きょうだいはおしまい!   作:虎之丞

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お久しぶりです。遅れに遅れて遅れすぎました申し訳ありません。気づけばもう4ヶ月という…誰か時間を100倍ぐらい伸ばしてください。

今回色々書いてたらごちゃって何書きたいのかわからなくなってしまったのでとりあえずで公開しています。メモしてる内容が2文しか入ってないせいでこうなったのですけれども……とりあえずいつになるかはわかりませんが、後ほど修正予定です。テキトーに見てってください。いやマジで。
それと今回からおまけシーンや、場面切り替え、時間経過等に───を挟んでおります。


忘れてる方へのこれまでのあらすじ。

緒山家の次男であるもふらは兄の真尋が引きこもりのダメニートと化した事に心を痛め、友人と遊ぶこともせず自戒する日々を過ごしていた。
ある日、姉のみはりの手により女の子と化した兄。初めは姉の計画に懐疑的だったもふらだったが、姉の想いに触れ、兄が少しずつ昔みたいに話すようになってからは、もう周囲に嘘を吐く必要はないのではないかと思い悩む。その後、友人への告白、元に戻りかけていた兄の選んだ道を経て、もふらは今の自分を変える道を選んでいくことにした。
そして訪れる新たな生活、新たな出会い。もふらの日常は新たな展開を迎える。

時はクリスマスイヴ。みはりの指導教員である吾妻ちとせへ兄の学校生活の報告をしに来たもふらは、彼女から大学まで道案内をしてくれた少女──天川なゆたの紹介をされることに。自己紹介の後、これから仲良くなるという意味も込めて彼女へぴったりなあだ名を付けるもふら。そんなこんなで報告も終わり、やることを全て終えたもふらだったが、何故か揶揄い半分な表情でちとせにデートへ誘われることとなる。


───前回のおまけ───


「うーむぅ…」

「どしたの?」

「その…ぼくもあだ名で呼んだ方が良いのかと思いまして…」

「ふむ…あだ名か。うん、良いと思うよ。なんて呼ぶ?」

「改めて言われると…あだ名あだ名…うむぅ…うむむぅ……もふら補佐?」

「はは…補佐か。そういうのも良いかもね。でもとりあえずは普通に名前で呼んどこっか。役職も被っちゃってるし」

(笑顔でやんわりと却下されたのです…!)




第15.5話 もふらとクリスマスデート?

「ところでなんですが」

 

「うん?」

 

「いま何処へ向かっているので?」

 

 

 なゆたへの愛称付けが決まった後、ゆっくりと…しかし一切の迷いなく歩いていくちとせの後ろで、もふらはそう呟いた。

 なゆたと手を繋ぎながら先導する教授曰く「デートだよデート♪」とのことだが、もふら自身デートなど一度もしたことがないし、そもそも自分の事を何故か揶揄ってくるあの吾妻ちとせが相手だ。いったい何をする──いや、やらかしてくるのか皆目見当もつかないでいた。

 

 

「映画館だねぇ」

 

「へ~、映画館。入るの久しぶりだなぁ……って、えぇっ!?」

 

「なにかな? その反応は」

 

「いえ、なんと言うかその…教授にしてはまともな選択だったことに驚いてしまったと言いますか……」

 

「よ~く考えてから絞り出した言葉なんだろうけど普通に失礼だゾ」

 

 

 少し言いづらそうにもごもごしながら言葉を発するもふらに対して、ちとせはそう返すのだった。

 

 

──────

 

───

 

 

「ところでなんですが」

 

「…また?」

 

 

 映画館へと足を踏み入れた途端、もふらは先程と同じ言葉を口にした。ちとせの返しを聞き入れつつも、同じように質問していく。

 

 

「いまから観る映画ってどんなやつなので?」

 

「そういえば言ってなかったっけ。え~と…なんてタイトルだったかな」

 

「何で誘った本人が忘れてるんですか…」

 

「あちらなのです」

 

 

 ちとせの発言に困惑していると、なゆたが壁に展示されている1つの作品を指さした。

 

 

「ああ、あれか~。ありがとねぇ、なゆちゃん」

 

「おねーさんの“助手”なので! このぐらいの事ならどんと来いなのです」

 

「あ、そこもちゃんと引っ張るんだね…」

 

 

 褒められたのが嬉しかったのか、胸を張って得意気な表情を作るなゆたの姿に、ちとせは少々呆気に取られた表情をする。あだ名というのを付けられたことがなかったからなのか、それとも単に『助手』という単語が気に入っているだけなのか、気に入りようがなんだか凄かった。

 

 

「さすがは助手。どれどれ、タイトルは──」

 

 

 そんななゆたの指した先にある壁に展示された作品に近づいて行くもふら。そこに書かれてあったのは──

 

 

【コマンダースの犬】

 

