SHIN KAMEN RIDER ~The Re:Build~   作:フォレス・ノースウッド

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さてさてコウモリオーグ編込みの第二幕です。

映画本編初回の時は、敢えてスピンオフ漫画を読まずに見たので、ロボット刑事Kオマージュのケイさんが出てきた時はそらびっくりしました。
え?K刑事も出るの!?しかも演じてるのシンケンレッド!?

実質シンショッカーの運営者でありながら中立の立場を取るケイだからこそできた、映画本家では一切なかった本郷との絡みをどうぞ。


第二幕
旅の始まり


《クモオーグ》を倒し、ルリ子を奪還した本郷は、彼女を抱きかかえてライダースーツのまま、休ませられる場所がないか周辺を強化された感覚力で探し、展望広場が適任だと判断、その場から目的地まで持前の跳躍力で一足飛び。

 広場内にそびえる三角小屋のベンチに、そっとユリ子を降ろすと、ベルト右側下部のスイッチを押し、ナノマシン製強化服(ライダースーツ)をベルト内部に収納して変身を解除、仮面(マスク)もニット帽に擬態させ直した。

 大型六連マフラーの噴射で、同じく広場へ一足飛びで来たサイクロン号が《ブーストフォーム》から通常形態に戻るところを見たところで本郷は――。

 

「もしよろしければ、出てきてくれませんかね――」

 

 腰に手を当てて一呼吸すると、〝誰か〟に声をかけ始める。

 

「それとも〝職務〟上、姿は明かせないルールでもあるのかな? 外世界観測用自律型人工知能――Mr.K」

 

 その場から振り返って、虚空を見据える本郷。

 否、よく見れば、展望広場のエリア内の宙に、超小型ドローンが滞空しており、カメラレンズが本郷たちを捉えていた。

 

『How observant you are』

 

 ネイティブなイントネーションによる英語で『よくぞ気づきましたね』とドローンのスピーカーから、流暢で丁寧だが、無機質さも併せ持った合成音が響くと、ドローンの下部からプロジェクターの様な光が投下され、立体映像(ホログラム)で今の声の主が、姿を現す。

 

『驚かれないのですか? 本郷猛君』

「《SHOCKER》のオーバーテクノロジーをか? それならこの身体と相棒(サイクロン)とその他エトセトラで十分味わったからね、また驚愕するには、アンドロイドが一人出てきたくらいじゃまだ足りないよ」

 

 前述の本郷の発言にもあったが、ホログラムに映されているのは、高度な人工知能を有した、いわゆる〝人型ロボット〟だった。

 クモオーグのプラーナに付加されていた彼の記憶の断片にも、このアンドロイドの姿があった。

 やや青みがかった銀色の外装の上にボルドーカラーのダブルブレザースーツを着用し、顔は彫像風に形成された口と鼻と耳、乳白色に輝く両目(カメラ)から頬を伝ってスリットが走り、頭部にも同様のスリットが流れてまるでオールバックの髪型にも見える。

 

「君のことの大体は、サイクロンから今幾つか聞いた」

『ほう、彼は私のことを何と紹介してくれましたか?』

「相棒の説明を要約するなら、君のポジションは実質SHOCKERの組織運営のトップであり、各上級オーグメントたちの日々の活動を記録する書記官ってところかな?ケイ」

『That’s true――です』

 

 本郷が口にしたこのアンドロイドの〝職務内容〟に対し、ケイ当人は〝その通り〟と答えた。

 

『いつ頃から私が〝観測〟していることを、お気づかれたのですか?』

「クモオーグをサイクロンと一緒に追いかけてる最中から――」

 

 ――自分たちに送られてくる気配(しせん)に、超感覚で感付いていた。

 最初はクモオーグからのの差金(ドローン)の類かと思っていた本郷だったが、追撃部隊を追い払っても、先回りに成功しても、クモオーグとのタイマンとなって最終的に《ライダーキック》で引導を渡してルリ子を救出してからも変わらずに続く敵意の感じられない〝観測〟に対し、状況が落ち着いたことでサイクロンにこっそりと脳波会話(テレパシー)で訊いてみたところ、ケイのことを聞かされ。

