ヤンデレの力って偉大だね   作:狼黒

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満足するかどうかは貴方次第です


抱いて

「…っ!」

 

横たえていた体を勢いよく起こす

荒い呼吸をしながら周りを見渡す…拠点にしてる下水道

そしているのは私一人、あのクソ婆やアリウス連中はいない

 

「はぁっ…はぁっ…!」

 

まただ

また、あの時の事が脳裏によみがえってくる

あの光が少しも刺さない、牢屋で、鎖に繋がれて、実弾を撃ち込まれて、殴られて、蹴られて、よくわからない薬を打ち込まれて、食事はともかく水すら満足に飲ませてくれなくて、自分の体から流れ出た血を飲むしかなくて

その方法も、この傷口が瞬時に塞がる体質のせいでほんの僅かな量しか飲めなかった

死にたくても死ねない、そんな体を何度も呪った

でも…現実は残酷だった

誰かが助けてくれるわけでもない、あるのはただの暴力だけ

 

「う…あ…あ…」

 

壁を背にして座り込みながら泣く

どれだけ拭っても止まることがない涙、そして止まらない体の震え

一体、私は、どれだけ苦しんだら、解放されるんだろう

 

「…あは、そっか…」

 

簡単なことだった

キヴォトスではヘイローを破壊されたら死ぬ

なら、私の頭の上にあるこのヘイローを壊せばいいんだ

そうしたら、この苦しみからも解放されるんだ

そう思いながら、バックの中を漁る

取り出したのは、爆弾

それもただの爆弾じゃない、あのクソババアがどっかから持ってきた、ヘイローを破壊できる爆弾

手榴弾の威力らしいから、この下水道が崩れる心配もない

あとは、ピンを抜いて、爆発させるだけ

でも

 

「…っ、何で…!」

 

どれだけ力を込めても、抜けないピン

なら歯で無理やりやろうとするけど、歯が欠けるだけ

 

「っ!くそっ!」

 

苛立たし気に地面に叩きつける

衝撃で爆発してくれないかという僅かな期待も、結局するだけ無駄だった

地面にコロコロと転がって、でも爆発しない

 

「…何で…いつもこうなるの…」

 

泣きながらその場に膝から崩れ落ちる

何回も死のうと思った、でも死ねなかった

…分かってる、私が、死ぬのが怖いんだって

もう嫌だ、苦しみたくない、死にたい

そう思っていても、片隅でまだ死にたくないと思ってる

 

「うあ…あああ…」

 

自分の不甲斐なさ、そして情けなさに涙が出てくる

誰もいない下水道の中で、私の泣く声だけが、響き渡っていた

 

 

 

 

「…彼女はとんでもない爆弾を残していったようですね」

 

「それはそれとしてこれはどうしましょうか、どうも適合者でなければ暴走するようですが…」

 

「…あの『爆弾』に渡してみましょうか、彼女の言葉の限り武器だけでも暴走するようでしたし」

 

「それに、私個人としても気になりますからね…ククク…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…んぅ?」

 

若干の狭苦しさと肌寒さを感じて目が覚める

まだぼーっとする頭の中で、鉄同士がぶつかって鳴る音と、お腹にわずかな圧迫感を感じる

それらを感じながら首を少し後ろに向けると、視界に入ったのはサオリの寝顔

両腕がお腹に回され抱き締められてて、その手にはリードが握られる

肌寒さの原因も、私が裸で寝ていたからだ

何で裸なんだろうと思いだすと、昨日の夜の事を思い出して顔が赤くなる

…ま、まぁそれはそうとして、この状況どうにかしないと

 

「ん…」

 

サオリが僅かに身じろぎするけど起きる気配はなくて、お腹に回されている両腕もリードを掴んでいる手も緩むことはない

取り敢えず起きようと思ってサオリの腕をお腹から離そうとするけど、抱き締めている力が強い

寝起きだからあまり力が入らなくて離すのに苦労したけど、何とか片腕を離す

さてもう片方の腕も離そうとした時

 

「ミラ?」

 

サオリの声が聞こえたかと思うと、離したはずの腕が再びお腹に回される

あっと思う間もなく抱き寄せられて、サオリに後ろから抱き締められる形になった

絶対に離さないという意思の表れなのか、さっきよりも強い力で抱き締められていた

 

