SHIN KAMEN RIDER ~The Re:Build~   作:フォレス・ノースウッド

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はい2,023年GW後半初日に最新話です。

最初に、今作での立花さんのイメージキャストは声優の中田譲治さん(顔出しで)です。
小林昭二さんが演じたテレビ版のおやっさんみたいな人格者の一面と、シン本家では竹野内豊さん演じるオーグメント処理の為なら時に非情な手段も辞さない一面、その両方を演じられる役者は誰がいいかと、もし自分がプロデューサーとしてキャスティングするならと考えた結果、ジョージおじさんが良いと思いつきました( ̄▽ ̄)b
下の名前はおやっさんの藤兵衛と、中田さんと、エヴァ繋がりでトウジから(コラ

あれ?シン本家の映画本編ではアイを開発した大富豪の名前ってあったっけと思った人もいるでしょうが、それは「真の安らぎ~~」の第12話(5/3現在単行本未収録、単行本組は2巻発売まで待って下さい)にて語られています。


同盟締結

 東京都奥多摩村、小河内ダムから出発した本郷が駆るサイクロン号は、ルリ子が指定したセーフハウスがあると言う隣の青梅市内の閑静な住宅街に辿り着いた。

 

「異常な~し、サイクロンは?」

「(こっちも異常なし)」

 

 目的地まで徒歩であと数分~十数分のところで本郷は停車し、念の為サイクロンとともに、周辺にSHOCKER構成員及び関係者らしき怪しい輩がいないか確認。

 

「ルリ子くん、腰の手を離してもらえないか? でないと降りられないんだけど」

「え? そ、そうよね……私としたことが……」

 

 なぜか停車してからも本郷の腰に両腕を回して彼の背中に密着したままだったルリ子に降車を催促すると、なんだか妙に残念そうに握り合っていた両手を離してサイクロンから降りてヘルメットを脱いだ。

 本郷も自分の仮面(ヘルメット)をニット帽に擬態させシートから降りてハンドルも手離し、二人は徒歩で目的地のセーフハウスへ住宅街の斜面を下っていく、サイクロンはと言えば自律走行でゆっくりと着いてくる。

 ライダーが乗用してなくとも自力で動ける機能が付いたオートバイクが普通に市販されているご時世なので、特に珍しい光景でもない。

 

「上級オーグメントって、あとどれくらいいるんだ?」

 

 通りには自分ら以外に通行人がいない状態だったので、本郷は歩きながらルリ子に質問を投げた。

 

「現状私が知る限り、あと四人、いずれも危険な奴らばかりよ」

「じゃあオーグメンテーションに使われる生物は昆虫以外にもいるのか? 地球上で最も多種多様な進化を遂げた昆虫類が選ばれるのは分かるんだが」

 

 人類が把握しているだけでも、地球全体で約百万種、全生物の内四分の三を占め、この星で最も進化が進んだ生命体も同然な昆虫種ならば、人間を怪人(オーグメント)にする為の材料に適してはいると、実際に《バッタオーグ》の力を行使した実体験も含めて本郷も認識している。

 

「もちろん他の生物と合成したオーグメントもいるけど、科学研究部門の間でも昆虫が一番との評判だったわ、逆に植物だと人間と身体構造が違い過ぎて、実際に手術を受けた被験者は死亡したそうよ」

 

 さすがにSHOCKERの驚異的なオーバーテクノロジーにも、限界は存在しているらしい。

 

「今のとこ、植物合成型オーグメントと戦う機会は無いか……けど向こうの技術発展次第じゃいずれ現れそうだな」

「確かに、備えておいて損はないわね」

「じゃあ君が知ってるその四人と合成した生物は?」

「ハチ、コウモリ、サソリ……そして蝶よ」

 

 ルリ子の言う〝あと四人〟が、どの生物の力を有したオーグメントなのかを聞いた本郷は――。

 

〝もし、その四人のオーグメントの内の一人が……緑川イチローだとしたら〟

 

 緑川博士の昔の家族写真と、クモオーグ――マサの記憶にいた博士の息子で、一応ルリ子の兄に当る少年(今は自分より年上の青年)のことを彼女に聞いてみようとしたが、今はやめておくことにした。

