SHIN KAMEN RIDER ~The Re:Build~ 作:フォレス・ノースウッド
本家の変形後のシンサイクロンくんが似合うのはやっぱ本家シン一号なので、FIRST風の今作の一号あんまり組み合わせがイイとは言えない(実はサイクロン号もFIRST版が好み)。
かといってFIRST版サイクロンベース車のCBR1000RRだとごつすぎるので、CB250Rから変形しても違和感ないホンダ製バイクないかな~と調べてたらCBR250RRを発見して採用。
このバイク、巷ではフロントフェイスが『エヴァ初号機』に似てると言われているので、弐号機っぽいCB650R改造の本家変形後と良い対比にもなると思ったので。
「緑川……先生」
ルリ子が用意した私服に着替えて老朽化著しい家屋の母屋へ出た本郷は、彼女と一緒にいる白髭を蓄えたご老体、自身の恩師である緑川弘博士を目にして驚きを隠せずにいた。
「既に本人から紹介を受けたと思うが、娘のルリ子だ、彼女を助けてくれてありがとう」
「どうも……」
本郷にとってのもう一人の〝父〟にも等しい人物から感謝を述べられ、軽く会釈して応じながらも、やはりルリ子は彼の肉親であることを知る一方で、新たな疑念が心中浮かぶ。
ルリ子の外見から推測できる年齢分より遥か昔にて、博士の妻はとうに亡くなっていること、それ以来ずっと独身であることを当人から前に聞かしてくれたことがあるからだ。
けれどこの疑問は、一旦胸の内に一度閉まっておき。
「(現在異常なし、もし何かあったらベルトの左側のスイッチを押してね)」
分かった。
自律走行と光学迷彩で見回り中のサイクロン号からの連絡を受けつつ。
「しかし先生……言いづらいのですが、先生も《SHOCKER》とやらに属していたのですか?」
「そうだ」
博士がこの場にいる理由を本郷が問いかけると、相手はあっさりと肯定する。
過去形で質問したのは、博士もまたかの組織から離反した一人であると踏んでいたからだ。
「そして今の君は、組織――《SHOCKER》が開発した《人外合成型オーグメンテーションプロジェクト》の最高傑作だ」
先程本郷が推測していた通り、《バッタオーグ》のオーグとは『Augmentation』を元にした用語だった。
「つまり、この身体とスーツも、先生が前に話してくれた《プラーナ》の研究の産物だと?」
「如何にも、私と私の研究チームが、その力を用いた技術で君の身体をアップグレードさせた」
本郷は以前博士から、現在の人類が抱える諸問題を一挙に解決できる可能性を秘めた新たなる〝エネルギー資源〟の研究と開発を進めていると聞かされたことがある。
現状世間には正式に公表していない非公開の研究であるとして、その時は詳細まで本郷(おしえご)に話してくれなかったが、博士はそのエネルギーのことを《プラーナ》と呼称し、語源は古代インドのサンスクリット語で『呼吸、息吹、風』と意味する同名の単語から取ったところまでは聞かせてくれた。
「《プラーナ》は、今の君の肉体と生命力そのものを直接支えている、君を超人に変えたのも、圧縮された《プラーナ》の力が源の一つだ」
本郷はそのエネルギーのことをメラネシアや太平洋諸島の宗教にて存在する〝万物に宿る超自然的力〟では?と解釈していたが、こうして技術転用できている辺り、ほぼ正解だったらしい。
「そんな力を僕に……なぜです?」
裏切られた……とまではいかないものの、本郷は他ならぬこの恩師が自分の肉体を改造した事実に、少なからずショックを受けており、それでも平静であろうと心がけながらも、それを行った博士の意図へと踏み込む。
「以前から組織は、君を次なるオーグメンテーションの被験体候補として目を付けていた、私がやらずとも、他の研究グループが君を改造していただろう」
