高町なのはくん   作:わず

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決着

 

 次元空間を漂うアースラ。

 そのアースラにて緊急アラートが鳴り響く。

 なのはとフェイトはベッドから飛び起き、急いで出動の準備を始める。

 

「行けそう?」

「ばっちり」

 

 テキパキと動く。

 睡眠と食事を十分に取ったため、二人ともすでにケガは治っていた。通常であれば治っているはずはないのだが、二人の身体は少々特殊となっている。

 

「各地にて敵勢力出現」

 

 モニターにはバイザーを付けた女性が映し出されていた。

 それらはどれも同じ姿をしていた。銃と思われる武器を持ち、戦闘用のスーツを着用している。

 

 敵の目的は結界の破壊。

 各地点の発生個所を襲撃しようとしているらしい。

 結界を破壊されれば外に逃がしてしまうことになる。もちろん思い通りにはさせない。

 リンディ艦長指示の下、なのは達と局員が現場へと急行する。

 

 深夜の市街地。

 現場ではクロノが指示を飛ばし、結界の防衛を行っていた。

 

「第一防衛線、突破されます!」

「即時撤退。動ける者は第二防衛線まで下がれ」

 

 報告を受けて適時判断する。

 態勢を立て直すためにクロノ自身も空中に上がる。

 

「行くぞ、デュランダル」

 

 最高水準の技術で製作されたストレージデバイス。

 氷結の杖、デュランダル。

 高速処理と高威力にて、氷結魔法を発動させる。

 

 眼下に広がる氷の世界。

 見えている敵勢力が一斉に停止する。

 

「ここは結界の要だ。絶対に落とさせるわけにはいかない」

 

 次に来るであろう勢力に対し、態勢を立て直していく。

 

「頼むぞ。なのは、フェイト」

 

 最終目標はマクスウェルの逮捕。

 それにはユーリを突破する必要がある。現状、対応できるのは二人のみ。

 この事件の解決は、なのはとフェイトの二人に託されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目標地点に向かって突き進むなのはとフェイト。

 向かってくる敵をなぎ倒し、次々と斬り捨てていく。

 

 マクスウェルがいるであろう場所。

 そこにたどり着く直前、二人の行く先が阻まれる。

 

 イリスとユーリ。二人が道を塞ぐ。

 二人を目にして、なのはとフェイトは顔をしかめた。

 

 ユーリを相手にするのは骨が折れる。

 なのはとフェイトの二人で相手をしてやっと戦える相手。それに時間稼ぎならまだしも、勝つにはどうしても無茶が必要になってくる。

 そこにイリスが加わるとなるとかなり厳しい。

 

 しかし悠長にそんなことを考えている暇もなかった。

 飛来してくる魔力弾と砲撃。ユーリとイリスが攻撃を仕掛けてきていた。

 だがそれらは被弾することなく、空中で撃ち落される。

 

「なのはさん、フェイトさん。お久しぶりです」

 

 声をする方を見れば、かつての命の恩人達がいた。

 アミティエとキリエ。

 なのはとフェイトの命を救った遠い星の恩人である。

 

「どうして」

「イリスから通信があったの」

 

 キリエが答える。

 警戒を解かないまま、なのは達のところへ近づいていく。

 

「助けてって」

 

 イリスを見上げる。

 何かを確認するような視線。

 

「フォーミュラシステムによる行動強制プログラム」

 

 キリエはイリスの異常を見抜く。

 ユーリとイリスはウイルスコードにより行動を操られている。

 

 解決策は二つ。

 操り主のマクスウェルを倒すか、対象に連続攻撃で負荷を与え続ければ解除される。

 

「なのは君、フェイトちゃん。イリスは私に任せて」

 

 アミティエが心配そうにキリエを見る。

 

「お姉ちゃんはそっちを手伝って。こっちは一人で大丈夫だから」

 

