SHIN KAMEN RIDER ~The Re:Build~ 作:フォレス・ノースウッド
丁度『真の安らぎはこの世になく』でハチオーグ編に入ったのもあって書き進められました。
円盤が出る前から公式で公開されてたOMITシーンにヒロミの弟の透がサラセニアンオーグの合成手術の失敗で亡くなったことは言及されてて、その場面では特になんとも思ってない感じで話してたヒロミですが内心は『悲しみ』を秘めていたようで。
しかし現状最新話の本郷が『事情はあっても(勝手に自分を改造した君らは)少し非常識だ』の発言に思わず笑っちゃうルリルリが可愛くてね……浜辺美波さん本人でその場面みたいんですが庵野さん(コラ
あんな目に遭って『少し非常識』で片づけられるシン本郷さんほんと聖人だわ。
でもそんな彼を勝手に改造した緑川のク○親父……やっぱ許せないな。
死んだ後も掘り下げがある度やっぱり株が下がり続けるライダー史上トップクラスの毒親だけありますわ(オイ
変異:ハチオーグ編②/再会
陽の輝きが夕焼け色に変わってゆく中、《ハチオーグ》のアジトが隠れ潜む群馬県高崎市へ関越自動車道で目指す本郷が駆るサイクロン号が、『高崎JCT』と銘打たれた緑の案内標識の下を通り抜けた――直後。
「ルリ子くん」
「私も聞こえるわ」
本郷とルリ子の聴覚が、常人では感知できない蜂の飛行音に酷似する微かな低周波えを捉える。
「(情報通り、観音山の方から出てる、でも発信源の特定までは――)」
「そこまで分かれば充分だ」
「テリトリーの範囲、確かに広がってるわね……」
十中八九、ハチオーグが市民を密かに洗脳し支配下に置いている〝雑音(ノイズ)〟で間違いなかった。
追い越し車線を走るサイクロンを車線変更させ、高崎ICから高崎市内へと入る。
低周波の雑音が強まり、もうこの市街(まち)は完全にハチオーグに侵略されている事実を改めて痛感し、二人は気を引き締め直した。
「この先はどうやって探す?」
「向こうは私に会いたがってるだろうから、それを逆手に取るわ」
二人の感覚が捉える低周波の音量は、高崎市の中心へ向かうほど強まっていった。
「通行人と鉢合わせてもぶつからないように徐行運転でな」
「(了解)」
一度観音山公園近辺の人気のない通りに停められたサイクロン号は、自身に光学迷彩を施して自律行動を開始し、本郷とルリ子の二人は徒歩で市内を移動し始めた。
観音通りを通って聖石橋を渡り、そのまま高崎駅周辺まで二人は歩き続けていると。
「ん?」
本郷自身の超感覚と、ニット帽に擬態した仮面(マスク)に備わる半球型ランプ状の危険探知機――《Oシグナル》が違和感を受信した。
「どうしたの?」
「あの通りだけ、他と比べて低周波の濃度が高い」
本郷の視界は、《Oシグナル》が感知し脳に直接伝達してくる情報も含め、低周波を完全に可視化されており、彼の瞳が見据える中央銀座商店街の異常さを捉えていた。
他の往来と比較して明らかに低周波の度合いは高くなっており、そこを行き往きする通行人たちの顔は、本郷が確認できた人数だけでも全員が生気の無い虚ろな表情を見せていた。
まるで本郷たちに、この都市の実態をあからさまに見せつけようとしている様に。
「悪趣味な歓迎ね、〝彼女〟らしいわ」
二人はそのまま中央銀座通りに入り込むと、ルリ子の感覚でも露骨に低周波の雑音が強まって、一瞬だが彼女の眉間に皴が寄せられた。
ほどなく彼らの背後から、視線が向けられ、後を付けてくる足音が響く。
一歩ごとに進めば進むほど、二人の背中に突き付けてくる視線と足音の数は急速に増えていき、立ち止まって振り返れば、五〇人以上の市民が、棒立ちで本郷とルリ子を凝視していた。全員面持ちは当然ながら虚無を発する無表情。
「実演(デモンストレーション)は十分だろう?」
しかし本郷はこの通りの中で、唯一明確な意志で自分とルリ子に関心を向けている〝眼差し〟の存在に気づいており。
「いい加減出てきたらどうだ?」
彼は屋台式のラーメン店へ向け呼びかけると。
「さすが緑川博士――〝最後の最高傑作〟ですね」
暖簾の奥から、蜂の体色並みに派手な黄色の背広(スーツ)を着た妙齢で細身の男が出てきた。
