代わりにイラストを当日アップしてたからセーフということにしてください。
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期末試験。それは学生の一大イベントにして長期休暇前の最後の試練でもある。この試練を楽しみにしているような
さて、そんな一大イベントを目前に控えている中、緒山家の兄弟はというと──。
「まひ兄、そっちに大将行ったよ」
「ほいほい」
部屋で普通にゲームをしていた。来週にテストを控えているのを知った上でのこの対応。今までさぞ勉強を頑張ってきたのだと思われるが、事実は全くの逆である。兄は準備など欠片程もしておらず、弟は1人時間に少しやっていた程度だ。
「──ほい撃破、っと。やっぱ良いな無双シリーズ。こう、チートスキル持って異世界転生したみたいにドンドン敵を蹴散らしていく感覚が堪んないんだよなぁ」
「現実でも無双出来れば楽しいだろうね~」
「それが出来ないからこそ現実はクソゲーと呼ばれてるんだ。もふらもちゃんと覚えとけよ」
「なんか嫌だなぁ、それ覚えるの」
楽しく雑談しながら次のステージへとゲームを進めていると、不意に勢いよく部屋のドアが開かれた。そこから現れたのは勿論みはりだ。
「2人とも早く寝なさい! 明日も学校でしょ」
母親の如く叱ってくるみはり。そんな姉に対して、もふらは細やかな抵抗を試みる。
「あ、あと1ステージだけ──」
「待てもふら! 今は引け。逆らうとまずいぞ!」
みはりの機嫌や表情を見て何かを察したのか、弟の抵抗を必死に止めるまひろ。その様子に実は何か隠したいものでもあるのかと思い、鬼のような表情で追及してくるみはり。
「何がまずいの? 言ってみて」
「パワハラ鬼上司みたいなこと言ってきた…!」
妙に威圧感のある冷たい視線を向けてくるみはりにたじたじになり、2人はすぐにゲームを止めて大人しく各々のベッドに向かう事にするのだった。
テスト前の夜中にゲームをしてる時点で普通はもっと怒られるのだからみはりの対応はまだマシな方だろう。試験前だと言うのを知らないだけなのかもしれないが。
そんな出来事があった日から翌週の朝。期末テスト当日。
「フッ」
「突然どうしたぁ?」
通学中、突然不敵な笑みを浮かべるもふらにまひろは疑問をぶつける。それに対し、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりの表情で返事を返した。
「それは勿論──」
「あっ、2人ともおはよ~~」
「おっ、もみじだ」
説明をするタイミングで暗記カードを手に持ったもみじがやってくる。間が悪いが、ぶっちゃけ大した理由でもないので別に良いか。と思い、すぐにさっきの話を止める事にした。
「まひろちゃん、もふら君も。ちゃんと勉強してきた?」
「いやぁ全然──」
「勿論してきたよ」
「……へ?」
堂々とそう言いきるもふらに対し、まひろは驚愕の表情を浮かべる。自分が見てきた限りではあるが、先週どころかここ数日は勉強している姿を見た覚えがないからだ。
「おいおい、嘘は良くないぞぉ。勉強なんて全然やってなかったじゃないか」
「嘘じゃないって。ここ一ヶ月は毎日寝る前に部屋で1時間ぐらいやってるし」
「いつの間に…!」
「能ある人は努力を隠すものだからね」
「それを言うなら鷹で爪だろ」
(仲良いなぁ)
そんな会話を続けながら歩いていると見覚えのある背格好が2つ見えてきた。桜花あさひと室崎みよの2人だ。
「…あっ、あさひとみよちゃん」
「おはよ~~」
「………」
「……?」
挨拶は聞こえている筈なのに、いつも元気なあさひが妙に静かな事に疑問を覚えたまひろはコッソリ顔を覗き込んだ。その表情はまるでこの世の終わりでも目の当たりにしたかのようなものになっていた。気分もとんでもなく沈んでいる。
「──!? いつも元気なあさひがしおしおに…」
「テストが天敵なの」
みよの一言により全てを察するまひろ。あさひの顔を慰めるようにふにふにするのだった。
「よしよしかわいそうに。気持ちはわかるぞー」
「…うぅ~~~まひろんっ。一緒に補習受けようなぁ…!」
(ええ~、オレも~ッ!?)
