硝煙香るロング・バケーション   作:MOMIZI1942

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第二十四話 Shoop

 雲一つない青空に一発の銃声が木霊し、昼下がりの日差しにうたた寝していた鳥達が一斉に飛び立っていく。

 

「お見事です、流石の腕前」

 

 中折れ式の上下二連から空薬莢を輩出した長髪の男―――エステバン・グティエレスは、従者が吐き出すお決まりの誉め言葉に鼻を鳴らした。

 

 バティスタ共和国の中央部南岸に位置する都市、シエンフエゴス郊外の会員制カントリークラブ。ここはグティエレス一族が管理し、国内にあって金持ちの観光客以外は相応の地位にある者のみ立ち入りが許されない上流階級御用達の場であった。

 

 一族と言ってもグティエレスの家系図には本家しか存在せず、それ以外の分家は別れた家による紛争を嫌ったエステバンの父親の代で断絶させられていた。

 

「日を追うごとに上達されますなあ」

 

「見え透いたお世辞を言うなホルヘ、次の的は用意できてるのか」

 

「はい、用意して御座います」

 

「射撃ならヘラルドの方が上手い。あいつなら散弾でなくとも撃ち抜くぞ」

 

 従者のホルヘはクレーの放出機を見やる。スタッフが皿の補充を終えて、視線に気づくと片手を挙げていつでもと合図を出した。設定はダブルトラップ、一度に別方向へ二枚の皿が飛び、それぞれ一発ずつで撃ち落とす。

 

「ハッ!」

 

 銃を構えたエステバンの掛け声と同時に二つの的が射出され、素早く一枚目に射撃、空中で砕ける的を確認するより先に素早く銃口をもう一方に移して引き金を引く。二枚目は散弾が僅かに掠り、端が欠ける程度にとどまるがバランスを崩した皿は空中で回転して地面へと落ちる。見事二枚の的を撃ち落としたエステバンは満足げに散弾銃をブレイクオープンさせ、硝煙がのぼる薬室に次弾を詰める。

 

 さらにもう一度、的を放出させようとしたその時、隣の射台で掛け声が上がる。同じくダブルトラップ、素早い二発の銃声。二枚の皿はオレンジの煙となって空中で四散した。

 

「ハッ!」

 

 ブレイクオープンした薬室から空の薬莢が飛び出し、弾も込め終わらぬ間に掛け声が飛ぶ。射出される的は僅かな間に遠くへと飛翔するが、排出された薬莢が芝に落ちぬ間に弾を込めたその射手は、またも素早い照準で二枚とも撃ち損じる事なく皿をオレンジの煙へと変えた。

 

「良い腕じゃないか」

 

 エステバンは隣の射手に声を掛ける。それに気づくと射手は銃から薬莢を抜いて帽子を取り、セミロングのブロンドをかき上げシューティンググラスの奥で目元に笑みを浮かべた。

 

「どうも」

 

「女性でその腕前は大したものだ。あいや、勘違いしないでおくれ、12ゲージの反動はキツいからね」

 

 グラスを取りエステバンに視線を向けるブロンドの女は、気遣いとも侮りとも取れる言葉に表情を柔らかくし、それを優しさとして受け止めた。

 

 整ったドイツと米国ハーフの顔立ちと、深い森のような緑と沈みゆく夕陽の如きオレンジの瞳は、見据えられた者を魅了するに余りある魅力を秘めている。やや鋭さのある目つきは、ただ美しいだけではない彼女の性格を如実に表しており、それが機嫌を取るだけの女に飽き飽きしていたエステバンの興味を引いた。

 

「見ない顔だが、観光かな?」

 

「ええ、先週からバカンスで。自然たっぷりな場所で癒されようかと思ったのだけれど、虫が多くてそれどころじゃなかったわ」

 

「それはそうだ、本気でバカンスを楽しみたいなら自然の中より、こうして少しだけ手の加えられた場所が一番だ」

 

