きょうだいはおしまい!   作:虎之丞

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文章作るのに時間かかりすぎてヤバいと思っている今日この頃。1話辺り5000文字以上を1日で書き上げている人は正真正銘の怪物だと思い羨みながら書き続けてます。もっと早く書けるようになりたい。



今回は原作6話部分。銭湯じゃ銭湯。

もふら側の視点だけだと飽きてくるので別キャラの視点もその内書きたいところ。



第3話 もふらとクラスメート

「うへぇ…やっと終わったぁ…」

 

 

 七月も半ばに入った頃、いつも通りの学校終わり。緒山もふらは自由を手に入れたその解放感に脱力しながらそう口に出す。

 本日は体育でプールの授業があった上に、その後の授業も結構な頻度で当てられたから余計に疲れてしまっていたのだ。

 

 

「そんな調子で今からちゃんと帰れるのか?」

 

「んぇ…!?」

 

 

 そんなもふらの様子を見た男子生徒、桜田ゆうたは心配してくれたのか不意に話しかけてくる。うっかり口から洩れていた言葉を取り消すように、もふらはコホンと1つ咳払いをして──

 

 

「ええ~~、なんのことぉ? もふらわかんな~~い★」

 

 

 まるでそこらにいる普通の明るい女子(想像)のように振る舞った台詞と、不気味さを感じるまでのきゅるーん☆とした笑顔を見せて誤魔化すのだった。

 

 正直、嘘を吐くにしても流石にこれは気持ち悪かったので、今後使用を禁止にしたのは言うまでもない。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

 案の定というかなんと言うか、いやに長い沈黙が流れてしまっていた。これは失敗したなと思ったもふらは真面目に話すことにした。

 

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。この程度で潰れるなら学校になんて通えてないって」

 

「お、おう…」

 

 

 いきなり真面目になるもふらにたじろぎながら返答するゆうた。「うわぁ、いきなり落ち着くな!」とか言わない辺りかなり良心的な対応だろう。

 

 

「と に か く、ボクは大丈夫だからさ。早く千川君と一緒に帰る帰る!」

 

「お、おい! 押すなって緒山!」

 

 

 

 グイグイと背中を押してクラスメートの千川みなとの元までゆうたを運ぶもふら。ゆうたをみなとに押し付けた後にそそくさと離れ、二人に手を振って別れ、ささっと帰宅するのであった。

 

 

「………」

 

 

 そんなもふらの後ろ姿を、ただただ見送るゆうたは少々不安そうな顔をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 

 辺りはしーんと静まりかえっていた。返事がない、ただの引きこもりのようだ。とふざけた感想を頭に浮かべながらリビングへと向かう。

 

 姉は靴が置いてあったから家にいるのは間違いない。状況を鑑みるに部屋かトイレか、はたまたお風呂でも沸かしているのだろうか。兄はいつも通り部屋だろうから考えるまでもないだろう。

 

 

「…しかし疲れたなぁ。早くお風呂に入りたい…」

 

 

 押し寄せる身体の気怠(けだる)さは、どちらかと言えば精神的疲労による影響が大きい。こんな時は温かい風呂に浸かってリフレッシュするのが効果的だ。

 

 とりあえず、まずは制服から着替えに行こうと思い、部屋へと向かって歩いていくと──

 

 

(あれ、まひ兄の部屋が開いてる?)

 

 

 自分の部屋の向かいにある兄の部屋が少し開いていた。もしかすると姉が入って話しをしているのかもしれない。と思って兄の部屋へと様子を見に行くが──

 

 

「風呂が壊れた?」

 

(!?)

 

 

 ゲームをしながらみはりにそう聞き返すまひろの発言、それを聞いたもふらの頭に衝撃が走った。よりにもよってこのタイミングでそれはふざけるな。と憤りたくなりそうなのを堪える。堪えるがやっぱり辛いものは辛いので半開きのドアをバァン!! という大きな音とともに思いっきり開いた。

 

 

「お風呂が壊れたってどういうこと!?」

 

「あら? おかえりもふら」

 

「お前はもっと普通に入りなさい」

 

 

「普通にビックリするだろ」と兄に言われたので、少し落ち着くことにしたもふら。先日の姉と同じ事をしてしまうとは、血は争えないものだ。とりあえず深呼吸してから再び口を開く。

 

 

「それで。お風呂が壊れたってことは、つまりお風呂が壊れたってこと!?」

 

 

 だがしかし、少ししか落ち着けていなかったようだった。

 

 

(同じ事言ってる)

 

 