 

 デカデカと書かれたタイトルの背景には銃器を持った二足歩行の謎の犬が、全身黒タイツとニコちゃんマークの仮面を着けた謎の兵士っぽい何かの集団に突撃しているという謎じみた一枚が描かれている。

 あらすじを見てみると、二足歩行犬が相棒の人型ロボ傭兵と共にあらゆる戦場を駆け抜けてく愛と希望をテーマにした作品と書かれていた。映像の一部を切り出した静止画が数枚隅に載っているが、どう見てもテーマの割に灰と絶望に満ちていそうな内容にしか見えない。

 

 

「………」

 

 

 あまりの内容に目を疑い、しばらく放心したように眺めていたが、やがて正気に戻り心内で感想を呟く。

 

 

(……なに……これ……?)

 

 

 どう見てもカオスな展開にしかならなさそうな見た目と内容に、心の中ですらうまく言葉が出てこないでいた。

 

 

 

「どうでしょうか?」

 

「……へ?」

 

 

 どう反応すれば良いのかわからないでいるところに、続いてやって来たなゆたからの予想外の質問に驚き、もふらは少し遅れて反応を返す。

 

 

「映画館は初めてだったので、ぼくなりに厳選して一番オススメ出来そうな作品を選んでみたのですが…」

 

「いや助手が選んだのこれぇっ!?」

 

 

 あまりにもアレな作品が出てきたのも驚きだが、それ以上にこの何処となくミステリアスな雰囲気を漂わせていた少女がコレを、厳選して、オススメと口にしたことに驚きが隠せないでいた。もふら自身センスがある方だとは思ってはいないが、コレを知り合って間もない相手に勧める度胸はさすがにない。

 

 

「……? そうですが」

 

「いや…あのね、なゆさん。とても言いにくい事なんだけどこの作品たぶん──ヒエッ…!」

 

 

 なゆたのセンスに困惑しながら、この明らかにヤバいかつまらないかの二択しかなさそうなB級どころかC級レベルにしか見えない作品を見る事へのリスクを説明しようとするもふらだったが、そのなゆたの後ろから笑顔を見せるちとせの姿を見て言葉が止まる。その目が明らかに笑っていなかったからだ。

 

 

「(もふら君…これはなゆちゃんが懸命に選んだ作品だ。逃げることは許されないよ?)」

 

 

 口は動いていないのに、もふらの耳に何故かそんな言葉が飛んできたような気がした。これ以上喋るのはいけないと判断したもふらは即座に中断して口ごもる。無言の圧をかけるちとせの姿が見えていないなゆたは、突如動きの止まったもふらの姿に困惑し恐る恐ると言った様子で口を開く。

 

 

「……あの?」

 

「ハッ…! あ、あぁ~! うん、そうそう! この作品たぶん凄く面白いことになると思うから楽しみだよ~。って言おうとしてたんだ~!!」

 

「……! それは良かったです! 時間をかけて選んだかいがあったのです!」

 

 

 明らかに誤魔化す為の取り繕ったような口調でもふらは言っていたのだが、それよりも楽しみだと言ってくれたことが良かったのか、なゆたは嬉しそうな表情でそう返した。

 

 

「…はぁ、何とか誤魔化せた」

 

「いや、ごめんねぇ。さすがに教える訳にはいかなくてさ」

 

 

 喜ぶなゆたを傍目に一息吐いたもふら。そのそばに寄ってきたちとせは小さな声でこっそり話しかけてきた。なゆたに聞かれるのを考慮して、もふらも小さな声で話す。

 

 

「…と言うか何で止めてあげなかったんですか。普通の人なら見た瞬間に言葉失いますよコレ」

 

「なゆちゃんが選ぶって言ってくれたからつい♪」

 

「いや、つい♪て…」

 

 

 少々ふざけた様子でウィンク&サムズアップをするちとせ。突然の親バカならぬ姉バカ? 発言に呆れるもふらだったが、過ぎた事を気にしても始まらないので切り換えることにした。

 

 

「まあ、せっかく誘ってくれた映画ですし見ないのも勿体ないですからね…ちなみに興味本位なんですが厳選ってどれだけの時間かけてました?」

 

「うーん…ずっと見てたわけじゃないから正確にはわからないけど、少なくとも3時間ぐらいはやってたかも」

 

「…なんですと?」

 

 

 予想を遥かに超えた時間が飛んできて少々固まっていたもふらは、これは集中して一つの場面も見逃すことなく見なければならないと思い、頬を軽く叩いて気合いを入れた。

 

 

「…よし、ボクも覚悟を決めて見ます! 何か面白いところがあるかもしれませんしね。虎穴に入らずんば虎子を得ずってやつです」

 

「ナチュラルにリスク扱いはやめたげなさい」

 

(それに見方を変えればこの作品も未知なる世界。ボクにはもってこいの領域だ。そう考えてしまえば、もう何も恐くない…!)