「緑川ルリ子様、そして本郷猛様、ハチオーグ様がお待ちかねです、こちらへ」
《ハチオーグ》からの使いの者らしい男は、折り目正しい態度で先導し、二人は付いて行くと、通りの終着地にこれまた派手な黄色で彩られたリムジンが停車している。
既に日が暮れて夜になった道路には時間帯に反して他に車両が一台も通っておらず、この光景だけでもハチオーグの支配力の強さが窺えた。
「どうぞお乗り下さいませ」
使者の男は後部席を開けて乗車を促してくる。
本郷とルリ子はアイコンタクトし合うと、警戒心は維持したまま乗り込み、リムジンは走り出す。
車内から外を眺める本郷は、市内の異変をまざまざと汲み取った。
つい先ほどまで、道路は常に市民の車両たちが走り、交錯していたと言うのに、今はこのリムジン以外に一台も無い。
しかもハチオーグのアジトに近づいていく程、低周波の音量と、その雑音で洗脳された多数の市民たちが、無感情の棒立ちの状態で群がって、リムジンを凝視してくる。
〝山全体に迷彩を施したのか……〟
リムジンは観音山丘陵内に入ると、本郷が懸念する災厄を招く張本人がいる建物(アジト)が姿を現した。観音山をドーム状に覆う光学迷彩が、《A.S.U》の探査を妨害していた犯人の正体、丘陵内は洗脳装置から発する低周波の強度がさらに高まる為、隠すまでもないと言うことだ。
六角形状の塔たちがリボルバー型拳銃のシリンダーの様に連なる高層建築物は、標高込みで観音像より高くそびえ立っており、上部から見たら丁度ハチの巣になる形状になるだろう。
ライダージャケットのポケット越しに、こっそりベルトを操作しながらサイクロンに指示を送る本郷は、ポーカーフェイスの裏側で、強化された肉体が鳥肌で身震いしてきた。
先の洗脳された市民といい、アジトの見た目といい、自分こそ社会(せかい)の頂点に立つに相応しい〝女王蜂〟なのだと主張したしげに………幼少期から玩具でパノプティコンを組み立てていたと言う《ハチオーグ》の支配欲の高さを嫌と言うほど痛感させられる。
しかも《SHOCKER》と言う組織柄、上級幹部の構成員が求める〝幸福〟は各々バラバラであり、その願望を成就させる為の手段の規模が大きくなる程、必然的に構成員同士の衝突は免れない。
実質組織の運営者たるケイは、昔こそ内部抗争に自ら出向いていたが、今の中立を貫くスタンスでは、構成員たちの活動がどんな思わぬ波紋を引き起こそうとも傍観を決め込むだろう。
このままハチオーグの侵略が進めば、確実に他の上級幹部同士の抗争が再発し、クモオーグ――マサも関わったものとは比較にならぬ大規模となるだろう。
そうなった時……もっと多くの人命がSHOCKERによって犠牲になるのは確実。
本郷は改めて、この手で自らハチオーグに引導を渡してまでも、彼女の幸福追求の先に待つ悲劇を食い止める覚悟を決め直す一方で、本人に感づかれぬようルリ子の様子を窺う。
必死に隠そうとしているが、それでも滲み出てしまう内心の葛藤で、表情がより険しくなっていた。
「ご到着です」
ルリ子の心情を案じつつも、リムジンが停車して降車を促された本郷たちは降り立ち、眼前にそびえるスズメバチが元と思われるエンブレムが描かれたアジトを見上げながら使者に着いて行く。
『(猛の感覚なら、中に入れば装置(サーバー)の位置が特定できる筈だよ)』
「(分かった、サイクロンは僕の合図まで待機だ)」
『(了解)』
蜂の巣を想起させる六角形が密集する内壁で彩られたアジト内の回廊を通り、エレベーターに乗って登り、使者の案内でさらに回廊を進み。
「こちらがハチオーグ様の私室です」
アジトの外壁と同様のエンブレムを拵えた、観音開き式の扉に辿り着いた。
扉は自動で両端にスライドし。
「待っていたわ〝ルリルリ〟、それと本郷猛さん」
その向こうで、これまた蜂(スズメバチ)の体色を意識したと思われる色合いの着物を羽織ったツインテールの髪型の少女が、景気良い笑顔でルリルリことルリ子と本郷を出迎える。
彼女こそ、ヒロミ――《ハチオーグ》。
「ようこそ、〝私の巣〟へ」
巣と比喩したヒロミの部屋を見渡したルリ子は――。
「相変わらずの趣味ね……」
――呆れ気味に答えた。
「趣味は個性の表れ、ステキでしょう?」