 疲れてるのかな? と思いつつみはりは少々心配そうな目で見ていた。事実疲れてはいるのだが。

 

 

 

 

「とりあえず銭湯に行きましょ。ほら、近くに一件あるあの」

 

「あー、たしか酒屋の向かいにある……」

 

 

 ゲームをしながら答えていたまひろだったが、何かを思い至ったのかピタリとコントロールを動かす手が止まる。

 

 

「…っておい、それはさすがにマズイだろ」

 

「?」

 

「オレに女湯に入れと…?」

 

「いいんじゃない? 今は女の子だし」

 

 

 あっさりと答えるみはりにまひろは衝撃を受ける。思わず「いいの!?」と上擦った声も出てしまっていた。

 

 

「あれ…? まひ兄、男湯入らないのー?」

 

「いや、この姿で入れるか!!」

 

「常識外れたこの発言……もふら、やっぱり疲れてる? それとも風邪でも引いた?」

 

 

 テンションがおかしいのはこの際良いとしても、発言がさっきからおかしい気がしてきたようだ。しかし、みはりの声は聞こえていないのか、返事のないまま虚ろな目をしつつまひろへと接近してくる。

 

 

「もうダメだ、キツいツラい…早くお風呂に入りたい。早く入りたい。入りたい。たい──」

 

「うわぁ~!! 分かった分かった! みはり、さっさと準備して行くぞ。もふらがヤバい」

 

 

 呪いの言葉のようにブツブツと呟きながらまひろに迫ってくるもふらの顔は、まるでゾンビか禁断症状でも出てるヤク中のような表情をしていた。もふらの姿に危険を感じたまひろは、すぐに準備に取りかかりだした。冗談を言う余裕すらもう無いようだから、これ以上時間をかけるのは命取りだと判断したようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃもふら、私たちはこっちだから」

 

「うん…ごゆっくりぃ……」

 

 

 ロビーに到着後、力ない返事をしつつ二人と別れたもふらは、男湯の方へと軽い放心状態のまま歩いていく。

 

 

「あ~…う~…」

 

 

 唸り声のようなものをあげながら服を脱ぎ、身体を洗い──

 

 

「ふぅ~…」

 

 

 風呂に浸かって一気に肉体的精神的疲労その他諸々を一気に吹き飛ばし見事に復活した。

 

 

「あぁ~生き返るぅ~……あ、でも今度はなんか眠くなってきた…」

 

 

 風呂場で寝るのはさすがに危ないので、ブンブンと顔を振って少しでも眠気を飛ばそうとするもふら。

 もう上がってしまおうか、それとも水風呂にでも入って無理矢理眠気を覚ましてしまおうかと悩んでいると──

 

 

「…あれ、緒山?」

 

「へ?」

 

 

 不意に自分の名を呼ぶ声が聞こえてきたので振り向くもふら。その先にはクラスメートの1人、桜田ゆうたの姿があった。

 

 

「桜田君…? なんでこんなところに?」

 

「いや、家族でたまには銭湯にでもって……それより、緒山こそ何でここに?」

 

「ボクは家のお風呂が壊れたから来ただけで……」

 

 

 ゆうたがもふらの隣に浸かり、その後互いの現状を説明し合った。どうやら偶然と偶然が重なり合った結果、この邂逅が起こったらしい。まるで漫画のような展開だ。

 

 

 

 

「へぇ、なるほどな。そういえば緒山って姉と双子の妹がいたんだな。その妹、学校で見かけたことない気がするけど」

 

「へっ!? あ、あぁ~! え、え~とそれは……」

 

 

 説明中に(みはり)双子の妹(まひろ)の事も伝えたのだが、それがゆうたに新たな疑問を沸かせることになってしまったようだ。ゆうたの疑問を聞いたもふらは、女の子時の兄の設定を一切考えていなかった事を思い出した。

 もしも本当の情報がクラスメートに流れていってしまっては大変な事になる危険性がある。

 

 これは半端な設定ではいかんと思い、今まで培ってきた嘘の吐き方、そして相手を納得させる方法。それらを併せて相手を見事に騙し通す為の設定を脳をフルに回転させて導きだしていく。

 

 

(見えた!)

