アニメおにまい円盤上巻の売上枚数が5600枚超えしてるみたいですね。これは2期確定したのではないでしょうか。ヒャッハー!!って叫ぶ準備しても良いよね?
「どうしてこうなった」
開口一番、そう口にするもふら。目的地は温泉旅館。周囲には4人の女性(内1名中身が男だが)。
両手どころか四方に花のハーレム状態の旅であるのだが、メンバーがメンバーな関係上、嬉しさより緊張感やその他諸々の感情の方が凄まじかった。
メンバーは緒山家三姉弟と穂月姉妹の計5名。先日の一件のせいで、もみじとは余計に溝が広がった気がするので、もふらにとっては正直気まずさしかなかった。誤解だった関係上、いかがわしい関係などと口にしたのはすぐに謝ったのだが、それでもやはり今会うのは気まずい。
「と言うかみは姉、元々3人で旅行しに行くとか言ってなかった?」
「後で増えないとは言ってないからね~」
口元に手を当てつつニヤニヤと笑みを浮かべているみはり。ちょっとした悪戯をした時にはいつもこんな表情をしている。つまりはそういう事だ。
自分が穂月姉妹との距離感に悩んでいることに気付いておきながら、この姉は今回の旅行を予め計画していたのだ。
「ぬぅぅ、騙された! このおに、あくま、★〒▲●%■#~!!」
「最後の何!?」
うがーッと叫びながら姉をポカポカと軽く叩くもふら。
端から見ると外へ無理矢理連れだした母親と、それに駄々をこねる息子のように見えてしまうが、それは黙っておいた方が良いだろうな。と横で見ていたかえでは心に留めておくことにした。
「ほーら、その辺にしときな」
「あ、姉御…!」
いつまでも叩き続けるもふらを背後からズルズルと引きずり離すかえで。もふらはむぅ、と若干しかめた表情をしながらも、大人しく剥がされる事を選択するのだった。
一方、それを少し離れたところから眺めていたまひろは、ここまでの長距離移動で疲れ、早くゴールして休みたいと言わんばかりのダル~んとした表情になりつつも、もみじと談笑をしていた。
「もふらって、かえでちゃんのこと姉御って呼んでるんだなぁ。初めて聞いたかも」
「昔色々あってね。出会って少し経ったら、もうあの呼び方になってたんだよ」
「へぇー」
弟も自分の知らないところで人付き合い頑張ってるんだな~、と少し感心すると共に、まひろは頭の中で1つの疑問が沸いて来ていた。
「そういえばさ、もみじは何て呼ばれてんの?」
「私?」
「思い返してみたらもふらの奴、もみじの名前全然呼んでないからさ。ちょっと気になっちゃった」
「昔呼ばれた名前なら覚えているけど……まひろちゃん、ちょっと恥ずかしいから…耳貸して──ゴニョゴニョ」
少し顔を赤くしながら、こっそりとまひろに耳打ちして教えるもみじ。まひろはその愛称を聞いて笑うよりも感心するよりも先に疑問符が頭に浮かんできた。
「──何でじろちゃん?」
「わぁーー!! 声に出さないでぇ!」
「もがっ!?」
焦ったもみじが凄い勢いでまひろの口を塞ぎにかかる。おさえている間に、かえで達の方をチラッと見るも、特にこちらを気にする様子がないところ、幸いにも聞こえてはいなかったらしい。
ホッと一息ついたところで、まひろが息苦しそうに腕をバタバタと激しく動かしていたのを見てハッとなり、すぐに手をはなした。
「わわっ、ごめんねまひろちゃん! その名前、お姉ちゃんに弄られたこともあってあまり好きじゃなくて」
「ぷはぁっ…! う、ううん。こっちこそごめん、嫌だったよね。にしてももふらの奴…もみじに嫌がる名前付けてどうすんだ。あいつ後でとっちめっとこっか?」
「だ、大丈夫! もふら君もすぐに止めてくれたし。後で別のあだ名で呼んでくれるようになったからさ」
「…そうなの?」
もみじが平気ならこれ以上言及するのは無粋かと判断し、まひろはすぐにこの話題を止めることにした。それに移動を始めてどれだけ時間が経ったのか分からないが、もうだいぶ足にきている。
「ところで旅館ってまだ先?」
