きょうだいはおしまい!   作:虎之丞

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気づいたらもう一週間過ぎちゃった。時が経つのホント早すぎる。


かなり先の方にはなりますが、ストーリーの途中でみよちゃんが高性能百合センサーを発動する内容を考えてたのですが、まさか公式様自らやってくれるとは思ってませんでした。やはり原作は最高ですね。




第11話 もふらと一緒の初登校

 みはりの大学に潜入した日から6日経った朝。朝食を済ませたもふらは姉にふとした疑問を投げかける。

 

 

「あれからもう5日以上経ってるけど、まひ兄を学校に通わせるって話どうなったの? 学校の迷惑考えて遅らせた?」

 

「それもあるんだけど、よく考えてみたらお兄ちゃんを学校に通わせるにしてもお友達が少ないと持続しないんじゃないかって思って…」

 

「あ~、そういうことね」

 

 

 みはりの意見にふむふむと頷くもふら。考えてみれば兄の中学生の友人と言える人物は穂月もみじぐらいなもので、他はまだ知り合い程度の男子が2名しかいない。いくら弟もいるとはいえ、人見知りにこれはさすがにキツいだろう。

 

 

「…ならいっそのこと、つっきーにクラスの友達を紹介してもらうとか?」

 

「ふむ…ありねそれ。お兄ちゃん、見た目は女の子なんだし女の子の友達が多い方が案外話もスムーズに進むかも」

 

 

 もふらの提案を聞いた途端、先の事でも想像していたのか声色がパアッと明るくなるみはり。姉の了承も無事得られたので、もみじの友人の事を知ってる限りで説明していく。

 

 

「現在つっきーと特に仲が良い友人は2人。1人はみは姉も知ってる元気娘あっさーこと桜花あさひちゃん。そしてもう1人は室崎みよさん。室崎さんとは殆ど話したことがないからよく知らないけど、あの2人と仲が良いなら大丈夫だと思うよ」

 

「あらあら~、随分と2人の事を信頼してるのねぇ~?」

 

 

 何故か揶揄うような表情をしながら聞いてくるみはりに、もふらは何故そんな表情をしてるのか、と思いながら返答する。

 

 

「そりゃ勿論。なにせ2人はボクの初めての相手だからね!」

 

「いや、言い方…」

 

 

 誰からそんな言葉を教わったのやら。さっきまでの弟の友人への信頼度を喜ばしく思っていたというのに、この感動を今すぐにでも返して欲しいとみはりは思った。たとえ発言に悪意が何もなくてもだ。

 

 そんな姉の気持ちを知らずに、結構な時間が経ったのを見計らい、もふらはふと時計の方を見やる。

 

 

「おっと、もう時間か…そろそろ行かないと。それじゃあみは姉、行ってきます。つっきーにはそれとなく伝えておくね」

 

「ええ、お願いね。行ってらっしゃい」

 

 

 いつもの挨拶、いつもの光景。そんな日常に変化が訪れるまで、あとどれくらいの時間があるのだろうか。

 もふらの後ろ姿を見送りながら、なんだか少し楽しみな気持ちと少し寂しげな気持ちがみはりの中で入り混じっているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「もみじー、おっはよ~!」

 

「おはよー」

 

 

 教室に着いて早々、桜花あさひの元気な挨拶が聞こえてくる。少し前に穂月もみじが教室に着いた故の挨拶のようだ。いつもの元気っぷりに微笑みつつ、もふらは自分の席に座って鞄の中の教科書類を引き出しに入れていく。

 

 少しすると「テスト近いけど勉強してる?」というもみじの声が聞こえてきた。そう言えば期末試験まで残り二週間ちょっとだったという事を思い出し、そろそろ赤点回避も本格的に目指さないといけないかなぁ、などともふらは考えていく。

 おかげでテストという単語を聞いてその元気な声も笑顔も消えてしおしおになっているあさひに気付くまで数分の時間を要してしまったが。

 

 

(…朝から言うのもなんだし、とりあえず昼休みまで待つか)

 

 

 そう思い、もふらはいつも通りに1限目の授業の準備をしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(うーん、どのタイミングで話を切り出そう…)