あさひに泣きながら強く抱きしめられること十数秒、やっと解放されたまひろは顔を離して呼吸を整えた。もう少し加減してほしいところだと後に思う。
そんなあさひだが今度はもふらの方へと振り向くと、何故か輝かしい笑顔になって手を握ってブンブンと縦に振り回す。
「もふらんも、いつも通り補習頑張ろうなぁ…!」
「……いつも通り?」
「もふら君も補習常連組だからね…」
「マジか」
弟の知られざる一面を目の当たりにした兄は、少々気の毒に思うのだった。
そんなもふらだが、あさひが手を離すと同時にストップと言わんばかりに顔の前に手のひらを向けて制してくる。
「──残念ながらあっさー、今回のボクは今までと一味違う」
「そうかぁ…?」
「まひろちゃん、そこは一旦話を聞いてあげよう?」
「フォローありがとう、つっきー」
コホンと一つ咳払いをして、謎のドヤ顔と人差し指と小指を天に向けて指した謎のポーズを披露するもふら。そして声高らかにあさひに宣言をする。
「溢れんばかりの頭脳、そしてこの自信! ボクはここに宣言しよう。悪いが今回からは赤点常連1抜けだあっさー。補習なら2人で頑張ってくれたまえ」
「なん…だと…!?」
衝撃を受けた顔をするあさひ、昔からの補習仲間の宣言にショックを受けたようだ。
そんなもふらの演技くさい発言にもみじは苦笑し、まひろはある部分に心の中でツッコミを入れるのだった。
(……何のキャラなんだろう)
(何でオレが補習受けるの前提で話してんだ)
「くっ…うぅ~~~。もふらんの裏切り者ーッ!」
あさひの叫びを背にもふらは得意気な顔をしつつ、1人通学路を歩いて──はいかず、皆と一緒に学校へと向かっていくのだった。
そして時は進んでいき、いよいよ期末試験が始まった。
いざ開始してみると、もふらはどんどん問題を解き進めていった。今回の発言自体には嘘など微塵もなく、彼は毎日の努力を、日々の勉強を懸命に頑張っていたのだ。それが見事結果に現れている。走りだすペンが止まらない。
(これが、ボクの本気だぁぁあ…!)
その後の試験も同じ調子、同じペースで書き進め、遂に全てのテストが終わった。もふらは一仕事やり終えたかのようにふぅっ、と息を吐く。
「は、初めて全ての答案が埋まった…! 勝った、第二部完!」
この上なく良い機嫌のまま、もふらは翌週のテスト返しまでを上機嫌のまま過ごしていくのだった。
そして翌週。遂に全てのテストが返される。ウキウキした様子で返却されたテスト結果を受けとるとほぼ同時に、ゆうたとみなとが結果を聞きにやってきた。
「もふら、テストどうだった?」
「俺達はギリギリセーフだったけど」
「フッ……勝ったよ。ゆう、みな」
テストの点数を一通り見通して微笑むもふら。なんだか得意気な顔をしながらテストの点数を2人に見せていく。
「前回の成績を超えて遂にオール40点台到達さ!」
「赤点だろそれ!」
ゆうたには見事なツッコミを入れられ、みなとにはこれから行われる補習地獄に軽く同情のような目をされるもふら。そんな2人に見送られながら、まひろの試験結果を見に女子4人組の下へと向かう。
視界に映る兄の姿は明らかに死んだ目をしており、一方であさひの目は生き生きとしていたので、それだけでどんな点数だったのかがすぐに見てとれた。
そんなこんなで4人の下に辿り着くと、もみじにテストの結果を聞かれたのでスッと静かにテスト用紙を渡した。その点数部分を全て見ていくもみじ。あさひも一緒にチラリと覗き込んだ。
その点数を見たもみじには驚愕の表情を、あさひには喜びの表情を迎えられた。
「──あんなに自信満々だったのにほぼ全滅してる…!?」
「やっぱり期待を裏切らないなもふらんは…! あさひとまひろんと一緒に補習頑張ろうな!」
「ぬぅぅっ…次こそは!」
明るくなるあさひの表情。仲間が出来て嬉しいのだろうが、あんな宣言した後に赤点祭りをしたもふらにとっては悔しさしか出てこない。
沈んだ表情をするもふらと、その様子を笑っているあさひ。そんな2人の様子を見たもみじは懐かしむかのような顔で眺めていた。
「もふら君も相変わらずだなぁ…」
「…相変わらず?」
少し気分を持ち直したまひろはもみじの発言が少し気になり、質問をしていく。