 

 

 一種の暗示のようなものを自身にかけながら席へと向かうもふら。

 何故か異様に燃えているもふらの後ろ姿を見たなゆたは不思議に思いつつ、ちとせと手を繋ぎながら続けて席へと歩いていく。

 

 

「もふらは何故あんなに気合いが入っているのです?」

 

「えーと…ああ、そうそう。楽しみだって言ってたからねぇ。今か今かと待ちきれないんだろうさ。気にせず私達は普段通りに見ようか」

 

「ふむぅ…?」

 

 

 ちとせの(てきと~な)発言を聞き入れつつ、なゆたはそういうものなのかと納得させながらそう呟くのだった。

 

 

──────

 

───

 

 

 映画上映が終了し、建物から出た3人はゆっくりと街中を歩いていく。

 

 

(ボクは…無力だ……)

 

 

 先刻の気合いむなしく、もふらは真っ白に燃え尽き、意気消沈してしまっていた。

 

 

(なんかどんどん新しい情報が無駄に入って来るせいで情報の処理が完結しないし、何故か内容はまるで頭に入ってこないし…当然のように客席はほとんど空いてたし、ちょくちょく映像の隅に指のようもの映ってたし、途中から登場人物が殆どCGになってたし色々とんでもない作品だったな…)

 

 

 頭の中をぐるぐるさせながら、なんとか映画の整理をしていくものの、どれだけ時間が経っても本来の内容だけは何故か頭に残ってくれなかった。感想聞かれたらどう答えようか等と考えたりもしたが、正直誰にもわからない作品の感想など詳しく聞くわけがないだろうと思い、すぐに切り替えた。

 

 

(正直世間一般的に駄作と言っても差し支えない作品。でも…なんだろう、この不思議と悪くない感じ……とりあえず後日もう一回見てこの感覚を確認して──)

 

 

 この日、もふらは変な作品(クソ映画)に魅了された。

 

 1人思考の海を泳いでいるもふらを他所に、ちとせとなゆたは映画鑑賞前と変わらず仲良く手を繋ぎつつ、何となしに映画について話し合う。

 

 

「なゆちゃん。映画、どうだった?」

 

「さっぱりわからなかったのです」

 

「だよねぇ…」

 

「よくわからなかったですが…でも、なんだか面白かったのです」

 

「ふふ、それは良かった」

 

 

 笑顔でそう言うなゆたの姿に釣られるかのように、ちとせも笑顔で答えるのだった。

 

 

 

 そんな幸先の良い? スタートを切った一行は続けてカラオケ、バッティングセンター、大型ショッピングモール、へとやって来て思い思いの時間を過ごしていく。

 

 

──────

 

───

 

 

 ショッピングモールの一角。色んな店を見て回った後に、ちとせは休憩用のイスに座って一息吐く。その様子を見て心配したなゆたは急いで近くの自販機に飲み物を買いに行った。

 

 

「つ、疲れた…」

 

「これだけ歩けばそうなるでしょうね。元々徹夜明けなのもありますし」

 

「もふら君はまだまだ元気そうだねぇ…」

 

 

 疲れた顔をするちとせに対し、もふらは平然とした様子をしながら自身が作った特製ドリンクを一杯飲みほす。

 

 

「ぬっ、まだ温かい……うーん…元気ねぇ。これでも体力測定は男子の平均よりは下だったんですけども」

 

「へ~、それで平均以下。若さっていいねぇ…その体力が羨ましい限りだ」

 

「教授もまだ若いでしょうに」

 

「お待たせしたのです」

 

 

 軽い談笑をしていると飲み物を買いに行ってたなゆたが戻ってきた。持っているエナジードリンクらしき飲み物を受けとったちとせは、一気にぐいっと飲み干す。

 

 

「くぅ~~っ…効く~~っ!」

 

(お酒入ってる…?)

 

 

 実はヤバいものでも入っているのだろうかと、もふらはそのドリンクに少し警戒をするのだった。

 

 

───

 

 

「…それにしても、ここまで本格的にお出かけすることになるとは思いもよらなかったなぁ」

 

 

 今日これまでの道程を思い返し、もふらは苦笑しながらそう呟いた。時刻は既に午後の4時中頃となっている。予めみはりに帰りは遅くなるかもしれないとメッセージを送っていたので特に問題はないのだが、それにしても予想より長いお出かけだ。

 知り合ってからそれほどの時は経っていないが、吾妻ちとせが中学生の子供を意味もなく長時間付き合わせるタイプじゃない事はもふらにも何となくわかっている。何かあるのだろうとは思うが、今聞いておくべきか悩んでいると。

 

 

「すみません、その…お手洗いに」

 