 

「君は基本観測と記録の仕事に徹し、組織の運営に携わってはいても、忠臣だろうと背信者だろうと、どの構成員の誰とも敵にならず、味方にもならない〝中立〟の立場だってことまでは行き着いたよ」

『Fantastic――名推理です』

 

 ゆえに本郷は、少なくともこの観測者(アンドロイド)がこちらに危害を加えることはないと察したので変身を解き、彼の職務と立場から逸脱しない範囲で、コンタクトを取ってみたのである。

 立体映像越しとは言え、実際にケイの姿を拝見した本郷が抱く彼への第一印象は悪くはなかった。仮にも組織の離反者である自分含め、紳士(ジェントルマン)と評するに相応しい丁寧な佇まいと態度を崩さず、妙に正確なネイティブ英語を交える一面もチャームポイントだと思うし、一見するととても世界規模で暗躍していそうな非合法の秘密結社の運営者と思えない人柄だ、いやロボット柄か?

 それに――。

 

「その白薔薇は、クモオーグ……マサさんへの献花?」

『Yes』

 

 本郷はプラーナの記憶を通じて知ったクモオーグの〝本名〟へ呼び方を訂正した上で、自分の胸を指差してケイのスーツの胸ポケットに差し込まれた花の意味を問い、ケイは肯定する。

 

『私なりに人間の行為を模倣した上での、彼への手向けです』

「マサさんとは結構、長い付き合いだったみたいだな」

『否定はしません』

 

 せっかくSHOCKERの実質的トップにいる人物とこうして会話している機会を生かして、もっと色々と組織に関する情報(組織の規模、創立経緯と理念、保有しているテクノロジー、他に幹部クラスのオーグメントたちの数、緑川博士たちが離反した理由諸々)を聞き出したくもある本郷だったが、自分とケイの立場を踏まえればこれ以上切り込んでも、親切な対応ではぐらかされるだけに終わるだろう。中立の立ち位置に貫徹して、自分たちの排除に次なる実働部隊とオーグメントを寄越さないだけでもありがたいと本郷は思うことにし。

 

「じゃあ彼の人間嫌いっ振りはよく知ってる筈だ、離反者かつ自分を殺した張本人で、オーグメントのくせに人間にしがみついてる僕から悼まれても不服だろうから、僕の分までマサさんのご冥福を祈ってはもらえないか? アンドロイドの君からの方が、まだ彼には嬉しいだろうからさ」

『Of course(承知しました).貴方の分まで哀悼の意を彼に贈りましょう』

 

 本郷からの申し出に、ケイは気前よく了承してくれた。

 

「そろそろ失礼してもよろしいでしょうか?本郷くん』

「いいよ、むしろ仕事の邪魔をしてこちらこそ失礼した、Mr.K」

『お気になさらず、むしろこれも仕事(TASK)の一環ですので』

 

 秘密結社の運営者と、組織の離反者との敵意を微塵も発さぬ比較的友好的な会話は終わりを迎える。

 

『では――Nice talking to you KAMEN RIDER』

「Me too――Good Bye」

 

 本郷とケイは、本来は敵対する間柄とは思えぬ敬意を表し合って『君と話せてよかった』と互いに旨を伝え、手を振り合うと、ケイの姿を投影していたホログラムは消え、観測用ドローンはその場から飛び去っていった。

 

「さてと」

 

