SHIN KAMEN RIDER ~The Re:Build~   作:フォレス・ノースウッド

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はい、コウモリオーグ編の決着編です。
シン本家でのコウモリおじさんのアジト、場所も施設もですけど、見張りがロボット二体ぐらいしかいないのも中々ツッコミどころでしたよね。拳銃であっさりやられちゃうし。
その割に頭から地雷(クレイモア)を射出する超物騒な仕様なのに。
ちなみに『ガーディアン』は『真の安らぎはこの世になく』で登場する人型ロボです。
5/21時点でのロリルリ子が目覚める最新話では前に痛みつけられた恨みでクロスファイヤー仮面なイチローくんにボコボコにされてました。
そして出番がある度に株がルリ子に読み聞かせた大きなカブのカブだけにダダ下がりな緑川博士、もうシン本編のいざこざの大半ってこの人のせいだったんじゃ……。




恐怖:コウモリオーグ編②/拘泥

 青木ヶ原樹海内の、コウモリオーグのアジト近辺にまでサイクロンで辿り着いた《仮面ライダー》とルリ子。

 彼女の方は《A.S.U》に注文して調達してもらった装備品が入っている登山用リュックを開け、アジトに乗り込む準備中。

 ライダーはそれまで、万が一向こうから襲撃を受けても即応できるよう警戒態勢でいた為。

 

「仕事熱心だな」

「ケイかしら?」

「そっ、今丁度彼のドローンが来たとこ」

 

 ケイが操る超小型観測用ドローンの来訪を察した。

 飛行する二人の前に滞空したドローンの下部の投影機から、ケイの全身像が映し出される。

 

『Hello,everyone』

「Hi,Mr.K」

 

 つい数時間前にライダー――本郷と接触した時と同様、正確無比なネイティブ英語で二人に挨拶をするケイに応じるライダー。

 

『本日もお似合いのコートですね、ルリ子様』

「あら? ケイったらお世辞を覚えたの?学習は順調な様ね」

 

 紳士的ながら無機質な口調のまま、ケイはルリ子の格好に対しお世辞を送る。

 彼の中立を崩さぬ立場からか、離反者の身になった現在でもルリ子はケイ相手には比較的フレンドリーに接していた。

 

「コウモリ小父さんは今どうしてる?」

『本日も研究室(laboratory)に籠っておられます』

「相変わらずなのね」

『Research and experimentsは、コウモリオーグ様にとって生きがいですから』

 

 

 その〝研究と実験〟の為に、コウモリオーグは今日まで一体どれだけの人間を生贄にしてきたのやら………ちょっと想像してみただけでもライダーの仮面の内の眉間は忌々しさで皺が寄せられ、やり切れなさで口の中の苦味が広がる。

 

『ところで、お二方はDr.コウモリオーグに何用でしょか?』

「まずは一応、降伏勧告」

 

 ケイからコウモリオーグの研究所(アジト)に来た用件を聞かれ、ライダーはこう答えた。

 

『それはご丁寧に、しかしDoctorは勧告に応じてはくれないかと』

「でしょうね」

「だから向こうが突っぱねた場合は実力行使」

 

 ライダーも、かの絵に描いたマッドサイエンティストなオーグメントが大人しく降伏を応じてはくれまいと、ルリ子の発言に同意し自分らは荒事も辞さないと表明した傍ら、彼女のアジト乗り込みの準備が整った。

 額には暗い地下を進むのに欠かせぬ暗視ゴーグル、口にはウイルス対策の防毒マスク、折り畳み機能が付いて傾向性に優れたカービンタイプのライフル《XAR Invicta》をスリングベルトで肩に掛けている。

 二人が見上げる先には、溶岩が固まってできた巨大な岩場があった。

 

「まずカモフラージュを解くわ、この迷彩は無理に押し通ると生身にも機械にも効くEMPが作動する仕組みだから」

 

 アジトを隠す迷彩には、生身の生物が通れば高圧電流で、機械類はEMPで機能不全に陥るトラップがあると説明するルリ子は瞳を空色に光らせ、岩場に向けて手を翳すと、光学迷彩(ホログラム)でカモフラージュされていたコウモリオーグのアジトの出入り口が露わとなった。

 

「アジトって割には、自己主張激しくないか?」

「上級オーグメントなんてみんなこんなもの、それにこれはまだまだ序の口」

「さようで……」

 