「あの2人って、昔からそうだったの? なんだか手慣れてるような感じはするけど」
「うん。テストの時期だけはこうして2人でよく謎の勝負をしてる時があったんだ」
「へ~」
返事をしながら改めて2人の様子を伺ってみると、その会話にはたしかに旧知の友のような雰囲気を感じた。実際にそうではあるのだが、まひろ自身もふらが友人と遊んでいる姿を見ていなかったので、こうして実際に見てみるまではいまいち想像が出来ずにいたのだ。
まあしかし、結果はご覧の通りだ。楽しんでいるようで何よりだと思いながら、まひろはうんうんと無言で頷くのだった。
そして更に時は過ぎ、数日後。
放課後補習の時間が終わり、もふらとあさひの2人は魂の抜けたような顔をしながら机に突っ伏していた。
「や、やっと終わった…」
「もう動けないぞ…」
「…勉強で動けなくなるってどゆことだろ」
身体が溶けてスライムのようになっているあさひに対して、顔からとんでもない量の蒸気を出しながら突っ込むもふら。端から見ると人間同士が話しているようには見えない絵面だ。
そんな2人を余所に、意外にも黙々と補習をこなしていたまひろの方へとふと向き直る。
「まひー、なんだか思ったより平気そうだね。ボクより成績低かったのに」
「こちとら数年前まで成績もそれなりに良かったしなぁ…今回の補習も復習してたようなもんだし」
「……あっ、そう言えばそっか」
「──いま普通に(オレが本来大人だってこと)忘れてなかった?」
「気のせい気のせい」
手を横に振って否定のポーズをとるもふら。同じ学校の同じクラスにいると、兄であるという事をたまに忘れてしまいそうになってしまう。
これも全て糖分が足りてないせいだと思い、誤魔化しの意味も兼ねて、すぐさま話を食事関連へと切り替えることにした。
「ま、まあそんな事よりさ、補習終了記念に何か甘い物でも食べに行かない? 何だか頭が回らなくて」
「え~、大丈夫かぁ? こんな時間になんか食ってきたら、みはりに怒られない?」
「大丈夫。少しだけ、少しだけだから!」
「それ絶対ダメなパターン…!」
「あさひもさんせ~い! 頭を使ったらすぐおやつだってどっかで聞いたことあるし。な~~!!」
「ね~~!!」
「うーむ……」
笑顔で言い合う2人に対し、まひろは悩んでいた。普段ならば自分も乗っかるところではあるが、今回は
そんな考えをしながらどうするか悩んでいるまひろを見て、あさひともふらは何か作戦でも思いついたのか、お互いの顔を見合わせると同時に頭を縦に動かして頷いた。そして2人同時にまひろの方へ振り向きその作戦を実行する。
「お願いまひー、連れてって~☆」
「まひろんと一緒に行きたいぞォ~★」
両手を合わせながら上目遣いで懇願してくるもふら・あさひ両名。昔使用したことのあるおねだり作戦であった。
小学生の頃に使っていたそのあざと可愛いポーズにより、当時の被害者であるもみじがえらい目に遭ったことはまた別の話。
そんな2人の長々としたお願いに観念したのか、まひろは2人の懇願ポーズを諌めた。
「わかったわかった! そんな顔するなって。ちゃんと行くからさ」
「いぇいいぇい」
「かにかに」
作戦が成功したことによる喜びを表すように、両手ともにVサインを作るあさひともふら。やれやれといった表情をしながら、まひろは2人の監視もとい同行を開始するのだった。
数十分後。とあるファミレスチェーン店に到着した一行はそれぞれお好みのスイーツを注文した後、のほほんと
「──という訳で勉強内容もだいぶ覚えてきたし、これから先は補習回数も減りそうかな。まひーは?」
「わたしも内容覚えなおしてるところ。補習って思ったより時間取られるから、ある程度は勉強した方が時間効率良いんだよなぁ」
「………」
駄弁っていた筈が何故かまた勉強の話へと戻ってしまい、まひろともふらの話を聞いているあさひの目から次第に光が消えてしまう。
「そういう事だからあっさーもそろそろ赤点回避はした方が良いと思うよ」
「なんか急に話が楽しくなくなって来たぞぉ……」
「まあまあ。毎日10分程度教科書読んでおくとか色々やりようはあるからさ。遊ぶ時間取られないようにする為にも早めに頑張っていこう?」
「うげぇ~……やれたらやってみるぅ……」
(うーん…ダメそう)