 ベンチにまだ眠って横たわるルリ子の無防備な姿を見た本郷は、隣接する木製テーブルにもたれかかって、彼女が目覚めるのを待つことにする。

 今は一時ながらも安らげる時間が確保されたので、敢えて脳も休ませようと、本郷はそのままテーブルへ両腕を枕に寝そべって、青空を眺めることにした。

 休むと言えば……本郷はふとお腹をさすってみる。

 SHOCKERに拉致されてルリ子に救出されるまで何日過ぎたのかまだ分からないが、その間何も食べていなかった。

 しかも今日は、施設を脱走してからクモオーグを倒すまで連戦続きだった。

 あれだけエネルギーを使ったのに、体内から空腹の鈍いメロディが鳴る様子が一切ない。全身は相変わらず風の音を流す形で《プラーナ》が巡る感覚はある……そしてプラーナと言う単語が持つ意味も含めて念頭におくと――。

 

「サイクロン、オーグメントの食事事情は知ってるか?」

「(うん、常に空気中に漂ってるプラーナを吸収してるから、お腹が空くことははないね、一応食物を食べることはできるし、摂取した食べ物は全部プラーナに変換されるからトイレの心配もないし、味覚も残ってるそうだけど)」

 

 予想してた通り、この身体は常にプラーナを摂取しているので、空腹の心配はない。一応ものを食べたい気に駆られても、食事自体は料理を味わうのも含めて可能、このシステムによってよほどプラーナを消費しない限りは睡眠を取る必要もない。

 この体質の仔細を改めて分析してみると、確かに便利ではあるけど――。

 

「つまんない身体だな……」

 

 昔見た宇宙開発が進んだ未来が舞台のSFアニメで、賞金稼ぎの主人公が『空腹は最高の調味料』と言ってたのを本郷は思い出す。

 あの名言には自分も大いに賛同したのもあって、飛蝗(むし)の力を得たと引き換えに永遠に空腹の虫が鳴かない事実に対し、本郷はぼやかずにはいられなかった。

 そう言えば緑川博士は、生前本郷にプラーナ技術が発展すれば世界中の食糧問題含めた人間社会が抱える難題の数々を一挙に解決でき、全人類(みんな)の命と幸せを守れる〝救世主〟となり得ると豪語していたが、そのプラーナは地球のありとあらゆる生物と、地球そのものに宿るエネルギー、つまり結局はこの星の全ての生物が持つ〝生きる為に他の生命を食らう〟定めからは逃れられない。

 

「もう一つ聞いていいかサイクロン? もし全人類がオーグメントみたいな体質になったら、どうなると思う?」

「(う~ん、プラーナだって資源なんだから、下手したら取り合いの喧嘩は起きちゃうと思うよ)」

「だよね~~」

 

 サイクロンは本郷が考えていたのと同じ解答を提示してきた。

 

「やっぱり先生が前に言ってたような、そう都合のいいものじゃないか……皮肉で悲しいことだけど」

 

 師である緑川博士には、仮にも見込まれてオーグメントの力を与えてもらった(本郷の願望を拡大解釈した上、やり方が一方的で強引が過ぎていたのも承知の上で)にも拘わらず助けられなかった悔恨込みで申し訳ないが、プラーナだってそんな良いこと尽くめに恵まれた代物ではないと、サイクロンからのダメ押しも含めて本郷は実感するしかないと行き着いた。

 でも――本郷は空を眺めたまま、耳をすませる。

 

「身体の中と外、両方に風が吹くこの感じは、悪くないな」

 

 今彼が口にした感覚のお陰で、オーグメントの人外な肉体となっても、自分は〝生物の片割れ〟であることに変わりないこと、生きている存在であることを噛みしめることができていると噛みしめられた。

 一端の人間にはもう戻れないが……悪いことばかりではないのも、幸いだ。

 その人間だった頃から、ツーリングの骨休みに自然の中で寝そべって、あらゆる感覚で自分が身を置く万物を味わうのを嗜みの一つにしていた本郷。

 感覚は鋭敏になったお陰で、その趣味を一層堪能できるとなれば、生かさない手はないと、風の音、水のせせらぎ、揺れる木々、鳥のさえずり、草木を渡り歩き、時に宙を駆ける虫たち、蒼穹を泳ぐ雲たち、肉眼で見つめ続けられる陽の光と温かさ。