 人工子宮で生まれた時からSHOCKERと言う鳥籠の中で暮らしてきた境遇を踏まえると、ルリ子は他人を安易に信用しない気質なのは間違いない。

 今日会ったばかりの自分からいきなり家庭事情を深く踏み込まれたら、彼女の警戒心を煽って、より頑なにさせてしまいかねない。

 まだ今は、胸の内に締まっておく方が賢明だ……この疑念を口にするのは、もう少し彼女との間に信頼を築いてからでも遅くはない。

 

「ここよ」

 

 予備のセーフハウス(一見すると周囲に並び立つのとそん色ない一軒家)の玄関前まで到着した。

 

「待て」

「どうしたの?」

 

 さっそく家内に入ろうと正面の扉へと踏み出そうとしたルリ子を、本郷は腕を伸ばして制止させる

 

「ここを最後に使ったのはいつだ?」

「三日前だけど……」

「不法侵入された形跡がある」

 

 違和感と胸騒ぎを覚えた本郷は、感覚を研ぎ澄ます。能力の片鱗を行使した影響か、本郷の瞳の虹彩が、変身時と同様に真紅に染まった。

 

「しかもついさっき来たばかりで、まだ中にその先客が隠れているな」

「警察?」

「いや……」

 

 念の為周囲に気を配っても、警察と思われる面々が張り込んでいる様子はやっぱり皆無。

 

「この手際の良さからすると、国の諜報機関ってやつかも」

 

 日本政府とてSHOCKERの活動をただ黙って見過ごしてるわけない、組織の構成員たちが起こした事件諸々に対処する機関ぐらい存在すると踏んでいたが、もし侵入者がその手の人間なら、自らを用意周到と称するルリ子のセーフハウスを特定し、セキュリティも突破してしまう辺り……相当手練れだ。

 

「だとしたら、相手は一応生身の人間になるけど――」

「君の盾にはなれるさ」

 

『TYPHOON DRIVER――STAND BY』

 

「変身」

 

『REINFORCEMENT RIDER SUIT――AWAKENING』

 

 万が一待ち伏せで攻撃される可能性を踏まえ、本郷は《ライダースーツ》を全身纏って変身、マスクを着装させた。

 

「サイクロン」

「(玄関に人はいないね)」

 

 サイクロンにレーザースキャナーで玄関内をチェックした上で、ルリ子はドアに備えられた暗証番号、網膜、指紋認証等のセキュリティのロックを解いて開け、ライダーを先頭に二人は忍び足で中に入る。

 

〝いくら仮住まいとは言え、さすがに殺風景過ぎないか〟

 

 外観に反して、中は内壁も床材もなく、防音シートと木材の骨組みとコンクリートがむき出しで、キャンプ用品でもないと寝泊りも満足にできなさそうな有様だったが、本郷は住宅事情に苦言を呈するのを堪え、気配を捉えようと超感覚の集中力を上げた。

 

「何人いるかしら?」

「リビングに二人……しかいないな」

 

 予想より家内にいる侵入者の数は少なかったが、それが逆に警戒心を強ませる。向こうも息を殺して身構えている様子だ。火薬の匂いも嗅ぎ取り、銃器は確実に持っているとライダーは把握した。

 

「一応ここで待っててくれ」

「ええ」

 

 もしかしたら、クモオーグとは別にルリ子の捕獲を命じられたオーグメントの可能性も捨てきれず、ライダーは音を立てずに一歩ずつリビングに繋がるドアのない出入口の間際まで進め。

 

「誰だ!?」

 

 戦闘態勢のまま、リビングへ一気に入り込んだ。

 ライダーの紅い複眼(ひとみ)は、椅子に腰かけた彫りが渋みと紳士的さが調和した眼鏡を掛けている中年の男性と、護衛らしい年齢不詳な若々しさと威容さを併せ持った長身痩躯の壮年の男性が立っていた。二人とも、いかにも政府関係者らしいスーツ姿である。

 

「待ちたまえ、私たちに敵意はない」

 

 先客二人は、両手を上げて〝戦意〟は持ってないと表明し、中年の方がアイコンタクトを送ると、壮年の方はスーツの内から拳銃を取り出し、マガジンを排出、さらに銃本体のパーツも分解してテーブルに置き、自らの攻撃手段を放棄した。

 

「ここで緑川博士と落ち合う約束をしていたのだが、君が博士の言っていたオーグメントかね?」

 