 

 

 瞳を静かに開眼させ、脳内の設定を樹立させていく。この間、僅か0.401秒。

 

 

「……実は妹はしばらく、重い病気にかかっていたんだ。最近になってようやく自宅療養出来るようになってね」

 

 

 それっぽい表情をしながらゆうたに説明していく。こういう時、嘘吐きで良かったともふらは思った。わりと自然な感じで設定を伝えることが出来るのだから。

 

 

 

 

 

「──という訳でしばらくは経過観察しつつ自宅療養。学校に通うには数ヶ月か、下手したら数年かかるかも」

 

「そうだったのか……悪い緒山。気軽に聞いていいことじゃなかったよな」

 

「あ、いや……こっちこそごめんね」

 

「?」

 

 

 申し訳なさそうな顔をするゆうたに小さな声で謝り返すもふら。さっき思い付いたばかりの設定()でそんな顔をさせてしまったことによる罪悪感が凄くて、謝らないと正直気が済まなかったようだ。

 

 とりあえず、この話しは一旦おしまいにしようと、話題を切り替えようとしたのだが、特に話せる内容が思いつかず、しばらく気まずい沈黙が流れてしまっていた。

 

 

「………」

 

「……なあ緒山」

 

「ん?」

 

 

 しばらくの静寂の時間。それを先に破ったのはゆうただった。

 

 

「緒山はさ、なんで誰とも積極的に関わろうとしないんだ?」

 

「………」

 

「悪い…気になっちまって。コミュ障って感じにも見えないしさ」

 

「それは──」

 

 

 

 

 それは兄が引きこもりになった際、その兄に何もしてやれなかった自分への戒め。

 

 笑ってはいけない。楽しんではいけない。本当の事を知られてはいけない。

 

 誰にも理解されず、されたくなく、1人でに不幸へと続けていく罰。

 

 もふらが誰かと関わろうとしないのは、誰も得しない自分勝手な行いをしているからにすぎない。

 

 

(でもそれも──)

 

 

 もふらはふと今の兄の姿を思い返す。引きこもりな所は変わっていないが、前よりは話をしてくれるし、姉や自分と一緒なら外に出るようにもなった。これで更に弟妹の力を借りずに友人でも出来たのなら、きっと彼は──

 

 ──まだ先の事はわからないが、その時自分はどうするだろうか。もふらはまだ見えない未来を想像していたが、すぐに止めることにした。まだ先の話なのだから。

 

 

 

 

「──ただの、ボクのわがままだよ」

 

「え…!?」

 

 

 ゆうたは驚愕の表情を浮かべてもふらを見た。正直、放課後の時のようににはぐらかされて終了すると思っていたからだろう。

 

 

「なに驚いているのさ。自分から聞いてきたくせに」

 

「いや、だってさ…」

 

「まあ、言いたい事は分かるけどね」

 

 

 ゆうたの言い分は分かっているので、とりあえず静止しつつ、話を進める。

 

 

「ボクはただ、家族が大変な時に自分だけ楽しく暮らすのが許せない。幸せでいるのが許せない。それだけの考えでしか動いてないバカなんだ」

 

「…緒山ってなんか、変わってるよな。普通の奴なら自分だけでも楽しむもんだと思うけど」

 

「変わってる? そうかもね…少なくとも、妹に友達が出来るまでボ…クは………」

 

「………?」

 

 

 急にしんと静かになるもふら。その先の言葉が何時まで経っても来ないのが気になり、もふらの方へ視線を向けるゆうた。そこには、顔が真っ赤に火照り、すっかりとのぼせあがっていたもふらの姿が映っていた。

 

 

「お、緒山!?」

 

「…ぅーん………」

 

 

 その姿に焦ったゆうたは、すぐに周りの人を呼び、もふらの肩を担いで急いで脱衣場まで運び出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん……ぅん」

 

 

 目が覚めたもふらの瞳にまず入って来たのは、知らない天井…ではなく、少し前に見た天井。銭湯の脱衣場だった。

 

 

「あっ、緒山! 気がついたか」

 

「…やっちゃったなぁ……」

 

 

 自分を心配する声が聞こえ、もふらはすぐに状況を理解した。頭を抱えたくなるような事件が起きてしまったが、起きてしまったものは仕方ない。

 過去は変えられないのだから、今するべきことをまず考えるべきだと判断する。

 

 

「…ごめんね桜田君。迷惑かけちゃって」

 

「お前だけのせいじゃねぇって。その、俺も気付いてやれなかったからさ…」

 

「うん。それでも謝らないとボクの気が済まなくて、さ」

 

 

 申し訳なさそうな顔をしつつ、もふらは身体をゆっくりと起き上がらせた。

 

 

「お、おい…! 無理に動くなって」

 

「このぐらい大丈夫だよ。それに休むにしてもロビーで休んどきたいし」

 

 

 少し足元をふらつかせながらも、テキパキと着替えていくもふら。その様子を眺めつつ、ゆうたも静かに着替えるのだった。

 