 

 

 時は過ぎて昼休み。ゆうたやみなとと一緒に弁当を食べ、談笑しながらも今日の目的達成方法を考えるもふら。いくらもみじと友人とはいっても、いきなり女子だけのグループに割り込んで行くのもどうかと思い、機会を待つことにしていた。

 

 

「──でさ、あの展開どう思う……もふら?」

 

「何かあった? 穂月さん達の方じっと見て」

 

「ぬぬ…? ボクってそんなに分かりやすい顔してるのかな…?」

 

 

 わざわざ話を途中で止めてまで心配してくれるゆうたとみなとに嬉しさを表すと共に、自身の情報セキュリティの甘さに軽くショックを受けるもふら。

 いずれ何もしなくても考えが読まれるのではないかと思ってしまうが、今は目の前の事に集中するよう切り替えていく。

 

 

「いや気にしないで、大事な事をどう伝えるか悩んでいただけだからさ」

 

「大事な?」

 

「こと?」

 

 

 疑問符を浮かべながら考える2人。さっきまで女子の方を見ていたもふらが言う大事な事。条件に当てはまる内容を思い付いた2人はハッとなる。

 

 

「──な、なあもふら。それってもしかして…」

 

「そう、まひーの事だよ」

 

「「……え?」」

 

 

 ゆうたの疑問に対して、間髪入れずにそう答えてくるもふらの反応に2人は思わず呆気に取られてしまう。元々もふらがもみじ達3人の方をじっと見ていた上に大事な事などと言ってきたのだから、実は3人の内の誰かが異性として好きで告白か遊びにでも誘おうとしてたんじゃないかと考えてしまっていたらしい。

 

 そんなゆうたとみなとの考えを知らずに、もふらは何故まるで思っていたこととまるで違う事を言われたかのような反応をしているのだろうか。と思い、おそるおそる2人へ聞き返す。

 

 

「えっと…ボクまた何かやっちゃった感じ?」

 

「い、いや何でもない! なあ?」

 

「そうそう! そ、それよりそのまひーって、たしか前に会ったもふらの妹の?」

 

「?」

 

 

 なんだか妙に必死に話を逸らしていく2人の姿にもふらは首を傾げていたが、聞かれた事には早く答える為にまずは返答をする。

 

 

「うん、そうだよ。それでそのまひーが人見知りは激しいわ、前に1人で外出たら補導員に捕まったわで大変だからさ。つっきーにちょ~っとばかりの頼み事をしようかと思ってね」

 

 

 真実を微妙に逸らしながら答えていくもふら。さすがに兄の同性(外見上)の友達を増やす為とは言い辛いので仕方ないと思いながら続けて話していく。

 

 

「名付けて、人見知りなら友達増やして一緒に行動すれば問題ないだろ作戦!」

 

 

 何故か得意気な顔で作戦名を宣言していくもふら。明らかにそのまますぎる作戦名だが、彼が自身のネーミングセンスのなさに気付くまでまだしばらくはかかるので、その話はまたいずれ。

 

 

「「………」」

 

「……あれ?」

 

 

 2人がポカンとした顔になっているのを見て、もしや聞きとれなかったのだろうかと思い、もふらはもう一度説明しようとするが何故か止められてしまった。

 

 

 

 そんな男子3人がわいわいしている一方で、もみじ達3人はというと。

 

 

「──パフェ専門店よね。一度行って──」

 

「──放課後みんなで──」

 

「──はケーオーだ」

 

「オーケーね──みよちゃんも──」

 

「──もちろん!」

 

 

 ゆうたとみなととの話を中断し、ふともみじ達の方へ視線を向けてみると、何故かもう放課後の予定が決まってしまっているような会話が聞こえてきた。一部途切れ途切れで聞きとれなかったが、ほぼ間違いないだろう。女子の行動力の早さに驚くとともに、もふらには1つ思い至ったことがあった。

 

 

「…もしかして、こんな早期にチャンス到来してる?」

 

 