 仮面の内側で本郷は、見た目とよく似合うダンディで艶やかな声の主な中年の男がこの場にいる〝事態〟に驚いていたが、穏便に事態を収める為にも平常心でいられるよう心掛け、構えを解き。

 

「はい、緑川博士は……残念ですがSHOCKERの追手に掛かり、亡くなられました」

「そうか……」

 

 ライダーに変身している時の本郷の声は、変声機能もあるマスクによってエコーとエフェクトが掛かっている為、相手はまだ自分が〝本郷猛〟だと気づいていない。

 

「持っててくれ」

「分かったわ」

 

 念には念をと、ライダーは壮年の男が持ってた拳銃の弾丸が入ったマガジンを、部屋に入ってきたルリ子に預からせる。

 

「それで、貴方がたは?」

「彼は本来情報機関に属し名は滝、私は立花、政府の掃除当番でSHOCKERの起こした事件の後片付けを担当している―――そして我々は政府が密かに設立した対SHOCKER組織――《ANTI-SHOCKER UNION》、通称《A.S.U》の一員でもある」

 

〝アンチショッカー同盟か……〟

 

 ライダーは心中、その組織名を和訳したものを呟く。

 

「まずは互いが持っている有益な情報交換を行った上で、契約を君たちと酌み交わしたいのだが、その前によければその仮面を取ってはもらえないかな? 飛蝗男(ホッパーマン)」

「構いませんよ」

 

 そろそろ男に〝種明かし〟をしようと思っていただけに、仮面ライダー――本郷はベルト右腰側の解除スイッチを押し。

 

「正確には自称――〝仮面ライダー〟です――〝おやっさん〟」

 

 本人曰く〝政府の人間〟称した男をそう呼んで本郷は、マスクを取って自分の顔を晒した。

 

「本郷君?まさか……君が!?」

「ええ、そのまさかです、立花籐治さん」

 

 本郷から〝おやっさん〟と〝立花藤治(たちばな・とうじ)〟とフルネームで呼ばれた男は、ライダーの正体に驚きを隠せずにおり。

 

「知り合いなの?」「知り合いですか?」

 

 ルリ子と情報機関の男こと滝は、図らずも互いの声を見事にシンクロさせ、顔に疑問符を浮かべて両者の関係性を訊ねたのだった。

 

 

 

 

 

 数分後、サイクロンも入室して停車している殺風景なリビングは、コーヒーの香りが漂っている。

 立花がわざわざ持ってきたらしいサイフォンを使って、本格的なコーヒーを淹れている最中だ。

 

「本郷君は?」

「いつもの〝おやっさんスペシャルブレンド〟をブラックで」

「かしこまりました」

 

 まるで喫茶店の一幕みたいに、立花は簡素なパイプ椅子を深々と腰かけて香りを味わってリラックスする本郷からの注文を承る。

 

「お嬢さんも飲まれますか?」

「結構よ」

 

 反対にルリ子はと言うと、両腕を組んで警戒心を解かず無愛想な態度で断った。相手が信用に足るかまだ測りかねているのも理由だが、実は緑川博士が政府の人間と密かに接触する約束をしていた件を彼女は知らされていなかった………先程死別したばかりの父に一杯食わされたのもあってか、見るからに機嫌は悪い。

 逆にライダースーツをベルトに締まって変身を解いた本郷は、緑川博士の〝敵を欺くにはまず味方から〟に一定の理解を示している。政府の人間とコンタクトを取るにはここまで対策をしておかないとSHOCKERを欺けず、このセーフハウスにてコーヒーを飲める余裕を以て会合できなかっただろう。

 

「で、本郷くん、この政府の男とはどういう関係なの?」

「城南大学(うちのだいがく)の近所にある、喫茶店の店長(マスター)だよ」

 

 その喫茶店の名は《Café Amigo》、〝おやっさん〟の愛称で親しまれている経営者の立花本人が淹れるコーヒーが逸品ものと評判で、リピーターも多く、本郷も昼食をとる時やコーヒーで一服しながら大学のレポートを纏める等で足しげく通うくらい、確かな人気がある一方、しょっちゅう不定期で臨時休業しがちな変わりものの店でもあった。

 

「それは表向きの顔で、実態は密かにSHOCKERと戦う組織の人間だったことは今知ったとこだけど……やたら休業しがちなのは、その間本業に勤しんでたからなんですよね?」