 

 なゆたが手を挙げて恐る恐るといった様子でそう言ってきた。

 

 

「ああうん、行ってらっしゃい。場所は分かる?」

 

「大丈夫なのです」

 

 

 返事をすると、真っ直ぐに目的地へと向かっていくなゆたを見送りながら、ちとせはおもむろに口を開く。

 

 

「…女の子の考えはちゃんと察してあげないとダメだよもふら君」

 

「えっ、これボクが悪いんですか?」

 

「人前で女の子にあの発言を言わせるのはNG行為だ。きちんと覚えておきなさい」

 

「なんと…肝に銘じておきます」

 

「よしよし。さて、それじゃあ今のうちに君の疑問にでも答えておこうかな。何から聞きたい?」

 

 

 ちとせの発した言葉に驚くもふら。うっかり顔に出てしまっていただろうかと思ったのだが、発言相手の表情を見ると、相手も何だか少々驚嘆している。どうやら当てずっぽうで言ったみたいだ。

 何で勘でそんな発言をしたのか、等と言いたい事は色々あるが、とりあえず当初の質問をすることにした。

 

 

「コホン…今回のお出かけ、正直楽しいんですけど教授の目的が見えてきません。一体どういった考えで今回の計画を?」

 

「ん~…今回の計画はあくまで親睦を深める為であって、目的と言える程のものはないかなぁ」

 

「…んん? 教授にしては意外な。もっと色々と企んでいるかと」

 

「君は私のことを何だと思っているんだい」

 

「……一言で言うなら…黒幕?」

 

「く、黒幕かぁ…」

 

 

 ある意味正しい一言ではあるのだが、呼ばれて嬉しいものではないのはたしかだ。ちとせは何とも言えない表情をしながらうーん、と唸る。そんなちとせの珍しい姿に苦笑しつつ、もふらは話を戻すことにした。

 

 

「まあ、何もないならないで良いんですけども。とりあえず助手が戻ってきたら動きましょうか。この後は何処に行くので?」

 

「えーっと…この後は私用でちょいと病院に行かないといけなくてね」

 

「…病院!? 何処か悪いところが!?」

 

 

 ショックから立ち直ったちとせは、なんだか軽い感じでもふらにそう告げた。明らかに大したことじゃないように言ってるのだが、病院という単語を聞いたもふらはいても立ってもいられないのか、今までとは打って変わった態度でちとせに詰め寄った。

 その様子を見て、ちとせは興奮したもふらを宥めつつ補足を入れる。

 

 

「こらこら落ち着きなさい。病院に行くのは知人に会う為だから。私に悪いところなんて一切ないよ」

 

「本当ですか? 四徹してるのに?」

 

「それは今は置いててねぇ。とにかくクリスマスイヴ…どころか当日にまで働く人への労いのプレゼントを贈りに行くだけだから心配は無用だよ」

 

「働いている…患者さんじゃなくてお医者さんの方が知り合いなんですね」

 

「そうだよ。私の数少ない尊敬している人ってとこかなぁ?」

 

 

 口元に指を当て悪戯っぽい笑みを浮かべながらも堂々と尊敬という単語を使うちとせの姿を見て、もふらはその人が本当に凄い人なのだと言う事を薄々ながらも感じとる。そして同時にこうも思った。

 

 

(…なんだか変人の予感(におい)がするなぁ)

 

 

 おそらく会ったことない相手に失礼ながらもそう思ってしまうのだった。

 

 

──────

 

 

───

 

 

 

「それじゃあ行ってくるねぇ~」

 

「承知」

 

「なのです」

 

「うーん、急に息ぴったり」

 

 

 ショッピングモールでの買い物を終えたもふら達一向は、少し歩いた先にある本屋の前までやって来ていた。病院内で待たせるのも何なので、近くの時間を潰せそうな場所で待っていてもらおう、というちとせなりの計らいである。

 

 

「それじゃあしばらく助手と一緒に本を探して待ってますので」

 

「頼んだよ。なるべく早めに戻ってくるから」

 

「いえいえお構い無く」

 

「それじゃあなゆちゃん、もふら君の面倒きちんと見ててあげてねぇ」

 

「本屋で何の面倒を見るんですか…」

 

「了解なのです。頑張るのです!」

 

「なゆさん…?」

 

 

 明らかに冗談で言っているちとせの発言に対し、明らかに本気で受けとって敬礼ポーズをとるなゆたの姿にもふらは困惑した。

 

 ちとせはそんな姿に苦笑しつつ、ショッピングモールで購入した荷物を持ちながら目的地へと向かっていく。見送りが済んだ後、残された2人は本屋へゆっくりと入っていった。

 

 

「…さて、今はどんな本が置いてあるのやら。ちなみになゆた助手は何か読みたいのある?」

 

「うーむぅ……」

 