どうやら博士がやらずとも、《SHOCKER》は自分を人体改造する魂胆でいたらしい。しかも彼の言葉から、どういう基準で選別しているかはさておき、自分と同じようにあの組織によって〝怪人〟にされた人間は少なからず存在しているとみた。
「何より君は望んでいた、以前にて私に話してくれた……君がかつて経験した深い絶望から端を発する――〝人を守る為の強い力〟――を求める渇望を」
〝父さんッ! とうさぁぁぁぁーーーんッ!!〟
「っ……」
脳裏に博士が口にした〝絶望〟の記憶がフラッシュバックした本郷の眉間に、深い影が差され、彼は俯いて口を固く結んで震わせる。
「これが、その〝力〟だと言うのですか?」
「その通り」
「しかし先生――」
本郷は先のSATに偽装したSHOCKERの実働部隊との戦闘を思い返しながら、訊ねる。
「――彼らも《オーグメンテーション》と施された強化人間だったのでしょう?」
「君に施したものに比べれば簡易的なものではあるし、組織の命には絶対服従するよう洗脳措置を受けてはいるがな」
「それでも人であることに変わりありません、そんな人間たちを簡単に殴り殺せてしまう……〝たった一人〟が持つには、余りにも行き過ぎた力です!」
博士の言う通り、本郷はその昔絶望(トラウマ)を味あわされたその日から、世の不条理から人を守れる力をずっと欲していた……だとしても、彼からすればこの《バッタオーグ》と名付けられた力は、人間が背負うには強大が過ぎる代物にしか思えなかった。
しかもこれだけの過剰な力を持たされた者が、他にもいるときた。
中にはその力から発する誘惑に溺れて精神が歪み、他の多くの人々を巻き込み、時に命すら奪っているのではないのか?
「そう認識してくれればいい、組織に属する上級オーグメントの多くは、君と同等の力を持ちながら、その力を自分(こじん)のエゴの為に使っている」
博士のこの言葉から、実際に本郷が抱いた懸念は現実に起きているのだと窺えたが、同時に解せない点も見受けられる。
彼の発言の通りなら、他の怪人(オーグメント)たちは各々のバラバラな目的の下、自分勝手に力を振るっていることになり、組織の上層部は彼らの蛮行を実質見過ごして黙認していることになるのでは?
そのような組織が仮に作られたとして、果たして存続が可能なのか?
ただ、あの蜘蛛の仮面を被った怪人(オーグメント)……法則性からして《クモオーグ》と名付けられたであろう男の、離反者たるルリ子と自分への対応から見るに、位の高い構成員たちが勝手気ままに振るっていそうな組織環境でも、破れば〝死〟と言う形で制裁が下されるだけの厳格なルールは存在するようだ。
「っ―――分かりました」
深呼吸をする。
何にしても、これで本郷の覚悟はより強固となった。
「この瞬間にも、世界の裏側でオーグメントたちが多くの無力な人たちを虐げているのなら、僕は―――戦います」
この力が人間には過ぎた代物だと言う気持ちは変わらないし、彼らと戦うと言うことは即ち――〝同族殺し〟の罪過をも背負うことになる。
だからこそ、力に対する〝恐れ〟と、罪と言う悪魔を相乗りする覚悟を、絶対に忘れずにこの胸に重く刻きつけた上で、理不尽に抗う術を持たぬ無力なたくさんの人達の〝自由〟と〝命〟を守りたいと言う確かな強き想いが、本郷の心から沸き起こり、自らの決意を述べた―――刹那だった。
〝蜘蛛?〟
本郷の目の前に、蜘蛛が一匹、糸を垂らして彼と緑川父子の間に降りてくる。
咄嗟に胸騒ぎを覚え、背筋に悪寒、全身に鳥肌が立つ本郷は素早く手を突き出し、蜘蛛を手中に、握り潰した瞬間、機械の破損音がしたかと思うと、彼の手の甲へ天井から糸が降ってこびりついた。
「いかん!逃げろッ!」
緑川博士が警告するも、本郷は接着された糸に引っ張られて放り投げられ、木の内壁に叩きつけられ、全身に、いくつも大きな蜘蛛の糸が粘着され、拘束されてしまう。