「そういうことだ、さあ、ご注文の立花スペシャルブレンドです」

 

 立花は淹れたてのコーヒーをカップに注ぎ、本郷と滝にそれぞれ手渡す。

 

「一週間ぶりのおやっさんのコーヒー、丁重にいただきます」

 

 本郷は煙と一緒に立ち昇る香りを最初に堪能してから、粛々と口にし、芳醇で深みのある美味な苦味を口一杯、隅から隅まで味わって体内に呑み入れ一息ついた。

 肉体は怪人(オーグメント)となってしまったが、味覚は普通の人間だった頃を変わらずに立花のコーヒーを存分に味わえる歓喜の気持ち込みで本郷は安堵し。

 

「呑気なものね」

「いいだろう? 拉致られてから君に助けてもらうまで、ず~っと手術台の上で飲まず食わずだったんだ、コーヒーブレイクぐらいはさせてほしいな」

 

 呆れた様子でジト目を向けてくるルリ子の視線をさらりと躱して、苦味と香りを嗜み続ける。

 一見淡々と余計な私情を挟まずに職務を遂行していそうな印象のある滝も、同様にひと時のブレイクタイムをお気に召している様だった。

 立花本人も自ら淹れたコーヒーで一服している。

 

「そろそろ本題に入ってもらえるかしら?」

 

 この場で唯一不機嫌でいるルリ子が、苛立ちを増しているのか手と足の指先両方から貧乏ゆすりをして、本題に入るよう要求してきた。

 

「おっと失礼、ではお嬢さんのお望み通り、本題に入るとしよう」

 

 コーヒーカップをそっと置いて、《Café Amigo》で見せてくれるきさくで温和な雰囲気を見せていた立花の表情から笑みが鳴りを潜め、一転して鋭利で厳かな様相を見せる。なまじ威厳のある容貌と野太くも艶やかな美声の持ち主だけあり、室内の緊張感が急速に強まり、本郷の顔つきも自然と真剣なものに締め付けられた。

 

「緑川博士亡き今、改めてお二人には単刀直入に依頼したい、我々の仕事――SHOCKERの構成員排除に協力してもらいたいのだ、代わりに我々は君たちへの情報提供と警護、資金と装備の調達と言ったサポートを確約しよう」

「断れば?」

「想像に任せる」

 

 ルリ子の質問をそう端的に返した立花の発言の意味を本郷は理解しつつも、彼が提示した〝契約〟自体は悪くない代物と認識していた。

 自分とルリ子の二人では、組織の追手から身を隠して逃亡生活をしながら、上級構成員たちを打破していくには、限界があるのは明らか。

《A.S.U》の方も、一人だけでも強力な生体兵器同然なオーグメントに対抗できる戦力、それこそ緑川博士とクモオーグ曰く〝最高傑作〟らしい自分みたいな同じオーグメントと言う切札(カード)を、己が手札に入れておきたいだろう。

 本郷自身、先程博士にも述べた通りこの〝人間一人が抱えるには行き過ぎた力〟が野放しにされているのを、とても良しとはできない。

 打倒SHOCKERを共通目的としている以上、同盟(きょうりょくかんけい)を結ぶのは悪くない手だと本郷は考える一方、最終的にどうするか交渉の場にいるルリ子の判断に委ねる状態でもあるので、下手に口出しせぬよう彼は静観を決め込もうとしていた中。

 

「本郷くんは、SHOCKERが何を目的に活動しているのか、どこまで認識している?」

「そうだな……」

 

 そのルリ子から、どうやらかの組織の成り立ちを説明する前置きも兼ねた質問を受けた。

 本郷は緑川博士とクモオーグの発言の数々、下級構成員たちの役目と末路、実質組織の運営者であるケイの立ち位置、そして自分が前々から新たなオーグメントの被験体としてマークされていた事実諸々を整理し、反芻し直した上で――。

 

「〝不幸な身の上の人間〟たちへ、組織に服従を強いるのと引き換えに、各々が信じる幸福を実現する為のチャンスと力を提供する〝愛の秘密結社〟ってところかな」

 

 アイロニカルな表現もたっぷり交えて、こう言い表した。

 

「我々も、組織の理念(もくてき)は〝人類の幸福の追求〟と聞いている」

 

 続けて立花も《A.S.U》が認識しているSHOCKERの活動内容を述べた。

 