 深呼吸をすれば、人間の頃より、ずっと空気が美味かった。

 

「やっとか」

 

 人外の肉体を生かして自然の営みを味わっていると、本郷の耳がルリ子の寝息の変化を聞き取り、起き上がった。

 

「気分はどうだ?」

 

 机上に腰かけたまま本郷は、起き上がったばかりで瞼をこするルリ子の後ろ姿を見つめ、彼女のコンディションを聞いてみる。

 

「最悪ね、まだ麻酔の影響が残ってるわ」

 

《クモオーグ》が仕込んでいた蜘蛛型の発信機から投与された麻酔は効き目が強めだったらしく、片手で頭を抱えて頭痛に呻く後頭部を見るだけで、せっかくの人並外れた美貌が歪んでいると容易に想像できた。

 

「クモオーグは? どうなったの?」

 

 まだ頭痛が響いた状態で、ルリ子は自分が眠らされてからの事の顛末を聞いてくる。

 

「先生を……緑川博士を〝幸福の一部〟にした上で、自分も泡になって消えたさ、僕の手にかかってね」

「そう…」

 

 本郷は敢えて向かいのベンチに、ルリ子と背中合わせになる形で腰掛けて答えた。

 

「僕も君も例外なく、構成員は死亡するとああなるんだよね?」

「ええ、機密保持の為に死体は融解される、私も貴方も例外なく」

 

 薄々察していた事実が確定されたことで、本郷の脳裏に目の前で命を奪われ、肉体すら塵一つ残らず泡状に溶かされていった緑川博士の最後がフラッシュバックされ、さっきまで相棒(サイクロン)と会話したり、自然を超感覚で満喫したりで和らいでいた心中の疼きが、またぶり返してきた。

 しかも誘発する形で、その昔目の前で肉親の命が消えゆく様を見ていることしかできなかった〝絶望〟の傷口までも出血し出して、本郷はオーグメントと化した自身の肉体の一部――胸へ手を押さえ込む。

 オーグメントとなる以前からこの艱苦の傷痕は、普段日常生活を問題なく送れるくらいには大人しくしている一方、時折ふとしたきっかけで、今みたいに再発することがあった。

 

「すまない、僕は先生を……君の父親を助けられなかった」

 

 ルリ子に背を向けたまま本郷は、緑川博士を救えなかった件を、彼女に詫び入れる。

 

「貴方が謝ることはないわ……」

 

 するとルリ子は、机上越しに背中合わせのまま、本郷が謝罪することはないと応じ。

 

「貴方が感じてる〝辛い〟と言う字に、横線を一本足すと、〝幸せ〟と言う字になる」

 

 一文字違いで、意味が真逆となる二つの漢字(たんご)のことを話し始めた。

 

「〝幸せ〟なんて〝辛さ〟のすぐ近くにあるものよ」

 

 突然ルリ子からのちょっとした講義みたいな話に、本郷は真摯に耳を傾ける。

 

「少なくとも、貴方はその辛さを背負って戦うことで私を助けてくれた」

「それが〝誰かを守って戦う〟ってこと、と言いたいのか?」

「そう、不服?」

「いや、同意できる意見だ」

 

 本郷自身、絶望(トラウマ)を背負ってからずっと、ルリ子の言う背負う辛さの分、誰かを助けられる自分になりたい。

 緑川博士が言っていた通り、自身の願望を成し得られる〝強い力〟が欲しいと求め続けていた。

 だからこうして自ら《仮面ライダー》と名付けたこの力に対し、本郷は当初こそ少なからず人間ではない事実にショックを受け、力の強大さに戦慄し、今でも畏怖を抱いてはいても、改造(オーグメンテーション)を施した緑川博士の行為に対して怒りも失望もない。

 この力は確かに、自分が心から欲していたものに他ならなかったからだ。

 

