きょうだいはおしまい!   作:虎之丞

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遅れに遅れて申し訳ありません。溜まった課題処理やら何やらに追われてここまで時間がかかってしまいました。そして前後編の癖に無駄に文字数が多いという。


しかし、体感まだ3週間ぐらいしか経過してないのに実際はもう40日ぐらい経ってるのエグい。



第13話 もふらとボーイズナイト(前編)

 冬休み。慌ただしい2学期を乗り越えた学生を癒してくれる心のオアシス。そんなめでたき長期休暇の初日にて、もふらは項垂(うなだ)れていた。

 

 

「宿題以外やることないな…」

 

 

 自室のベッドでゴロゴロしつつ、冬休みのスケジュールを何度も確認してみるも、兄の学校生活の報告と相談を兼ねた吾妻ちとせへの面会と、年明けの初詣以外の予定が特に何もなかった。

 その面会が行われる日も何故か12月24日…クリスマスイブにされており、現状クリスマスと正月以外何もないという、なんとも寂しい人生を送っているようなスケジュールになっていた。いや、二日入っているだけでもマシなのだが。

 

 

「なんでよりにもよってこの日にしたんだろう」

 

 

 報告・連絡・相談するだけだと言うのに、予定を正月やクリスマスのような一大イベント日に入れるなど普通はありえない。しばらく考えている内に、ハッと一つの推測に至った。

 

 

「──もしや暇人だと思われてる?」

 

 

 ああいうタイプはふざけてるようで意外と相手の事を分かっている節がある。揶揄い半分でやったのか自分が忙しいからやったのかは不明だが、こちらのスケジュールを把握した上で指定してきた可能性は十分にあった。

 

 

「もしそうなら、今すぐ『暇はないですけど行きます』とでも送ってみるか…?」

 

 

 まるで自分に言い聞かせるかのようにブツブツと呟きながらメッセージを入力していると、唐突にドアがノックされた。ゆっくりと開かれた後、部屋へと入って来たのは姉のみはり。もふらの姿を確認すると、手に持った小さな紙を見せながら話しかけてきた。

 

 

「もふら、いま時間空いてる?」

 

「どしたの?」

 

「おつかい頼んでも良い? ちょっと材料の買い足ししないといけなくなっちゃって」

 

「いいよ」

 

 

 なんとも良いタイミングで依頼が舞い込んできた。端から断る理由などない。もふらは心の中でガッツポーズを取りながら、ポーカーフェイスでみはりから手渡されたメモを受けとる。

 

 

「いやぁ、丁度良かった……あっ、言っとくけど暇だから引き受ける訳じゃないからね」

 

「え、急にどうしたの…? 何かあった?」

 

「ハッ…! いや、気にしないで。独り言みたいなものだからさ!」

 

 

 心配そうに伺うみはりの顔を見ていかんいかんと思いながら首を横に振り、さっきまでの思考を切り捨てて、作り笑いをしながら誤魔化した。

 

 

「随分と大きな独り言ねぇ…まあいっか。それじゃあ、おつかい宜しくね。お釣りで好きな物買ってきても良いから」

 

「はーい……好きな物か」

 

 

 暇な時間は潰せるし、好物購入も許可された。この日、もふらは内心ウキウキした状態でスーパーへと出掛けていくのだった。

 

 

 

 

 

「──しかし、特に何も思い浮かばないのだった…うーん、ボクってこんなに物欲なかったっけ。何か新しい事でも始めるべきかな」

 

 

 スーパーの中に入った段階に至っても未だに買う物が決まらずにいるのだった。しばらく唸るも何も決まらないので、とりあえず先に頼まれたものを片付けようとメモに書かれた内容を改めて確認する。そこに書かれてある品を口に出しながら目的の物がある場所まで歩いていった。

 

 

「ひき肉に玉ねぎ、それに卵とパン粉……ハンバーグかな? それにしてもなんだか量が多い」

 

 

 メモに書いてある内容こそ普通だが、妙に数だけが多かった。普段の倍…ざっと5~6人分ぐらいの量はある。

 