「どちらも否定はしない、《SHOCKER》の創設者は、日本有数の財閥《石神グループ》の創業者でもある石神大造(いしがみ・だいぞう)」

 

 ルリ子は本郷と立花の意見を肯定し、SHOCKERの創立から現在までの歴史(なりたち)を話し始めた。

 石神大造と言えば、日本の経済界でもトップクラスの位置にいた大富豪だったと本郷も知っている……過去形なのは、彼は既に死亡している人物だったからだ。表向きの死因は急性脳梗塞だとメディアからは報じられていたが――。

 

「彼は人工知能による新たな産業革命を予見し、マサチューセッツ工科大学の教授たちが一九九五年設立した企業《ファウスト》を買収」

 

 その《ファウスト》は設立当初から〝人工知能と脳波を用いた機器(デバイス)の開発〟を目標に掲げていたが成果が上がらず、経営が逼迫していたところを石神グループの傘下になる形で破産の危機を免れ。

 

「今から二五年前に、石神からの莫大な資金援助によってファウストは、世界最高の人工知能――《アイ》の開発と起動に成功した」

 

《アイ》は起動(めざめて)からその驚異的な学習能力を以て急速に自己改良と言う〝進化〟を積み重ね、それを目の当たりにした石神は、《アイ》の人知を超越するに至った知性を〝世界幸福の実現〟の為に生かすべきと結論付け、《アイ》もまた、自身の代わりに直接世界を〝観測〟する目として、最初の《外世界観測用人工知能――ジェイ》を自ら製作。

 

「ケイはそのジェイの後継機なのか?」

「ええ、あくまで身体(ボディ)を取り替えただけで、AIそのものはいわゆる〝同一人物〟よ」

 

 ジェイがケイにバージョンアップされてから程なく、石神はアイに〝人類を幸福に導く〟命題を与え、彼自身は自らの頭を撃って自決したと言う。それが石神大造と言う大富豪の真なる死因だった。

 

「石神の死後、アイはケイを通じて人類含めた地球全体に関連するあらゆる情報を収集し、最終的に石神からの命題――〝世界の幸福〟の実現に至るには、〝人類の最大多数の幸福〟ではなく、〝最も深い絶望を抱えた人間たちの救済〟であると結論づけた、それを実行する為に、石神の同士を集めて創設された非合法秘密結社こそ《SHOCKER》――」

 

 正式名称は――《Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling》、それぞれの英単語の頭文字を取って略した通称こそ《SHOCKER》だった。

 

「〝計量的な知能の埋め込み改造による持続可能な幸福を目指す組織〟……ね」

 

 本郷は正式名称を和訳したものを、辛辣さたっぷりに口にし。

 

「アイは石神の理想の下、世界中から絶望した人間たちをサンプルとして集め、彼らの望みを叶えるべく、資金と技術の援助を現在まで続けている」

「そうして洗脳措置込みオーグメントにされた上級構成員たちは、その力を自分が目指す幸福ってエゴの為に、アイとケイが中立なのを良いことに勝手気ままに使っているわけか」

「大当たりよ、そう言ってた父当人も、日頃から自分のエゴ丸出しでプラーナ研究に没頭していたわ」

「確かに先生のも……〝エゴだよそれは〟だわな」

 

 本郷とルリ子は、緑川博士もそんなSHOCKERの人間に相応しいエゴイストだった認識を共有し合って苦笑いし。

 

「私も少し前までは、そんなエゴイストの一人ではあったけど」

 

 ルリ子は自身も〝同じ穴の狢〟だったと自嘲して打ち明けた。

 今日本郷が目の当たりにした実態だけでも、一方的で独善を極めた善意でアイの定める基準を満たした〝不幸な人間〟たちを怪人(オーグメント)に人体改造し、彼らの人間性(じんかく)を大きく歪め、オーグメントたちもそれぞれ、この人類社会の裏で幸せの押しつけによる悪事を行ない続けているのだと容易に想像できてしまう。

 石神の〝世界を幸せにしたい〟意志は心からの善意でできた願望だったかもしれないが、今や創造主の思惑を逸脱した〝傍迷惑な愛の秘密結社〟と化してしまっている……それが現在のSHOCKERの実像だった。

 

「では、我々も情報を開示しよう、滝」

「はい」

 