 部分的にしか聞こえてはいなかったが、パフェ専門店に放課後みんなで寄っていくと言う部分が聞こえたのなら充分だ。頼むならば今しかない、善は急げだ。ゆうたとみなとに少しの間、席を外すことを伝えて席を立つ。

 

 そしてもふらは走った。もふらはかけた。でも教室内だからすぐ早歩きに切り替えた。そうして数秒後、もみじ達の前に辿り着くと一呼吸置いてから声をあげる。

 

 

「つっきぃーーっ!!」

 

「なんで目の前に来て大声出したの!?」

 

「あっ、ごめん。必死アピールしたくてつい…」

 

 

 予想よりもデカい声量で名前を呼ばれて驚くもみじ。その様子を見てもふらは心の中で反省をするのだった。

 

 

「そんな全力で言わなくてもちゃんと聞くからさ。とりあえず落ち着いて」

 

 

 もみじに促されて、深呼吸するもふら。気分を落ち着けてから改めて用件を伝える。

 

 

「えっと、その…パフェ専門店の話が聞こえてきてさ。実はお願いがあって来たんだ」

 

「お願い? それって…もふら君もパフェが好きで一緒に行きたいとか?」

 

 

 もみじの質問に対して首を横に振るもふら。解答が間違っているのなら、答えはなんなのだろうかと、もみじは疑問符を浮かべながらもふらの解答を待つ。

 

 

「その店にまひーを連れていってもらえないかな?」

 

「……へ?」

 

 

 予想外の解答が飛んできて唖然とするもみじ。どういう流れになったら自身の兄妹をさっき話したばかりのパフェ店に連れて下さいと言う話になるのか。考えても分からないので質問する事にした。

 

 

「えっと…理由を聞いても良い?」

 

「一言で言うなら、外に連れ出してほしいってところかな」

 

「外に? 以前の旅館やお買い物も外出したことになるんじゃ?」

 

「それも外ではあるね。でもまひーの外出ってさ、いつもみは姉かボクのどっちかが一緒に付いて行ってるんだよ。1人で行動したのはつっきーと会った日…それともう1日だけ」

 

「もう1日?」

 

「いつかの平日の朝にね、用事があって出かけてたらしいんだけど、色々あって補導員に捕まっちゃったらしくて…」

 

 

 もふら自身は学校だったので詳しい事情は兄と姉に聞いただけではあるが、途中でゲーセンに寄ったのが原因ではあるらしい。

 

 

「この件が原因で1人で出かける事もなくなっちゃって…いつもボクやみは姉が一緒にいる訳にも行かないし、何とかしなきゃなぁって思ってたんだけど、方法が一つしか思い浮かばなくてさ」

 

「その一つがもふら君のお願いと関係があるってことかな」

 

「その通り、単刀直入に言うね」

 

 

 もふらはもみじにコッソリと耳打ちする。近くにいるあさひやみよに聞かれないようにする為だ。

 

 

「あっさーと室崎さんをまひーに紹介してほしい。そして出来れば2人にも、まひーと友達になってほしいんだ」

 

「……ふふっ」

 

 

 少々驚いた表情をしていたもみじだったが、やがて少し経過すると微笑みを浮かべてきた。何か笑うような事があっただろうか、ともふらは首を傾げながら疑問に思う。

 

 

「…何かおかしいことでも言ったっけ?」

 

「ああ、ごめんね。タイミングが凄いなぁって思ってて」

 

「…タイミング?」

 

 

 言ってることがよく分からないでいると、一段落ついたのを見計らってかいないでか、みよと2人で話していたあさひが明るい声で会話に入ってくる。

 

 

「もふらん、もみじ。話は終わったかー?」

 

「うん、今さっきね。放課後は()()()()、まず皆でもふら君家に行く事になったよ」

 

「ふぅ、とりあえず予定通りに済んで良かっ……ん? 予定通り?」

 

 

 もみじの言葉に一つおかしな点が入っている事に気付いた。なぜ緒山家に行くのが予定通りになるのか。まさかと思ってチラッともみじの方を見ると、そこには悪戯じみた笑みを浮かべる少女がこちらを見ていた。

 

 

