は し る キ ョ ジ オ ー ン   作:昴 托須

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うけとめるキョジオーン

 

キョジオーンと成った彼は思った。

思わぬ出会いは些細なきっかけで起こるものだ、と。

 

 

 

走ると決めて数日後、彼は生まれ育った乾燥地帯から一転して青々と草木が茂る森林地帯を走っていた。

あいも変わらず姿勢正しいフォームを形作り、時折通り過ぎるトレーナーや野生のポケモン達の好奇と驚愕の視線を浴びつつも元気に走り回っていた。

 

空は青く晴れ渡り、海の方から時折吹く爽やかな風が走る彼を優しく撫でる。岩塩と成った体であっても、風が全身を撫でる感覚は人間の頃と変わらず感じられるのだから、ポケモンという生き物はつくづく不思議なものである。

以前戦った姿を煙の様に消すゴーストタイプや、燃え盛る炎を体の内に宿すほのおタイプのポケモンの事を思い出し、改めて自身が文字通りの別世界へと生まれ変わった事という事を彼は深く実感した。

 

そうして暫く物思いに耽っていると、ビュオンと一際強い風が吹き付けてくる。舞い上がる葉っぱに紛れ、何やらピンク色の何かが彼に向かって飛んでくる。

 

「ネコーン!?」

 

「ゴゴーン?」 

 

そのまま彼の視界はピンク色で埋まってしまった。

顔全体に柔らかい何かがくっ付いている。顔面にもにゅもにゅした感触を感じ、彼はなんだかほっこりした気持ちになった。

彼はその太い腕を使い引っ付いたそれをゆっくり剥がし、手のひらに乗せた。

 

「ネコーン…?」

 

「ゴゴーン?」

 

はて?なんだか見たことがある気がするな。

金銀まで、それも小学生の頃にある程度遊んだ程度の知識しかない彼だったが、突然のお客さんに心当たりがあった。

頭のてっぺんに生える緑色の葉っぱ。ピンク色の体はどこか猫を思わせる。

確か、そう、ハネッコ、だった筈だ。

 

思い出す間の数瞬じっと黙っていたせいだろう、ハネッコは掌の上でフニャフニャと不安そうな表情を浮かべていた。なんだかかわいい。

 

「ゴゴゴゴーン?」

 

「ネココーン…」

 

彼は取り敢えず会話を試みてみた。

正確に会話をすることは出来ないが、他のポケモンとは鳴き声からある程度ニュアンスがわかるくらいには意思疎通が出来るようになっていた。

何度も思うが不思議なものである。それ以上特に深く考えることはなく、彼は雰囲気でポケモン人生を生きていた。

 

どうも、強風が吹いてきて迷子になってしまったらしい、というのが鳴き声と短くてかわいい手足を使ったジェスチャーによって分かった。

確かに今日は風が強く、ハネッコくらい軽ければ吹き飛んでしまうだろう。何とも不憫な話である。

 

仲間とはぐれた寂しさからか、うるうると涙を浮かべるハネッコを見て彼は決意した。

仲間のところまで連れて行ってあげよう、と。

 

「ゴゴゴーン」

 

「ネコッ!?ネコココーン?」

 

「ゴン」

 

仲間のところまで連れて行ってあげよう、とハネッコに告げると、予想外だったのだろう、ほんとに良いの!?といったニュアンスでハネッコが返事をした。

どのみち彼は何処へだって走るつもりなのだ、迷子を連れて行くくらいはどうって事はない。

 

 

 

よし、行こう。

大体の方角を書き出した後、ハネッコを肩に乗せ一歩踏み出した。

 

 

 

 

 

「フワワーン!?」

 

「ゴゴーン?」

 

 

突然、顔に紫色の何かが飛んできた。

ぽにゅぽにゅとハネッコとはまた違った弾力を持つそれを、またまたゆっくり履き剥がす。

風船のような体と紐のような腕を持ったポケモン。

彼が知る故は無いが、フワンテというポケモンだった。

 

先程と同じ流れに彼は思った。

まさか、この子も迷子だろうか?

 

 

「チルチルチルーーー!?」

 

「ゴゴーン?」

 

そう考える間を与えんと言わんばかりに、白い何かが顔に飛んできた。

ふわふわとしたそれを慎重に、しかしスピーディーに引き剥がした。

慣れたもんである。

綿のような羽を持ったポケモン。

例によって彼が知る故も無いがチルットというポケモンだった。

 

フワンテとチルットは不安そうにそのつぶらな瞳を彼に向ける。

 

 

ふむ。

 

今日はたくさん走れる良い1日になりそうだ。

 

そう、彼は思った。

 

 

 

 

 

 

後日、無事に彼らを群れまで送り届けた彼の肩には、時たま小さな友人が遊びに来るようになったようである。

 

 

とても、かわいい。

 

 

 




割と天然な所があるキョジオーン君です。
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