 

「…もしかして姉御とつっきーがこっちに来るのかな。みは姉、なんで伝えてくれなかったんだろ?」

 

 

 姉の対応に疑問を感じつつも黙々と作業をこなしていく。そして結局、最後まで買いたい物は思いつかなかったので、とりあえず無難にコーラとポテチを買って終了するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー……ん?」

 

 

 買い物から帰って来るや否や、玄関に置かれてある靴の多さに目が止まる。姉達の靴とは違う物が三足。誰か来る事は予想の内に入ってはいたが、3人も来るのはもふらにとっては予想外のことであった。

 

 

「…あ~、なるほど。そう言うことか」

 

 

 しかし、少し考えた後にピーンと答えが浮かびあがる。人数を念頭に入れて考えれば別の予想などすぐに出てくる。

 3人と言う事は兄の友人であるあの3人組である事はほぼ間違いない。そして冬休み初日に何をしに来たかと言えば、答えはおそらく勉強会──と言うより宿題処理がメインだと考えた。宿題の処理速度は人によって違う。ならば皆で一緒に取り組むなら何時が良いかと言えば、間違いなく初日が良いだろう。始まったばかり故に、まだ誰も取り組んでいないのだから。

 

 おおよその見当がついてスッキリし、もふらはリビングへと続く扉をゆっくりと開けていく。

 

 

「おっ、もふらんだ」

 

「「こんにちはー」」

 

「いらっしゃい……って、あれ? 勉強会じゃない…?」

 

 

 中にいたのはまひろやみはりだけでなく、もみじ・あさひ・みよの3人が一緒にリビングでゆったりと寛いでいた。メンバーこそ予想した通りではあったものの、予想外な事にテーブルの上に教科書の類いは一切乗っておらず、それどころかテレビゲームの準備をしているのが目に入り、もふらは思わず首を傾げた。

 

 

「今日はお泊まり会に来たんだぞ」

 

「まひろちゃんから誘われて来たんだけど…もしかして聞いてなかった?」

 

「あ~、お泊まり会……なるほどね、完全に理解した。と言う訳で──」

 

 

 もみじ達からの説明を聞き、うんうんと頷くもふら。理解はした。したのだが、一つ気になる事が出来たのでみはりの下まで近づいてこっそりと耳打ちをする。

 

 

「大丈夫? お泊まり会ってことは、3人ともまひ兄と一緒の部屋で寝ることになるけど…」

 

「まあ大丈夫でしょ。お兄ちゃん人畜無害だし」

 

「…たしかに」

 

 

 こそこそと話しつつ、まひろの方をチラリと見ながら納得するもふら。それに対して何を話してるんだ、とでも言いたげな訝しんだ視線を返すまひろ。

 それを見て何でもないでーす、とでも言ってるかのように小さく笑顔を返した後、みはりはエプロンを着用していく。

 

 

「それじゃあお姉ちゃんは今から料理の準備をするので、皆はゆっくり遊んでてね」

 

「「「はーい」」」

 

「6人分はさすがに大変でしょ。ボクも手伝うよ」

 

「あら、ありがとう」

 

 

 さっと手早くエプロンを受け取り、準備を始めていくもふら。その様子を見たもみじは驚愕の表情を浮かべながらみはりへと問い詰める。

 

 

「えっ、もふら君も!? …それって、大丈夫なんですか…?」

 

「せめてボクに聞こえないように言おうか?」

 

 

 みはりにコッソリ──ではなく、割と離れた距離から堂々と質問していくもみじへツッコミを入れる。それを見て苦笑しながらみはりは弟の腕前の説明…もとい弁明を始めていく。

 

 

「もみじちゃんももふらの料理の被害者だからその心配は分かるかな。でも安心して。指示通りに動くなら問題ないし、私もきちんと見ておくから」

 

「それに、今回はメモもあるからね」

 

 

 みはりお手製のメモが書かれた紙を片手にグッとサムズアップをするもふら。2人の説明を聞いてもみじはホッと一息ついた。

 

 