「ぬぅ…やられた。最初から誘う気だったならそう言ってよもう…! 悪戯ッ子になったな、つっきーは」

 

「ごめんごめん。本当はサプライズで2人を誘おうかと思ってたんだけど、まさかこんな同じタイミングで来るとは思わなくてさ」

 

「それでつい話を隠したと。不意打ちとサプライズが好きだねホント」

 

 

 なんかもう笑うしかないな、と思い苦笑するもふら。しかし、少しずつでもこんな冗談が言い合えるならば、それは友人として仲良くなっている証でもあるのだから良いことなのだろう。そう思ってこの件は不問にすることにした。

 

 

「そう言えば、まひろちゃんやお姉さんにはまだ教えてないけど勝手に話を進めちゃってて良いのかな?」

 

「良いの良いの。みは姉はすぐに了承するし、まひーもどうせ今頃『辛いわ~~、家の中で遊ぶの辛いわ~~~』とか言ってるだろうから」

 

「…まひろちゃんの物真似、凄い上手だね」

 

 

 声も表情もまるでまひろ自身が言ってるかのようで、予想以上に似ていて思わず感嘆の声をあげるもみじ。双子ならではの模倣力なのかもしれないと思った。

 

 

「それと、もふら君も本当に良かったの? 一緒に行かなくて」

 

 

 話を切り替え、もみじが思った疑問を口にする。それに対してもふらは少し思案すると首を縦に振って頷いた。

 

 

「ボクが行ったら意味ないし、今日はみは姉に用事もあるからね。それに」

 

「それに?」

 

「女子だらけの中に1人だけ男子の図はどうかと思うんだ」

 

(旅館の時もそうだった気がするけどなぁ…)

 

 

 まあ家族は別計算ということなのだろう、とりあえずもみじはそう思うことにして、それ以上はツッコまないようにした。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな会話があってから数時間後。放課後にてもふらは、もみじあさひみよの3人組とともに自分の家へと向かっていた。まひろを外へ連れ出す目的の為に。

 3人の談笑を聞きながら家路を歩いている途中で、もみじがふとした疑問をもふらに聞いてくる。

 

 

「あっ、そう言えば大丈夫かな? まひろちゃんって結構人見知りするから、私だけだと2人に緊張したままになりそうな気も…」

 

「あ~…たしかに。いや、たしカニ。まあでも、そこは一応考えがあるからきっと大丈夫だよ。あっさーあっさー」

 

 

 あさひをちょいちょいと手招きするもふら。頭に疑問符を浮かべながら寄ってくるあさひにコッソリと耳打ちをする。

 

 

「──って言ってみて」

 

「んー? よく分からないけどわかったぞ」

 

「あっ、自己紹介するまで絶対に話さないようにね。バレたら止められるだろうし。それにこれはとっておきの情報だ。責任は重大だよあっさー軍曹!」

 

「了解だもふらん二等兵!」

 

「ボクの方が階級下…!?」

 

 

 ショックな表情を見せるもふらと面白半分で会話するあさひの2人。一方その姿を眺めていたみよは、なんだか悔しげな表情をしていた。ただそれは嫉妬とかそういうものではなくもっと別の理由があるのだが。

 

 

「これで女の子でさえあったら──!!」

 

「…みよちゃん?」

 

 

 心の底から惜しがった表情でそう呟くみよの姿に、もみじはただただ困惑するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 十分後、緒山家に到着。玄関前に3人を待たせ、もふらはそそくさと家に入りみはりを呼びに行く。

 

 

「ただいまー。みは姉、今すぐまひ兄を叩き起こして!」

 

「おかえり。いきなり物騒な発言ね…もしかして?」

 

「そのもしかしてだよ。今朝の計画を遂行するチャンスが到来したんだ。玄関前に3人を待たせてるから急いで急いで!」

 

「お兄ちゃんならソファーの上でお昼寝してるから起こしといて。私はもみじちゃん達と話をしてるから」

 

「了解」

 

 

 何だか浮き浮きした様子で玄関に向かうみはりを見届け、ソファーの上に仰向けですやすやと寝ている兄を起こしにかかるもふら。

 素早く起こす必要があるが、普通に起こすのもなんなので、一つ咳払いをしてからコッソリと兄の耳元まで口を近づける。

 