何とかモチベーションを上げさせて成績向上に繋げられればともふらは考えていたが、この発言では逆効果になりそうだ。物で釣るのも良くないので、後でなにか良い方法がないか考える事にしようと思った。
「ま、いま考えても仕方ない。それじゃ勉強話はここまでにして、この先のことでも話そっか。もうすぐ冬休みに入るんだしさ」
冬休み。その単語を聞いた途端、光の消えかけていたあさひの目からいつも以上の光が灯されていった。そのあさひの隣に座っている元成人男性の少女も同じくだ。
「冬休み!」
「長期休暇きたコレ! 家で思う存分休み尽くせるぞ~!」
「ぐうたらだなー」
3人からあがる笑い声。冬休みは期間こそ短いながらクリスマスや正月などイベントが目白押しだ。計画を持って過ごさないとすぐに終わってしまう。
自分はどんなスケジュールを組もうか、ともふらが考えていると、頼んでいたスイーツがやってきたので、まずは目の前の物を頂いてからにしようと、手を合わせて口にしていく。
「──という訳で、あさひはたくさん遊びに行こうと思ってるぞ」
「元気だなぁ…外は寒いし、わたしはコタツでずっとぬくぬくしていたい」
(みは姉に撤去される未来が見える…)
それぞれの頼んだスイーツも食べ終わり、話を再開させていく3人。
「もふらんは何をするんだ?」
「ボク? ……ぬぅ、全然決まらない」
「時間なんてあっという間に過ぎていくんだから早く決めといた方が良いぞ」
「そうは言ってもなぁ…」
うーんと悩み続けるもふら。夏休みと比べると半分以下の休み期間に真逆の季節が足を引っ張る感じで、思ったより何がしたいか浮かばずにいた。
「なんならうちと遊びに行くかー?」
「お誘いありがとうあっさー。うーん……とりあえず色々と考えてみるよ。それに──」
「それに?」
「…ううん、何でもない」
何とも言えない表情をするもふらに、まひろとあさひはお互いの顔を見合わせて首を傾げた。
(それに、そろそろ教授に相談もしておかないといけないし)
まひろとあさひに愛想笑いをしながら、大学潜入後の吾妻ちとせとの会話内容を思い返す。
それはちとせと2人きりで話していた時のこと。
『あ~もふら君、ちょっと良いかな?』
『?』
『みはりちゃんへの報告とは別に、まひろ君の学校生活で君なりに不便そうだと感じたことを私に教えてほしい。こちらも出来る限りのサポートはしておきたいからね』
『わかりました。でも、なんでみは姉を通さずに直接?』
『みはりちゃんも忙しいからね。先輩として少しぐらいは楽をさせてあげたいのさ。という訳ではい、これ番号ね。勿論プライベートなお誘いも歓迎するよぉ』
『うーん、怪しい人を誘うのはちょっと』
『そういう反応は少し悲しいなぁ…』
『心にも思ってないことを』
冬休みならば時期的にも丁度良いだろうと考え、もふらは冬休み突入前にちとせに連絡をしておこうと考えた。
もしかすると休み中に直接会って話をする可能性もあるだろう。そうなればこれにて全体の6%程の日程が埋まることになる。
(後十数回同じような日程が思い浮かべば予定が全て埋まる……これはもう決まったようなものでは?)
ポジティブ通りこしたアホな考えがもふらの頭をよぎるのだった。
案の定それ以上何も思い浮かばず頭から蒸気が出てくるまでそう時間はかからなかったもよう。まひろ・あさひ両名もビックリした顔をする。
「もふらーん!!」
「無理に考えすぎだ。一回頭冷やせ!」
まひろに促されて冷水を数杯飲み干すもふら。危うく予定を考えるだけで冬休み終了、なんて状況に陥る事になったのを反省する。
(まあ、今すべてを決める必要はないか……それよりも今は)
今は考えるよりも、この何でもないような日々を少しでも長く過ごしていたいと。そう心から思うのだった。
閲覧ありがとうございます。テスト&補習回という名のあさひとの日常回でした。あさひと一緒の時のもふらは悪ノリする事もあるのでブレーキ役は大変な目に遭う可能性あり。今回はまだマシな方。探険等に連れて行かれたら覚悟をした方が良いレベル。
ちなみに点数オール40台といってますが、これは数英以外の点数であって、数英の点は平均よりやや上ぐらいは持ってます。物覚えが悪いので全体的に暗記系で躓いてるもよう。
次回は前後編予定です。