 手伝いは不要だと伝える。それよりもなのは達の手伝いを願い出た。

 ユーリの異常さを感じ取ったのもある。それはアミティエも同じでキリエの言いたいことは理解していた。

 

「私の友達は、私が助ける」

 

 キリエは友達のイリスを救うために戦う。

 その意志は固く、強い。

 

「無理はしないでくださいね」

「うん」

 

 なのは達にとって心強い援軍だった。

 勝機が見えてきたのも大きいが、頼れる仲間が増えたおかげでさっきまでの不安は消えていた。

 

 四人が各々の思いを胸に、戦いに臨んだ。

 

 

 

 

 

 魔力弾の射撃、砲撃魔法、物理攻撃。

 あらゆる攻撃が飛び交い、ユーリとの戦闘が繰り広げられる。

 

 一進一退の攻防。

 元々負ける確率の方が高い戦いだったが今は違う。

 三人であればどうにか勝負に持ち込むことができていた。

 

「アクセラレイター!」

 

 アミティエが加速する。

 使い慣れているだけあって起動が早く持続時間も長い。

 

 なのはが近接で攻めに行くときは、アミティエも武器を剣に変えて一緒に攻める。

 フェイトが射撃を行うときは、銃へと変形させて同時に撃つ。

 

 アミティエの持つ武器。ヴァリアントユニット。

 様々なツールに変化させて、変幻自在に、臨機応変に援護をしていた。

 

「オラァ!」

「はあぁ!」

 

 なのはとアミティエが攻め続ける。攻めはするが決定打はない。

 戦えているとはいえ、今のところは体力と魔力の削り合い。

 ユーリの貯蔵量がどれくらいか不明だが、疲れるような様子を見せないのでエネルギー切れは期待できない。

 それになのは達は全力を出し切っている。どちらが先に尽きるかは明白だった。

 

 そのため、なのは達は一気に決着を着けることにした。

 なのはとアミティエが時間を稼ぐ中、準備の終わったフェイトから念話が届く。

 

『二人とも下がって!』

 

 即座に離脱する。

 フェイトの周りには、多数のスフィアが浮かんでいた。

 

「フォトンランサー・ファランクスシフト」

 

 スフィアが電撃をまとい、発射準備が整う。

 

「ファイア!」

 

 全てのスフィアからフォトンランサーが発射される。

 毎秒七発。千と六十四発の魔力弾がユーリに飛んでいく。

 約四秒間の射撃。

 全てを着弾させたわけではないが、それでも確実にダメージを通っているだろう。

 

「アミタ!」

「はい!」

 

 撃ち終わると同時になのはとアミティエが飛び込んでいく。

 フェイトの攻撃が決して弱いわけではない。

 通常の手練れであれば今ので終わっている。だが相手は規格外の存在。これで落ちているわけがない。

 

 それを理解しているがため、間髪開けずに追撃を行う。たたみかけるなら今しかない。

 しかし、その追撃は別方向からの攻撃によって邪魔されてしまう。

 なのはとアミティエに向けて行われた射撃。二人は緊急回避を行い距離を取る。

 射線をたどった先にはマクスウェルがいた。

 

「なかなか思い通りにはいかないね」

「こっちのセリフだ」

 

 なのはが苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「おい、おっさん」

「私のことかね?」

「ああ。その本、返してもらうぜ」

 

 マクスウェルが手に持っている闇の書。

 それを指さす。

 

「やってみるといい」

 

 挑発を受け入れる。なのははディバインソードをマクスウェルに向けた。

 闇の書にはまだ守護騎士が囚われている。救うためならば決して容赦はしない。

 

「なのは君!」

 

 なのはが飛びかかろうと瞬間、声をかけられる。

 

「え!?」

 

 後ろを見れば髪が白くなったはやてがいた。

 

「な、なんで、こんなところに」

「私も戦う。守護騎士のみんなを助けたい」

 

 手にはデバイス。

 通常の魔導師に支給されるストレージデバイスを持っていた。

 リインフォースともすでにユニゾン済みである。

 