「だから私だけでも助けてくれた貴方には感謝しているし、父のことでわざわざ負い目を感じることはないわ」

 

 ルリ子は本郷に背を向けたままながら、感謝を述べ。

 

「それに父は、貴方を勝手にバッタ男にした張本人よ、気にしないで……私も気にしない」

 

 実の父親に対して、辛辣気味な声色で表する。

 本郷の強化された聴覚は、ルリ子の『気にしない』と言う言葉に籠る実父への複雑な感情を読み取ってしまったが、彼女は言及されたくはないだろうと気遣って、胸の内にしまい込み。

 

「父はプラーナ技術の実用化の為に私を〝作った〟」

 

 ルリ子本人から自己紹介された時から抱いていた疑問を、今の彼女の発言から察した。

 

「つまり君は、先生の遺伝子とSHOCKERのテクノロジーから生まれたデザイナーベイビーと言いたいのか?」

「当たり」

 

 人工子宮が母体ならば、独身でも一応血を分けた子どもは生み出せると、本郷は納得する。

 

「父親と言っても繋がっているのは遺伝子情報だけ、貴方も私も、父からすれば自分のエゴを通すための道具でしかなかったのよ」

 

〝随分と痛烈に断じるな〟

 

 むしろ娘であるルリ子の方が、父への愛憎入り乱れる心情と折り合いがつけられていない様子だ。

 ただ実を言うと本郷も、実父に対し似たような感情を心にこびりつかせていた時期があったので、同感できる点もあった。

 

「でも僕が最後に見た先生の姿は、間違いなく〝我が子を思う父親〟だったよ」

「え?」

 

 ルリ子は本郷の言葉に、思わず振り向いて彼の後ろ姿を見つめてくる。

 

「先生の辞世の句(ことば)は、〝SHOCKERを倒せ〟でも〝プラーナの技術を託す〟でもなく……〝ルリ子を頼む〟だった」

 

 本郷も首を振り返らせ、ルリ子の少し青みがかった瞳と合わせて、緑川博士の遺言を伝え。

 

「君からしたら何を今さらかもしれない、でも先生は死んでも尚〝父親〟であることを捨てなかった、無理に呑み込まなくてもいいけど、それも確かだと言っておくし」

 

 一緒にルリ子の心境をフォローする言葉を発する本郷は、その場から立ち上がり。

 

「この身体は、先生の娘を想う愛情の産物と思うことにする」

 

 空を見上げて本郷は、ルリ子にそう言い伝えもした。

 

「あの男のエゴをそこまで肯定的に捉えるなんて――」

「〝おめでたい〟と言いたいなら遠慮なく言えばいいさ、むしろこれくらいが丁度いいのかもしれない、このオーグメントの肉体と長いこと付き合っていくには」

「っ……」

 

 次なる皮肉がルリ子の口から来ると思っていた本郷は、黙り込んだ彼女の様子を窺う。こっちは立って、向こうは座っている状態もあって、顔を俯いて隠す彼女がどんな表情かは見えない。

 しゃがめば見ることはできるが、少なくとも彼女は自分の弱みを見せられる人間ではなさそうだし、今日会ったばかりの人間相手ではもっての外だろうし。

 

「うん……そういう考え方も、悪くはないわね」

 

 本郷にと言うより、自分に向けたものらしい言葉に、どんな意味合いを持たせたのかも、敢えて本郷は深く考えないことにした。

 

「麻酔の頭痛はどこまで止んだ?」

「まだ微かに痛むけど、自分で立って歩くくらいは問題ないわ」

「そうか、サイクロン」

 

 ルリ子の体調を確認した本郷は、サイクロンへこっちに来るよう呼びかける。

 彼はサイクロンの、一般に市販されているバイクならガソリンの給油口に当たる部分に手を翳すと、ナノマシンの粒子が表出し、逃亡の際ルリ子が被っていた赤いヘルメットとなった。

 サイクロンは同じナノマシンでできているならば、自機と同等の大きさがある物体でも格納できる機能も持っている。

 