壁のあちこちに、鞘も唾も柄もない剥き出しの抜き身な日本刀が幾つも飾られている。
本郷の強化された視力と嗅覚は、いずれの刀も何らかの特殊な素材で生成されたものだと看破していた。おそらく上級幹部の権力と組織のテクノロジーを存分に使ってわざわざ作らせたと言うところか。
彼の瞳は、部屋の片隅で滞空する超小型カメラドローンの姿も捉える。
ケイのもので間違いない、今日も構成員の活動観察とデータ収集で忙しそうだ。
「まずは再会と、初顔合わせを祝してシャンパンはいかが?」
ヒロミは自分用のソファーに腰掛けて、表向きはニコやかな調子でルリ子と本郷に酒を勧めてくる。
「生憎《グー・ド・ディアモン》は切らしていて……《シップレック》で我慢して」
《SHOCKER》幹部の一人だけあって、一瓶で二億円を超える高級シャンパンを容易に取り寄せるだけの権力を有しているらしい、代わりに勧めてきた方のシャンパンも三千万もする希少品だ。
「ヒロミ……透(とおる)は元気?」
ヒロミとは正反対に、警戒心は解かず険しい顔つきのまま向かいのソファーに座ったルリ子の口から相手へ問いかけた。
サイクロンから〝透〟はルリ子と同じくデザイナーベイビーの一人にしてヒロミの弟、彼女と並んで〝友達に一番近い存在〟であるとは本郷でも想像がついた。
「透ね……死んだわ……《サラセニアオーグ》との合成手術に失敗して」
ヒロミはやれやれと言いたげな吐息を零した口へシャンパンを一飲みし、淡泊とした声音で答えた。
サラセニア――北米原産の湿地帯で生息する多年草にして食虫植物である。栽培し易さと花の形状から観葉植物としての人気も高い種。
もし合成手術(オーグメンテーション)が成功していたら、どんな怪人(オーグメント)となっていただろうか?
食虫植物の特性を生かして、実験対象となった人間たちを人知れず拉致する悪魔となっていたかもしれないと、本郷は自身の想像に内心ゾッとする。
「やっぱり人間と植物の融合は無理みたいね」
それでもポーカーフェイスを維持したまま立つ本郷の胸の内では、改造(オーグメンテーション)された己が肉体が背負う自分だけではない多くの命の重さも、改めて実感させられていた。
オーグメントとなった自分と言う〝緑川弘・最後の最高傑作〟が生みだされるまで、ルリ子とは腹違いの兄妹であろうあの〝少年(イチロー)〟のも含めて一体どれ程の人の人生と命が〝贄〟となってきたのだろう?
いずれ《SHOCKER》は植物と人間の合成生物(オーグメント)を生み出すに至るだろうが、またそれまでにヒロミの弟の様な犠牲がさらに積み上がるのは確実だった。
構成員たちが追い求める各々の〝幸福〟の実現の為に産み落とされ続ける〝絶望〟……その事実を前に本郷の拳を握る手が強まる。
「そう」
幼馴染の訃報を聞かされていたルリ子の方も平静さを装っていたものの、本郷の強化された視覚は、どれだけ抑えて隠しても漏れ出てしまう動揺を彼女の後姿から嗅ぎ取っていた。
「本郷さんも今日はバイクじゃないのね? ルリルリとご一緒にいかが?」
「お酒は結構……」
「僕も遠慮しておく」
と、ヒロミから勧められた一応は祝杯の意味合いなお酒を断るルリ子、本郷も辞退を表明した。
アルコールで酔うことのない身体となる前から、時々立花(おやっさん)と一緒に嗜む程度にはお酒を飲む機会があった本郷だが、今はそんな状況でも気分でもない。
「なにをしに来たか分かってるでしょ?ヒロミ……」
「私たちの排除?それとも殲滅?どちらにしても物騒な話ね」
ヒロミはその手に持っていたグラスの中の酒(シャンパン)を飲み干し、傍らに立つ本郷達をここまで案内してきた彼女の右腕らしい配下の背広の男にグラスを手渡す。
「それに今の私の〝名〟は《SHOCKER上級幹部構成員――ハチオーグ》、《ヒロミ》はあくまで過去(むかし)のコードネームだってこと、忘れないでねルリルリ」
まるで自分の過去は壁面に飾られる抜き身の刀(やいば)で斬って捨てた――と言わんばかりに《オーグメント》としての名前(コードネーム)を強調するヒロミ。
ルリ子から聞いた《SHOCKER》の洗脳方法を顧みるなら、構成員にとって己が幸福を求める源にして忘れてしまいたい〝絶望〟の記憶(トラウマ)など、消し去ってしまいたいと思うこと自体は本郷でも理解できる。