 はやては今まで戦闘の経験はない。戦えるような体でもないはずである。

 なのははとても心配そうな目をはやてに向けていた。

 

『高町なのは。心配するな、私がついている』

 

 リインフォースから念話が飛んでくる。魔法も、体の動作も補助をしてくれるらしい。

 そうだとしても心配な気持ちは拭えない。

 今まで自分がしてきたことを棚に上げてしまうが、いくらなんでも無茶が過ぎると思った。

 けれど、それと同時に何を言っても引かないことも理解していた。

 

 無茶をするのはそれなりの理由がある。その理由もなのはは知っている。

 自分の家族の命が掛かっている。ここで引くことも止まることもしない。じっと待つなんてできるわけがない。

 

 ならばはやてに危害が及ぶ前に決着をつけるのが最善手となる。

 

 ユーリをフェイトとアミティエに任せ、マクスウェルはなのはとはやてが相手をすることにした。

 

「はやて、なるべく距離を取って魔法で援護してくれ」

「了解や」

 

 はやてが後方に、なのはが前衛を務める。

 

「調整が済んだのでね。二度も申し訳ないが少々実験に付き合ってもらうよ」

 

 マクスウェルが闇の書を開く。

 魔法陣が展開され、攻撃魔法が行使される。

 

「ラグナロク」

 

 砲撃魔法。

 三つの砲撃が同時に発射される。

 その砲撃に対し、同様の砲撃魔法が衝突する。両方の魔法がぶつかり合い相殺されていった。

 

「任せてや。なのは君」

「……おう!」

 

 予想以上に援護が期待できそうだった。

 闇の書がないため使える魔法は少ないが、今はリインフォースが付いている。

 それにはやての魔力量は膨大だ。魔法の撃ち合いならばまず撃ち負けない。

 

 なのはもマクスウェルを倒すべく接近していく。

 近接戦でなのはが肉迫する。剣と剣の押し合い。

 力で押し込もうとするがなのはの予想が外れる。

 

「――こんの!」

 

 なのはが力で押し切れないでいた。

 大人と子ども。普通なら敵わない。当たり前のことだ。

 だがなのはは別だ。尋常ならざる肉体を備えている。

 そのなのはの馬鹿力を持ってしても押し切れずにいた。

 

 一度押し合いをやめる。

 半歩下がり、打ち合いに持ち込んだ。

 

「ふっ!」

 

 力で勝てないなら技で対抗する。

 速くて真っすぐな剣筋。かと思いきや、円を描くような不規則な軌道へと変化する。

 

 なのはは剣の扱いについてちゃんと教わったことはない。

 剣の振り方、ましてや握り方さえ教えてもらったことはなかった。

 

 なのはの戦闘を支える今までの経験。

 恭也と美由希の稽古。そこから見て学んだ御神流の動き。

 フェイト、守護騎士との実戦で学んだ魔導師としての戦い方。

 アミティエとキリエの戦闘を見て覚えた独特な剣技。

 

 それら全てを吸収し、自らに最適な剣技へと昇華させていた。

 

「くっ!」

 

 マクスウェルが手こずる様子を見せる。

 見たこともない動きに加えて、軌道の読めない剣筋。

 技量の差は歴然だった。さばき切れず、ディバインソードがマクスウェルの左頬を掠める。

 マクスウェルの体勢がほんの少し崩れる。それを見逃すなのはではない。

 

「がはっ!」

 

 続けてなのはの蹴りがマクスウェルの腹部にささる。

 ディバインソードだけに注意をしていればいいわけでもなかった。

 これはまずいと感じ、マクスウェルは一度距離を取る。

 

「その先は地獄行きやで」

 

 マクスウェルが移動したその先で白い魔法陣が展開される。

 

「ミストルティン!」

 

 はやてが準備をしていた魔法を発動させる。

 白い槍がマクスウェルに襲い掛かる。

 

