよ、BB。大好きだ」と告白する。瞬間、BBちゃんの顔が溶鉱炉の鉄よりも真っ赤に染まる。開いた口が塞がらず、唇がパクパクと空気を噛み続けるBBちゃん。可愛すぎる。

 

「BBはさ、俺のこと、好き?」

 

 無視出来ないように、誤魔化されたりはぐらかされたりしないように、どストレートの豪速球を投げる。BBちゃんは顔を真っ赤にしたまま、目を背けた。必死に言葉を探しているのだろう。そんな事は許さない。BBの素直な言葉が、本心が聞きたいんだ。BBちゃんの頬に手を添えて、正面を向かせて、無理矢理に目と目を合わせる。あ、BBちゃんの眼が涙でウルウルしてる。可愛いなあもう。

 

「BBの本当の気持ち、言葉で聞かせて欲しいんだ。俺はBBが好きだ。大好きだ。もし、BBも同じ気持ちなら、これほど嬉しい事はない」

「・・・ぅ・・・ぅぅ・・・・・・♡ よわよわマスターのくせに・・・、こういう時は積極的なんですね・・・。私の気持ちなんて、もう、わかってるくせに・・・・・・♡」

「BBちゃんの口から聞きたいからね」

「うぅぅぅ・・・・・・♡ ・・・・・・わ、わかりましたよっ! 私の負けです! そうですよ! 先輩のことが好きですぅ!! BBちゃんは弱っちいくせに優しくて頑張り屋な先輩にぞっこんなんですぅ!! これで満足ですか!? あーもうっ、恥ずかし過ぎてエラー吐きそうですよっ!! ・・・・・・なにニヤニヤしてるんですかっ、意地悪するのは先輩のキャラじゃないですよね!?」

 

 BBちゃんの本心が聞けて、とりあえず満足した。まだまだ素直になりきれないみたいだけど、かまわないだろう。だって、時間だけはいくらでもあるんだから。この月の裏側において、BBちゃんは全能に等しい。それこそ、この空間の中の時間だけを引き延ばして、1秒を1年にすることだって出来るんだから。

 

 積もる話しかないので、落ち着いて話をしようとなると、BBが気を利かせてくれた。BBちゃんがパチンと指を鳴らすと、ポワワンという効果音とコミカルな煙と共に、大きなソファーが現れる。隣にはガラステーブルがあり、ポップコーンとドリンクもセットだ。なんとも嬉しい気配りである。

 

 二人、肩と膝をくっつけて、ソファーに座る。そうして、この日に巻き戻される寸前までの出来事を、以前の月の裏側で経験した全てを、詳細に語った。そして、BBちゃんからは、BBとして起動し、岸波白野に出会って、それから今日に至るまでの話を聞かせてもらった。時に笑いあい、時にしんみりと感傷に浸り、時に気恥ずかしい思いをして、永劫が約束された空間で、二人きりのお喋りを楽しんだ。

 

 大好きなBBと二人きりで、安全で、安心で、平和な時間。これが終われば、聖杯戦争に戻って、勝ち抜いて、ムーンセル中枢へのアクセス権限を獲得して、そして桜とBBちゃんをムーンセルから独立させて、一緒に暮らすための算段をつけなければならない。二人を置いては行けないし、愛する人と離れ離れになるなんて、嫌だから。そんな事を考えてしまったからか、胸の中から、心の端から、弱音が溢れた。

 

「・・・・・・この時間が終わってほしくない」

 

 不意に溢れた感傷。それが、BBちゃんの小悪魔心を刺激してしまった。

 

「だったら、ずっとここに居ますか? この先輩専用のシェルター空間に居るかぎり、ムーンセルだって先輩を消すことは出来ません。外の情報はいくらでも手に入りますし、飲み食いだって自由自在です。何一つとして心配事の無い、平和と安全が約束された世界ですからね。そ、れ、に♡ こんなに可愛くてぇ、先輩のためなら何でもしちゃうBBちゃんとぉ、無限にイチャイチャ♡ラブラブ♡って出来ますしね♡」

 

 今なら分かる、BBちゃんの恒例の意地悪な物言いが、応援の気持ちの裏返しだと。言葉だけなら堕落へ誘なう悪魔の甘言だけど、実際は『先輩がこんなところで立ち止まる人だなんて思ってませんよ。だけど、勇気が必要だって言うのなら、背中を押してあげましょう』という気持ちが、素直になれないフィルターを通して言語化されると、こうなるのだ。これはBBちゃんの優しさなのだ。『それでも俺は行くよ』という一言を引き出そうとしてくれている。

 

 だけど—————そう。だけど、少し出発が遅れるくらいは、構わないよね。

 

 

——————————

 

 

「・・・・・・せんぱい? あ、あれぇ〜? ななな、なんだか目が怖いですよ?」

 

 そうだ、この空間では1秒も1年も変わりない。ちょっとくらい表に戻るのが遅れたって、ほんの数秒じゃないか。だったら、この大切な時間を、大切な人との思い出を、絶対に忘れられないくらいに刻みつけて、存分に堪能してから帰ってもいいはずだ。そうだ、最後にはここを出て、戦いに戻る。それは決まっている、その覚悟はもう存在する。ほんのちょっとだけ、思い出を増やしたいだけ。

 

 BBちゃんをソファーに押し倒し、覆い被さる。突然の積極的な先輩に驚き、顔を赤くするBBちゃん。そういえば、BBちゃんには“そういう”知識はあるようだけど、経験は無いはずだ。だったらなおのこと、ここで初体験をしておかないと。

 

 BBちゃんの目を見て、覚悟の程を伝える。

 

「BB、俺は行くよ。月の表側に戻って、聖杯戦争を勝ち抜く」

「そっ、そうですか・・・。それは残念ですぅ。せっかく先輩が喜ぶようにと思って、回転ベッドとかビニールマットとか用意してたんですけどね。あーあ、残念だなぁ〜。相思相愛イチャラブ空間であんなことやこんなことも———」

 

 やった。流石BBちゃん、用意周到。最初からそういうつもりだったなんて、エッチなAIだなあ。それじゃあ期待に応えないとね。

 

「だけど、それは今じゃない。二人の愛を確かめ合ってからでも遅くはないしね」

「—————へ・・・?」

「だから、二人きりじゃないと出来ないこと、全部経験してからにする。もし、どんな事が起きても、絶対に後悔しないように。今出来ることは全部やっちゃおう! そうだね、とりあえず、BBがさっき言ってた物は全部試してみよう!」

「え、ええーー!? そっそそそそそれって・・・!!」

「うん! イチャラブしようよ! もう死んでもいいってくらい、愛し合おう! BB!」

 

 果ての無い無限の空間に、BBの驚きの声が響き渡った。

 

 やがて、BBも想いを同じくする。

 

 二人は強く抱きしめ合い、愛欲を満たさんとして、肌を重ねた。

 

 




 この後のR-18展開については皆さんの妄想で補完してくださいませ。

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