ルリ子も突如その場に倒れて気を失った。コートの襟から、先に本郷が握りつぶしたのと同じ蜘蛛が出てくる。
「お邪魔しますよ」
天井から、そこに貼り付き隠れ潜んでいたクモオーグが降り立ち、手に持つ糸(ロープ)で博士の両手首を縛りあげた。
「んぐっ!」
「無駄です」
拘束する糸を破ろうとする本郷だが、びくともしない。
「人に戻るなどと言う愚かな理由でエネルギーを放出した今の貴方に、私の糸は切れません、《バッタオーグ》」
「《クモオーグ》……ぐぅ……いつからここにいた?」
「この廃屋が緑川たちのアジトに使われると予測していたので、貴方が私の戦闘員たちと交戦している間、念の為彼女に発信機を付けて待っていたら、案の定でした」
しまった……ここが博士たちのアジトだと既に《クモオーグ》は把握して待ち伏せており、あの蜘蛛たちも奴の手駒たる道具(マシン)だった。
それに蜘蛛と言えば、自らが張った罠に獲物がかかるまでじっと待ち続けることのできる生物、アジトに網を張り、博士ら離反者たちが集まるまで身を潜めるなど造作もない。身に着けているジャケットも、ドローンと言った機械類のセンサーに探知され難くなる特殊な機能も備わっていたのだろう。
本郷は、自分たちがこの不穏分子を処刑する〝掃除人(スイーパー)〟からマークされていたとも知らずに、罠の真っただ中へまんまと入り込んでしまった。
〝サイクロン……ごめんな〟
これでは外で見回りをしてくれていたサイクロンに、とんだ徒労をさせたと本郷は詫びる。腕も拘束されている為、救難信号を送ろうにもスイッチに手が届かずにいる。
「さて……」
クモオーグは緑川博士の首を掴み取り、そのまま持ち上げた。地から離れた博士の両足は苦痛で宙にぐらつく。
「先生ぇ!!」
「私に構うな! 私はプラーナで世界を救済する為に、多くを巻き添えにしてきた……これはその報いだ、本郷くんも、すまなかった」
「よして下さいッ!そんなこと……」
本郷は自身を拘束する糸を引き千切ろうともがくも、クモオーグの巣(ネット)は一本たりとも切れそうな気配を見せない。
「さあクモオーグ……殺せ! 遠慮せず私を!お前の〝幸せの贄〟にしてみろ!」
「ご心配なく、その願いは私らしいやり方で叶えてあげましょう」
クモオーグが着用している赤と黒のジャケットの各所に備わるファスナーが、ひとりでに動き出して開き始めると、内部からグローブとレザーにくるまれた腕が姿を現す。
「裏切者に死を――それが私の仕事です」
ジャケット内から這い出てきたのも含めたクモオーグの四つの腕の内二つは、首に博士の首を絞めつけ、後の二つは瞼越しの眼球と押し込む。
「良いですね~~~この手応え、獲物の命は自身の手で直接頂く~~それが私の礼儀(マナー)です」
上級オーグメントの身体能力ならば、人間の、それもご老体を腕力のみで即死させるなど容易いにも関わらず、クモオーグは博士の苦しむ呻き声を嬉々として聞き耳を立て、文字通り〝真綿で首を締め〟、彼を残虐に痛めつけていた。
「では、緑川弘、貴方も死んで、私の〝幸福の一部〟となって下さい」
「止めろぉぉぉぉーーー!!」
「本郷くん……ルリ子を……頼む」
それが、緑川博士の最後の言葉となった。
クモオーグの指は博士の眼球を押し潰し、首をへし折り、一人の人間の命を〝快感〟と〝歓喜〟で以て奪い尽し、亡骸を粗雑に床へ放り込ませた。
「先生……」
「私に幸せをありがとう……」
博士の亡骸は瞬く間に泡に包まれ。
「貴方も、未来永劫お幸せに」
人型の沁みを辛うじて残し、崩れ落ちて消え去った。
「バッタオーグ、貴方も裏切者の一人ですが、親愛なるオーグ仲間の一人なので、今は見逃します」