 一撃必殺級の魔法。

 当たれば文句なしで決着が着く。貫かれた瞬間、その部分から石化が始まっていく魔法である。

 

「ナハトヴァール!!」

 

 マクスウェルが焦る。それほどの魔法だ。

 命令を受けたナハトヴァールが白い槍に噛みついていく。

 マクスウェルに届くことはなく、ミストルティンは全て砕かれる。

 同様にナハトヴァールも石化して砕け散っていった。

 

「全く。人に向けて放っていい魔法ではないと思うがね」

「なんや? 人間やったんか?」

 

 まるで人間ではないかの物言い。

 

「ふふ。まあ人間と呼称するにはいささか違うかもしれないね」

 

 よく見ればなのはが傷つけた頬の奥は機械でできていた。

 はやては傷がつく前から知っていた。それはリインフォースから聞かされていたためである。

 そのために容赦のない魔法も放ったのだろう。

 

「君たちを見くびっていたようだね」

 

 左腕に巻き付いていたナハトヴァールが再生していく。

 

「油断して負けてしまったのではつまらない。だからそろそろ終わりにさせてもらうよ」

 

 なのはとはやての予想以上の攻撃。

 まだ余裕で対処できるとしても万が一がある。

 そのため、マクスウェルは早々に決着を着けることにした。

 

「アクセラレイター・オルタ」

 

 マクスウェルが加速する。今までとは違う。

 圧倒的な性能差があった。

 

 なのはの顔面に拳が入る。

 

 そのまま下へと吹き飛ばされ、道路をものすごい勢いで転がっていく。体勢を立て直す暇もなく、マクスウェルが追撃を仕掛けてくる。

 

 すくい上げるように迫る剣。それをディバインソードではじくが、完全には防ぎきれなかった。

 左目からの出血。なのはは視界の半分を奪われてしまう。

 蹴り上げられ、そのまま空中戦へと移行する。

 

 向かってくるマクスウェルにディバインソードを振るが空振りしてしまう。

 

 速すぎる動き。なのはの動体視力を持ってしても姿を見失う。

 マクスウェルはオルタに加え、魔法による強化でさらなる速度を得ていた。

 魔法の補助により既存システムの処理速度を上げ、さらに強化魔法を自身にかけていた。

 

 容赦のない攻撃がなのはを襲っていく。

 超高速で動くマクスウェルについていくことは非常に困難だった。

 

 右からの斬撃。それにかろうじて合わせるようにディバインソードを振る。

 直感での反応だった。

 またもや完全に防ぐことはできず右腕から出血する。とは言え防御をしてなかったら腕がなくなっていただろう。

 

「がっ……!」

 

 背中を斬られる。

 さらに上からの攻撃。振り下ろされた剣はなんとか防ぐことができた。

 しかし、そのまま勢いよく落下してしまう。

 二度目の地面との衝突。気を失いそうになるがどうにかこらえていた。

 

 二人の高速戦闘に付いていけず、はやてはマクスウェルを見失っていた。

 

「こちらだよ」

 

 マクスウェルがはやての後ろに回り込む。

 反応できず、近距離で放つ砲撃魔法をもらってしまう。

 続けて拳がはやての腹部を直撃する。

 

 落ちていくはやて。

 道路にぶつかる寸前、衝撃をなくす魔法が発動する。

 レイジングハートが発動してはやてを助けてくれていた。

 

「素晴らしいね。なかなかに強くて手こずってしまった」

 

 なのはが起き上がろうとする。

 血が流れ出て、地面を赤く染めていく。

 

「ほう、なんという胆力だ。君のような小さい子がよくぞそこまで戦える」

 

 なのははあきらめない。

 心は折れていない。

 

「だがここまでだ」

 

 マクスウェルがはやてに近づく。

 

「融合騎。ふふ、私の知らない技術がまだまだありそうだ」

 

 はやてに手が届く距離になる。

 

「是非、その力もいただくとしよう」

 