 両開き型スライドドアの表面には、コウモリオーグのエンブレムが扉一杯にデカデカと描かれており、これだけでもかのオーグメントの自己顕示欲の過剰さが嫌と言う程、認識させられたライダーは扉の前に立ち。

 

「下がってて」

 

 右手の掌全体を壁面に密着させた。

 

「~~~っ――」

 

 深呼吸して、右手を一気に押し込み、強烈な打撃音が轟く、扉を中心に震動が岩場と地面をも伝って走り、ライダーの全身からも衝撃(かぜ)が発せられ、ルリ子の髪がふんわりと靡かれた。扉にこびりついていた無数の煤も、地に零れていくか、宙を舞う。

 続いてライダーは、右手で二回、軽く扉をノックした―――瞬間、コウモリオーグのエンブレムごと扉全体におびただしい亀裂が生じ、細かな破片となって崩落していった。

 

「あらゆる武術に精通してると聞いていたけど、〝寸勁〟を使えるほどとはね……」

 

 ルリ子は、ライダーが披露してみせた技に驚嘆する。

 寸勁(ワンインパンチ)――要はほぼ至近距離から強大な打撃を繰り出す技。当然習得は困難ではあるが、達人の域にまで極めた者ならば、瓦三〇枚を容易に割ってしまえる程の破壊力を繰り出せると言う。

 下級構成員を簡単に殴り殺せるオーグメントの身体能力を抜きにしても、本郷(ライダー)が今見せたの寸勁は、まさに達人並みだった。

 

「君のハッキングもプラーナを使うんでしょ?」

「そう、お陰で助かったわ、ハッキングで小父さんのセキュリティを解くとなると、結構プラーナを消費して骨が折れそうだったから」

 

 本人も否定しなかった通り、ルリ子の生体演算機としての能力も、行使の際はプラーナを消費し、対象のプロテクトの解除の難易度が高い程、相応に消耗させられる。

 その点、ライダーの寸勁に使われた体力(プラーナ)はほんと微々たるもの、そこもまた、彼がオーグメントになる以前から磨いていた格闘能力の高さを物語っている。

 

「さて、行こうか」

「ええ、先導(ポイントマン)は任せていいかしら?」

「異存なし、背中のフォローは頼むよ」

「任せて」

 

 ルーティンで右手にスナップを利かすライダーと、いつでも銃器を発砲できるよう身構えるルリ子の二人は、扉が喪失された地下洞窟(けんきゅうじょ)の闇の渦中へと入り込んでいった。

 

 

 

 

 

 太陽光が届かぬところまで階段を下りれば、洞窟内は完全に常人の視力では一寸未満も見通せぬ闇に支配される空間となる。

 それでも二人がトラップに引っかかるまいと慎重に忍び足で進みつつも、足取りに僅かな迷いもないのは、ライダーの場合は己が超感覚と仮面(マスク)、ルリ子の方は高精度の暗視ゴーグルの機能の賜物。

 迷彩を施されて壁面の溝に隠れていた〝人影〟が飛び出すも、ライダーが《ハイバイブネイル》を突き立てた刺突がそれを貫く。

 天井からももう一体が二人の背中に降り立つが、ルリ子が振り向きざまにライフルの弾丸を頭部へ正確に撃ち込み、機能停止させた。

 正体は頭部がM18クレイモアを複数積み重ねた人型対人兵器――自動人形(ロボット)で、侵入者に頭部からベアリング弾をばら撒いて蜂の巣にする仕様だが、ライダーが先に気配を捉え、脳波伝達腕時計でルリ子に警告していたのでこの二体はその機能を使えぬまま返り討ちにされた。

 引き続き降りていくと、今度は道が枝分かれしている。

 

「左だな」

 

 ライダーは超感覚で道の痕跡からどの道が正解か見当をつけて左側へ進み、ルリ子も彼の能力を当てにしているのか異論を挟まずに続く。

 その後も人型対人兵器の待ち伏せと、分岐する道を苦も無く通り抜けていくライダーとルリ子。

 

 

〝コウモリオーグのものらしき気配(プラーナ)が強まってる、この道で間違いはないけど……〟

 

 確実にコウモリオーグが潜む研究施設に近づいていると感付くライダーは、階段の先に広場が広がる区画を目にした。

 

「ちょっとここで待って」

 

 今自分たちがいる通りに罠の類は無いと確認し、ライダーは、広場に入る一歩手前まで階段を下り、ズーム機能に透視能力もある複眼《キャットアイ》でドーム状の区画を隈なく見渡すと、一旦ルリ子の下へ戻る。