「しかし、つっきーも心配性だなぁ。レシピ見ながらやれば失敗なんてしないと思うけど…」

 

 

「あの失敗の数々だって、大体は自分の頭に叩き込む為のものだし」ともふらは付け加える。

 

 

「うん、そうだね。それだったら失敗しないよね普通は…」

 

「……つっきー?」

 

 

 なんだか少し遠い目をしてるもみじを見て不思議に思うもふら。視線の先がみよの方を向いてる気がするのは気のせいだろうか。そのみよは、もみじの視線に気づくと小首を傾げながら見返しているが。

 

 

(うーん…もしかしたら前のアレが相当キツかったのかもしれないな。後で謝っておかないと)

 

 

 トラウマになっている可能性を鑑みて後のケアを考えつつ、みはりの手伝いを開始していく。初めはもみじやみよも手伝おうとしていたが、お客さんなのでまひろ達と一緒にゲームをするように促した。特にみよは他の3人に何故か必死に止められていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ハカセは料理上手いな~~」

 

「博士じゃないってば…」

 

「ははは」

 

 

 そして夕食。手伝いの甲斐もあってか、思ったよりも早く全員分の料理が完成し、現在歓談しながらゆっくりと食べ進めていた。

 

 

「あとでレシピ聞こっと♪」

 

「ほどほどにね……」

 

「…そろそろレパートリー増やしたいなぁ。料理をするのは結構好きなんだけど中々覚えられないんだよねぇ…」

 

 

 上手く行かない事に対して、もふらは1つため息を吐いた。楽しい食事時間中にため息は良くないと思ってはいるが、前回のオムレツ以来覚えた物が1つも無いとなると中々辛くもなるものだ。

 そんなもふらに対して、みよはある一点が気になり質問してきた。

 

 

「あら、緒山君も料理好きなの?」

 

「そうだけど…も、って事は室崎さんも? へぇ、奇遇」

 

「うん、そうなの。昔からよく作ってて──そうだ! 今度みんなで一緒に家に来ない? 大勢でお料理教室とか一度やってみたかったんだ~~」

 

「「「!?」」」

 

 

 いきなり訪れるみよからの提案──もとい命の危機に背筋が凍り、思わず手に持ったフォークが止まるまひろ・もみじ・あさひの3名。

 そんな彼女の殺人的料理の腕前を知らないみはりともふらは、3人の様子が変わったことに特に気がつくことなく話しを進めていく。

 

 

「もちろん緒山君も一緒にね♪」

 

「お料理教室か……良いの? ボク初めてのやつだとかなり失敗するけど」

 

「大丈夫。失敗しても楽しく作るのが醍醐味だから」

 

「良かったじゃないもふら。女の子からのお誘いなんて滅多にないことよ?」

 

「うーん…」

 

 

 しばらく思考するもふら。みはりの言う事はもっともではあるのだが、自分の失敗料理は食べた人を失神させてしまう恐れがあるというのを忘れてはいけない。辛い物好きな緒山もふら本人ですら気絶するような激辛の赤き物体が時折出てくる事を考えるとリスクがデカい。

 

 しかし、このまま手をこまねいていても何も変わらないのは事実。もふらは覚悟を決めて決断をした。

 

 

「──うん。わかった、やろう! その時は宜しくお願いします」

 

 

 明るい表情でそう答えるもふらだったが、少しするとやましい事でもあるかのように視線を逸らしながら続けて話した。

 

 

「……あとなるべくマグマにならないように気をつけるね。なっちゃったら責任持ってきちんと完食するから」

 

「マグマ?」

 

「後で説明するね…」

 

 

 料理の話をしている筈が、急におかしな単語が飛んできて不思議に思うみよに対して、もふらは少々気が重そうな表情でそう返すのだった。

 

 

「…どうする?」

 

「どうしよう…」

 

 

 会話に入るタイミングをうっかり逃してしまい、誘いを断るのを逃してしまったまひろ達はこの危機をどう乗り越えるかしばらく悩む事になるのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

(──しかし、お泊まり会か)

 

 