 マクスウェルがはやてに手を伸ばす。

 

「オイ……!」

 

 なのはが起き上がる。

 

「そいつに手ェ出してみろ……」

 

 立ち上がりマクスウェルを見据える。

 

「殺すぞ」

 

 すでに全身から血が流れ、満身創痍だった。

 だが、その気迫からは鬼気迫るものを感じる。

 

「そんな体で何ができる」

 

 どこ吹く風とばかりに言う。

 誰がどう見てもすでに決着は着いていた。

 

「そこで見ているといい。君は後で殺してあげよう」

 

 マクスウェルがはやてを掴もうとする。

 

 容赦はしないと決めていた。けれど、心のどこかでセーブはしていた。

 超えるべきではない一線。超えた先は修羅の道。

 しかし、なのはは守るためであれば躊躇を捨てることにした。

 大切な人のためならば捨てることができた。

 

 イリスにもらった力を解放する。

 

「その力は!?」

 

 マクスウェルと同じ。

 アクセラレイターのさらに上。

 アクセラレイター・オルタ。

 

 なのはが踏み込む。

 はやてに手を掛けようと伸ばした腕。

 その腕をなのはは切り飛ばした。

 

 放物線を描き、マクスウェルの右腕が地面へと落ちる。

 

 回避が最優先。

 そう判断し、マクスウェルもアクセラレイター・オルタを使用する。

 

 逃げようとするマクスウェル。

 しかし、速度はなのはの方が上だった。

 今、なのははオルタと同時に神速も使用している。

 

「レイジングハート!」

 

 さらにカートリッジを全て使う。肉体能力も魔力も全て限界以上に引き出す。

 マクスウェルを中心になのはが縦横無尽に駆け巡る。

 姿を捉えることはできない。目にも止まらぬ速さだ。

 

「なんだこれは! これが人の動きか!?」

 

 肩、胸、腕、足、あらゆる箇所が切り刻まれていく。

 

「ぐあぁ!」

 

 防御は意味をなさない。ナハトヴァールの自動防御も間に合わない。

 例え間に合ったとしても粉々になるだけだろう。

 

 さらに左足が切り飛ばされ、続けざまに右足も持っていかれる。

 なのははマクスウェルの顔を掴み、そのまま地面へと叩きつけた。

 

「ごはっ!」

 

 ほんの一瞬の出来事。

 先ほどまで立って歩いていたマクスウェルは、今は地面に横たわっている。

 

「な、ナんなンだおま、エは」

 

 故障したのか、声に機械音が混ざっていた。

 

「こンな……コどもに」

 

 悔しさと怒りの混じった感情。

 なのはがトドメをさそうとディバインソードを首元に突きつける。

 

 力を入れようとした瞬間、マクスウェルの左腕に残っていたナハトヴァールが動き出した。

 制御下に置かれていたはずのナハトヴァール。

 嫌な予感がし、なのはがその場から離れる。

 

 それは暴走したように動き出した。

 みるみると動きは活発化していき、マクスウェル自身を飲み込み始めていた。

 

「マて! ワタシはまだ……!」

 

 浸食され、どんどん飲み込まれていく。残すは顔だけとなってしまう。

 

「ヤめろ! こンなとこロで……!」

 

 ついには全身が飲み込まれてしまう。

 このままではターゲットにされると思い、気絶しているはやてを抱えて遠くへと避難した。

 

 

 

 

 

 ビルの上からマクスウェルだったものを見る。

 異形の怪物。それはあまりにも大きかった。

 周囲の物質を取り込み、どんどん大きくなっていた。

 

「イリスの言っていたのはアレかな」

『その通りかと』

 

 世界の終わりとでも言える光景をなのはが虚ろな目で見る。

 血が足りないせいか視界がぼんやりとしていた。

 

「なのは!」

「なのはさん!」

 