 

「あそこに踏み入れたらコウモリ型のドローンと〝ガーディアン〟が一斉に出てくるトラップがある、手榴弾を、あと――僕のタイミングに合わせて閃光弾を投げてくれ」

「了解したわ」

 

 ルリ子はロングコート内に携帯しておいたライダーの指定する武器を手渡し、受け取ったライダーはそのままピンを抜きながら広場へ侵入。

 天井に展開された円の内部へ、手榴弾を正確に放り込み爆発、待ち伏せていたコウモリ型ドローンのほとんどは今の爆炎で破壊される中、壁面のシャッターが開き、先の地雷(クレイモア)を携えていた個体と違い、真っ黒なほぼ顔無しの単眼――砲口を備える自動人形――《ガーディアン》が五体、同時に出てきた――。

 

〝今だ〟

 

 ライダーの脳波(あいず)で、ルリ子は閃光弾を広場へ投げ入れた。

 暗闇の中で発せられた閃光は、三体の人型と辛うじて残っていたコウモリ型ドローン数匹の視界(センサー)を一時喪失させた。

 

《ライダーチョップ》

 

 事前に視界の明度を調整して光の奔流を逃れたライダーは、腕より生やして伸長させた《スパインカッター》による手刀で人型の頸部へ切り込み、ルリ子も広場へ走り込んだと同時にライフルの引き金を引いた。

 銃声が響く中閃光弾の輝きが消え失せ、空間は再び暗黒に戻った刹那、首を両断された人型の頭部と、弾丸を受けたコウモリ型ドローンが同時に落ち、続けて人型の胴体が倒れ、暗闇の中で火花と放電を点滅させてスクラップになった事実をライダーたちに教えた。

 

「レーザー装備のドローンが待ち伏せてたとなると、コウモリおじさんの研究室はもうすぐかな?」

 

 ライダーのこの発言の通り、この人型もコウモリ型も、殺傷レーザーで侵入者を攻撃するタイプだったが、彼らの奇襲でその性能を発揮できぬまま破壊されたのだ。

 ライダーは次の行き先の階段をズーム機能も用いて見渡すと、奥に縦向きでスライドするタイプのコウモリオーグのエンブレムが描かれた扉が見えた。

 

「もしゴールなら、小父さんの実験器具がある筈なんだけど?」

「それらしいのがあった、当たりだな」

 

 ライダーとルリ子は、いよいよコウモリオーグのアジトの本丸へと乗り込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 扉に触れるライダーは、それ自体にトラップは無いのを確認すると、《スパインカッター》でX字状に振るい、切れ目の中心を蹴りつけこじ開けた。

 二人とも一歩ずつゆっくりと、アジトの本丸へ足を踏み入れる。

 夜目が利かぬ生物の視力では漆黒一色だった通路と違い、微かに明かりは天井に灯る薄闇のそこは、まるで半円状のホール、それもオペラハウスクラスの規模のものだった。

 奥の舞台上には、役者や小道具や楽器の代わりに、コウモリオーグの実験道具らしき器具の数々と、おそらくウイルスが密封されていると思われる多数のガラス瓶と、値の張りそうな机と椅子が置かれている。

 周囲、特に天井方面への警戒を継続し、少しずつ舞台に近づくライダーとユリ子。舞台上に登る階段の目の前まで近づいた時だ。

 突然、研究室となっていた舞台上が降り始めた。

 大迫りの機構が付いていた舞台は、何の小道具も置かれていない更地と化し、全体が昇降床の仕組みとなっていた壇上に登る二人。

 

「どこだ?」

 

 この劇場の主がどこか潜んでいないか感覚を研ぎ澄ますライダーの聴覚は、ライフルが落ちる音を捉える。

 

「ルリ子くん!?」

 

 彼女の方へ振り返ると、ルリ子は猫背で俯いて立ったまま、微動だにしない状態に陥り。

 

「ヒャヒャヒャヒャ~~~!!!」

 

 劇場中に、甲高い男の笑い声が超音波と一緒に響き渡り。

 

「っ!」

 

 咄嗟にライダーは自分に飛んできた物体をキャッチ。

 正体は注射器に似た形状をした半透明の吹き矢、内部には禍々しい色合いの液体が入っており、ライダースーツ内の《バッタ男》の表皮に鳥肌が立つほどの薬品の異臭が彼の嗅覚を刺激するも、その場から側転飛びと後転で続く吹き矢の攻撃を回避した。