鋭利な眼光を発してくる本郷に対し、クモオーグは涼しくも恍惚に満ちた声色で流し、眠るルリ子の身体を肩に背負い。
「私は彼女の拿捕と連行に忙しいので失礼します、ではさらば」
本郷に捨て台詞を吐き天井へ見上げると、マスク越しに糸を飛ばして手に取り、それに伝って屋根と突き破り、この場を去った。
「先生……」
残された本郷は、博士の亡骸が横たわっていた沁みへ直視したまま歯を食いしばり、身体中の震えは激しくなり。
「うあぁぁぁぁぁぁぁーーーーッ!!」
悲痛さに満ちた咆哮を上げ、瞳が赤く発光し、渾身の力を一心不乱に放出して、己を縛り付けていたクモオーグの拘束から解き放った。
勢いに任せた余り、受け身も取れず床に倒れ込む本郷、溜まっていた埃が立ち昇り、壁と天井の隙間から漏れる陽光に照らされる。
「(たけしッ!!)」
本郷の脳へと呼びかけ、家屋の正面扉を突き破って、サイクロンが中に入ってきた。
「サイクロン……」
まだ会って乗機となってから一日目だと言うのに、既に愛機の域で愛着が湧くこのカスタムオートバイクの名を本郷は呼び。
「君が謝ることじゃない……」
彼らの危機への対処が遅れたわが身の不甲斐なさを恥じるサイクロンをフォローする本郷は、手を支えに、まだ息が乱れたまま起き上がる。
俯く彼の顔の真下には、雫が何滴も零れ落ちていた。
「(その顔……)」
「分かってる……」
本郷は濡れた頬に触れる。今彼の顔は熱く疼き、《バッタオーグ》の姿になっていないと言うのに、痣が浮き上がっていて。
「どうやら感情が昂った状態で力を使うと、変身しなくとも、この顔になってしまうようだ」
彼はその理由(メカニズム)を汲み取って述べ、額の中心に触れる。
そこには《Oシグナル》に酷似した〝第三の眼〟とも言える宝玉が存在していたのだ。
「でも……この身体(ちから)と付き合って戦う上では、むしろありがたいのかもな」
口元は微かに笑みを形作り、改造(オーグメンテーション)された証たる容貌に刻まれた聖痕は、たとえ肉体は異形でも、そこに宿る心は人間として、この先彼に待ち受ける〝茨の道〟を進でいく上で、これは福音なのだと……凛と猛々しく断言し、目尻の涙を腕で拭いきると。
「僕は彼女を――緑川ルリ子を助けたい……サイクロン、相乗りしてくれるか!」
改めて愛機に、共にこれから険しき悪路を進んでくれるかと問いかける。
「(もちろん! ぼくはいつだってたけしと一緒だ!)」
そう応じてくれたサイクロンに、頷いて感謝の眼差しを贈り、本郷はライダーズジャケットの懐からグローブを取り出して嵌め、愛機に乗ってハンドルを握り、ニットをヘルメット形態へと戻し。
「行くぞッ!」
アクセルレバーを回し、サイクロンを発進させて外へと突き抜け、エンジンと排気音を豪快に、森中に轟かせんと走り出す。
林道の途中に、足跡と車のタイヤ痕を目にした。
〝奴のだ〟
博士たちの廃屋(アジト)の床に残っていたクモオーグの足跡と一致させた本郷は、タイヤ痕を追いかけ、アスファルトに舗装された山道に出る。
『TYPHOON DRIVER――STAND BY』
サイクロンのハンドルを握りしめる本郷の脳波(しこう)に応じ、擬態していたベルト――《タイフーンドライバー》が本来の姿となって彼の腰に再装着。
「変身ッ!」
本郷の音声入力(かけごえ)を受け、ベルトのバックル中央の風車(ダイナモ)が回転開始、周囲の大気(プラーナ)を取り込み、内部の特殊リアクターが稼働、瞬時に高出力のエネルギーを生成し、バックル上部と下部のハッチから彼の全身は赤紫色の流動経路骨格――《ブラッドストリーム》と、水粒子状のナノマシンに覆われ。
『REINFORCEMENT RIDER SUIT――』
本郷の肉体が変質すると同時に、特殊強化服を着装。