 食後の皿洗いをまひろがゲームの罰ゲームで実行している為、急に手持ち無沙汰になったもふらは先にお風呂に入りながら、ふと物思いに耽っていた。

 

 

(思えば友達になってから、こういう事って一度もしたこと無いなぁ…)

 

 

 頭に浮かぶは学内でも学外でもよく話す男子2人の姿。彼らとお泊まり会をした時の想像をした。今日と同じ事をする──うん、楽しい。買ったコーラとポテチを使って部屋でパーティーをする──絶対楽しい。これ以上想像するのは時間が惜しいので、もふらはうんうんと頷いて想像を中断する。

 

 正直に言うなら彼らと腹を割って話したり遊んだりしてみたいのが本音だ。しかし、これはあくまで自分の我儘。2人が付き合う義理はないし、実際は思ったより楽しくないかもしれない。しかしそれでも、もふらは一度やってみたいと思った。

 

 

(どうせダメで元々なんだ。聞くだけ聞いてみよう)

 

 

 風呂から上がると、スマホを取り出して急いで2人にメッセージを送りだす。

 

 

『ゆう、みな。2人とも暇な日ってある? お泊まり会をやってみたいと思うんだけどどうかな?』

 

 

 誤字脱字のないように丁寧に打ち込んだのを確認し、返事が来るまでの間にみはりと皿洗いの終わったまひろに風呂が空いた事を伝えた。

 

 

 

 

 

 

『良いと思う』

 

『悪い。俺ん家、もうすぐ叔父さん達が泊まりに来るから、こっちに泊めるのは暫く無理そうだ。どっちかの家に泊まりに行く分には平気だと思うけど』

 

『こっちは聞いてみないと何とも。もふらは?』

 

 

 メッセージを送りだしてからしばらくして。自室に戻って物の整理をしている最中、2人からの返信がやって来た。ふむふむ、と思案しながら返事を打ち込んでいく。

 

 

『まだ。すぐに聞いてみるね』

 

 

 返事を送信し、もふらはみはりの部屋へと向かう。緒山家(こちら)に泊める事になるのであれば、姉の許可が必要になる。もし、みなとの家が駄目になった場合、ここが最後の砦になるのだ。何としてでも作戦を成功させなければならない。

 

「責任重大だ…」と呟きながら気合いを入れ直し、気持ち新たにみはりの部屋のドアを開けた。

 

 

「みは姉──」

 

「あら、丁度良かった。今から皆のお布団の準備するから手伝ってもらえる?」

 

「あ、はい」

 

 

 入って早々に手伝いの要求をされ、あっさりと出鼻を挫かれることとなった。

 

 

 

 

 

「──それでまひ兄、みは姉。その…近日友達とお泊まり会してみようと思ってるんだけど、良いかな?」

 

 

 まひろの部屋に3人分の布団を運び終え、もふらは改めて用件を伝えた。経過した時間のわりに兄と姉両名が既にお風呂から上がってパジャマに着替えているのが少し気になったりもするが、今は気にしないでおくことにした。

 

 

「もしかして、お兄ちゃん達の姿を見て羨ましくなっちゃったり?」

 

「そんなこと……あるかもしれない」

 

「ちなみに相手ってあの2人か?」

 

 

 ゆうたとみなとの2人の姿を思い浮かべながら質問してくるまひろに対し、もふらは軽く頷く。

 

 

「うん。泊まりに行くのかこっちに泊めるのかもまだ決まってないけど、とりあえず先に伝えておこうと思って」

 

「うん、そっか。もふらが遂にお友達と…」

 

 

 詳しい話を聞いてみはりは喜びの笑顔を見せていたのだが、やがてその瞳に一筋の涙が浮かび上がる。

 

 

「うぅ…本当に、良かったね…もふら」

 

「…みは姉、泣いてるの?」

 

「ホントすぐ泣くなぁみはりは…」

 

「いやすぐって……そんな泣き虫じゃないでしょ。前に見たのも結構昔だったよ?」

 

 

