きょうだいはおしまい!   作:虎之丞

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番外編です。かなり短め。予告したやつとは違う内容なのでそこのところご注意を。




EX1 もふらと夢の世界

(ああ…これは夢だ)

 

 

 緒山もふらはいきなりそう思った。何故か? 決まっている。

 

 目の前にいる物? が何よりの証拠だ。

 

 

「──デカすぎんでしょ」

 

 

 優に10メートルは超えているであろう黄緑色の巨大な物体。全体的な形からすると、どう考えても特撮映画やアニメで見る怪獣の類いにしか見えない。

 

 これは逃げるべきなのか、それとも観察するべきなのか。どうせ夢なのだから、もし近づいて潰されたとしても別に平気ではあるが、潰されることが既に決まっているのなら、さっさと逃げて別の夢へと切り替えたくはある。

 

 などと考えていたら、その巨大な物体がゆっくりとだが動きだした。その大きさの割に振動とかが何も来ないのは夢だからなのかなんなのか。

 

 それはともかく、やはり正体は怪獣だった。それも二足歩行の。ただ、その顔だけは自分のよく知る人物のものであったが。

 

 

「……いや、何故あっさー」

 

 

 えぇ…と思わず口走りそうになるもふら。そこで知り合いの顔が出てくるのは何故なのか。夢だからなのか。

 

 いずれにせよ認識が怪獣から、怪獣の着ぐるみを着た巨大な桜花あさひへと変わってしまった。何だかカオスになりそうな雰囲気がする。

 

 

「んー? なんだぁ、お前?」

 

「あ、気付かれた」

 

 

 思考を巡らせていたら怪獣のあさひにいつの間にか見下ろされていた。ものすごい体格差だけど普通に気付くものなんだなぁ、と少し感心するもふら。

 

 

「ウチを大怪獣あっさーと知ってここに来たのか?」

 

(せめて名前もうちょっとひねって)

 

 

 夢の中で自分が付けたあだ名そのまんまで来るのは、なんだか自分の妄想みたいで嫌だった。せっかくの夢に変な部分でのリアリティは正直いらないものだ。

 

 

「どしたぁ? 腹でも痛めたのか?」

 

「えっ…いや、そう言う訳では」

 

 

 まんまな名前を聞いてガックリとしていたもふらに怪獣あっさーは心配そうに聞いてくる。

 

 

「んー? なら元気がないのか? だったらあさひの尻尾をお食べ」

 

「いや待って、ツッコミが追い付かない」

 

 

 ブチっと自分の尻尾の先を引き千切ってもふらの口に押し付けようと近づける怪獣あっさー。その千切った尻尾が子供向けアニメのようにグロさも何もない映像になってたことには正直安堵する。ツッコミを入れるべきところはまだまだ沢山残っているが。

 

 なんで元気がないと決めた上で生肉? を食べさせようとするのかとか、そもそも自分の体の一部を某パンのヒーローのように普通に渡そうとするの怖いとか、体格差ありすぎて食いきれる訳ないとか、と言うかもう普通にあさひって言っちゃってる、とか色々なツッコミがこの一瞬で一気に駆け巡ってくる。

 

 と言うかあんなデカい物口に入る訳ないし、これ無理矢理詰めこまれたら圧死か窒息死確定では? こんな訳の分からん死に方嫌なんだけど、夢なんだから早く覚めてほしい。と恐怖と焦燥とその他諸々の感情が入り交じりながら、半ば諦めた表情で祈りを捧げていたもふらに、一筋の希望の光が差し込む。

 

 

「そこまでにしろ! 怪獣あっさー」

 

 

 そこにやって来たのは自分とほぼ変わらない体格、年齢の人間。そう、間違いなく普通の人間が助けに来てくれた。勝てるのかこれ? と思わないでもないが、その人間もまた、自分の知り合いと同じ姿だったのだから、もしかすると何か特殊な能力でも持っているのかもしれない。

 

 幕末の侍のような着物と腰に吊るした刀を携えた少年──いや少女はもふらの友人、穂月もみじの姿をとっていた。

 その格好が無駄に似合っている上に、何故か右目に眼帯を着けているのが気になるが。

 

 

(つ、つっきーー!! その眼帯なに? でも助けてくれてありがとう)

 

「むっ、来たな。月からの使者、人型サムライもみじろう!」

 

(だからもう少し名前どうにかして! ボクが付けたあだ名じゃないだけマシだけども。あと何? 人型サムライって。人以外のサムライいるの? と言うか月の使者ってなに? まるで意味が分からんぞ)

 

 

 そんなもふらの悩みを余所に、両者は向き合う。まるで長年闘ってきた強敵(きょうてき)のような雰囲気、そして重い空気が辺りに流れる。

 

 今この時より、戦いの火蓋が切ら──れずに周囲の時がいきなり止まった。

 

 

 

「───えっ」

 

 

 そこから急に景色がグニャリと歪んだと思えば、辺り一面が停電したかのように真っ黒に暗転していく。

 

 

「──は? なんで?」

 

 

 一番気になるタイミングでお預けを食らってしまうという、まるでバトルアニメのような展開。こんなものを夢の中でまでは望んでいない。早く続きを、続きを、と強く願っていたら──

 

 

「……ハッ!」

 

 

 うっかり目が覚めてしまった。部屋も外も辺りはまだまだ暗い。時間にしてまだ1~2時ぐらいと言ったところか。

 

 

「──いや、なんちゅう夢見てんだろボク……」

 

 

 いざ目が覚めてしまうと冷静になるというのか、まだその夢の内容が頭の中に残っている。

 

 しかし一度内容を見てしまうと、例えカオスな展開になろうとも早く続き──と言うよりエンディングまで見たくなってしまうのは男の、というより子供の(さが)なのだろうか。

 

 中途半端な終わり方は少々モヤモヤしてくる。まだ時間はあるのだから、早く続きを見よう。そう思って、もう一度目を閉じ、夢を見ようとするのだが。

 

 

「……寝れぬ」

 

 

 夢の続きを見ようと思うその思考が、無駄に頭を活性化させてしまっているのか、余計に眠れずにいてしまう。それでも、それでもと躍起になってしまったのが余計によくなかった。

 

 そんな思考を繰り返し続け、ようやく眠れた時には既に夜も明ける時間帯になっていたことをもふらは知らない。

 

 

 

 この日、緒山もふらは見事に寝坊した。ついでに言うと夢の続きは見られなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? どしたもふらん? 体調でも悪いのかー?」

 

「怪獣…サムライ…怪獣…サムライ…怪獣…サムライ…」

 

「……呪文?」

 

 

 その後、学校で友人達にガチの心配をされた為、もふらは二度と夢の続きを無理に見ないと心に誓うのだった。

 




閲覧ありがとうございます。あさひの誕生日に間に合いませんでした。5月5日にちなんで、後で腕立て腹筋スクワット55回してお詫びします。

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