フルフェイスシステムヘルメットは、チンガードが展開し、一時聖痕と額の第三の眼が浮かび上がる本郷の顔が露わとなり、下顎と口にクラッシャーが出現、バイザーは複眼に変形して双眸と頭部を覆い、《Oシグナル》からV字型ブレードアンテナが伸び。
『――AWAKENING』
朱き複眼と《Oシグナル》が発光し、《バッタオーグ》への変身完了。
スーツの一部となっていたユリ子から譲り受けた首のマフラーが、躍動感たっぷりに疾風を受けて靡く。
続けて本郷はサイクロンの左側グリップに付く赤のレバースイッチを親指で押し込み、ハンドルを押し込んだ。
『CYCLONE――BOOST FORM』
サイクロンの車体の全長が伸び、《バッタオーグ》の強化服同様、ナノマシン製の外装が前方と後方に展開、フロントフェイスはCBR250RRに酷似した顔つきとなり、四つの吊り目のライトの表面は複眼状で、フルカウルの中心に、バイクの正面にも、バッタの顔にも見える《バッタオーグ》の紋章(エンブレム)が表出され。
後輪を挟む形で、後部両側に設置された三筒マフラーが形状変化、三対の計六本な大型マフラーとなり、サイクロンも《ブーストフォーム》へと変身を遂げ、本郷はスロットルを上げ、サイクロンの大型マフラーはジェットエンジンの如く、マゼンダカラーの火を噴き上げ急加速させていった。
「車両の現在地は分かるか?」
「(今高周波で探してる)」
サイクロンは潜水艦のソナーと同様に、周辺に高周波を発して集めた情報をCGに変換しリアルタイムでマスクのブレードアンテナを通じ、本郷の脳内に直接投影している。
「(フェンダーミラーが付いた四代目のアコードを見つけたけど、あれかな?)」
その機能で本郷達の現在地からそれらしき車両を発見。
「あれが当たりだろう」
「(根拠は?)」
「タイヤの形状とホイールベースがさっきのタイヤ痕と一致した」
〝アコードの四代目とか、一体何十年前の車を使ってるのやら〟
それなりに年季の入った車両にクモオーグがあの見た目で乗車している事実(こうけい)を想像して、思わず本郷は苦笑させられる。
「(よく分かったね)」
「観察力の賜物だよ、ワトソン君」
スピードを上げつつも、焦らず冷静な判断力の維持も兼ねてサイクロンとユーモアを交わす本郷は、バイクの車線を右にずらし、後方から迫っていた砲撃を回避し、着弾したアスファルトから爆炎が上がった。
〝何が見逃すだか……僕が追撃してくるのを見越しておいてよく言うよ〟
先のクモオーグの捨て台詞に対し、内心毒づく本郷。
肉体とスーツの双方で強化された彼の〝超感覚〟とサイクロンのソナー機能で、後方より機関銃と迫撃砲装備の装甲車、前方からはオフロードバイクに乗る戦闘員の部隊が向かってきて、タンデムするメンバーがライフルを構え、挟撃で弾丸と砲弾を撃ち込んでくる。
今のサイクロンのスピードなら装甲車もバイク部隊も振り切れるし、車体もスーツも相手側の攻撃に耐えられる防御力はあったが、戦闘員のしつこさを踏まえると、先に連中をどうしかしないとこのままアコードに追いつけばクモオーグ共々戦闘になり、下手をすればルリ子も巻き添えにしまいかねない。
「(装甲車はぼくが狙い撃つよ)」
「ああ、対向車の戦闘員は任せておけ」
サイクロンがさらに加速し、マフラーから噴射される白煙で目くらましをすると、車体後部席が展開し。
『ION BLASTER――SNIP MODE』
銃口が顔を見せ、同時に本郷は運転席に両手を付けて逆立ち。
「(Target――lock on)」
サイクロンは銃口から電流を帯びた高圧縮空気弾を装甲車へ発射。
《ライダーサークルスマッシュ》
鞍馬で踊る体操選手の如く、両脚を開いて横回転、足先から円状に放出する旋風の衝撃波でバイク部隊をすれ違いざま全員を吹き飛ばし、サイクロンの狙撃は装甲車のエンジン部のバッテリーへ正確に命中、電流によるスパークで車両内部が爆発炎上した。