 自身の知る姉の姿とはかけ離れた事を言うまひろの発言をにもふらは訝しんだ。そのもふらが返した発言を聞き、まひろもまた疑問に思う表情を浮かべる。

 

 

「…ん? 何言ってるんだ? 今だってオレが自宅警備員らしからぬ行動する度しょっちゅう──」

 

「あ、あ~ッ! そうだもふら、今晩寒くなるみたいだし追加で毛布持ってきてもらえない?」

 

「え、そんなに必要──」

 

「いいから!!」

 

「あ、はい」

 

 

 みはりの気迫に押される形で、もふらは急いで部屋を後にした。

 

 

「──お兄ちゃん…」

 

「え、なんで怒ってんの…?」

 

「怒ってない…!!」

 

「何処がだッ!?」

 

 

 部屋を出てすぐにそんな会話が聞こえてきたので、これ以上の詮索はしないようにしようと、もふらは心に決めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

『──と言う訳でこっちはお泊まりOKになったよ』

 

 

 布団の準備も完了し、リビングで1人ゆっくりしながら2人にメッセージを送るもふら。すぐにみなとからもメッセージが送られた。

 

 

『こっちはゆうたと同じで近日親戚が帰郷してくるみたい。正月明けまで難しいかも』

 

『それじゃあこの日、ボクん家の前で集合ということで』

 

 

 そう送ると、すぐに了承の意味を込めたスタンプが2人から返された。おやすみスタンプを送り、携帯を閉じてすぐ、当日何をして遊ぼうかと思いついたものを一つ一つメモしていく。

 

 

「さて、明日から部屋の整理整頓しとかないとな…」

 

 

 そう呟きながらゆっくりと自室へ戻っていくもふら。しかし、部屋に入るとそこで思いがけないものを目にした。

 

 

「……ん?」

 

 

 自分の部屋のクローゼット前にいる謎の黄緑色の物体にもふらの視線は釘付けになった。少し前まではなかった明らかにおかしいそれに、もふらは警戒しながらゆっくりと近づいていく。

 

 

「なんだろこれ……仮面怪獣?」

 

 

 ある程度まで近づいてみて分かったそれはアニメや映画にでも出てきそうな黄緑色の二足歩行の生物に変なお面が付いてるという、何ともチグハグな印象を与える姿だった。もう少し詳しく調べる為に触れようとしたが、ふと一つの考えが頭に過った。

 

 

(あれ、こんなに近づいてって大丈夫かな? 何か致命的な見落としがあるような…)

 

 

 その考えは正しかったようで、その時事件は起こった。仮面の目の部分が怪しく光り出すと、その怪獣の手足が急にゆっくりと動き出したのだった。

 

 

「ぬわぁ~~ッ!! 動いた~~ッ!?」

 

「がお~~ん」

 

「──って、なんだあっさーか」

 

「バレちった。でもドッキリ成功だぞ!」

 

 

 仮面を外すあさひ。すぐに正体が見破られたことを残念そうにするも、脅かしには成功したのですぐに笑顔に切り替えて勝利のカニピースをする。

 

 

「…んん? なんかその格好、何処かで見覚えがあるような…?」

 

「……?」

 

 

もふらの怪訝な目を向けながらの呟きに、あさひは小首を傾げて聞くのだった。

 

 

「いやそれよりも、何でボクの部屋に来てるのさ?」

 

「ふっふっふ、聞いて驚けもふらん。実はやさがしに来た!」

 

「当人の前で言う事じゃない! って待って、本当に開けないで! と言うかパワー凄いなこの子、全然動き止まんないんだけど!」

 

 

 もふらは後ろから羽交い締めにして止めようとするも、その必死の抵抗虚しく、あさひは引き出し・本棚・ベッドとドンドン勝手に部屋を調べていく。そしてその締めとしてクローゼットを開けようと手にかける。

 

 

「最後は~、ここだ!」

 

「わ~ッ! 待って待って。そこはダメ! 絶対にダメぇ~~ッ!」

 

 

 その禁断の(そうでもない)扉が開かれると同時、背後から1つの影が這いよってきた。2人が気づく前にその影はあさひに向かって伸び──

 