 手入れの行き届いた芝に加え、自然を残していると見せかけてその実、一から植えなおした林は見る者から見れば自然と呼ぶには程遠い物であった。エステバンは「多少」と言うが、元々農家の土地だったこの場所を徹底的に開発して富裕層向けカントリークラブにしたのだから、その手の加えようは多少では済むはずがない。

 

「そういう貴方は、どこかの政治家だったり? さっきから強面のご友人が睨んでくるのだけれど…」

 

「おっと、これは失礼。レディに不快な思いをさせるのは良くない。お前たち、そう身構えるなよ」

 

「しかし」

 

「良いんだ」

 

 互いに銃を持っているがゆえに警戒を解かない自身の護衛に対し、エステバンは手で追い払うようなジェスチャーをする。渋々と言った様子で護衛は少し距離こそ取るが、それでもジャケットの内に潜めた「重石」を直ぐにでも抜けるような体勢を取り続け、一挙手一投足に気を張り巡らせていた。

 

 どう考えても抜弾している散弾銃にシェルを詰め、構えて撃つより脇から拳銃を抜く方が早いのだが、彼らの雇い主に何かが合ってはいけない訳であるし、警護する対象は何と言ってもバティスタ一の大物実業家である。気を緩める事など許されるはずもない。

 

「おや、私を知らない? まぁそうだな、外の人間か、この業界に居ない人間なら仕方ない事だ。簡単に言えば此処のオーナーとでも、言おうかな」

 

「あら、それは御免なさい、オーナーだなんて…私ったら知らないで」

 

「いやいや、気にしないで。私はエステバン・グティエレス、バティスタでちょっとした事業を営んでいる者でしてね。どうです、折角お近づきになった事ですし、少しゲームでも。貴方の腕前も見たいところだ。ええと…」

 

「ハンナ・カートマンよ。フリーランスのモデルをやってるの。あまり有名な方ではないけれど」

 

 そう言うとハンナ・カートマン――ことヨハンナ・クリーブランド――は軽くポーズをとって見せる。顔や体に残る傷痕は化粧で容易に隠す事は出来ても、鍛えられた身体に浮かぶ筋肉の凹凸は、モデルと言うにはやや逞しさが際立っていたが、寧ろそれがパリ・コレクションでランウェイを歩く程に知名度も地位もある人間でない事を物語っている。

 

 とはいえ、過剰ともいえるシャツの胸元の張り具合は男共の目を引くにはあまりあり、屈強で何事にも動じないという雰囲気の護衛ですら度々視線をそこへと集中させていた。

 

「ルールは?」

 

「ダブルトラップでお互い5セット撃つ。撃ち抜いた数で勝敗を決める。シンプルだろう」

 

「良いわね、勝者のご褒美は何かしら。何も賭けないというのは、少し味気が無いでしょ?」

 

 エステバンは思案する。自分はモデルの女に負ける程度の腕ではない事を自負していたが、それを負かして酒の一杯でも奢らせようものなら些か男が廃る。しかしここで賭けに乗らぬというのもまた、弱腰と見えてよろしくない。

 

 そうだ、ここは勝ったとしてもオーナーであるのを良い事に、向こうの負けをチャラにしてしまえば体裁を取り繕える。そうエステバンは考えると、考えるふりをして隠した口元ににやけた笑みを浮かべた。

 

「ではこうしよう、負けた方がラウンジで一杯奢る。というのは」

 

「定番ね、でもせっかくだから、良いのを一杯頂こうかしら」

 

 勝つ事を前提に語るカートマンの勝気な様子に、エステバンは鼻を鳴らす。確かに先程見た腕前は相当な物ではあったが、問題は精度だ、装填の速さではない。しっかり構えて狙いを澄ませれば、的を撃ち抜くのは自分にとって容易い事だ。

 

「では、始めよう」

 

 互いに射台へと戻り、エステバンがスタッフの方を見やる。取り決めたどおり5セット分、計10枚の的がセットされ、射出の合図を待った。

 