「近道するぞ!」
「(了解!)」
挟撃してきた追撃部隊を一掃した本郷は、走るサイクロンの速度をキープしたままウィリーさせ、エンジンの轟音を盛大にかき鳴らしてジャンプ。
ガードレールを飛び越え、道路外の木々が生い茂る急斜面に飛び込んだ。
オフロードタイプでも並みのバイク乗りでは事故発生不可避な坂道を、一見スーパースポーツタイプな外見のサイクロンで降りるなど、自殺行為にしか見えないが、三〇〇キロオーバーするスピードで、一人と一台はフリースタイルスキーのモーグルに挑むスキー選手よろしく、木々の間を巧みにすり抜けて滑走していった。
この芸当は、サイクロンの性能と、《オーグメント》の身体能力もあるが、本郷自身の磨き抜かれたバイク操縦技術とセンスも含めて為せる、まさに神技だった。
「(この先の崖に、ヘリが待ち構えてる!)」
〝仮にも秘密結社が、また派手なこと……〟
皮肉を零しながらも本郷は、強化された視力で待ち伏せしている戦闘ヘリを目視した上で。
「サイクロン、わざとこっちをロックオンさせるよう仕向けてくれ」
対抗策を即座に思いつき、敢えてヘリがこちらを補足しやすいルートへ進路を変更。
「(ロックオンされた)」
「タイミングを合わせるぞ!」
「(任せて)」
ヘリの操縦桿を握る戦闘員の指が、ミサイル発射のトリガーを押した。
「(着弾まで後、五・四・三―――)」
サイクロンはカウントダウンを刻みつつ、本郷は愛機のマフラーの出力を急上昇させて跳ぶ。
ミサイルは車体の真下を通り抜け、背後の坂に衝突して爆発、生じた爆風を背に受けて、一気にヘリまで距離を詰め。
『ION BLASTER――BURST MODE』
サイクロンは前輪のホイールに二門ずつ、計四門ある銃口から空気弾を乱射、ヘリのガラスに亀裂を走らせ機内にいる戦闘員の視界を奪って隙を生じさせ。
「トオォォォォーーーッ!」
本郷はシートに立って跳躍し、突進。
《ライダーチョップ》
右腕による横薙ぎの一線で、ヘリ本体とプロペラの接合部を両断して切り抜けた。
既に本郷がいる宙域の真下は崖下であり、跳躍の勢いを消費した彼の身体は落下していくが、スーツの背部で描かれた羽根状の模様が発光し始め、《プラーナ》でできたバッタの翼が広がり、地面へと滑空し、前方宙返りから三点着地を見事決め。
サイクロンも六連マフラーを下方へ可動させ、噴射で落下速度を緩めて無事降り立つ。
彼らの背後では、メインのプロペラを失い、宙を乱雑に転がるヘリが大地に激突し、爆音を打ち鳴らして炎上した。
呼吸を整える本郷は振り返って爆炎を見据え、ほんの数秒の間だがここまでの戦闘で戦ったSHOCKER戦闘員たちに黙祷を捧げると、サイクロンに再び跨り、ルリ子を救出するべく先回りのルートで引き続き、急行するのであった。
―――
テッテテ~~デデデン~~♪
『だが私は謝らない』でお馴染み剣の烏丸所長も『謝った方がいいか……』と考え直すくらいアレなシン緑川博士。
『ほかの怪人は力を自分のエゴで使ってる』と言ってるけどアンタもそうやんけ!!と劇場リピートとテレビ放送見逃し配信込みで何度も見る程実感するので、こっちではテレビ版同様ちゃんと謝罪させておきました。
さすがにこんぐらいしないとね、巻き込まれた本郷さんが哀れ。
漫画版同様、顔の痣は感情の高ぶりで浮き出る本作の本郷さん。
でも『痣が残る素顔こそ偽物』としてた漫画版と反対に、仮面を被った顔も痣が出る素顔も全て『自分の顔、自分の一部』、キカイダーで言うあえて不完全な良心回路のままでいるに近い結論に至りました。
サイクロン号とのやり取りが多いお陰もあって、大分うちの本郷さんは前向き。
でもシン本家の本郷さん同様、黙祷は忘れません。