 

 

 

 

「そこまでしてくれる必要ないのに」

 

「また倒れられたらこっちが困るんだよ」

 

 

 もふらに肩を貸し、二人三脚の如く足並みを揃えてゆっくりとロビーへと歩いていく二人。

 一分も掛からないほどの短い廊下を通り、ロビーへと到着する。

 

 

「あっ、まひに…じゃなかった、妹だ」

 

 

 もふらの視線の先を見るゆうた。そこにはソファーの上でコーヒー牛乳を飲んでいる少女がいた。

 コイツの妹こんな美少女だったのかと思いつつ、その少女の元へともふらを運んで行く。

 

 

「な、なあ…!」

 

「え…?」

 

 

 少し緊張しながら話しかけるゆうただったが、「……誰!?」と言いながら距離を離すもふらの妹の対応に若干ショックを受ける。しかし、彼女がゆうたの肩に担がれたもふらの姿を目にすると態度が一変するのだった。

 

 

「…もふら? おい、何かあったのか!?」

 

「あ~…恥ずかしいことに、ちょっと長風呂しすぎてのぼせちゃった」

 

「な、なんだそっか……ビックリさせるなよなぁ、もう」

 

 

 深刻な表情で問い詰めてきたものの、もふらの返答を聞いてホッと一息ついて胸を撫で下ろす少女。ゆうたには何故かその姿が妹のようにも歳の離れた姉のようにも見えたのだった。

 

 

 

「あっ、えっと……もふらを助けてくれて、ありがとね」

 

「──お、おう! べっ、別にこれくらい普通の事だし!」

 

「?」

 

 

 少しおどおどしながらも、笑顔でお礼を言う少女に少しドキッとしながら返答するゆうた。その反応にただただ疑問符を浮かべるもふら。この時、魔性の女の片鱗が見えていた事を彼らはまだ知らないのであった。

 

 

 

 

 状況の説明も終え、とりあえず休もうと思ったもふらはゆうたの肩から離れ、ソファーの上へゆっくりと腰かける。

 それを見届けて後は任せても大丈夫だろうと判断したゆうたは、その場を離れる別れの挨拶をする。

 

 

「じゃあな緒山、俺はこれで」

 

「今日はごめんね。せっかくの家族水入らずの銭湯だったのに」

 

「謝るなって。家族とならまた来れるんだしさ」

 

 

 これ以上言っても堂々巡りにしかならない。謝るのはこれで止めた方が良いのだろうと、もふらは切り替えることにした。

 

 

「また明日。学校でな」

 

「うん。バイバイ桜田君」

 

 

 あっさりとした挨拶を交わし、桜田ゆうたは先に外で待っている家族の元へと歩いて行った。

 

 

 

 

 ゆうたが帰ったのを見届けた後、ふとまひろが先に口を開く。

 

 

「友達にちゃんと感謝しとけよー。あそこまでしてくれる奴そうそういないからな」

 

「友達か…」

 

 

 クラスメートの中ではよく話しかけてくれるけど、それでもさっきの出来事を除けば、現状当たり障りのない会話しかしていないし、そもそもの問題自分が彼を避けている。そんな関係を友達と呼んでも良いのだろうかと、もふらはふと考えてしまう。

 

 

「…ボクが、彼を友達と言っても良いのかな?」

 

「それは相手に聞いてくれ。オレには分からんしな」

 

 

 俯くもふらにややぶっきらぼうな返答をするまひろ。しかしその後「まあ、でも」と続けて──

 

 

「当たって砕けてダメだったら、兄ちゃんが励ましてやるからさ」

 

 

 まひろは全く手のかかる弟だと思いつつも、その頭を優しく撫でてあげた。昔、小さな出来事で泣いていた彼を、宥める為にしてあげたように。

 

 小さく柔らかくなったその手には、かつての面影はないけれど。その温もりだけは今も変わらずに残っていたのだ。

 

 

「…うん。ありがとう、真尋お兄ちゃん」

 

 

 少し落ち着いてきたもふらは静かに礼を言った。姿が変わってもその心までは変わらず、兄が兄たる所以を再確認したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「そうだもふら。もし失敗したらいっそのこと二人で引きこもるのはどうだ?」

 

「それはみは姉が怖いからちょっと…」

 

「大丈夫だって。二対一ならみはりも強気には──」

 

「あっ、みは姉!」

 

「びょわぁぁっ!! ちちち、違うぞみはり! これはだな──」

 

 