 

 

「うっ、ぐふっ」

 

「笑うなイライアス、見えないと言っても声は漏れるんだぞ」

 

 射撃場を一望できる森の中で、サキとベルトットは入手した光学迷彩を着用しヨハンナを監視していた。森と射台までは100メートル以上の距離があるが、サキ達は高性能集音マイクを使用しており、その会話は隣で話しているかのように鮮明に聞こえていた。

 

「モデルだって、モデル…アレが? ダメ、我慢できない」

 

「見た目は良いよな、見た目は。だがそんなに笑う事か?」

 

 サキは表情こそ崩さないが、吹き出しそうなのを堪えながらそれでも口の端から笑いを漏らしてしまう。偽名と仮初めの身分を与え、髪型を少し変えた上に化粧までして見た目を取り繕い、そしてモデルという身分の演出の為に口調まで変えた。普段は部屋で酒をかっ喰らっては裸か半裸で引っくり返り、口を開けば品性とは何かを問いたくなる姿とは大違いで、その姿の想像以上の破壊力にサキはとても耐えきれなかった。

 

 当のヨハンナ自身は昔取った杵柄か、かつてはそれなりに良い家庭の出自を自負しているだけあって丁寧な立ち振る舞いや言葉遣いは勿論の事、異性の気を引く様な色気に満ちた所作すらして見せていた。取り繕った様なものでは無く、端から見ても極自然体で、それにはベルトットも驚かされた。

 

「いい加減にしろって、巡回エリアのど真ん中なんだぞ。透明人間だって近寄りゃ見えんだ」

 

「ごめん、ほんと、ここまでとは思わなかったから」

 

「まったく、セニャヴェント(風見鶏)よりストリクス、キツネが対象に接触した」

 

《了解、監視を続行しろ。スキャンの進捗は12%》

 

 ストリクス――マヌエルはカントリークラブの外に停めたバンの中でラップトップの画面を眺める。画面には複数のネットワークや周波数の検出と侵入、マルウェアのアップロードの進捗が映し出されていた。

 

 ヨハンナがエステバンに接触したのは彼に取り入って組織をスパイする為だけではない。エステバンとその護衛に接近する事で、彼らが常時身に着け電波を発信している携帯電話の通信周波数を特定し、そこから通信電波から端末に侵入し内部情報を盗み出そうというのだ。

 

 しかしあくまでこれは入口に過ぎない。求めている情報が彼らの持つ端末程度に存在するとはヨハンナ含めチームの誰も思ってなどいない。本命はエステバンの屋敷の何処かに存在するサーバーで、これはその為の足掛かりである。サーバーが無くともグティエレス家の金庫をひっくり返し、中に存在するであろう機密情報を盗み出せばよい。

 

 勿論そのような情報が存在する確証は無いが、今日に至るまでキューバ島を掌中に収めていた為政者たちに一目置かれる存在たり得たのは、一族が集め、保有し続けた情報という財産があった事も影響しているだろう。少なくともCIAとその走狗であるオーランドはそう考えていた。

 

 何セット目かは数えていないが、散弾の銃声が幾度か響いた頃、監視を続けるサキ達の背後で草を踏む音が鳴る。音を出さぬように静かに後方を見やれば、二人組の男が歩いて行くのが見えた。手には小型のSMG、クラブの保守点検を行う従業員などでは無いのは明らかで、引き金に指を掛けず、銃口を意識した保持の仕方は多少訓練が行き届いているのが見て取れた。少なくともこれまで相手取って来たゲリラ達よりは手ごわい相手だろう。サキは心の内で独り言ちる。

 

 とはいえ、今回はゲリラの拠点の殴り込みなどでは無く、首尾よく事が運べば一発も銃を撃たずに済むのだから、練度を気にする事は無用であろう。もし銃撃戦に発展する事態があれば、その時は練度に関わらず全員始末するだけであるので、これもまた練度を気にする必要など無いのだ。