 

 しばらく考え込むなゆた。本と一口に言ってもその数は今や膨大なものとなっている。改めて聞かれると、どうしようか悩むものなのだろう。実際もふら自身、いきなり質問されたらすぐさま答えれる自信はない。故に辺りの本を見てまわりながらひたすらに待つことにした。

 

 

「…もふらはどんな本を読んでいるのですか?」

 

「ぬぇっ? ボク…?」

 

 

 少しの逡巡の後に放たれた言葉に一瞬戸惑うもふら。逆質問は少し予想外だったので、思わず聞き返してしまった。その返事に対してなゆたは静かに頷く。

 

 

「うーん…読んでる本。最近だとまひ兄の部屋にある少年漫画ぐらい、かなぁ。ちなみに助手は漫画って何か読んだことある?」

 

「いえ…その……」

 

「?」

 

 

 少し気恥ずかしそうにして続く言葉を言い淀むなゆたを見て、もふらは疑問符を浮かべつつも次に口を開くのをただただ待つ。少しすると、なゆたはゆっくりと言葉の続きを紡いだ。

 

 

「…実は、漫画は読んだことがほとんどなく」

 

「おや…それはまた珍しい。それなら普段はどんな本を読んでるの?」

 

「最近は雑学などが書かれているものを。他にも大学の資料室にある本を読んでるのです」

 

「ふんふん…全体的に知識が身につく本ということか──」

 

 

 なゆたが何だか言いにくそうにしてるのを察したもふらは、話すペースを落としながら一つ一つ質問・応対をしていく。一つずつ丁寧に受け答えすることでオススメの本が探せると思っての行動だ。

 

 

 様々な質疑応答を繰り返し、もふらはフムフムと頷きながら一つの結論を下す。

 

 

「──つまり、なゆた助手は物凄く頭が良いってことだね」

 

「!?」

 

 

 肝心なところで低い語彙力を見せつけるもふら。その発言になゆたは「はやや…」と言いながら首を横に振る。

 

 

「い、いえ…そんなことは…っ」

 

「謙遜しなくて良いと思うよ。それだけの知識が入ってるって本当に凄いことなんだからさ」

 

「知識は活かさなければ意味がないのです…ぼくよりもふらの方が凄いと思うのです」

 

「……なんで?」

 

 

 それはないだろうとでも言いたげに、心底不思議そうな表情をしつつ首を傾げて聞き返すもふら。

 

 

「もふらは色んな人とお友達になってるとおねーさんから聞いたのです」

 

「守秘義務…いや、教授に教えたボクの落ち度かこれは」

 

 

 もふらは1つため息を吐く。まひろの学校生活の報告をする上で、自身の友人やクラスメートから聞いた情報をまとめる事もある。その際送った情報を鑑みれば、その発想に至るのは想像に難くない。

 なゆたが協力関係になったからには、そういったところも教えた方が何かと都合が良いと考えての行動なのだろう。故にこれは余計な情報を与えてしまった自身の落ち度である。

 

 

「…それはボクじゃなくてみんなのおかげだから。そもそもボクは特段コミュ力が高い訳じゃないし…誰彼構わず仲良くなんてなれないし、そもそも今いる多くの友達だって向こうから話しかけてくれたのがきっかけで友達になれた訳だし」

 

「ふむぅ…? そうなのですか? 何だか意外なのです」

 

「…でもうん、そうだね。その経験のおかげか相手に物怖じする事だけはなくなったかな。人間色んな趣味嗜好があって案外話してみれば面白かったり合わなかったり…」

 

 

 当時の事を思い出しているのか、微笑みながらもふらは次々と自身の想いを口にする。

 

 

「まあ、結局何が言いたいかっていうと……ボクはとても恵まれているだけだ、ってところかな。それに運はいつか尽きるけれど、知識は忘れなければいつまでも残る物だ。いつか家族や友人と過ごす時に使える時が必ず来る。その時にパーッと教えてあげると良いさ」

 

「何だかオトナっぽいのです…!」

 

 

 まるで多くの人生を経験してきたかのように話すもふらの姿にほわっとした表情でなゆたは見つめる。なゆたの言葉を聞いたもふらは、何を思ったのか軽く笑みを浮かべ始める。

 

 

「フッフッフ…漫画の台詞だからね。イケてたでしょ?」

 

「…台無しなのです」

 

 

 軽くドヤりながら聞いてくるもふらに、なゆたは軽く呆れた表情になった。言わぬが花という言葉をまず先に教えた方が良いと思っただろう。

 

 

(──でも、やっぱり不思議な人なのです)

 

 

 そんな呆れ顔から一転、すぐに不思議そうな瞳で見つめるなゆたにもふらは疑問符を浮かべるのだった。

 

 