「さ、サオリ、おはよう…」

 

「ミラ?一体何処に行こうとしてたんだ?」

 

私の言葉に被せるようにそう聞いてくるサオリ

気のせいか、抱き締められているお腹から変な音が聞こえる

 

「い、いやほら、起きたからね?なんか服着ようかなーって」

 

「…つまり私から離れようとしたと?」

 

「い、いや、それは『そうなんだな?』…そう、なるのかな?」

 

サオリからの圧に気圧されて、そう答える

すると、お腹に回されていた腕の力が微かに弱まる

あれと思った次の瞬間

 

「へっ?」

 

視界がぐるりと回転したかと思うと、次に映ったのは天井とサオリの顔

起き上がろうと思っても、サオリが上にいることに加えて、腕をサオリの手で拘束されてる

何でこんな状況になってるのか分からずに混乱していると、サオリが手に握っていたリードを引っ張って私の顔を、サオリの息が当たるところまで近づけてる

 

「さ、サオリ?どうしたの?」

 

「…のか」

 

「え?」

 

「やっぱり、私達が嫌いなのか?」

 

そう言うサオリの目は潤んでいる

私からしたら、何でそうなってるのか分からないけど

第一サオリ達を嫌うわけがないのに…

 

「な、何で?私がサオリ達嫌いなわけないじゃん」

 

「…だって、私達は何もできなかった」

 

私の腕があったところと目があったところを触りながらそう言うサオリ

何もできなかった…

多分あそこでの私のことなんだろう

でもサオリ達は私の怪我を出来る限りの方法で治療してくれたし、何だったらあそこでは唯一、私を心配してくれたりしてくれた存在

そんな存在なのに嫌うなんて…

寧ろ、私の方が嫌われてないか心配だし

 

「…やっぱり…嫌いなのか…?」

 

そんなことを考えている私の頬を撫でながら、そう言ってくるサオリ

そんなサオリを見て、私は顔を近づけると

 

「んっ…」

 

「んむっ!?」

 

サオリの唇に自分の唇を重ねた

驚いてるサオリの顔がすぐそばにある

他に手段があったのかもしれない、けど私は分からないから

だって、サオリ達から嫌われたら、私もう生きてる意味ない

数秒後に離れると、サオリと私の間には唾液の糸がかかっていた

 

「嫌いなわけない…大好きだから…二度と離れないから」

 

だから、と言ってサオリの体に腕を回す

そのまま私がベットに倒れこむと、ちょうどサオリが私を押し倒すような形になる

 

「抱いてよサオリ、大好きだから…愛してるから」

 

「…分かった、私も大好きだ、愛してるぞ、ミラ」

 

いくらでも抱いてくれて、いいから

そう言ったと同時に、首輪についた鎖を引っ張られて、サオリに唇を奪われた

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…サオ…リ…んむっ…」

 

荒い息をしながら私の名前を呼ぶミラに、唇を重ねる

昨日の夜に続いて起きたと同時にまた体を重ねている

ミラの体を見てみれば、あちこちに傷痕が残っている

私が知っている場所以外にもある傷

アリウスを脱出した後も、あちこちで戦闘してようだし、その時に出来た傷だろう

本当なら凄く痛いはず、でもミラは何てことないかのように振る舞う

痛覚がないと聞かされた時は、驚きと同時に後悔をした

もっと早く、私達の手で逃がしてやれば

いや、私に『止めろ』と言える勇気があれば

ミラに嫌われていることを覚悟していた、でも同時にもう二度と私達の手から離さないという気持ちがあった

無理矢理な方法で私達から離れないようにして、無理矢理抱いて、無理矢理シャーレ所属にした

でもミラは

 

『またサオリ達と一緒に居られるから嬉しい』

 

…そう言った

これが本心かどうかは分からない

だけど、そう聞いたからには…もう二度と離すつもりはない

勿論、逃がすつもりも、傷を負うこともさせない

…無論、誰かに利用されることも

だから

 

「一生一緒だからな、ミラ」

 

「うん…サオリ達と、ずっと、一緒だから…」

 

 

だから、もっと愛して

 

 

ミラのその言葉に、唇を重ねることで返した

…暫く、終わりそうにないな




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