 

 彼我の距離は凡そ30メートルという所まで接近するが、見回りの男達が気付く様子は一切ない。光学迷彩と言えど近くで目を凝らせばその輪郭は背景を薄らと屈折させ、人のシルエットを浮かばせる。しかし草や木など複雑でランダムな背景に富む森の中、さらに静止した状態であれば余程接近し、それが居ると意識していなければ気付く事はほぼ不可能である。

 

『最近うちに出入りしてるロシア人連中気に喰わんな』

 

『あぁ、奴ら礼儀ってモンを知らねえ。屋敷に出入りする時ですら抜き身で銃チラつかせやがって何様のつもりだ』

 

『そんなに大事なモンならウチの倉庫使わねえでテメェで管理しやがれってんだ』

 

『ボスも甘いよな、いくら先々代の頃から付き合いある相手ったって、ロシアなんぞ落ち目だろ。西に居る奴らはメキシコかアメリカ人と取引してるんだぞ。そっちの方が旨い汁啜れると思うんだがな』

 

 男達が去って行くのを見送り、サキはベルトットに身振りで「聴いたか」と合図する。姿が見えないのに合図など見えないと思うかもしれないが、味方同士をペアリングさせ、多機能ディスプレイを兼ねたゴーグルに味方の輪郭を投影する事で互いの位置を把握する事が出来るのだ。

 

「ストリクスへ、見張りのお喋りを盗み聞きしたけど、ロシア人がエステバンの屋敷に出入りしているのは間違いないみたい。荷物も奴らが管理する倉庫にあるみたい。CIAに調べさせたらどう」

 

《運が良いな、了解した。(オーランド)を暇させて置く理由も無い。調べさせる》

 

 

 

 最後の一発が空に轟き、的を捉えなかった散弾が彼方へと飛び、形を保ったままの皿が遠くへと飛翔して落ちた。

 

「アッ!」

 

「ハハ、惜しかったね。私の勝ちだ」

 

 忌々しそうに銃から排出した薬莢を掴み、ヨハンナは昇る硝煙を息で吹き消した。スコアは一点差でエステバンの勝利、最後の一枚を失中させなければ同点であった。此処まで接戦になる事を予想していなかったエステバンは、久しぶりに楽しいゲームとあって上機嫌であった。自分の周りには身分を知っていて、わざと負ける輩か、本当に下手な連中しかいないのだ。

 

「私の奢りね」

 

「いやいや、私はここのオーナーだよ。だというのにレディに奢らせるのは男が廃る。正直侮っていたんだ、此処まで接戦になるとは思いもしなかった。だから、君の腕に敬意を表して奢らせてほしい」

 

「それだと最初に掛けた意味がないじゃない。でも、折角だからお言葉に甘えようかしら」

 

 ヨハンナのやや悔しさを滲ませる柔和な笑みに、優越感を上乗せされたエステバンはロッジへ向かう為に停めてあるカートへヨハンナを先導して歩み始める。驚いた事に用意してあるカートは世界中どこのカントリークラブでも使用されているごくごく普通の物であった。

 

 表社会のみならず裏社会でも大物の彼は敵が多い。どの業界でもそうだが、どれだけ品行方正に振る舞い各所にコネを作り顔を通していても、立場が上になる事に比例して自身を殺してでも排除したがる敵は増えていく。比較的外敵を寄せ付けにくい島国という環境にあってもそれは同じことで、特にカントリークラブの様な開けた場所は暗殺には最良のロケーションである。事実、射場の外縁に居たサキ達であればエステバンを100回は殺害できるチャンスがあった。

 

 勿論、クラブの中に装甲付きの車両を持ち込むのは流石にやり過ぎという物ではあるが、身体が剥き出しのカートに乗るのは偏に警備体制に対する自信からか、それとも暗殺を恐れないという姿勢を見せる事で威厳を保っているのか、その答えはエステバンの心中を覗かなければならないだろう。

 

「アレは」

 