「とにかく、この話はここで終わり。とりあえず漫画をあまり読んだことのない助手にはボクからオススメの漫画を一冊プレゼントします」

 

「はやや…それは悪いのです。せめて代金はこちらで──」

 

「話はまだ終わってないよ。こっちから漫画を一冊プレゼントするから、そっちからもオススメの本を選んでほしいんだ」

 

「ぼくからも…なのです?」

 

「うん。簡易的なプレゼント交換ってやつだね。助手の選ぶ物に興味あるし、読んだら頭が良くなるかもしれないし。それに、こっちの選んだ物もハマってくれれば漫画語りが出来て一石二鳥になるからね」

 

「………」

 

「もしかして…ダメだった?」

 

「い、いえ…」

 

 

 少々歩みより過ぎただろうか? と思い、恐る恐るなゆたへ伺うもふら。そんなもふらの発言を聞いたなゆたはハッとなって首を横に振った。

 

 

「その…プレゼント交換をするのは初めてだったもので、少々驚いていたのです」

 

「ぬぬ、初めて…それならボクより他のみんなとやった方が良いかもしれないなぁ」

 

「何故です…?」

 

「こういうのは大勢の方が遠慮とかもなくなるし、何より変わった物が入っているドキドキ感も出るからね。イメージを大切にする為にも最初は楽しくやらないと」

 

「ふむぅ…変わった風習なのです。しかし、せっかくなので今やってみたいのです」

 

「…いいの? ボク変な物や面白い物とか入れないよ?」

 

「別に変わった物は欲してないのです」

 

「なん…だと…」

 

 

 珍しくハッキリと断られ、もふらは軽くショックを受ける。

 

 

「でもうん、そっか…わかったよ。やろっか、プレゼント交換!」

 

「頑張って選ぶのです!」

 

 

 もふらの言葉になゆたも同調し、2人はプレゼント用の本を探しに一旦別れて行動するのだった。

 

 

──────

 

───

 

 

「──へぇ、それでお互いに本を贈り合ったと」

 

 

 本屋の前にて。用事を済ませ戻ってきたちとせは開口一番、なんだか興味深そうな表情をした。ただの子供同士のプレゼント交換の何に興味を持っているのかは不明だが、もふらはとりあえずいつも通りの応対をすることにする。

 

 

「中身は家に帰ってからのお楽しみということになっております」

 

「いいないいなぁ。私もなゆちゃんからのプレゼント欲しいなぁ!」

 

「子どもですか! もう…ちゃんとありますから落ち着いてください」

 

「えっ、あるの…?」

 

 

 わざとらしい口調でねだる大人の姿に、もふらは呆れた表情で宥める。冗談半分で言っていた為か、もふらのその返答に大層驚いた表情でちとせは聞き返す。

 

 

「助手の持ってる紙袋の中にきちんと入ってますよ。本当は家に着いた後に助手から言ってもらおうと思ったんですけどね…教授の堪え性のなさが予想外すぎました」

 

「はは、ごめんごめん…もふら君を揶揄おうと思ってつい♪」

 

「いやだから、つい♪て…」

 

 

 またもや少々ふざけた感じにウインク&サムズアップするちとせの姿に、もふらはただただ呆れた表情になるのだった。

 

 

──────

 

───

 

 

「さて、それじゃあ家の前まで送っていくよ」

 

 

 日が沈み、辺りもすっかり暗くなった時間。本日のやる事を全て終えたちとせは荷物片手にそう宣言する。その発言を聞いたもふらは遠慮がちな表情をしながら両手を横に振るった。

 

 

「いや、さすがにそこまでしてもらう訳には…」

 

「遠慮しない遠慮しない。今日1日付き合ってもらったお礼だよ」

 

「ケーキまで買って貰ってそれは…さすがにこちらが貰いすぎなのでは?」

 

「そうでもないさ。ね、なゆちゃん?」

 

「ですです」

 

「ぬぅ…」

 

 

 ちとせの言葉に同調し、なゆたはゆっくりと首を縦に振った。2人の返答を聞いて唸るもふら。現状2対1だ。どう考えてもこちらに勝ち目はないのだが、あまり迷惑をかけるのも忍びない。

 そんな悩めるもふらの表情を見て、ちとせは更なる一押しと言うかのように追撃をかける。

 

 

「それに…子どもがこんな暗い時間帯に1人で出歩くのは危険だよ? クリスマス時を狙った不審者とかやって来るかもしれない」

 

「うっ…ない、とは言い切れないか……わかりました。ふつつかものですが宜しくお願いいたします」

 

「言い方…」

 

 

 丁寧なおじぎをしながら放たれたもふらの言葉に、ちとせは苦笑しながら彼を家へと送ることにするのだった。

 

 

──────

 

───

 

 

「やっとゴール…ここまでありがとうございます教授、それに助手も」

 