 ルリ子からの〝SHOCKER設立の経緯〟を一通り聞いた立花は、滝に指示を出すと、彼はビジネスバックから書類の束を取り出し、彼女に手渡す。

 

「思ったよりデータが揃ってる、意外と優秀ね」

 

 本郷も資料の一部を覗き見できた分だけでも、SHOCKER相手にここまで組織に関する情報を集められた立花たちの手腕に感心させられた。

 構成員は基本何らか洗脳を受けており、死亡すれば泡となって溶解消失される上、上級構成員たちのクモオーグの言葉を借りて〝圧倒的殺傷力〟の前では、組織のメンバーを生きたまま捕獲するのは困難。緑川博士らみたいに向こうから組織から離反する気でいる構成員と接触する幸運でも来てくれないとまともに情報を得にくい環境下でここまで調べ上げたのは、お見事としか言いようがない。

 

「で、組織壊滅後の私と本郷くんの処遇は?」

「現状は未定としか言えない、だが私個人としては君たちの命を保証できるよう、尽力する所存だ」

「大人にしては正直ね」

 

 下手に嘘を交えた半端な希望でお茶を濁されるくらいなら、正直に現実をはっきり言ってくれた方が本郷としても助かる思いだった。

 

「その同盟、乗ったわ、ただ今後の情報交換含めたコンタクトの手段はあるのかしら?電子メールや電話交換じゃ、全てSHOCKERと他国の同業者に傍受されるわよ」

「それなら――」

 

 立花はスーツの袖を少し捲り、一見何の変哲もないビジネス用の腕時計を本郷たちに見せ。

 

「本郷くん、私たちと連絡を取りたいと脳で念じながら手を挙げてみてくれ」

「はい」

 

 言われた通りに手を挙げてみると、本郷の動作と意志に応じるかのように、時計が点灯して音量は小さめながらアラームが鳴った。

 

「緑川博士からの技術提供で我々が独自に開発した特殊GPS時計だよ、予め登録された人物の脳波で現在地の特定と、時計を通じてメッセージを直接脳に送る仕組みとなっている、以前博士から脳波も強化されていると聞いている君たちが使えば、理論上有効範囲は関東地方全域まで届く仕様だ」

 

 つまり一種のテレパシー通信装置と言える〝秘密道具(ガジェット)〟だった。

 

「同じものを君たちにも渡しておく」

 

 滝から同型の腕時計を受け取る本郷とルリ子。これが無ければ、二人とも最重要監視対象者として、二四時間体制で監視されることになっていたらしい。

 本郷は自分の立場を踏まえれば、常時見張られる環境下に置かれてもやむを得ないと腹をくくっていただけに、立花の厚意と一緒にありがたく時計を腕に嵌めた。

 

「痕跡は残したくはないから、契約の受理は口頭で済ませて」

「承諾した、これで君たちも《A.S.U》の一員だ」

 

 これにて〝打倒SHOCKER〟を掲げる両者の間に、同盟が締結された。

 

「おやっさん、もしかして手始めに早速オーグメントの処理も依頼したいんじゃないんですか?」

「ああ、不満だったかね?」

「いえまさか、むしろ一人でもSHOCKERの犠牲者を減らしたいので、僕は俄然やる気ありますよ」

 

 本郷はもう一度手を挙げて、立花の時計に脳波を送ってアラームを再び慣らし、次なる上級オーグメントとの戦闘に臨む意志を表明する。

 

「私も異論はないわ、処理対象はどのオーグメントかしら?」

「コウモリオーグ、アジトの位置は既に特定済みだ」

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

 こうして本郷とルリ子は《ANTI-SHOCKER UNION》――《A.S.G》に所属することとなり、実質政府からのバックアップを受けてSHOCKERと戦える立場となった。

 そんな彼らと相まみえることになるコウモリオーグは、恐るべき計画を進行している。

 

 行け! 仮面ライダー! コウモリオーグの野望を阻止できるのは、君なのだ!

 

 つづく。

 




さすがにショッカー絡みの事件を内密に対処しながら喫茶店の経営するって無理あるよな~~と思いつつも、こっちでも本郷さんに「おやっさん」と言わせたがったが為にこうしました(苦笑

しかしシン本家では「父さん、これが人を殺した感覚」だよと震えながら少し恨めしくマスクを眺めて葛藤してたのに、こっちは俄然やる気満々なうちの本郷さんです(^_^;)
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