 ロッジへとカートを走らせる道中、数人の人だかりと向かい合う二人の男を見付ける。ゴルフのコース上でも無ければクレーの射場でもない。ましてここにはウェスタンシューティングを楽しめる施設も無い。しかし彼らの腰や脇には仕立ての良い革のホルスターでリボルバーが吊られていた。

 

「アレは、私の部下だ。まぁこっちには関係のない事だよ」

 

 ヨハンナは若干ばつの悪そうなエステバンの表情を見逃さなかった。どうやらアレは部外者には見られたくなかった物らしい。好奇心をツンツン刺激されるヨハンナではあったが、此処でヤブを突いて全てをご破算にしてしまうのは憚られる。ヨハンナは「そう」とだけ、聞き分けが良いふりををして長し、それ以上追及はしなかった。

 

 

 

「こんな事はやめてくれ、ブツを襲った連中は俺の部下総出で探してる真っ最中だ」

 

「いいかルカ、ボスは『もういい』ってよ。残念だったな」

 

「畜生!」

 

 向かい合った男の片割れ、ルカが周囲の男達に投げられる言葉に悪態をつく。冷や汗を垂らし、歯を鳴らし、ホルスターに添えた手は震えている。

 

「そんな顔をするなルカ、ボスは優しい。チャンスをくれてるんだぜ。勝負(ゲーム)に勝てばお前は出国チケット付きで自由なんだぜ」

 

「うるせえっ! 万に一つもねえってわかってるクセに白々しい」

 

 ルカは自身と向かい合う男を睨む。その視線には恐怖、避けられぬ死に対する絶望と、もしかしたらと言う、ほんの僅かばかりの希望が滲んでいる。

 

「そうだ、ルカ。誰にでもチャンスはあるものだぞ。銃を握っていれば誰にでもな」

 

 向かい合う男、ヘラルド・ルシエンテスは整えられた口髭を撫で、鼻をすんと鳴らしてニヒルな笑みを浮かべた。つばの広い帽子を指先で持ち上げ、表情を見せたヘラルドの表情には、ルカとは真逆の「万に一つもない」という自信が現れていた。

 

「さあ、ボスを待たせてはいけない。手早く済ませよう。ルカ、お前のタイミングで良い。いつでも抜くがいいさ」

 

 ヘラルドは肩幅に足を開き、ズボンの太腿あたりをつまんで裾を持ち上げ調整、そして手はそのまま腰のホルスターへと添えられる。ルカはなおも周りに助けを請う様な視線を巡らせるが、誰一人として応える者は無い。彼に選択肢は存在しなかった。

 

 風が芝を撫で、鳥のさえずりが遠く聴こえる。カートのエンジン音は遠ざかり、自身の心音のみが喧しく鼓膜を叩く。

 

「クソがっ」

 

 リボルバーが抜かれ、大口径の咆哮が一つ轟いた。芝に男の身体が倒れ込み、暫しその場を静寂が包み込む。

 

 倒れたのはルカだった。一部始終を見守っていた男達は完成の一つも上げず、さも当然と言った様に落ち着き払っている。それどころか、一部は飽き飽きのショーを見せられているとでも言いたげであった。

 

 .454カスールの膨大な運動エネルギーに後頭部を弾けさせ、芝生に沈むルカを見やったヘラルドは得意げに掌の内でリボルバーを回転させ、銃口を口元へ持ってくると硝煙を吹き消した。

 

「もう少し骨のある相手が欲しい物だな」

 

「無理を言うなヘラルド、お前の腕を凌駕する奴なんざ居やしないさ」

 

「そうは言うがな、最近はどうにも退屈過ぎる」

 

 凡そ普通の人間には扱いにくいであろう大口径のリボルバーをくるりともう一回転させ、革のホルスターに納めたヘラルドは、銃口を向ける事すら叶わなかった弱すぎる敵へ侮蔑の視線を投げ、ボスの待つロッジへと歩き始めるのだった。

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