「そろそろのはずだけど…あ、見えてきたよ!」
そろそろ歩き疲れて妹か弟に運んで貰う事になりそうなタイミングで、ようやく本日の目的地へと辿り着いた。
「つ……着いた~~!」
その後、温泉旅館の入口が見えて「…もう無理」と言って脱力するまひろだったが、かえでに発破をかけられ部屋まで頑張って自分の足で移動するのであった。
「えっ、全員同じ部屋…?」
中へ入って確認したところ、予約した部屋はまさかの5人部屋だ。男がいるなら普通は3-2の家族同士で分かれるものだともふらは思っていたのだが、全員一部屋はまるで意味が分からない。
どゆこと? と言いたげに懐疑的な目でみはりを見るもふら。そのみはりは少々言いにくそうな微妙な表情をしつつ説明を始めた。
「実は…成り行きでこうなっちゃって」
「成り行き?」
「端的に言うと、部屋の予約がいっぱいでね。空いてる所がここ1つしかなかったわけ」
「他の日は出来なかったの…?」
「うーん…土日ぐらいにしか行けないだろうし、かえでもバイトがあるからいつでも行けるわけじゃないし。皆で来れそうな日って今日ぐらいしかなかったのよね…」
「うむむ…」
それならば仕方ないと納得するしかないのだが、二人は大丈夫なのだろうかと、チラリと穂月姉妹の方を見るもふらであったが、二人ともいつもと変わらない至って普通の表情で、ついさっき淹れたばかりのお茶をまひろと一緒に飲んでいた。
「──めっちゃ平気そう!」
拒絶されたら辛いのだが、何とも思われないのは、それはそれでなんか複雑な気分になってしまう。
そんなもふらの表情を察してか、かえではお茶を一杯飲んだ後に口をだす。
「まあまあ。もふらの事はよく理解してるしさ。あたしももみじも、あんたを信頼してるから一緒の部屋でも良いって言ったんだよ?」
「むぅ…その言い方はズルい。そんな事言われたら納得するしかないじゃないか」
真っ直ぐにそう言ってくるかえでの言葉を聞き、少し顔を赤くさせながら了承をするもふら。
気を遣った訳でも何でもなく、それが当たり前であるかのように自分の事を信頼していると言ってくれた。ならそれを裏切らないように立ち振舞うのが自分に与えられた役割のようなものだろう。とこれからアクシデントが起きてもすぐ対応出来るように気合いを入れるのであった。
「さて、もふらの了承も得られた事だしどうしよっか? 温泉に入るにはまだ早いけど」
「ちょっと早く着きすぎちゃったからねー」
話を切り替えるようにして、これからの流れを聞いてくるみはり。かえでもうーん、と悩んだ顔をする。時間を潰すなら何かするのが一番だ。
時刻はまだ昼過ぎだ。ちょっとどころではない到着速度に少々違和感を感じつつ、もふらも一緒に考えることにする。少し考え、思いついたものをどんどん口に出すということにした。
「──お昼寝、談笑、散策……あとは無難にゲームとか?」
「ゲームか~。いいね~、ゲーム」
「……?」
かえでの反応の仕方、というより声のトーンがいつもより若干おかしい気がしたが、もふらは構わず続ける事にした。
「ゲームするにしても何も持って来てないんだよね。まひー、なんか持ってない?」
「持っとらーん…」
気の抜けたような返事をするまひろ。兄が持ってないならしょうがない、とゲーム案を却下しようとしたところで──
「そんなもふらに朗報。なんとここに割り箸が丁度5本あります」
「いやいやいやいや、何で奇数で持ってんの?」
「細かいことは気にしない気にしない」
ふっふっふっ、と悪そうな顔で堂々と宣言するみはり。割り箸の本数もそうだが、明らかに様子がおかしかった。これは何か企んでいる、どれだけ鈍い奴でもみはりの事をよく知っている家族なら普通に気付く。
「これは罠だ!」と思わず叫びたくなりそうなこの状況。やらせるゲームを誘導しているのは分かりきっている。問題は何をやらせるかということだ。
考え抜いた末に1つのゲームがもふらの頭に思い浮かんだ。
(王様ゲーム…!)