「ほいっ」

 

 本郷はヘルメットをルリ子に投げ、彼女はナイスに受け取った。

 

「〝用意周到〟な君なら他にもセーフハウスは幾つも用意してるだろう? その内の一つまで送っていく、説明と、今後どうするかはその時にでもってことで」

「分かったわ」

 

 本郷はニット帽に擬態している仮面(マスク)触れ、システムタイプのヘルメットに変形させると同時にサイクロンに跨る。

 ルリ子はヘルメットを被ると、サイクロンのメーター部分に手を触れてから後部席に座った。彼女が自分の腰に両腕を回して繋げ、タンデムの体勢が整ったのを確認すると、ゆったりとしたペースで愛機を走らせ始めた。

 

「位置情報は最短ルート込みでサイクロンに送ったわ、もう少しスピードは上げても良いけど、法定速度はちゃんと守ってよ」

「分かってる、安全運転でツーリングを楽しませてもらうさ、僕もしばらく風に吹かれたい気分なんでね」

 

 ちょっとした軽口を交わして本郷とルリ子が乗るサイクロン号は、彼女が用意したと言う別のセーフハウスへと向かっていく。

 こうして彼らの、世界に暗躍する《SHOCKER》との戦いと言う名の〝旅〟が、始まったのであった。

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 同時刻。

 薄闇の中を、本郷が接触したのと同型の小型ドローンが飛んでいる。

 冷たい印象を抱かせる無機質なグレーの床が敷かれた広場の中心にドローンが止まると、下部のプロジェクターからケイの全身を投影するホログラムは照射された。

 ケイの乳白色に輝く双眸は、巨大な蝶の羽根を模したオブジェクトと繋がっている蛹に似た形をしているカプセルと、玉座らしき腰掛けに向けられている。

 ちなみに玉座の両サイドには、バイクが飾られていた。

 T20とSL350、どちらもとうの昔に生産が終了し、現在は中古でも入手するのがほぼ不可能な古いモデルだ。

 

「クモオーグもプラーナが消えたね、例の緑川のバッタに負けたのかい?」

『Yes』

 

 蛹(カプセル)の内部にいる男からの質問に答えるケイ。

 

『博士が選定しただけあり、KAMEN RIDER――本郷猛くんは想定を遥かに上回る性能(SPEC)を発揮なされました、とても興味深いです』

「〝仮面ライダー〟……彼がそう名乗ったのかい?」

『That’s right』

「悪くない名だ……僕も十字の仮面を付けていた昔にそう名乗った方が良かったかなと思うくらいに」

 

 男にとっても離反者である本郷が自称した異名(コードネーム)に対し、意外にも好印象な雰囲気を見せつつも。

 

「緑川も死んだ……ルリ子はどうしてる?」

 

 本題に入る。

 

『ルリ子様の目的は、KAMEN RIDERと協力した上での貴方の実力排除かと推測しております、イチロー様』

 

 ケイは男――イチローに、ルリ子がSHOCKERから離反した理由と目的の推論を述べる。

 

「そうか、ルリ子が仮面ライダーを連れてきたとしても同類の〝暴力装置〟は用意してある、計画に支障はない」

『目には目を、暴力には暴力を、合理的で理解できます、私としては、どなたさまがいなくなられても構いません、記録(DATA)さえ残して頂ければ』

「ケイ、君のそういう機械らしいところ、好きだよ」

 

 玉座の傍らには、ケイからイチローと呼ばれた男を警護するかのように佇む青年が一人いる。

 彼の腰には、本郷――《仮面ライダー》のと酷似した飛蝗を模す仮面(ヘルメット)が、保持されていた。

 

 ――――

 

テッテテ~~デデデン~!

 




本郷さんのキャラが本家のシン本郷さんと大分変ったので、ルリ子さんとの関係性をどうしようかと考えた結果、コナン君と灰原のコンビを参考することにしました(コラ
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