 

「お兄ちゃん、ねぇお兄ちゃんってば」

 

 

 もふらの口から発せられる普段とは違う声。姉みはりに近い声質で喋るその姿は、端から見るとなんだか奇妙なものであった。

 これがもふらの特技の一つ、声真似である。

 

 

「ん~…みはりぃ……? なんか声が、いつもと少し…違うような……」

 

 

 寝言なのか寝ぼけながら言っているのか分からない返事。しかし、いくら眠っていても普段から聞き馴染んだものと違えば、さすがに違和感は感じるらしい。

 

 

「うーん…内からの声と外からの声は聞こえ方が違う分、やっぱり調整が難しいな…」

 

 

 声質について考えるもふら。兄の声も最近ようやく完璧に真似出来るようになったぐらいなので、まだまだトレーニングが足りていないようだ。後でもっと練習しようと考えた。

 

 

「そんな事よりも…ほら、早く起きて。お小遣いがなくなっちゃうよ」

 

「なん…だと…!?」

 

 

 もふらの嘘の強迫を聞いてガバッと起きあがるまひろ。こんな起こし方で良いのだろうかと、時折兄への対応に弟は悩んできていた。しかしまあ、今は友人との外出(ほぼ強制)が先だろう。と思考を切り替える。

 

 

「おはようまひ兄」

 

「ぅん…? もふら、帰ってきてたのか。ところで小遣いがなくなるって聞こえて来たんだけど?」

 

「……何の事? って、そんな事言ってる場合じゃないよ。つっきー来てるから早く動いて動いて」

 

 

 もふらに促され、「んん? さっきのは夢だったのか…?」と呟きながらまひろは上着を取りに一旦、自分の部屋へと向かっていった。

 そんなまひろの後ろ姿を眺めながら、変な起こし方はもう止める事にしようともふらは考えるのだった。

 

 

 

 

 

「ほいほい起きたよー…」

 

「あっ、おはよ~~」

 

「………?」

 

 

 着替えも完了し、いざ玄関へ向かってみると、制服姿のもみじが手を振って笑顔で挨拶をしてくる。まひろにとってはそこまではまだ予想の範疇で良かったのだが、その後ろに立っている2人の見知らぬ女子生徒の姿を見て、雑談していたみはりの背中に隠れてしまう。

 

 

「………誰!?」

 

「あーーっ、急にごめんね! 同じクラスの友達だよ。これからみんなでパフェ食べに行くんだけど…まひろちゃんもどうかなって思って」

 

「は、え…? み、みんなで…!?」

 

「ちなみに今からボクはみは姉と大事なお話があるので、まひー1人だけ皆と行ってもらおうと思っております」

 

(ほほ~う? なるほどなるほど)

 

 

 もみじともふらの話により大体の事情を察するみはり。たしかにこれは弟の言う通りチャンスである。乗らない手はないだろうとすぐに判断した。

 

 

「あ~~……いや~~っ……そういやたしかこのあとわたしも用事が~…」

 

「よかったね~まひろちゃん! ちょうどヒマしてたじゃない」

 

「どうせ家の中で遊ぶの辛いわ~~とか言ってたんでしょ?」

 

(くっ…こいつ、無駄に鋭い…!)

 

 

 妙に笑顔で誘いを勧めてくる妹と弟に必死の抵抗を潰される兄。そして流れるようにパフェ代まで強制的に渡されて遂に逃げ場を潰されてしまう。

 

 

「それじゃあつっきー、まひーのこと宜しくね~」

 

「お任せあれ! ほーら行こ行こ!」

 

「へ……ちょっと」

 

 

 みはりともふらに見送られつつ、もみじに背中を押されてほぼ強制的に移動させられていくまひろ。自分の意思などお構い無しに話が進んでいく様に一言物申したくなってしまう。でも、そんな文句を言う暇などなかったので、訴えるように名前を叫ぶだけで終了してしまったが。

 

 

「みはり~~ッ!! もふら~~ッ!!」

 

 

 

 