 

 荷物両手に自宅前にたどり着くとともに、もふらは大きく息を吐いた。道中雪が降ってきたのもあって、中々に大変な道のりだったようだ。

 

 

「長い道のりだったねぇ。お疲れ様」

 

「お疲れ様です。このご恩はいつか必ずお返しします」

 

「気にしないでと言ってるんだけどなぁ…うーん、まあそこまで言うのなら一つだけ頼み事を」

 

「なんです?」

 

「なゆちゃん共々、これからも仲良くしてもらえるかな?」

 

「……? それはむしろこちらから頼みたいぐらいですけど…そんなことで良いんですか?」

 

「ふふ…そんなことで良いんだよ。はい、じゃあ約束。嘘ついたら針万本だからねぇ♪」

 

「口調は軽いのに罰が重いなぁ…」

 

 

 微笑みながら小指を立てて指切りを促すちとせ。その姿に困惑しながら、もふらは渋々従って指切りをする。中学生になって指切りすることになるなど思ってもいなかったようで、その顔は少々恥ずかしさが入り交じった表情になっていた。

 

 

「さ、なゆちゃんとも」

 

「わかってますよ」

 

 

 ちとせとの指切りが終了した後、なゆたの方へ小指を差し出すもふら。一度やったからか恥ずかしさはもうないようで、ややヤケ気味に差し出している。何の逡巡もなく出されたその指になゆたは動揺し、少々慌てながらもすぐさま自身も小指を絡ませた。

 

 

「うん、これでよし。破ったら合計針二万本だよ」

 

「一気に罰が倍に…!」

 

「これから針二万、コツコツ集めていこうねぇ。なゆちゃん」

 

「頑張るのです」

 

「やめてぇ!」

 

 

 なゆたとの指切りを終えるとともに、意気揚々と準備開始の宣言をするちとせ。何故か罰ゲーム実行をする気満々な2人に叫びを上げるもふらだった。

 

 

「…ああ、そうそう。もふら君、最後に一つだけ聞きたいことが」

 

「…ん? なんです?」

 

 

 不意に真剣な声で質問してくるちとせに、もふらは疑問符を浮かべながら返事をする。

 

 

「“金藻(かなも)”という名に聞き覚えはあるかな?」

 

「かなも…? いえ、ありませんけど…」

 

「…そっか。ごめんね、引き止めちゃって」

 

「……? いえ…」

 

 

 その時のちとせの表情はよく見えなかったが、何だか悲しそうにも安心したようにも聞こえるその声色が、もふらの耳には何だか深く残った。

 

 

 

──────

 

───

 

 

「──えー…そんなこんなでパーティーも終わった訳なんだけども」

 

 

 家族でのクリスマスパーティーを終え片付けをしている最中、突如もふらは不自然な口調で説明をし始めた。明らかにおかしな態度の弟の姿に兄と姉は互いの顔を見合わせてから疑問符を浮かべ弟の方へと向き直る。

 

 

「どうしたいきなり?」

 

「何か悪いものでも食べた?」

 

「いや食べてないけど…ってそうじゃなくて、その…」

 

「「?」」

 

 

 いまいち要領を得ない態度のもふらに、まひろとみはりはまたもや疑問符を浮かべた。

 

 

「じ、実は渡す物がもう一つあって……これ、まひ兄にプレゼント!」

 

 

 近くに置いてあった紙袋から何かを取り出してまひろへと渡すもふら。その手にあるは少し大きめに見える黒い物。そのプレゼントをまひろとみはりはよく観察する。

 

 

「これは…」

 

「セーター?」

 

「『超あったかセーター』って言うんだって……えっと、女子は筋肉量が少ないとか何とかで男子に比べて冷え性になりやすいみたいでさ。ほら、まひ兄も女の子になって初めての冬な訳だし…!」

 

「………」

 

 

 気恥ずかしさでもあるのか、何だか少々早口で捲し立てるもふらの言葉をまひろは静聴する。

 

 

「だからその…少しでも暖かく過ごせるようにと思って……ダメだった?」

 

「いや、ダメじゃないけど…何か意外だったと言うか何と言うか」

 

 

 恐る恐ると尋ねるもふらに対し、まひろはあっけらかんとした様子でその問いに答えた。

 

 

「意外?」

 

「まあその、何だ…おまえからこういったプレゼントを貰うとは思ってなかったからさ。ちょっと驚いたっていうか」

 

「…えっと、それじゃあつまり?」

 

「つまりだな。その…」

 

 

 先程までとは打って変わり、今度はまひろの方が言葉を詰まらせる。

 

 少しの間沈黙が流れ、しばらく静観していたみはりは、しょうがないなぁとでも言いたげな表情で微笑みつつ、もふらへ助言をする。

 

 