 フェイトとアミティエが飛んでくる。

 アミティエはユーリを抱えていた。マクスウェルを倒したおかげか支配は解かれたようだった。

 続けてキリエとイリスも降り立つ。イリスも同様に解除されているようだった。

 

「なのは君、その……」

 

 イリスが何か言いたそうにしている。

 操られたことか、もしくはこんなことに巻き込んでしまったことか。

 

「気にしてないよ。それよりも今はアレをなんとかしないとな」

 

 遠くの怪物を見据える。そうして話をしている間にクロノも到着した。

 

「遅れて済まない。とりあえず現状を把握したい」

 

 なのは達が見ているものをクロノも認識する。

 

「アレは……」

『ナハトヴァール。それの暴走体です』

 

 レイジングハートが簡潔に説明する。

 

「フィル・マクスウェルは?」

「倒した。というか、アレに飲み込まれた」

 

 クロノは状況を把握する。

 確認事項は最低限に留め、今やるべきことに思考を移す。

 

「アレの停止のプランは用意してある……と言いたいところだが」

 

 魔力がもうなかった。全員、動くのでやっとの状態。

 

 クロノの頭に最終手段がよぎる。アースラからのアルカンシェルの発射。

 ナハトヴァールを消滅させることはできるだろうが、地表に撃ち込んだ影響でここら一帯は焼け野原になってしまう。

 避難も済んでいない。人的被害も計り知れないだろう。

 

「上手くいくかはわかんないけど」

 

 クロノが思考をめぐらせているとき、なのはが策を提案した。

 

「やってみたいことがある」

 

 提案の内容をこの場にいる全員に伝える。

 それは賭けに近い方法だった。

 

「他に手はない。そのプランで行こう」

「うし」

 

 考えている時間もなかった。

 それにアルカンシェルを撃つくらいなら試す価値はあると判断する。

 

 内容は単純。

 なのはが魔力を集束し、コアごと斬って消滅させるというもの。

 作戦でもなんでもない。ただの力技。

 だが、他に方法がないのも事実だった。

 

 なのはが解除せずにいたディバインソードを天に向ける。

 さらに四散していった魔力を集めていく。いつもより魔力の集まりが速い。

 周辺にはたくさんの魔力が満ちていた。この戦いで大勢の人が奮戦し、その魔力が散っていたためである。

 

 魔力を集める最中、ナハトヴァールから攻撃を仕掛けてくる。

 大きい魔力反応を感知して、砲撃で撃ち落としに来ていた。その攻撃をなのは以外の全員で防御する。

 

 なのはは集束を続けていく。

 元々集束していた分と合わせ、十分過ぎるほどの魔力が集まっていた。

 しかし相手はロストロギア。

 なのは達の感覚で集めすぎと思っても不十分なくらいだろう。

 なのでこれでもかというぐらいさらに魔力を集束させる。

 そして、なのはの切り札である魔法を発動させた。

 

『Starlight Blade』

 

 桜色の光が天を貫いていた。

 

 みんなが思いを胸に戦い、その思いを乗せて散っていった魔力のかけら。

 それらがもう一度集まり、闇を切り裂く剣となる。

 

 ――星光剣、スターライトブレイド。

 

 フェイト達が、局員達が、見る者全ての動きが止まっていた。

 

 眩しく光り輝く桜色の剣からは魔力のかけらが散っていく。

 桜花爛漫。桜色の魔力が夜空に舞い散っていた。

 その幻想的な景色に人々は圧倒されていた。

 

 断罪の時。

 スターライトブレイドが振り下ろされる。

 それはまるで神話の光景だった。

 天をも貫く剣が、異形の怪物を切り裂いていく。

 切り裂くどころか対象を飲み込んでいき、跡形もなく消滅させていた。

 

 消え去るナハトヴァール。

 

 静寂の後、局員達から喜びの声が上がる。

 事件が解決する。その事実に嬉々として喜ぶ。

 

 とうとう気が抜けたのか。

 限界を超えていたなのはは力尽き、その場から落下していった。

 

 

 

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