 

「コラあさひ!」

 

「あべし」

 

 

 怒りの声とともに頭にチョップをかますのであった。影の主は勿論穂月もみじだ。衝撃で頭を抱えながら膝から崩れ落ちるあさひを呆れた表情で眺めながら、もみじは問い詰めていく。

 

 

「部屋に来ないと思ったら何してるの? まったくもう…」

 

「ありがとうごぜーます。このご恩は決して忘れませぬ」

 

「大袈裟すぎない…?」

 

 

 神仏を拝むかのように両手を合わせてお礼を言うもふらのオーバーリアクションぶりに、もみじは少々困惑した表情になった。

 

 

「…それよりあさひが邪魔しちゃってごめんね。今度は脱走しないよう気をつけておくから」

 

(扱いがペットと同じそれだ)

 

 

 あさひの背から手をまわして引きずるように移動させるもみじ。その光景がまるで犬を抱き抱える飼い主のように映ってしまい、もふらは思わず苦笑してしまうのだった。

 

 

「ほら行くよ!」

 

「うわらば」

 

「それじゃあおやすみもふら君」

 

「またな~」

 

 

 手を振って2人の姿を見送った後、ふぅ…と一息吐いてからクローゼットの方を見やる。中身に変化は特にないようだ。置物怪獣になる前に開けていたという訳ではないようで一安心する。

 

 

「──中、見られちゃったかな…?」

 

 

 少々恥ずかしそうな顔をしながら、もふらはクローゼット内にあるむき出しのそれらを整理していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 一方、まひろの部屋へと戻る最中のもみじとあさひは先ほどの状況の反省をしていたのだった。

 

 

「もう、勝手に中に入っちゃ駄目でしょ」

 

「いやぁ~、ごめんごめん。つい体が動いちゃってな~」

 

「ついじゃないよ…もふら君も勝手に部屋を見られるの嫌だろうし、それに男の子なんだからもしかしたらお兄さんの──ゴニョゴニョ……な本とか、あるかもだし…」

 

 

 そう呟くもみじはまひろの部屋に置いてあった18歳未満は禁止な本の中身を思い浮かべてしまい、顔が赤くなっていく。そんなもみじの様子が気になったのかなってないのか、あさひは疑問符を浮かべながら質問する。

 

 

「本? 何の本なんだ?」

 

「あ、あさひにはまだ早いから…!」

 

「???」

 

 

 必死に止めてくるもみじの姿に余計困惑するあさひ。同い年どころかあさひの方が誕生日が早い分、むしろ早いという理由がよくわからないでいるのだった。

 

 

「よく分かんないけど本なんて無かったぞ?」

 

「それなら良かった──じゃない! えぇっ、見ちゃったの?」

 

「何か紙がいっぱい入ってた」

 

「しかもがっつり見てるし…後でもふら君に謝っておかないと」

 

「大変だな~」

 

「あさひのせいなんだけど…? まあ、今に始まったことじゃないんだけどさ」

 

 

 はぁ…ともみじはため息を吐いた。やってしまったものは仕方ないがもう少し落ち着いてほしいところだと思うのだった。

 

 

「それにしてもなんでクローゼットの中にそんなに紙が?」

 

「さあ? なんか字がいっぱい書いてあったからすぐに読むの止めたぞ」

 

「うーん…ちょっと気になるけどもう遅いし、今はとりあえずまひろちゃんの部屋に戻らないと。明日はちゃんと謝るんだよ?」

 

「はーい」

 

 

 そんな会話をしてから、2人はまひろの部屋へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 そして翌日。

 

 

「ごめんな~、もふらん」

 

「???」

 

 

 遅れて起床してきたあさひから開口一番に謝られて、もふらは大層困惑した。理由は恐らく昨晩のやさがしの事なのだろうが、既に解決した事で何故今謝りに来たのか分からないでいた。ただひたすらに困惑していると、もみじがやって来て詳しい説明をしてくれた。

 

 