割り箸を使って皆で楽しめるゲームといえばこれが真っ先に浮かぶ。シンプルながらにやれる事は多種多様。暇潰しにはもってこいだ。
だがもふらには1つの疑問があった。何故このゲームをやらせるのか、だ。向こうにリターンはないし、リスクもある。かえではともかく、みはりがこのゲームを勧めるタイプには見えない。何かがあるのだろうか? と考えるが、どれだけ考えても理由はさっぱりだった。
「それで、何やるの?」
「王様ゲームとかどう?」
「…まあ、良いけど」
やっぱりか、と内心ぼやくもふらだったが、どうせあの手この手で無理矢理やらされる可能性があるのだから、乗るしかないと覚悟を決めて了承する。
唯一懸念することがあるとすれば、明らかに反応がおかしかったかえでがみはりと手を組んでいる可能性があることだ。しかし、このメンバーが尊厳を破壊するような命令を下すことなどないだろうし、多少勝率が下がろうと特に問題はないだろうと判断することにした。
しかし、その判断が間違っていたのだと、もふらはすぐに後悔する事になる。
「王様だーれだ」
「はーい」
「またみはりかぁ…」
「うげぇ…」と露骨に嫌そうな顔をするまひろ。一番初めに当てられた上に腕立て20回という引きこもりを殺しにかかってる命令を下されたのだから仕方がないのだが。
「既に4回目な件」
「細工とかしてないよ?」
「ボク0回な件」
虚無顔になりながら羨望の眼差しをみはりに向けるもふら。もう10回目だというのに、未だ命令を下す立場というものになれていない。
だが、百歩譲ってそれはまだよかった。問題は自分の格好である。みはりとかえでに一回ずつ、ゲーム定番の『一枚脱ぐ』を命令され上がシャツ一枚の状態になっていた。
勿論脱ぐといっても常識の範囲内でなので、1人辺り三回までしか出来ないのだが、もふらは見事に全弾命中されリーチがかかってしまっている。
「もう一回来たら半裸になっちゃう…」
「いや、せめて靴下とかにしなさいよ…何故上から脱ぐ」
「いや、そういうルールなのかと思ってて」
もふらの頓珍漢な発言に呆れた顔になるみはりを
「いやー、それにしてももふらは運ないなー」
「あはは…」
「ぬぬぅ…こういうのはまひーの役割のはずなのに」
「おぉい! 勝手に人をそういう枠にするなよ」
「ふむふむ」
もふらの言う事も一理あるなと考えたみはりは、まひろを見てすぐに命令を下す事にした。
「それじゃあまひろちゃん──じゃなかった3番が一枚脱ぐで」
「ホントに当ててきたぁ!」
「…いま完全に確信して言わなかった? 番号宣言に一切の迷いが見えなかったんだけど」
「気のせい気のせい」
疑いをかけ問い詰めてくるもふらを宥めるみはり。実は油断して割り箸に付いてる番号の隠し方が甘かったせいで、みはりに見られたのが原因でこうなったのだが。実際のところはまひろも悪い。
そんなこんなでゲームは続いていき、続く13回目。ようやくその時がやってきた。
「王様来たーーッ!!」
「テンション高いなぁ…」
「まあまあ、初めてなんだからさ」
最初の警戒心と渋々感はなんだったのか。初キングになって天高く右腕を上げたガッツポーズをとるもふら。
「さて、この恨み…誰に晴らしてくれようか」
クックックと悪い顔でほくそ笑むもふら。今まで罰ゲームを受けた数は驚異の7回。全体の半分以上の命令をこなしてきた彼の心は既に高揚感と復讐心でいっぱいだった。
腕立て、デコピン、一枚脱ぐ、腹筋、恥ずかしエピソード、腕立て、一枚脱ぐ。
全体的に身体の負担になるものばかり選ばれているのなら、こちらも肉体的負荷をかけてやる、と無駄に熱心に考えるもふら。一番の狙いは罰ゲームをふっかけてきた回数の多いみはりだ。だが彼女の運動能力を考えると生半可な命令ではすぐに終わってしまう。
うーんと唸りながらしばらく罰ゲーム内容を考えるもふら。それを見ていたみはりは少し考える素振りを見せた後、こっそりとかえでに近づき耳打ちする。
「──やるなら今が良いんじゃない?」
「オッケー。それじゃ作戦通りにね」
それだけを告げ、すぐに元の位置に戻るみはり。こそこそと話していた2人の姿に疑問符を浮かべる他3人だったが、「お姉ちゃん達の秘密」とだけ返され、とりあえずは納得するのであった。
「もふら、内容が決まらないならこういうのはどう?」
「?」
急にもふらへ提案をしてくるかえで。罰ゲームの内容は至ってシンプルなものであった。ある程度のパワーや持久力が必要な肉体的負担のかかるもの──おんぶである。
少し考えた後、すぐに頷くもふら。あまり酷い内容だとゲームとして良くないので、これ位のものが妥当だと判断した為だ。
「──うん、ありかな」
「そんじゃ、後は番号言うだけだね~」
さて、と番号の目安を考える。それぞれの割り箸に特徴などないのだから、勘で行くしかないのは正直キツい。
もしまひろやもみじが下の方になったら大変だ。念のためにサポート要員として三人目も選んでおくか、などと考えていたら、かえでの後ろに1つ見慣れない物があったのを確認する。
(……紙?)