 もみじ達3人とともに遠くに消えていく兄の姿を見送りつつ、もふらは「ふぅ…」と一息ついた。

 

 

「お疲れ様。よく頑張ったね」

 

「ボクが何もしなくても誘ってたみたいだけどね。遅かれ早かれこうなる命運ではあったのかも」

 

 

 はは、と苦笑しつつそう言うもふらに、みはりは頭を撫でて褒める。

 

 

「……子供扱いは止めてよ、もう」

 

「ふふっ、止めてほしいならまずは私の身長を追い越すところから始めないとね」

 

「…ボクが低身長だってこと気にしてるの知ってて言ったでしょ今。くそぅ、来年こそはきっと…!」

 

「頑張ってねぇ~」

 

 

 悪戯っぽい笑顔で揶揄ってくる姉に対して、心底悔しそうな顔をする弟。この後、兄の入学準備で忙しくなるのだから、この位の談笑は構わないだろう。そう思いながら姉弟は家の中へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりー」

 

 

 日も沈みきる頃になって帰ってきたまひろに対しておかえりと言う大変珍しい光景に、もふらは少し感動しそうになった。これからはその機会も増えるだろうが、この時の感情だけは忘れないようにしておきたいと心底思う。

 

 

「あっ、もふら。おまえなぁ!」

 

「?」

 

 

 帰ってきて早々に少々ご機嫌斜めな態度を見せてくる兄に疑問符を浮かべるもふら。何かあったのだろうかと考えていると、すぐにその理由が返ってくる。

 

 

「誰がぐうたらでポンコツで人見知りだっての」

 

「…ん」

 

 

 まひろの言葉を聞いて速攻で指を向けて返事を返すもふら。皆と何かあったのかと思ったが、まず最初にこちらへの怒りを向けてくる辺り、特に問題なく進んでいたのだろう。

 

 あさひに内緒で教えていた情報も良い方向に舵を取ってくれたらしい。とりあえず一安心する。まひろはぐぬぬ、とちょっとした悔しさと怒りを向けているが。

 

 

「まあまあ。お風呂沸かしたから先に入って入って。そしてそれで許して。足りないなら肩揉みサービスも付けるからさ」

 

「まったく…分かったよ。それで手を打ってやる!」

 

 

 本当は別に怒ってなどいないだろうに、兄の威厳というやつが関わるから怒ったフリをしているのだろう。そんな兄の今の姿は可愛くしか見えないから威厳も何も最初からないように思えるのだが、言ったら本当に怒られそうなので心の中に留めることにした。

 

 

 

 

 

 

 お風呂に入ってから数十分後

 

 

「おお~~!」

 

 

 出てきた兄の格好に感嘆の声を洩らすもふら。まひろの服装は、もふらが平日の朝から夕方までの間必ず目にする服──要は通っている中学校の女子生徒の制服だった。

 

 

「私のお古だけどサイズぴったり! ほーら上着も…」

 

「着せ替え遊びなら付き合わんぞ!」

 

「まあまあ落ち着いて」

 

 

 抵抗するまひろを宥めるみはりに促され、仕方なく冬物の上着も着ていくまひろ。その間、みはりは説明、そして提案をしていく。当分の間はTS薬の効果が切れない事、そして本日せっかく友達が増えた故に勧める提案──。

 

 

「学校行こっか、お兄ちゃん!」

 

 

 その夜、自宅警備員の叫び声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月曜日の朝。HR前の時間にて、緒山もふらは珍しく時間ギリギリに教室へと入りこんできた。

 

 

「あっ、おはよーもふら君。珍しいね、こんな時間ギリギリに来るなんて」

 

「おはよう。職員室までとある女子生徒を案内しててね」

 

 

 もふらの元までやって来たもみじと挨拶を交わしながら今日の出来事を一言で説明していく。

 

 

「とある女子?」

 

「まあホームルームまで待ってみなよ」

 

 

 疑問符を浮かべるもみじに笑って説明を流す。少しするとHRのチャイムが鳴り出してきたので、2人とも急いで席に座りだした。

 

 

「はい、みなさん。本日は転校生を紹介しますね」

 