「あ~、なるほどね。やっぱり中見ちゃってたのか」

 

「でも内容までは見てない」

 

 

 何故か自慢気に笑顔でVサインならぬカニサインをするあさひに困惑するもふら。

 

 

「何でピース…? まあ、どうせ見られたなら言っても良いか。あれ、中身は全部メモだよ」

 

「メモ?」

 

「ボクって物覚え悪いからさ。昔はああやってメモしておかないと結構すぐに忘れちゃってたんだ。ただ、感想も交えながら書いてるからあまり見られたくなくてね」

 

 

 照れくさそうに目線を逸らしながらもふらはそう言い、その後かつてを懐かしむような顔をして続けていく。

 

 

「最近はだいぶ良くなってきたから書く回数も減ったけど、小学生三年の頃は凄い量書いてたっけなぁ…」

 

「三年の頃というと…ちょうど私達とも出会ってた時だっけ」

 

「何か良いことでもあったのか~?」

 

「はは…何だろうね」

 

 

 何かを誤魔化すかのように、もふらは軽く笑う。その様子に2人は疑問符を浮かべながらお互いの顔を見合わせる。

 

 

(…皆といる間はずっとメモの数は増えていくんだろうなぁ。これからも、そしてこの先もきっと)

 

 

 目の前の2人を、そしてこの場にいない皆の姿を浮かべながら、もふらは思いを馳せるのだった。

 それとメモ用紙の予備も買っておかねばと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 

 

「いらっしゃい、2人とも」

 

「お、おう」

 

「お、お邪魔します」

 

 

 もふらに案内され、少し緊張した面持ちで緒山家の玄関をくぐるゆうたとみなとの2人。

 もふらから事前に送られたメッセージによると、彼の姉と妹は知人の家に泊まりに行ってるとの事で、現在この家には男だけしかいないらしい。大人も異性もいないこの状況は2人にとって羽目を外すチャンスでもあるのだが、緒山もふらの妹ことまひろが暮らしていた家に泊まるという前代未聞の事態は改めて考えると、とんでもない事なのではないかと思い、どうにも緊張が隠せずにいた。

 

 

「緊張するにはまだ早いよ2人とも…」

 

「し、してねーし!」

 

「そうそう! ……まだ?」

 

 

 気になる単語を発したもふらを疑問に思うみなと。これから先は遊んで談笑するのが殆どだ。ここから先に緊張するような要素など何かあるのだろうかと思っていると、その考えを察するかのようにもふらは先に口を開いた。

 

 

「えっとね……実は──」

 

「やあやあ、いらっしゃい!」

 

「「!?」」

 

 

 少し言い辛そうにしながら口を開いたもふらの言葉を遮るように上機嫌な声とともに現れたのは、知人の家に泊まりに行っていると言われていた緒山まひろその人だった。

 

 

「お、緒山!?」

 

「な、何で…!?」

 

「一つずつ言うね…姉のみはりが大学で緊急の手伝いを要求されました。大事な案件だった為、知人の家でのお泊まりは中止になりました。姉はその大学の人の家に泊まる事になりました。妹のまひろが残されました。以上です」

 

 

 簡単にまとめて説明するもふらは言葉とは裏腹に気まずい雰囲気を醸し出している。予定が崩れたのもそうだが、同じクラスの女子がいるという状況が自分たちに気を使わせてしまうというのも考えているのだろう。

 

 

「おいおい、紹介が雑だぞもふら。まあ、とにかくゆっくりして行きなって。今日は叱ってくる相手もいないんだし、パーッと羽目を外すぞ~?」

 

「どうしよこれ…」

 

 

 その叱ってくる相手というのが関係しているのか、やけに上機嫌なまひろと予定が色々と狂って落ち込んでいるもふらを、2人はしばらく呆然と眺めていたのだった。

 

 

 




閲覧ありがとうございます。タイトル回収に入るまでが長すぎる前編でした。そして何気にみよちゃんとの直接の会話は初めてだったりする回。


後編はドキッ★男だらけのお泊まり会です。期待せずお待ちを。

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