 

「ようこそ、招かれざるバッタくんと緑川の小娘!」

 

 天井の一部が円状に開き、先の奇声(わらいごえ)の主がその名に違わず逆さにぶら下がったまま姿を現す。

 

「《コウモリオーグ》……」

 

 ライダーはそのオーグメントの名を呼び。

 

「いかにも――」

 

 コウモリオーグは意気揚々に下卑た笑顔で、ライダーたちを見下ろし答える。

 両手の蝙蝠の翼を吸血鬼のマントよろしく全身に着こませる一方、ライダーやクモオーグ、下級構成員らと違って仮面を着装していないその顔は、鈍い茶色がかった体色と、蝙蝠の耳、額に蝙蝠の鼻をもう一つ備えた異形を剥き出しにしており。

 

「このワシこそ、《SHOCKER》最高の生化学基幹研究者コウモリオーグじゃッ!」

 

 やけに芝居がかった調子で翼を広げながら、コウモリオーグは自己紹介をすると、多数の人間の拍手が劇場に巻き起こる。

 観客席にも昇降機能が付いているらしく、空席はほんの数秒で満席となり。

 

「ルリ子くん!?」

 

 拍手を続ける観客全てが、ルリ子と全く同じ姿、服装、髪型、生気のない虚ろな表情をして、前かがみの体勢で立っていた。

 

「あんたが集めてきた被害者(じっけんたい)か?」

「またいかにも――それよりバッタくん」

「《仮面ライダー》だ、一体ルリ子くんに何をした!?」

「わしの話を聞け、そもそもそんな無粋なマスク程度で、わしの作品からの感染を防げぬわけなかろう」

 

 ライダーからの訂正と質問を一蹴し。

 

「今からバッタくんにクイ~~ズ!人類史上、最も多く人間を殺戮したものなにか、答えてみるがいい」

「っ………疫病」

 

 とても問題を受け答える気にならないライダーだったが、ここで下手にコウモリオーグの〝要求〟を無視したり、まして攻撃を仕掛けたりすればルリ子がどうなるか分からない為、渋々解答する。

 

「正解ッ!」

 

 不機嫌なライダーに反し、一発で正解を出してくれたことが余程嬉しいのか、コウモリオーグの機嫌は上々に鰻登っていく。

 

「飢餓でも戦争でもない――疫病じゃッ! 疫病は素晴らしい、疫病こそが社会の腐敗を暴き、真の実像を露にする……疫病こそが、人類の幸福のための重要な要素(Element)を示してくれるのだッ!」

 

 高らかに幸福の持論を展開するコウモリオーグに合わせて、ルリ子の風体をした実験体(かんきゃく)はまた拍手で劇場内を賑やかにした。

 

「で、あんたは自信作のウイルスで世界をどう幸せにするつもりだ?」

「聞きたいかね? わしの理想と芸術、そして美学を」

 

 いや全く――内心呟くライダーだが、今のルリ子はコウモリオーグの言う通り、奴の生み出した新種(ウイルス)に感染させられたのは明らか。

 

「興味はあるね、自分も一応、学者の端くれなんで」

 

 コウモリオーグの機嫌の良さを逆に利用して、ウイルスから治癒する手段を上手いこと聞き出そうと、ライダーは相手の〝講義〟を敢えて受けることにした。

 

「よかろう、では教えてやろう!わしの発明した《バット・ウイルス》は、社会に必要な人間を選別し、不要な人間を抹殺して、価値ある人間に幸福を集約するためのものじゃ!」

 

 とうに分かっていたことだが、奴の幸福の追求の仕方は、自ら創造した芸術品(ウイルス)を使い、奴の主観で選ばれた《優れた人間》以外の人間を全て排斥、淘汰するものだった。

 

「SHOCKER最高の生化学者たるコウモリオーグ殿が直々に選んで生き残った人間には、ちゃんと治癒する血清は用意してるのでしょうか?」

「無い」

 

 もし治癒できる方法があれば、この場にいる実験体にされた人々を助けられるかもしれなかったが、コウモリオーグの一言でその可能性は皆無だとライダーは突きつけられた。

 

「血清など、我が芸術品に対する侮辱以外の何ものでもない」

 

 敢えて一度感染してしまうと治す手段は無いと嘘(はったり)を利かせている……様子は、このいかにも絵に描いたマッドサイエンティストそのものの態度と物言いから踏まえると見受けられない、端から治療できる逃げ道など用意していないだろう。