 

 担任教師の西宮まりのその一言に教室内がざわつき始めた。もうすぐ期末試験が始まるようなこんな時期に転校生が来るなど珍しいのだから仕方ないのだろう。

 その後まりに入るよう促され、1人の少女が教室内へとやってきた。

 

 長い白髪、見る人によっては儚げな印象を与える容姿、少し低めの身長、そしてかなり緊張した面持ちをしている。その少女の事を知ってる人物数名はたいそう驚いた表情をしながらその挨拶を見届けるのだった。

 

 

「きょ…今日から通うことになった緒山まひろです…み、みなさんよろしくね~~…」

 

 

 兄の挨拶を見届けながら、もふらは今日1日の行動を振り返る。

 

 

 

 

 朝食時。

 

 

「ね、眠い…うぅ…憂鬱だ…」

 

「すぐ慣れるって」

 

 

 通学時。

 

 

「ひ、引っ張るなもふら~ッ。自分で歩けるって!」

 

「いやさっきから全然進んでないじゃん…」

 

 

 職員室にて。

 

 

「すみません先生、遅れちゃって…後はお願いします」

 

「HR前ならセーフよぉ。それじゃあ朝礼に間に合うよう緒山くんも急いで教室に戻ってちょうだい」

 

「わかりました」

 

「ううう~…ッ」

 

 

 

 そして現在。

 

 

(…うん、改めて思ったけど早めに出発しといて正解だったなこれ。予想以上に時間かかってるし)

 

 

 心の中でそう思うもふら。向こうも不平不満はあるのだろうが、さすがに時間がかかりすぎだった。このままの調子だと先行きが不安になってくる。

 

 そんな不安を余所に、HR終了と共にクラスの女子達がまひろの元へとなだれ込んで行くのがもふらの目に映った。これはイカンと思い、すぐにまひろの元に馳せ参じようとしたのだが、何故か自身もクラスの男子達に囲まれるという事態が起きてしまう。

 

 

「……え? なんでボクが包囲されるの?」

 

「とぼけるなよ緒山」

 

「妹がいたなんて聞いてないぞ」

 

「は、え? はいじ君にきばと君、まこっちゃんまで!?」

 

 

 次々と男子達から質問攻めに合うもふら。あわあわしながらチラリとまひろの方を見てみると、いつの間にかもみじに助けられていた。

 持つべきものは友達なのだと判断したもふらは、すぐにゆうたとみなとへヘルプサインを送る。しかし──

 

 

(ごめん、もふら)

 

(俺達じゃ止められそうにない)

 

 

 とでも言ってそうな顔をしながら、両手を合わせて謝罪のサインを送り返されるのだった。

 

 

「ええ~~ッ!?」

 

 

 もふらのヘルプも叫びも全てが空しく過ぎ去る今日この頃。この日、緒山もふらの休み時間は全て質問ラッシュしてくる男子達への対応に消え去るのであった。

 

 




閲覧ありがとうございます。もふらの呼んでいた男子のあだ名はそれぞれ、拝島たけし→はいじ、木場ともや→きばと、小平まこと→まこっちゃんとなっております。描写はないですが、それなりに話している設定となっております。
ちなみにもふらが男子達に質問ラッシュされたのはお兄ちゃんが可愛いせいです。緒山が悪いんだぞ…


話は変わりますが今後の話を書いておきます。

現状、進級前の春休みまでの話にあたる第2部は20話辺りまで続く予定です。キャラとの関係性決定と日常メインなのでストーリー性はかなり薄めになっております。まあ二年生1学期にあたる第3部も似たようなものではありますが。

現状ストーリー性があるのは夏休み編の一部だけの予定ですが、ここに入るまでおそらく本編30話辺りまでかかるスロースタートっぷりですので、ストーリー性のあるものを読みたい方は申し訳ありませんが、別の方の作品を読んでいただくか数ヶ月お待ちください。待っても期待に答えられる程の物は出せませんけども。

以上、今後の報告でした。


次回はテスト回からの日常回です。メモに書かれている内容がまたまた少ないので、適当にアドリブで考えながら書いていきます。

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