「…もふら。お兄ちゃんはね、お礼を言いたいのよ」

 

「へっ…?」

 

「みはりおまえ…ッ」

 

「えっと…つまり大丈夫ってこと?」

 

「むぅ…そうだよ」

 

「…そっかぁ……良かったぁ」

 

 

 照れくさそうに言うまひろの言葉を聞いたもふらは膝から脱力するかのように床へと座り込んだ。その様子を見たまひろはぎょっとした表情になる。

 

 

「お、おい…大丈夫かもふら」

 

「大丈夫。ホッとしてちょっと気が抜けただけだから」

 

 

 心配そうに問い詰めてくるまひろに対して、ぶんぶんと手を横に振って大事ないことを伝えた。それを見てホッと一安心する兄の姿に微笑みを浮かべながら、みはりは座り込んでいるもふらに手を差し伸べる。

 

 

「ありがと」

 

「いえいえ。…そうだお兄ちゃん、試しに一度その服着てみたらどう?」

 

「えぇ…わざわざいま着る必要──あ~もう、わかったわかった! そんな顔すんなって」

 

 

 面倒くさそうな表情をするまひろだったが、もふらがちょっと悲しげな顔を見せると、すぐさま意見をひっくり返し、やれやれと言いたげな表情を浮かべながらセーターを着た。

 

 

 ────

 

 

「おお~!」

 

「あら~~!」

 

 

 着替えたまひろの姿を見て感嘆の声をあげる妹と弟。そのまま上から着ただけだが、セーターの黒カラーがまひろの白カラーの髪と妙にマッチして正直かなり似合っていた。服の真ん中に猫の刺繍が描かれているが、まひろの容姿と相まってこちらもかなり合っている。

 

 

「これは…正直予想以上」

 

「かわいい~~!!」

 

「流れるようにカメラが…ッ!!」

 

 

 感想を口にしながら携帯カメラのシャッター音を鳴らすみはりともふらの動きにまひろは驚嘆する。この弟妹、判断と行動があまりにも早い。

 

 

「うん、本当に似合ってるよお兄ちゃん。良いプレゼントが貰えて良かったね」

 

「ま、まあ…使わないと勿体ないし。仕方なく使うんだぞ仕方なく!」

 

「素直じゃないなあ」

 

 

 照れくさそうに言うまひろの姿にみはりは苦笑する。まだまだ冬は始まったばかりだが、この気持ちを忘れなければこれから先もきっと暖かい空気に包まれながら過ごせることだろう。

 

 

「でもこれならしばらく炬燵はいらないね」

 

「鬼! あくま!」

 

 

 暖かい空気はものの数秒で消え去った。

 

 

 

 

───────

 

 

 時は少し遡り、とある住宅地の道路にて。もふらと別れたちとせとなゆたは手を繋ぎながらゆっくりと帰路についていた。

 

 

「ところでおねーさん、最後の言葉はいったい…?」

 

 

 その最中、なゆたは先程、自身のおねーさんがもふらに放った言葉がやはり気になったようで、思わず質問をしてしまった。

 

 

「うーん、大したことじゃないんだ。そうだねぇ…最終確認ってところかな」

 

「最終確認?」

 

 

 突如出てきた単語に「うーむぅ…」と唸り考え込むなゆた。大したことではないと言ったのに懸命に思案する彼女の姿を見て、ちとせは苦笑しながらすぐさま話を切り替えることにした。

 

 

「さ、それより私たちも早く帰ろう。今日はお祝いとして豪勢に行かないと」

 

「お祝い、なのです?」

 

「色々と頑張ったお祝いだよ。祝える時に祝わないとサンタさんが来なくなっちゃうかもしれないからねぇ」

 

「むぅ…! それは問題なのです! お祝いの準備、頑張るのです!」

 

 

 サンタという単語を聞いてから目の色を変えるなゆたに微笑みつつ、ちとせはこのサンタを信じる妹と手を繋ぎながら家路へとついていった。

 

 

────おまけ─────

 

 

「さてさて、助手が選んでくれた本は──」

 

【いますぐ上達! 人間観察のすすめ】

 

「まさかのチョイス! いや…むしろ今日の行動を振り返ってみれば正しいのかも?」

 

 




閲覧ありがとうございます。
今回の話、書いては消しての繰り返ししまくって普段の10倍ぐらい時間掛かってしまいました。時間掛かると大体ロクなこと起きないし、全体の出来も悪くなるからアカン。


なゆたんが映画館に行くのが初めての体験となっておりますが、ゲーセン初めてのなゆたんなら他の娯楽・遊戯施設にも行ったことない可能性あるかなぁと思って書きました。
ちなみにカラオケもバッティングセンターも初めてという設定にしてましたが、泣く泣くカット。





次回、もふら◯◯するの巻。オリキャラとタグが増えます。

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