 仮面に隠れて、ライダーはこのSHOCKERの〝幸福追求〟に巻き込まれた人々を救う術がない事実に、苦虫を噛んでいた。

 

「わしの芸術品に感染した者は例外なく我が眷族となり、ありとあらゆる命令に従う、たとえば――」

 

 コウモリオーグの口から超音波が発せられた瞬間、劇場内の実験体(かんきゃく)全員がその場に倒れ込み。

 

「なんてことを……」

「〝百聞は一見に如かず〟と言うだろう?これで我が傑作の完成度の高さがよく分かっただろう? バッタくん」

 

 SHOCKER構成員が死した瞬間と同様に、泡となって亡骸も残らず消失してしまった。ウイルスを通じて被害者たちはコウモリオーグからの指示のまま、自害してしまったのだ。

 

「そしてルリ子くんもあんたの支配下にあると?」

「大~正解~~~今の緑川の娘は我が従僕(しもべ)」

 

 つまりルリ子も、先の被害者たち同様、このマッドサイエンティストの思考(ひとこえ)で殺される状態にある。

 

「君に与えられた選択は二つ、わしに逆らって小娘も見殺しにするか?それとも我が従順なる配下となるか? どちらかと選べ」

 

 ライダーが感染していないのは、この仮面の恩恵のもの。

 

「分かった……貴方に服従する方を選ぶ」

 

 ベルトの解除スイッチを押し、クラッシャーを閉じて、ライダー――本郷はマスクを躊躇いなく脱ぎ、投げ捨てた。

 

「自ら武装解除もしてくれるとは好都合!これで貴様も《バット・ウイルス》に感染するッ!」

 

 そうコウモリオーグが宣言すると同時に、本郷の顔からも生気が失せ、ルリ子同様立ったままその場で俯き、固まってしまった。

 

「わしの勝ちじゃ緑川ッ!散々わしを見下し!コケにし!バカにし!我が神聖な研究を否定した挙句勝手に死におって! 積年の恨みつらみを貴様の最高傑作――《バッタオーグ》で晴らしてくれるッ!」

 

 奴曰く緑川博士の〝落とし子たち〟を支配下に置けたのだと確信したコウモリオーグは、同じSHOCKERに属する研究者同士であった博士への毒々しく重度な怨嗟を超音波に乗せて吐きだし、勝利の歓声を上げ。

 

「さあバッタオーグよ!緑川の娘を始末しろ! その手で殺せ! 八つ裂きにしろ!緑川のいる三途の川の向こうへと送ってやるのだ! これこそ長年、ワシが望み続けた至高の状況ジャあぁぁぁ~~~!」

 

 本郷を操り、ルリ子を亡き者にしようと亡き緑川博士を嘲笑って意識操作の超音波を彼へと放った。

 

 

 

 

 

 

「な、なぜだ?」

 

 ―――が、何も起こらない。本郷の体内にも《バット・ウイルス》は侵入し、感染済みの筈だと言うのに、何度も超音波を発射しても、彼はルリ子に手を出さず佇むまま。

 

「なぜ効かん!?わしの芸術品は完璧じゃ……こんなことはあり得ん」

 

 念願叶った状況から一転、異変の原因が分からないコウモリオーグの耳に、笑い声が入ってくる。

 

「はっはっは………」

 

 笑い声の主は俯いたまま本郷から、口元は笑みを浮かべ。

 

「ところが~~ぎっちょんッ!」

 

 コウモリオーグの意図から外れて笑い声を発し続ける本郷に続いて、同じく感染し意識を乗っ取られたと思われたルリ子が、不敵な笑顔で顔を上げ、コート内に忍ばせていたショットガンを取り出し発砲、奴の片翼に風穴を開けた。

 

「変身ッ!」

 

 本郷も〝実は意識がある〟ことを明かしてコウモリオーグを見上げたまま、ベルトの風車ダイナモを回転させて顔に聖痕を現出、床に転がるマスクへ向けて手を翳す。

 スーツが発する磁力でマスクは彼の手に吸着され、頭部に着装し直して再変身した。

 

「バカな!? 小娘まで」

 

 片翼(かたうで)を撃たれたコウモリオーグは煩雑に翼をはためかせたまま、なぜ自身のウイルスが二人に通じていないのか分からずにいる中。

 

