は し る キ ョ ジ オ ー ン   作:昴 托須

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大変長らくお待たせしてしまいました…!
お待たせした上に前編のみとはなってしまいましたが、プライベートも落ち着きましたのでこれからちょいちょい投稿するつもりなので何卒見守って頂ければ幸いです。


おどるキョジオーン(前編)

 

キョジオーンと成った彼は思った。

走る以外でも、体を動かすのは楽しいものだ、と。

 

晴れ渡る空。気持ちの良い朝日を浴びながら、彼はいつもと変わらずにドスンドスンと走り回る。

今日は風がやや強いからか、ふわふわトリオは3匹とも来ていない。

寂しさを紛らわす様にぐんぐんとスピードを上げ、気が付けば赤、青、白と色とりどりの花々が綺麗に咲く花畑まで来ていた。

 

「ゴゴーン…」

 

あまりの美しさにほうとため息が出る。

この辺りはそれなりに走っていたが、まさかこんな場所があるとは。

美しい花の周りを虫ポケモンや鳥ポケモン達が飛び回り、まるで絵本の中の様な幻想的な景色を作り出している。

彼は花を極力踏まない様に避けながら、時折近づいてくる小さなポケモン達と戯れつつゆっくりと移動する彼の目に、1匹の鳥ポケモンが映った。

 

勝ち気そうな表情に周囲の花に負けない鮮やかな真紅の翼、頭の羽毛はまるでイヤリングの様に頭の横でカールしている。

ダンスポケモンのオドリドリ、その中でも四つあるスタイルの1つ、めらめらスタイルである。

 

「オーレッ!」

 

小さな足で今日に情熱的なステップ踏み、バサリバサリと翼を翻すその姿はフラメンコダンサーを想起させる。

彼にダンスの知識はないが、その舞がとても良いものだと確信するほどに磨き上げられていた。

前世で競技者であった彼はその舞が想像も付かない程の練習量と情熱で練り上げられているという事を直感的に感じた。

 

「オーーーレッ!………ハァ」

 

何か気に食わない部分があったのだろうか、同じ振り付けを繰り返したかと思うと、度々動きを止めてはため息を吐いてガックリと項垂れていた。それでも練習を続けるその真剣な表情は完全にアスリートの顔だった。

競技は違えど、アスリートとしての苦悩を知っている彼にとってその姿は他人事には思えず、考えるより先に行動をしていた。

 

「ゴゴーン」

 

「オレ?」

 

自分で良ければ、話を聞こう。そう声をかけた。

 

これが情熱のストイックダンサー、通称「オーレさん」と彼との出会いであった。

 

 

花畑のハズレにある大きな岩を椅子代わりにオーレさんの話を聞いていた。

 

オーレさんの話によればこの辺りのオドリドリは定期的に仲間たちと集まり、自身の練習の成果たる舞を披露し合う集まりが行われるという。

祭りとも言えるそれはオドリドリ達以外のポケモンも見物がてら観に来るほどの規模であり、彼ら彼女らはこの祭りに向けて日々研鑽をするのである。

オーレさんはその祭りの中でも一際、人間で言えばスターとも言える存在だったそうだ。その華麗な舞は同族も、他のポケモン達も、ありとあらゆる存在を魅了する程のものだった。

 

しかし、そんな彼の踊りに1匹だけ否定的なポケモンがいた。

他ならぬオーレさん自身である。

弛まぬ鍛錬を重ねさえ辿り着いた熟練の踊りは他の追随を許さず、自分より歳を重ねたオドリドリでさえ認めるその舞。

しかし、「なにか」が足りない。そう思えてならないのだ。

その何かを探す為オーレさんは来る日も来る日もこの花園で踊り続けているのだという。

 

「ゴゴーン…」

 

彼は思った。それは、スランプである、と。

 

普通のスランプと違う点はそのパーフォーマンス自体は周囲が認めるだけの技術とクオリティを保っていることだろう。しかし、他ならぬ自分自身が認められないのであればそれはやはりスランプと形容する他ない。

他者から見れば贅沢な悩みだと一笑に臥すかもしれないが、踊り手として一切の妥協を許さないその姿勢は、彼にとってとても好ましいものだと感じた。

 

「オーレ…」

 

「ゴゴン…」

 

ふむ…。しばらく考え込んだ彼はふと閃く。

 

「ゴゴン?ゴゴゴーン」

 

「オレッ!?」

 

 

自分に踊りを教えてみないか?、と。

 

 

 

突然の提案ではあったが理屈としては至極単純な話である。

普段やっていることを続けて納得いかないのであれば、普段やらないことをやってみればいい。

聞けばオーレさんは今まで自分だけでずっと踊りを練習してきたそうなのである。ましてや、他のポケモンに教える経験など全くなかった。

 

だからこそ、キョジオーンである彼に教えるという一生遭遇することがないであろう経験が刺激となってスランプの脱出に一役買うのでは無いか?、と彼は提案したのである。

ダンスに興味があったと言う私的な側面もあったのは内緒である。

 

「オーレ…」

 

普段のオーレさんならまず受けるはずのない提案であるが。

 

「オーレッ!」

 

今の彼には、ニャースの手でもキョジオーンの塩でも借りたい気持ちだったのである。

 

 

 

 

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