現に彼の手に、絶望の源泉の一部たる血の感触がフラッシュバックした。
「………っ」
ほんの数秒、息を呑んで表情の険しさが深まるルリ子の口から出たのは――。
「悪いことは言わないヒロミ、《SHOCKER》を抜けて」
彼女なりの最大限の譲歩で、組織からの離反を提案する。
「私も悪いことは言わないルリルリ、《SHOCKER》に戻って」
対してヒロミは、にこやかな面持ちで離反者(ルリ子)に組織への〝出戻り〟を勧めてきた。
「《SHOCKER》の素晴らしさは生まれた時から堪能してるでしょ? 私たちの幸福を形にしてくれる《アイの秘密結社》――」
本郷はこちらを油断させる罠の可能性も捨てずに《SHOCKER》が構成員(じぶんたち)にとってどれ程の福音を齎してくれる存在か説き始めるヒロミの様子を注視するも、彼の視点(めせん)からは彼女はあながち嘘を言っているわけではないと言う印象も受ける。
「私が求める幸福は〝支配〟、私の配下たちの幸せは〝服従〟、その為に必要なのは、人間社会にも自然にもストレスをかけない効率的な奴隷制度による統制された世界システムの再構築と実現……高崎市(このまち)はそのテストモデル」
一方で、自身の〝幸福論〟も弁舌するヒロミの表情から本郷はある変化を嗅ぎ取った。
微笑みを絶やさない飄々とした物腰なのは変わらないのだが、先程まで飄々とした調子から転じて……明らかに楽しんで、喜んで、高揚している。
何に対してか? 答えはヒロミの目線にある。
当人曰く〝愛の巣〟に自分たちが入ってきた瞬間から、ヒロミはずっとルリ子を見つめ続けていた。
「さてと、私の幸福(りそう)がご理解頂けたら、二人とも《SHOCKER》に戻り、正しき社会システムの礎となって」
と、ソファーから立ったヒロミはルリ子と本郷の二人に〝働き蜂〟になれと自身の旨を表明してくる。
「《SHOCKER》に生まれし者は、《SHOCKER》に還る、それが筋よね?」
(どう答えるか、君は分かっているくせに……)
本郷はこの問いかけにルリ子がどう返答するか分かっている上で、敢えてヒロミは投げかけたのだと感づく。
「悪いけどヒロミ、それはできない……」
顔を直接見ずとも、立ち上がった後ろ姿と声音で〝断腸の思い〟であることが伝わるほどの沈痛さでヒロミからの誘いかけを断り。
「僕もそれが〝運命〟なら、抗わせてもらう」
本郷も自身が《SHOCKER》の落とし子の一人だからと言って大人しくその〝筋〟に応じる意志は無いと、はっきりヒロミに突き返した。
「あらら~~さっそく交渉決裂? 暴力は嫌いだけど……」
相手(ヒロミ)が《オーグメント》ととしての姿を見せる踏まえ、咄嗟に本郷は革ベルトに擬態している《タイフーンドライバー》のサイクロン遠隔操縦装置を操作しつつ、防護服(ライダースーツ)を起動させようとするも。
「仕方ないわね」
対してヒロミが指鳴らしをパチンと屋内中に響かせた瞬間、幾つもの扉が開いた。
戦闘員かと思われたが――。
「(洗脳された市民か……)」
「イチローさんにルリルリの保護を頼まれているのよ、本郷猛さん」
〝変身〟を中断する本郷、ヒロミが彼らに差し向けてきたのは彼女の〝幸福〟の為に意志を奪われた高崎市民たち。
《オーグメント》の肉体を持つ今の本郷からは、虚ろな表情で忍び寄る様に近づいてくる民間人の姿は、余りに脆く映る。
実際ライダーに変身せずとも、ほんの軽く指先で突いただけでも、人間の脆弱な身体を大きく傷つけ、最悪死に至らしめてしまうだろう。
「大人しくルリルリを渡して、でないと私の実験に運良く選ばれた住人たちが相手になるわよ、何も関係ない〝働きバチ〟に、貴方は暴力を振るえるかしら?」
自分から〝暴力は嫌い〟と言うだけあって、丸腰の同然の市民を盾(ひとじち)に使うのは確かにらしいやり口ではあった。
〝支配者〟となることを己が幸福とするヒロミにとって、自分に支配される側の人間たちによる反抗や抵抗する形で〝暴力〟を使われること、仮にも〝奴隷〟と言う自らが統治する社会システムにおいても貴重な人的資源が無駄に消費(ぎせい)となることは良しとしない。