「あんた、仮にもオーグメントだろ? なり立ての僕でも知ってる〝体質〟を知らないなんて、同じ学者として恥ずかしい限りだ」

「どういうことだ貴様ら!?」

「小父さんたら、前に父が言ってたこと忘れたの?〝プラーナ・システムはこの世のあらゆる疫病(やまい)を克服する福音〟だって」

 

 ルリ子は感染しなかった種明かしをし始める。

 オーグメントの生命活動を支える《プラーナ・システム》の応用で、体内に入ったあらゆる病原菌は中和、無効化される。コウモリオーグが開発した新種も例外ではなく。

 

「なら貴様らは、わしを出し抜く為に」

「そう、あんたの自尊心を満たして隙を作ろうと一芝居打ってたのさ」

 

 二人とも、わざと《バット・ウイルス》感染し洗脳させられた演技をしていたのだ。その打ち合わせは洞窟の通路を進みながら、脳波通話時計越しにこっそりと事前に済ませていたのである。

 わざわざルリ子が《A.S.U》から防毒マスクを調達してもらったのも、コウモリオーグを油断させる為のもの。

 

「おのれ………せめて小娘だけでも―――死ねえッ!!」

 

 まんまとライダーとルリ子が仕掛けた罠に嵌められて憤怒に駆られるコウモリオーグは急降下し、ルリ子へ強襲しようとするが―――。

 

「させないよ」

 

 コウモリオーグの蹴りを、ライダーは容易く片手(みぎて)だけで受け止め。

 

《ライダーチョップ》

 

 高周波を帯びた《スパインカッター》の刃で残る片翼を両断し飛行能力を奪いつつ、もう片手に大気を球状に集束、圧縮させ。

 

《ライダーストームウェーブ》

 

 左手を突き出し圧縮空気の衝撃波を放射してコウモリオーグを吹き飛ばし、壁面に叩きつけ。

 

「はぁ~~~」

 

 右の握り拳を腰に添えた構えを取り、回転する風車ダイナモからの出力(エネルギー)が上昇、ブラッドストリームを通じて右手に注入され、緋色のオーラを纏い。

 

《ライダージャンプ》

 

「トオォォォーーー!!」

 

 跳躍し、虚空の真っただ中を宙返りし、背部からのエネルギー放出で突進。

 

《ライダーパンチ》

 

「オリャァァァァーーーー!!!」

 

 劇場の壁にて磔にされたコウモリオーグの胴体に、必殺のストレートパンチを叩きつけた。

 ライダーが後方へ飛び退いたと同時に、胸部に空洞ができ、体内ごと傷が焼け爛れたコウモリオーグはその場から床に落ちる。

 致命傷を受けた奴の下へ、ゆっくり歩み寄るライダー。

 

「緑川………なぜ誰も、わしを理解せんのじゃ……」

 

 その言葉を最後に、コウモリオーグの肉体は泡と化して崩落していった。

 

「貴方が、誰に対しても理解しようとしなかったからさ……」

 

 彼の最後を目にした《仮面ライダー》はそう皮肉を口にしつつも、先の下級構成員たちとクモオーグ――マサと同様に、実験体として犠牲にされた人々も含め、せめてもの黙祷を静かに捧げるのであった。

 

 

 

 

 

 ――――

 

 コウモリオーグのウイルスによる恐るべき世界征服計画は仮面ライダー――本郷猛と緑川ルリ子の二人によって阻止された。

 しかしまだ残る上級オーグメントたちがそれぞれ秘めたる陰謀は、まだ進行し続けたままだ。

 

 行け! 仮面ライダー! 今彼らを止められるのはただ一人、君なのだ!

 

 つづく。

 

 




アジト内でそのまま決着と言うことになりましたが、シン本家みたいに飛んで逃げるコウモリおじさんを追う状況って想像以上に不味かったんじゃ……。

何せ描写を見る限り、ウイルス(バット・ヴィールス)の感染源がおじさん本人で空気感染も確実で。
その気になればおじさん、逃げながら地上の通行人を感染させることもできたかもしれないと思うと……オソロシヤ。

ちなみに風の衝撃波で敵を吹き飛ばす技を披露した本作の本郷さんですが、イメージ的には『ウィッチャーシリーズ』でのファンタジー世界のモンスタースレイヤーな改造人間――ウィッチャーの一人にして主人公のリヴィアのゲラルトの旦那も使う簡易魔法の『印』の一つのアードから。
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