あんな物さっきまであっただろうか? と首を傾げていると、その視線に気付いたかえでは、もふらにだけ確認出来るようにその場で紙に書かれた内容をこっそりと広げて見せてくる。
いつの間に書いて何処に今まで隠していたのかは気にはなるが、とりあえずその内容を皆に気付かれないように確認すると──
「──えっ…?」
「ん? どしたもふら?」
「あ、いや、なんでも…!」
まひろの疑問にブンブンと首を振って返事をするもふら。そこに書かれていた内容はこうだった。
『もみじの番号は2番だよ~☆そろそろ仲直りぐらいしときな』
(ボクの悩みバレてる~~!?)
恥ずかしさのあまり思わず顔を手で覆うもふら。何で番号知っているのかとか突っ込みどころは色々あるが、そんな事よりもこの内容だ。
何で人の悩みを知ってるのか、とかえでの方を見るのだが、苦笑しつつみはりの方へと視線を向けている。そのみはりはもふらに頑張れ! と言わんばかりの笑顔を見せている。確信犯だった。
(早すぎる到着時間も、あからさますぎる王様ゲームへの誘導も、最初からこうする為の布石だったのか…)
わざわざ手の込んだ事を…と言いそうになるのを堪え、もふらは考える。この先の事を──友人としてのあるべき姿を。そして決断した。このゲームの行く末を。
「──んじゃ1番が4番を旅館の外までおんぶ。3番がおんぶサポートで」
「ぎゃあーーッ!!」
「あちゃー…」
命令を出した瞬間叫ぶまひろ。運悪く運ぶ側になったらしい。念のためにサポートを付け加えといて良かったと思うもふらであった。
「ごめんねまひー、頑張って」
「後で…覚えてろ…もふらァ…」
腕と足をプルプルとさせながら恨んだ顔をするまひろ。それを手を振って送りだすもふら。まひろの背に嬉しそうな顔でしがみつくみはり。苦笑しつつ、まひろが動けるようサポートをするかえで。心配そうに見送るもみじ。
全員が全員違う反応を見せつつ最後の罰ゲームが遂行されるのであった。
(さて…)
まひろ達3人が見えなくなり、改めて深呼吸をするもふら。ここまでお膳立てしてもらったなら、任務完了出来なければ男が廃る。
「急に手持ち無沙汰になっちゃったね」
「………」
「もふら君…?」
だから気合いを入れ、真剣な眼差しでもみじを見つめる。緊張した面持ちを必死に隠し、その言葉を彼女に告げる。
「──話が、あるんだ」
「えっ…?」
ようやく言い出せたこの言葉。今日この時より、緒山もふらは1つの転換点を迎えることとなった。
閲覧ありがとうございます。
予定よりかなり長くなりました。無駄に描写増やしすぎたせいですすみません。前編でもふらともみじの話全部終わらせようと思ったのに、文章量増やしすぎて途中で切る形になってしまいました。誰だよ長さはそんなでもないとか言ったやつ。
これは後編も5、6000文字は普通に行きそう。誰か短く綺麗な文章に置換する方法を教えてください。