 途中まで言いかけて気づくまひろ。視線の先に妹の姿は一切なく、口元を抑え必死に笑うのを堪えている弟の洩れ出す声だけが聞こえていた。からかわれていた事に気付き顔が赤くなる。

 

 

「……もふらァ!!」

 

「あはははは!」

 

 

 怒りのあまりに叫ぶまひろ。それを見て、そら逃げろと言わんばかりに走りだすもふら。もふらを追いかけるまひろ。その兄弟の姿は周囲には兄妹に見えるのか姉弟に見えるのか──

 

 

「…明日、頑張って聞いてみるよ。まひに──」

 

 

 途中で言いかけて止めるもふら。

 走り回って周囲に迷惑をかけている上にその視線まで集めた状態で兄呼びは色々といかんと思い踏みとどまる。だからと言って呼び捨てにするのは自分が気にしてしまうので、外にいる時はとりあえずこの愛称で呼ぼうと決めた。

 

 

 

「──()()()!」

 

 

 

 

 

 

 因みに当然ではあるが、この後みはりにはこってりと叱られたもよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…桜田君、昨日はごめん! それと…ありがとう」

 

 

 翌日朝のホームルーム前。もふらは桜田ゆうたに謝罪とお礼を言った。何度目の謝罪か分からないが、それでも誠意は示すべきだと考えてのことだ。

 

 

「だから気にすんなって。律儀だな緒山は。もっと気楽に行けばいいのにさ」

 

「昨日も言ったようにさ、それが出来ないのがボクなんだって」

 

「あの後なにかあったの?」

 

 

 少し楽しそうに話す二人の元に千川みなとも参戦してきた。友人であるゆうたと何を話して仲良くなったのか気になるだろうし、何かと話す機会の多いもふらとどんな事をしたのか気にもするだろう。

 

 もふらはう~んと唸る。昨日はつい話し込んでしまったが、あの話はあまり大っぴらに公開するのは躊躇われるものだ。正直あまり言いたくないし、さすがにゆうたもベラベラと口にしたりはしないだろう。

 

 ならば誤魔化すしかない。いつものような嘘の吐き方は止め、一言だけ言う事にした。

 

 

「裸の付き合いがあった、かな?」

 

 

 人差し指を口に当て、小さな笑みを浮かべながら、冗談混じりな口調でもふらはそう言った。

 

 

「緒山君の笑った顔、初めてみたかも」

 

「激レアだし」

 

(ふ、二人の間に一体何が…!?)

 

 

 それをたまたま見ていたクラスの女子は三者三様の良い反応を見せてくれた。約1名は腐った想像をしている気がするが。

 

 

「裸の付き合い…?」

 

「銭湯でたまたま会っただけだって!」

 

「あらお早いネタばらし」

 

 

 これで少しは昨日の話から話題を逸らせられたかなと考えるもふら。

 

 もう朝礼数十秒前だ。こんなギリギリで聞くのは失礼な気がするが、それでもこの疑問だけは今すぐ投げざるを得ないのだ。

 

 

「ねぇ」

 

「?」

 

「今のボクらの関係って、友達…なのかな?」

 

「なに言ってんだ?」

 

(まあ、そりゃそうだよね)

 

 

 当たり前の事を聞くなと言った顔をして答えるゆうたの顔を見て、気持ちとは裏腹に少々寂しそうな顔をするもふら。しかし、ゆうたは続けてこう口にした。

 

 

「──とっくに、そうだっただろ?」

 

 

 その言葉を聞いて、驚愕の後に自然と口元が緩んでしまうもふら。

 

 楽しむ訳には行かないと、幸せな時間を過ごしてはいけないと、そんな人生を選んできた自分でも、やはりその温もりには抗えないものだった。

 

 もう兄は少しずつ新たな道を歩み始めている。なら自分も、自分をもう許して先へ進まないと、昨日のように心配をかけるだけだ。

 

 だからもふらは、精一杯の感謝を込めるように返事をする。

 

 

「うん!」

 

 

 その日、緒山もふらは新たな友情を得た。

 

 




閲覧ありがとうございます。外でのまひろの呼び方を決める&ゆうた君との友情の始まり回でした。もっと綺麗に書けれたら良い話に出来そうなのですが…文章力が欲しい。


まひろとゆうた君が原作より早く出会っておりますが、「緒山ってイイよな……」になるまでは、まだ距離感が足りてない。もっと関わらせて堕とさないと(謎の使命感)


しかしまあ、兄のJC擬態用の台詞を普通に言ってしまうもふらは完全に頭のネジ外れとるなぁと思いました。




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