ヒロミの言う〝嫌い〟とはそう言う意味だと本郷は察しつつ。
(父さんもこの〝感触〟を嫌ってた……だからあの時銃を捨てた)
自分の意志で〝戦う〟とを選んだ――が、ゆえにどんな理由があろうともこの手で元は同じ人間であることには変わりない《オーグメント》たちを葬ってきた時に味わった血の匂いと感触に対する嫌悪感を拭い去ることはできない。
だからこそ自分が〝仮面ライダー〟として戦い続ける上で、この〝感情〟を切り捨てたくもない感情(おもい)を込めて。
「僕も〝暴力〟は嫌いだ、走れ!」
ヒロミに対してそう投げかけた本郷はルリ子の手を取りその場から駆け出し、動きが緩慢な市民を掻い潜って《サイクロン》に指示を送り、外気が流れるのを感じていたレースドアを通り抜けた。
その先はルーフテラスとなっており――。
「変身ッ!」
『REINFORCEMENT RIDER SUIT ―――AWAKENING』
本郷はルリ子を抱えてテラスを飛び越えて防護服(スーツ)を着装、背部からプラーナでできた飛蝗の羽根(つばさ)を羽ばたかせて落下速度を緩めつつ。
「サイクロンッ!」
『BOOST FORM』
タイミング良く六連マフラーの火を闇夜に吹かして上昇する変形済みのサイクロン号へ、ルリ子を伴ったまま空中で飛び乗る。
「掴まって!」
ハンドルを握り、背中に回されたルリ子の腕の感触が強まったのを確認した本郷――ライダーはサイクロンの出力を上げてエンジン音を唸らせ、アジトの外壁めがけ突進。
『ION FIELD――PUT UP』
『ION BLASTER――BURST MODE』
サイクロンの車体前方に空気抵抗及び敵からの攻撃を防護するプラーナと大気の混合防護壁を張りつつ、前輪に備える銃口から空気弾を連射して〝ハチの巣〟にした壁面へ突撃に、アジト内部へ再侵入。
「このままサーバーまで走れ!」
『了解!』
建物内部の壁から壁を次々と突き破って、市民を洗脳させている源泉たる洗脳装置(スーパーコンピュータ)に辿り着く。
「ここが装置の大元よ!」
ルリ子はタンデムしたまま背中にしょっていたリュックから取り出したアサルトライフルを構えて発砲、続く形でサイクロンの空気銃も連射される中、ライダーは愛機をその場で高速回転(アクセルターン)させる。
室内の機器全てに弾丸が撃ち込まれ火花が飛び散る中、ライダーはサーバーを後にする。
サイクロンの突撃で空いた穴から退室する直前にルリ子はダメ押しに手榴弾のピンを抜いて、サーバーの中心に放り投げた。
サイクロンの空気弾の影響で酸素濃度が上昇していたのもあり、手榴弾は性能を超えた爆発を起こす。
炎を背に本郷たちを乗せるサイクロンはアジトを飛び出し、地上(アスファルト)に辿り着いた。
「やったか?」
愛機から降りたライダーはアジトを見上げる。外壁の風穴からは爆発の煙が夜空へと立ち上っている。
額の《Oシグナル》の探知機能を含めて、高崎市に入った時から感じていた低周波の反応が消え去っており、市街地へ向けて聴力を集中させると、洗脳状態が解けて先程まで自分が何をしていたか記憶に無く戸惑う市民の反応(リアクション)が聞こえてきた。
洗脳装置の破壊に成功したことで、変身を解いて安堵の息を本郷が零す一方。
「ヒロミの様子はどうかしら?」
本郷の超感覚とサイクロンの高周波(ソナー)により。
「幼馴染は屋上にいる、決着をつきたがっているようだな」
位置を特定し、ルリ子はニットに擬態している仮面(マスク)に触れ、戦闘員らを引き連れて自分らが来るのを待ちわびているヒロミの姿を見た。
「行きましょう……」
「ああ」
《A.S.U》からの依頼通り最優先排除対象であった洗脳装置の破壊は完了したものの、それで首謀者当人が大人しく引き下がるわけないと本郷もルリ子も確信しており、改めて決着をつける為、二人は再び塔へと乗り込んでいくのであった。
――――
テッテテ~~デデデン~~♪
原作では一旦退却しますが、その後ドローンから飛び降りてからのライダーきりもみシュートと言うプラン(物理)でサーバー破壊できちゃったので……ならいっそこっちはこっちでそのままサイクロンでと派手にカチコミしますかとなりました(コラ